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[礼の言葉が聞こえればゆるゆると首を振るい
繋いでいた手を緩める。
少年>>24がゲルダへと意識を傾ければ
遠慮したのか少しだけ離れて、吐息を零した]
[少女は少年の言葉を疑わない。
エリザベータもアーベルも人狼でないとすれば
人狼はまだこの中にいるのだろう。
では、誰がそうなのか。
考えこむように顎先に軽く握った手を宛がい
僅かに俯き、柳眉を顰める]
……。
[クロエに添われるゲルダと
手伝おうとするフォルカーの様子が見えれば
手は足りていると判断したのか案じるような眸を向けるのみ]
[“牙もつ者は何処に?”
“牙もつ者は何を思うの?”
少女は唇のみで言葉を紡ぐ。
騒ぎを聞きつけた自衛団員が訪れれば
それを機に宿の中へと戻るのだけれど**]
― 外 ―
[ベアトリーチェがこちらを見て眉を下げたが>>35、表情は変わらず。ついでに唇が>>38、紡いだ言葉を知る。
2つの問い、どちらも答えらえる立場にはいるが、当然少女に伝えられるはずもなかった。特に後者は、正しく答えられるかは分らないのもある。
戦うことから気が削がれると、腕の痛みが強くなったように思えた。
痛ぇ、と唇がぼやくように動き。
無茶しいとか言われたが、ほっとけと、獲物持った腕で半端に返した**]
─ 昨日/宿屋 ─
[宿屋の主にシーツを用意してもらって。
それを手に臭いを頼りに外へと向かう。
クロエやフォルカーが既にアーベルを移動させる準備をしていて、それに対しシーツを差し出しておいた]
……ライヒアルトさんも、怪我?
中にまだリズが居るから、診てもらうと良いですよ。
[血塗れた様子に怪我でもしたかと、ライヒアルトにはそう言葉を向けて。
骨折だと薬師の領分になるかは分からなかったけれど、先に宿屋に戻ってリズに何があったかを伝えておいた]
[その後は要請があれば手伝いをするだろうけれど、自主的に動くことは無く。
アーベルが宿屋の一室に運ばれた後も、食事スペースで絵を描く作業を続けていた。
空腹を覚えれば宿屋の主に食事を頼み、休憩を挟む場合は自分で紅茶を淹れたりして。
やはり、いつも通りに僕はその日を過ごした]
[唯一違ったのは、寝る場所が食事スペースのテーブルの上じゃなかったこと。
宿屋の主に、寝るなら部屋を貸すからそっちで寝ろ、と言われて、その言葉に甘えることにした。
彼にしてみれば片付けの邪魔になるとか、マイナスの要素が多すぎるが故の進言だったことだろう。
図鑑は重いからと、羊皮紙や剣共々その場に残していくことにはなったのだが。
元々自宅へ戻る予定だったのが宿屋に居座っている理由は、勿論図鑑の重さにあった]
─ 翌日/宿屋 一階 ─
[早めに休んだお陰で次の日の朝起きた時間は、早い。
早いと言っても、陽が昇る前にと言うわけではなく。
日の出と共に起床した形となった]
ぁふ……。
親父さんは……まだ来てないか。
[宿屋の主が来たら食事を頼もうと考え、それまではデザイン画を描くべく席へと向う]
[その途中]
………あ、し?
[虚ろな瞳に映ったのは、靴を履いた誰かの足。
最初は誰かが倒れているのかと思った。
けれど、足の付け根の方へと視線を移すとその先に身体は、無い]
────………。
[虚ろな瞳が大きく見開かれ、はた、と別の方へと視線を向ける。
次に眼に入ったのは、細いが程よく引き締まった女性の腕。
その腕も肩から先が無く、腕には刃物で切りつけたような傷痕が残っていた]
……だれ、が。
[問う声は為した人に対してか、為された人に対してか。
腕の持ち主の力の使い方を知らないため、誰なのかは未だ直結しない]
[何度か視線を転じると、残りの足と腕が眼に入り。
最後に、ようやく頭の部分を見つけた]
……ゲルダ───。
[いつしか元に戻っていた虚ろな瞳が、軽く細められる。
人狼を探せると言った女性。
失いたくない人が人の手に掛かるのだけでも止めたいから名乗り出たと言っていた女性。
自分が襲われるのは覚悟していたらしい人。
昨日大切な人を失った直後襲われたのか、と心中で呟いた]
…結局、護れなかった上に自分も死んじゃったんだね。
[彼女の大切な人は人の手で死を迎えた。
人の手に掛からぬために行ったことは、効果を現さなかったのだ]
君は自分が死ぬのは覚悟出来ていたみたいだったけれど。
君は、君の役割を全う出来たのかな───?
