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― 広場・露店 ―
うるさいうるさーい!
それも遠まわしな説教じゃねぇか。
[ぷいっと、頬を膨らませて少女は横を向く。
ひらりひらりと、花弁が舞い黒が更に目立つ姿。
チラ、と横目でライヒアルトを盗み見るようにしてから
イーッと歯を向いた。]
ああ、俺は話を聞きに行っただけだぜ?
売られたケンカは丁重に返品してる。
[とは言え手荒であることは間違いは無い]
[呼び名を指摘されると]
名前までは聞かなかったんでな。
一応俺も名乗っておくか。
ヴィリー、ジャーナリストだ。
[名乗る前に右手で咥えていた手巻きタバコを摘み]
[ピンっと上へと弾き上げる]
[弾かれた手巻きタバコが顔の横辺りまで上がると、煙も出さずに燃え尽きてしまった]
[巻き添えで宙を舞う花弁が数枚共に燃え尽きる]
で、そのアーベルは何をしてたんだ?
……カヤ、また何か悪さしたの?
[カヤの耳に顔を近づけて、小声で囁いた後]
ええ、おかげさまで。
え?あ、あははー。入手ルートは本来は企業秘密なんですけれど。その……とある人から譲り受けたんです。
で、でもっ。物の良さは保証しますよ。もちろん修道士さんほどの方でしたら、この壷の価値がわかりますよね。ね?
[表情を崩した後、極上のスマイル]
じゃーなりすと。
[思いっきり、棒読みになった。
心情はその口調が全て物語っている。
かも知れない。
無空で燃え尽きた煙草と花弁には、蒼の瞳を不思議そうに瞬かせ]
何って……。
[自衛団長から逃亡中、とは、さすがに言えず。
それからふと、手に持ったままの帽子に視線を落とす]
落とし物……っていうか、拾い物の、持ち主探し?
まったく、変わらないねきみは。
[呆れたような微笑ましいような、といった笑みを口許に作り、騒ぐ声を横目で見やる。
その後すぐに壺に眼を戻した為、その後の行為には気付かなかったのか、或いはそういう振りをしたのか]
― 広場・露店 ―
してねぇ!してねぇよ?
いっつもこいつとかいちゃもんつけんだよ!
[一番最近怒られたのはスリを見つかった時。
逆恨みを続けて、ベッティに同情を求めた。]
そうか、残念だ。
[秘密と言われ、言葉の通りに息を吐いた。
どうやら本気に受け取っているらしい]
ぼくはそれ程目利きではないけど…そうだね、いい色だ。
三千五百年前の物にしちゃ、形もしっかりしてる。
[そこで真偽を疑うという思考は、残念ながら彼には無かった]
[信じられないような口調にやはり楽しげに笑いが漏れる]
[相手の反応を面白がっているの分かることだろう]
[言ってることは事実だが、これにより嘘をつかれていると思う者も少なくない]
へぇ、彼女へのプレゼントを抱えて渡しに行く最中なのかと思ったが、検討違いか。
持ち主探しとは優しいこって。
[ちなみに口にした検討はてきとーこいている]
[そんな話をしながら胸ポケットから新たに手巻きタバコを作るべく道具を取り出し]
[手慣れた様子で補助器具に設置、手巻きタバコをくるりと作り上げる]
で、持ち主の検討ついてんのか?
[出来あがった手巻きタバコを口に咥え、パチンと指を鳴らす]
[音と共に手巻きタバコの先に火が灯った]
[それはいつもやっている何気ない所作]
そう。なら、アタシはカヤを信じるよ。
[じっとカヤの瞳を見つめて、笑顔]
[カヤが歯を剥く仕草に、微かに口元を上げる]
……本当、変わらないな。
[空を見上げ、無意識に口から零れた言葉は風に乗って街中へと溶け行く]
[楽しげに笑う様子に、俺、からかわれてる? と思いつつ。
彼女へのプレゼント、という物言いに、はあ? と露骨に呆れたような声を上げた]
何だよ、それ。
……だいったい、女とか、うるさいばっかだし。
[興味なし、と言わんばかりに肩を竦める。
当人の気づかぬ所で想われている可能性は無きにしも非ずだが、今は、色恋には興味はないようで]
いんや、全然。
そも、風で飛ばされてたの、拾っただけ……て。
[作り出された煙草の先に火が灯る様子に、一歩、引いた。
花弁を舞わせる風がふわり、周囲を取り巻く]
[壷に興味を抱いている修道士に、両手を組み瞳を輝かせて]
でしょでしょ!
これは本当に掘り出し物だと思うのよ……思うんです。まさに神の下さった、運命の出会い!これを逃したら二度とめぐり合えませんよ。
今なら、そうですね……。
[頭の中で高速計算中]
本当は銀貨300……と言いたい所ですけど、特別に知り合い価格で銀貨200枚でお譲りします。いかがでしょう?
