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[じっと相手を見て、返事を待つ。
アーベルが了承する事なければ引き下がる積りだが、
何度かは食い下がることになるだろう。]
じ、人狼、みつけた ぃノ。
モウ、―――ま、周りデ人 ヲ。
し、な せせたくない、ノ。
[ぽつり ポツリと落とす言の葉。
発音も辿々しくなり始めた声は、ゆっくりと紡がれる。
食い下がっても断られれば諦めるし、アーベルが了承してくれたとて、また、掃除要らないと札が掛けられている部屋は無理だろうが―――誰の部屋がそうなっているだろうか]
――ならば、殺すか?
[誰かが意を決したように、呟くのに]
あの魔女は、人狼を見つける手伝いをすると言っていた。
その言葉が本当ならば、我々は取り返しのつかない過ちを犯すことになるぞ。
[他の誰かが答えた。
団員たちは口々に言葉を重ねる。
彼らとて、村の護り手としての自覚はあるのだ。
疑わしいからと言って、無闇に処刑するわけにはいかない。
結論の出ないまま、沈黙が続く]
どうも、連中は伝承がどうの、御伽噺がどうので
誰を処刑するのか決める心算はないらしい。
……だから、俺が魔女を査問しよう。
[そう口にして、食堂で話し合う人狼の嫌疑者を鼻で笑ったのは、
秘薬を調合するベアトリーチェを問い詰めようとした団員だった]
その結果で、どうするか決めればいいさ。
[ベアトリーチェに遣り込められた団員に
査問をさせるのは危険だという意見もあったが
人狼を招き入れた魔女かもしれない彼女と対する怖気が
結局、彼の言を受け入れることとなった。
――それが、悲劇を生むとはしらずに]
[梳き撫でるエーリッヒの手はいつも優しい。
その優しさが年下の者に惜しみなく注がれるものと思えば
甘えてばかりではいけないような気もして]
本当に何ともないならいいけど。
エリィは自分でも気付いてないことあるでしょう?
[だから心配なのだと呟いた。
見抜かれている事をイヤとは思わない。
何処かで安堵しているのは、隠し事をするのが辛いから]
――…ありがと。
今はまだ、こわくて、言えないけど
いつか――…、言えると思えたら、その時は聞いて。
[付け足された言葉に薄く笑んでささやかな声を向けた]
[半刻程が過ぎて、血に染まったナイフを手に戻った男に
他の団員たちは、顔色を蒼白にする]
……なんて、莫迦なことを。
[呻く副団長]
仕方ないだろう。
あの魔女、あの夜と同じに、俺を小馬鹿にしやがった。
俺たちに協力する気なんかないんだよ。
[男の開き直りの言葉に団員たちはざわめくが。
魔女は何れ、処刑されていただろうと、自分たちを納得させるように頷きあう]
[運び出される、ベアトリーチェの遺体を見る者があれば
白くたおやかな喉に走る、致命傷となった
深い裂傷に息を呑むだろう。
そして、人狼嫌疑者には、ベアトリーチェは人狼に協力している疑いがあり、拘禁を試みたが逃亡を図ったため
速やかに処刑を行なったと、ただ、それだけが伝えられた**]
[広間で、紅茶を貰った後、
話をしたりもしただろうけれど、
それは割愛する。
男はベアトリーチェがどの様に死者を判ずるのか知らない。
ただ、顔を見ない事を心配に思っていたのは確かで]
アーベル、ベアトリーチェの部屋って何処だ。
後で見舞いするわ。なんか持ってく食い物とかあれば持ってく。
付き合いはお前よりは長いんだから、下手に知らない奴が行くよりは良いだろ。
[そして男がその部屋に行った時、
――既に、遅かった]
[団員の一人がウェンデルに気付き、説明をする。
曰く、人狼に協力している疑い。
曰く、拘束を試みたが逃亡を試みた。
どちらも、男にとっては眉唾物だった]
あんなに体調の悪そうな彼女一人、
お前らは拘束出来ないってのか。
舐めてんじゃねえぞ。
ベアトリーチェは苦しんで――
[琥珀の目には怒りが灯る。
憎悪が。
だけれど、団員達にとっては男もまた、嫌疑者で。
乱暴に押しのけられれば、もうそれ以上の言葉はない。
ただ睨みつけるだけ]
殺してやる。
[彼らの姿が見えなくなった後、
男は、口元に笑みを浮かべた。
呪いの様に、誓いの様に、静かな言葉が落ちる]
――これが終わったら、俺が死ぬなら
其れより前にお前らを殺してやる。
[部屋の様子を確かめる。