[ゲルダは死を身近に感じていたと思う。
彼女との会話の中でそれは感じていた。
ぽつりと問うも、それに返す声はない]
[右手をゲルダの額に伸ばし、顎に向けてゆっくりと撫でる。
その動きに合わせて、光灯さぬまま薄く開いていた彼女の瞼が完全に、閉じた]
………アーベルと、会えると良いね。
[死後の世界がどうなっているのかは知らない。
けれど、仲の良かった彼女達を思い、そんな言葉が零れ出ていた]
[ゲルダの頭部から離れると、バラバラになっている腕と足を拾いに向かう。
拾った部分はパズルを組み合わせるかのように頭部の傍へ。
一本ずつ運んだため、全てを集めるまでにはそれなりの時間が掛かった。
その間に誰かが来てその所作を見られたかもしれないけれど、それを気にすることは無く。
誰かに何か問われたなら、ゲルダがバラバラになっていた、と答えることに*なる*]
― 前日/外 ―
[視線を感じ微か顔を上げればライヒアルトの眸が見えた。
彼が何を思うかまでは知れぬながらも
腕の怪我が痛むらしいことは唇の動きで分かる]
――…。
[漆黒を纏う修道士に少女は淡い憧れを覚えていたが
それも事件が起きてからはなりを潜めている。
如何して、と考えてみれば
手話を操る彼に何処かで勝手な親近感を抱いた事から始まる。
子ども扱いされるが常だったが
子どもと認識されているが故か優しかったように思う。
得物を持つその腕が、人の命を奪った行為が少し怖い。
けれどそれを手放してと願う事は出来ない]
― 翌朝/宿屋 ―
[習慣でやはり朝になると目が覚めてしまう。
家で過ごす日常とは違い朝早く起きても
すべき事など見つけられないのに――。
あまり早くに部屋を出てもフォルカーにも
彼の父親にも気をつかわせてしまうだろうかと躊躇い
少しだけ間を空けてから少女は部屋を出て一階に向かう]
― 宿屋一階 ―
[何やら人の気配がした。
足音、物音も聞こえる。
少女はことりと首を傾げ音のする方へと何気なく足を向けた。
宿の主人が何かしているなら手伝おうとでも思ったのだろう。
ひょっこり覗き込んでその光景が映り込めば
少女は大きく目を見開き、動きを止めた。
ヘルムートが何かを運び集めている>>46
立ち込める鉄さびの匂いと、血の色]
――…っ !?
[咽喉が痙攣し声らしき声は出なかった]
[眸閉じたゲルダの横顔。
ヘルムートが運ぶそれがゲルダであったものだと知る。
一度バラバラに裂かれた四肢は無論繋がることはなく
昨夜見た彼女の姿とは違う無残に見えるものだった。
惨い現実に少女の目には涙がたまる]
……あ、あぁ…っ
[漸く出せた声には悲しみと絶望が入り混じり
言葉らしき言葉とはならない]
…… っ!
[ゲルダさん、と小さな音色が漸く彼女の名を呼んだ]
[何処かで信じたいと思っていた。
彼女は自ら考え名乗り出てくれた占い師だったから
彼女の生が村の為になるのだと何処かで思っていた。
此処で食い止めなきゃ村が滅んでしまう。
御伽噺の中で何の力もない青年が言った台詞が脳裏を過ぎる。
彼には守るべき家族が居たから
被害が広がるのを食い止めねばと思っていたように感じていた。
それは家に母を残してきた少女も何処かで思っていた事。
自衛団長が未曾有の危機だと言ったその時から
御伽噺の中のそれと何処かで重ねていたのかもしれない]
[死の色しか感じられぬゲルダへと一歩、二歩歩み寄り
彼女の傍でぺたんと膝を折り座り込む]
ゲルダ、さん。
……ゲルダさんっ!