…そんなにぼくが嫌なら、今後一切のことは全て神父様にお伝えするようにしましょうか。
叱られたくないだろうと思って、結構黙っていたんですけどね。
[何故か丁寧口調で咄々と語る。
視線は壺に向いているが、隣に向けて語っているのは明らかだった]
いやぁ、女物の帽子に見えたもんでな。
その様子じゃ全く関係無かったようだ。
中には静かな良い女も居ると思うがねぇ。
[全く興味の無さそうな相手に大袈裟に肩を竦めた]
はン、当ては無しか。
どうやって探すつもりなんだか。
ま、精々頑張りな。
[火が点いたことに一歩引き、周囲の風が動く様子にくつりと笑う]
[そんなことはお構いなしに、軽く声をかけて相手の横を通り過ぎようとした]
300を200…
[視線を彷徨わせ、暫し黙考する素振り。
少し眉を顰め、眼を戻した]
少し高いな。
150枚じゃ駄目かい。
[人差し指を立て、店主たる少女に交渉を試みる]
女物に見えたからって、なんでそうなんだよ……。
[大袈裟に肩を竦める様子に、わっかんねぇなぁ、とかぶつぶつと言いつつ]
アテないけど、拾っちまったんだもん、探さないわけにはいかねーじゃん。
持ち主が街にいるなら、けっこ、何とかなるし、さ。
[軽い言葉に返す声。それがやや引きつっているのは煙のせいか。風は、それを阻むように流れているけれど。
通り過ぎようとするのを引き止める謂れはなく、もう一歩、後ろに引いて]
言われなくたって、頑張るってーの。
[漂う微妙に険悪な雰囲気に、内心はらはらしながら二人の顔を交互に窺う。金額を提示されると]
ひゃ……
[思わず出かけた声と笑みを慌てて手で押さえた。頑張って渋い顔を作り、唸り声を上げ]
うーん。これでも随分お安くしてるんですよ。そうですね。180……いえ、思い切って170枚でしたら。どうでしょう?
[修道士の目を見つめ、笑顔を作って首を傾ける]
[相手の返答に、後ろ手ながらひらりと右手を振ってその場を立ち去った]
……あの呆けた顔。
アホ面。
[紫煙を纏わせながらくつくつと笑い、呟く]
[しばらくは玩具認識が続きそうだ]
[そのまま人の合間を縫うように移動し、広場へと足を向ける]
─大通り→広場─
8人目、行商人 ハンス がやってきました。
流石にこの区画に女の子を連れてくるのはね。
[下町の中でも昼間は眠っているような一角]
[まだ閉店中の薄暗い店の中]
[ひょいと肩を竦めた]
俺でも躊躇いますって。
はい、頼まれていた分。
[持ってきた木箱を女に手渡した]
[引き換えに硬貨の入った小袋を受け取る]
ひのふの…毎度。
花祭りの間は居るから、何かあればまたよろしく。
[休んでいけばいいのにと引き止める声]
[待たせている相手がいるのだからと笑って背を向ける]
[馬鹿、という声は聞こえない振りをした]
……っていうか、ホント。
みょーなおっさん。
[どんな認識がされているかなど、知る由もなく。
こちらもこちらで、勝手な事を呟いて]
ってとぉ。
成り行きとは言え、拾っちまった事に変わりねーし。
真面目に、持ち主探すかぁ。
[軽く、身体を伸ばしてからこう言って。
風を引きつれ、*通りを進む*]
─広場─
[相も変わらず広場は賑やか]
[異色の姿は時折視線が向けられるのも気にせず歩みを進めて]
……あいつぁ何やってんだ?
[露天商と睨めっこをしているような友人を発見]
[無造作に近付いて、友人の後ろから露店を見下ろした]
[少女の一瞬の笑みには幸い気付かなかった様子。
提示された金額に洩らした唸りは恐らく演技には見えない。
壺と少女を交互に見つめ、やがて息を吐いた]
そこまで言うなら仕方ない。
釣りはあるかい?
[革袋を引っ張り出す。
その中から真新しい金貨を2枚取り出すと、台に置いた]
[足早に下町を後にする]
[囲む空気は表通りに出ると一変した]
さてと。
後は適当に捌いて祭りを楽しみましょうってね。
誰かさんはどうしたかな。
[花壇に咲き誇る花を愛でながら]
[ゆっくりと表通りを歩いてゆく]
ありがとうございますー!
ええ、はい。いますぐお釣りを。
[置かれた金貨の輝きに目を奪われた。と、新たな客らしき男の到来に顔を上げる]
あ、いらっしゃいませ。
どぞどぞ、見るだけなら御代はいらないですよ。どんな品物をお探しです?
あれ……お客さん、どこかで会ったことあった?
[少し首を傾げ、客の顔を見つめていたが、やがて銀貨のお釣りを出そうと]
[直後、気配に振り向いた彼は、友人の姿に笑みを作った]
やあ、ヴィル。
何か新しい情報はあったかい?