血の痕跡はあっただろう。
その後、その部屋をしっかりと閉めて、
掃除をしないようにと看板を掛けて]
――団員から聞いたか。
ベアトリーチェが殺された。
あいつらの言う事の何処までが本当なんだか。
[食堂に人が居たなら其処で、男は続けて伝える。
一つの希望が、其処から無くなった事を]
――ベアトリーチェは、死者を判断する力を持っていた。
真実だ。
[何か言われたら、その都度返事はした事だろう。
だが、暫くすると、男は家に一度戻ると言った。
部屋は荷物があるからそのままで頼むと、アーベルには伝えた。
一晩を過ごすのは、自宅で。
視線はあったけれど、男は気にも留めずに。
本の積みあがった机から取り、ベッドの上で読む。
何度も読み重ねたページは、擦り切れている。
タイトルの無い、本]
[翌朝の目覚めは、早かった。
タイトルの無い本は小さな袋に入れ、宿へと持って行く。
そんなに早くから、珍しくも起きている事に何か言われたりしたら、
笑って返す]
寝れてねーの。
[白に走った赤い色が、脳裏に*こびり付いている*]
[ウェンデルの言葉が食堂を滑る。
ベアトリーチェの死を伝えられた時よりも
その能力を伝えられた時の方が、
ゲルダの目は、見開かれたのだった。
胸元で手を握る。
落ち着かない様子で視線を泳がせてから、
俯いて、地面を見詰めた。
ぎゅ、と寄せた眉に、想いをすべて閉じこめて。
[やがて部屋へと戻るのは夜も更けた頃。
しんと静まる洞窟内に流れる冷たい空気。
目を閉じて背筋を伸ばし、手元に銀に光る針を携え、
随分と長い時間を過ごしたあと。
ゆらりと上げた手をゆっくりと、下ろす。
糸の波が色とりどりな線を産み面を埋める。
途中少しも手が止まることは、無い。
まるで空気の流れすら織り込むように手を動かし、
終わったときには、ひどく痩せた気が、した]
[出来上がったものをロミとミリィの布の横に並べ。
こほ、かは、と数度、乾いた息を吸って吐いた。
喉元を、手で撫ぜる。
掠れた音が出ただけで。
吐き出した息は、ひどく、重かった*]
─ 宿屋・食堂 ─
ん、じゃ、何か食べたら、って事で。
[カルメン>>33に頷いて返す。
独り言のように漏れる思考には、僅かに思案の色を覗かせて]
……ま、泉に行く途中の道はああだったし……まだ、通れないかも知れないしなぁ。
[そんな予測をぽつりと述べて。
食事の準備ができたと知らされたなら、多少無理してでも、胃に入れた。
食べておかないと持たない、という意識は常になく強かったから]
[ベアトリーチェの死──『処刑』が自衛団から伝えられた>>43のは、その後で。
聞かされた理屈に、翠は瞬くものの何かいう事はなかった──できなかった。
けれど、その後に、ウェンデルからもう一つの知らせ>>50が齎された時は、やや、表情を険しくして]
死を持って、判ずる者がいなくなった……と、なると。
[殺めた相手の真偽は、文字通りの闇の中、という事になる]
……きっついな。
[ぽつり、と呟く。
誰を選ぶか、という二重の選択。
その難易度がまた上がったな、と、息を吐き]
─ 食堂→自室 ─
[ふる、と首を横に振る。
とりあえず、眼前の約束を、と。
意識を強引に、そちらへ向けた]
……俺、部屋に戻ってるから。
都合のいい時に、来るといい。
[カルメンに短くこう声をかけ、部屋へと戻り。
一時、一人になると、は、と短く息を吐いた]
……とっかかりが、なさすぎる。
[全くない、わけじゃない、が。
その要素は、見極めるに足るとは思えない。
ならば、自分の出せる手で要素を増やすべき……では、ある]
賭け、だが。
闇雲に動くよりは、マシ、か。
[小さく呟き、ベッドに腰を下ろして。
手に取るのは、異国の装飾の施された横笛。
自身の気を鎮めるため、そして、鎮魂を願うため。
ゆるり、紡ぎだすのは穏やかな調べ。**]
― 宿屋/食堂 ―
ええ、じゃあ後で。
[ライヒアルトと食後の約束をして腰を浮かせた。
漏れた思考に一瞬動きが止まる。
何処かで考えないようにしていた一件。
ヨハナとギュンターの姿が浮かんで、蒼が揺れた]
そうかもしれないね。
[ぽつ、と返すは独り言のように小さく。
ゆるとした会釈を残して女はカウンターへと移動する]
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