[呼びかけるはまるで起きてというかにも似た響き。
悲痛な色を纏う少女の声が静かな宿に響いた]
[エリザベータがヘルムートの手に掛かった次の日は
ゲルダは名乗り出たにも関わらず無事だった。
なのに、今は――。
欠けたままのピースはたくさんあったけれど
それでも感じ取れる何かはあり
幼さの残る少女の頭でも思い至る可能性がいくつか考えられた]
あ、……っ
[御伽噺の通り一日に一人。
ゲルダの亡骸の惨さからそれが人の手でなく
牙もつ者の手に掛かったのだと少女は思ったから
御伽噺の通りであれば他に犠牲者はいないだろうか。
そう思いながらも自らの目で確かめるまでは不安で
少女は顔を上げて、音無くくちびるのみで少年の名を紡ぎ
その姿を翠の双眸が探し彷徨う**]
―前日―
[ヘルムートの進言は>>40、どこで聞いたのやら。
診られるというなら大人しく従っておいた。
面倒だからいい、とでも態度に出そうなら、友人がどう出るかそら恐ろしかったのもある。無駄に傷口広げるほどマゾくはなかった。
見据えた少女の瞳に怯えが見えると、目を逸らした>>47。
腕と顔以外に、少し痛む物を覚えなくはないが、それよりも、その方がいいと安堵する心の方が大きい。骨に染み付いている家業は脅えられてこそだ。血生臭い性分は変えられない。
かといって子供に冷淡になれる性質ではなく。
我ながら、矛盾していると胸中でぼやいた。
それらが全て片付けば、部屋に戻って何とか片手で着替えてベッドに沈んだ。
クロエが血塗れた服を取りに来たなら、持って言ってくれと言わんばかりに、机に脱ぎ捨てた衣服を指差しただろう。]
―前日→翌日・宿二階自室―
[眠りは相変わらず遅い。
夜遅くまで飽きる事なく声を聞こうとしているからだ。
他人の声と、自分の声を。
久しく感じることのなかった聴覚を一時でも取り戻した事は、喜ぶことでもあり。それは至極複雑ではあった。
時折口の端を上げながら、それでもいつかはゆるりと意識は闇に抱かれる。
目覚めが遅いのは、おそらくは傷のせいだ。
目を覚ますと、体が熱を帯びていた。傷のせいだろう。
だるい。
どいつもこいつも、置き土産にロクなもん残しやがらねぇ。
アーベルも、彼女も、と。
毒づきは囁きにも落とさず胸だけに秘めた。
階下が多少騒がしくても、音の無い世界では伝わりは遅く。
またその原因を知るが故に、暫く様子を見に行く事は無かった**]
― 前日・宿 ―
[少女>>36とも離れて大人達を手伝った。困惑していることには気がつけなかった。
修道士>>22が問いかけられて答えた内容は、同じ思いではなかったけれど納得もできてしまった。
それが後ろめたく、加工師の側に居続けることが出来なくて、支えたり休ませたりするのは洗濯女や行商人に頼んだ]
ヘルさん。一緒に運んでくれる?
[デザイナー>>40からシーツを受け取って、彫刻家の体を包み込んだ。白が赤に染まる。赤はやがて黒になるだろう。
一人で運ぶのは無理だったから、宿に戻ろうとしていたのに頼んだ。学者も近くにいれば同じように頼んで宿の中まで運んだ]
―前日/外―
[フォルカーがアーベルの亡骸を運ぶ手伝いを申し出たのは聞こえていた。
ライヒアルト>>31の軽い頷きをみやる。
オトフリートに手当てだなんだと言われている様子に苦笑を浮かべて、『ちゃんと養生しなよ』と仕草で告げておいた。
アーベルの方へと近寄る。
ゲルダを支えるのはクロエがしていたようで、というかアーベルの死に納得を見せたあとでゲルダを休ませようとしてもゲルダに拒否されてしまった。
それはしかたのないことだと軽く肩をすくめた。
フォルカーたちがアーベルを宿へと運ぶときに自衛団員が様子を見に来たら、今回はアーベルだったことを告げ。
アーベルを運ぶ人手が足りないようなら自衛団員に手伝うよう頼み、彼らが宿へと向かうのを見送った]
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