[片や修道士、片や異邦人。
並ぶと異様な光景だが、当人はまったく意に介していない。
ついでに隣の呟きは聞き流したようだ]
……大半がガラクタか。
興味ねぇな。
[呟いたのは露天商が己に声をかけた直後]
[むしろ最後っ側の言葉に被っていたかも知れない]
[どこかで、と言われ露天商に隻眸を向け]
さぁて、俺も色んなところ出歩いてるからな。
流れの露天商なら別の街で見かけたことはあるかもしれん。
[紫煙交じりに言葉を向ける]
[友人が己に気付くと手巻きタバコを右手で摘み、大きく紫煙を吐いてから]
特には。
チンピラ共じゃ話にならん。
[その言葉から何をしてきたかは想像に難くないだろう]
お前こそ何してんだよ。
んな露店なんざ覗き込んで。
[真っ黒な顔の少女は、隻眼の男を珍しそうに、見上げる。
くい、と鼻を親指で擦って首を傾け]
あんま見ねぇ顔だなぁ?
でもコイツラと知り合い?あんた、誰?
俺はカヤだ。
[自分より背の高い男の顔を覗きこみ、
白い歯を見せてニカッと*笑った*]
[新たな客の発した最初の言葉が耳に届くと、むっとして口を尖らせ、慌てて営業スマイル]
じゃあ、どこかの街で見かけたのかもしれないね。
……おや、修道士さんのお知り合いですか。
えっと、今の交換レートだと。いちまい、にまい、さんまい……
[修道士の前で、用意した釣りを一枚一枚積み上げていく]
商談の最中か。
俺が行くと邪魔になるかな。
[広場に入れば連れは客と話しているようだ]
[少し離れた場所で様子をうかがってみる]
おいおい。
品物全部買うつもりか、彼は?
[金貨が見えて目を瞬いた]
[流石に心配になってきて露店の方へと歩きだす]
あン?
[声をかけられ見上げて来る子供に気付く]
[今まで視界に入らなかったのはその身長さ故だろうか]
[友人に、何だこいつ?と指差して訊ねつつ]
俺はこいつのダチでヴィリーってんだ。
そっちの露天商はどっかで見かけたかな、程度。
[友人と露天商のことは親指で示しつつ、名乗られたために一応名乗った]
その様子だと、またやらかしたのかい。
程々にしといてくれよ。
[仕方ないといった風に肩を竦め、友人を仰ぎ見た]
そこのきかん坊を追い掛けてみたら、良い品を見つけたのさ。
[手は隣の煤けた姿を示し、次いで壺を示すように動く。
先のガラクタという言葉は聞き流したのか、当人は満足気だった]
手を出してきたのは向こうだぜ?
正当防衛だよ。
[窘めるような友人の言葉もどこ吹く風]
[己を正当化して反省する気配は見せない]
きかん坊ね。
……これが、良い品?
[示された壺に隻眸を細めた]
[疑わしげな口調と視線]
ああ、元孤児院の子だよ。
今は自警団長のとこにいる。
[説明を求められ、無難な返答。
当事者から何らかのリアクションが向けられたとしても、涼しい顔で流しただろう。
銀貨が積み上げられる横で、よもや別のところで心配されているとは思わない]
[修道士のやらかしたという言葉を聞けば、胡散臭げにヴィリーと名乗った見やる。心の中で危険人物に認定した]
良い品ってのは、わかる人にはわかるんです。
ヴィリーさんも、良い物に触れてもっと目を養うといいですよ。
[にこにことスマイルを浮かべたまま、銀貨を積み上げる]
孤児院…ああ、お前んところのか。
[煤だらけの子に関して説明されると、納得の意を示して]
[露天商には疑わしげな表情をしたまま]
生憎と色んなところを巡ってるお陰で眼は肥えててな。
ちなみにこれはいつ頃の作だ?
[親指で壺を示し、営業スマイルのまま銀貨を積み上げている露天商に訊ねかける]
度が過ぎれば過剰防衛になるよ。
[友人への指摘はやはり微妙にズレていた。
壺に疑わしげな目が向いたことに、小さく首を傾げる。
しかし横からの少女の声に頷いて見せる辺り、騙されている可能性とかは頭にないらしい]
ああ、持ち合わせの問題か。
[用意されている釣りはどう見てもありえない額だが]
[買い手が満足そうなので苦笑しながら近づいた]
良い品かどうかは買い手によっても変わるもの。
ですが、ベッティ。
[隻眼の人物には柔らかな声をかけ]
[ただいま、といいながら共に旅する少女を見る]
イキシアは俺にとっても拠点。
そのことは忘れずに?
……えっ。
[ヴィリーの言葉に、笑顔が一瞬引きつった]
さ、三千年以上前の物ですよ。ここよりずーっと東の地方で出土した逸品です。この底の方にある文様に特徴があってですね
……っと、師匠!おかえりなさい!
あ、あははー。そうですね。何だか今日は気分がいいから、もう少しまけたくなってきちゃったなー、なんて。
[笑顔のまま、すすす、と金貨を一枚、指で修道士の方へ]
だが利益を考えつつ相応の値で売るのが商人ってもんだろう。
高額吹っかけて利益を出す奴は悪徳商人だ。
[急にかけられた柔らかい声にはまず反論を向ける]
[それから遅れて隻眸は声の主へと向き]
……アンタならそれが分かってると思ったが。
[見覚えのある顔にそう言葉が続いた]
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