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[建物へと向けて歩きつつ。
呟かれた言葉に、はあ、とため息一つ]
……いや、寝込みはいくらなんでもまずくね?
あの放送からするに、派手に立ち回る方がお好みっぽいし。
つまんねぇ理由で勝負ナシになっても、ややっこしいだけだと思うが。
[楽しい楽しくない、には、突っ込まないらしい]
あー…いや、何でも。
純粋に、驚いただけで。
[小さく肩を竦めながら、ずり落ちかけた藍苺をもう一度肩に乗せてやると、重力の作用で細くて長い尻尾がぷらんと揺れた]
…いや、放送が、よ。
…放送っつうのかよくわかんねえけど、とりあえず聞いただろ?
お前だって。
[同意して欲しいのか、して欲しくないのか、その辺の答えは自分の中だけに。
とりあえず、問いかけることから始まった]
…………。
[建物の内部は空調が効いているとはいえ
真冬に湿った検査着は寒くて…さすがにもう乾いてはいるようだが
少女は小さくくしゃみをする。]
…ック、あはは!
[じゃんけん、という単語に一瞬ぽかんとした後。
堪えきれずに噴き出して笑った]
ああ、そうだね。
それだって立派な戦いだ。
[他の人々の様子を窺いながらも、右手で軽く眦を擦った]
[きっと、イレーネの返答を聞いていたら、力も抜けていたのだろうけれど。
姿を現したティルと入れ違いに広間を出てしまったから、知ることはなかった。
オトフリートの告げた台詞も、耳にしていたかどうかは怪しい。]
派手に立ち回る、かぁ。
どこか、コロッセオとかあるのかな?
それとも、どこでも見られてる、のかなぁ。
勝負ナシになるのは、確かにっ!キミ、やっぱり賢いねぇ。
[あはははは、と心底楽しそうに笑いながら、そろそろ建物が近く見えてきただろうか?]
[部屋に戻るというブリジットを、そうですかとだけ言って見送った後、イレーネの言葉に僅かに目を細めるが、続いたじゃんけんという言葉にふぅと気を抜くと]
じゃんけんでよければお相手しますが。
ああ、ティルさんでしたっけ。こんばんわ。
[笑うティルにはこちらが呆気にとられて]
戦うって、勝ち負けを決めるんでしょ?
他にどうやって決めるの?
[サイコロとか、そういうものの存在も彼女は知らない]
[相手をする、と言うナターリエに向き直ればにこっと笑い]
やろ、やろっ。
せぇの、じゃーんけーん――。
[1、2:ぐー 3、4:ちょき 5、6:ぱー]
{2}
そんなモンはなかったと思うが。
とはいえ、ここ全体が、でっかい舞台……って言っても良さそうだしな。
[変化に富んだ地形、気候。
明らかに、様々な状況を『演出』する意図を感じるそれら]
今朝のあれだって、どこにいても聞こえたんだろうし。
向こうは全域、お見通し、ってとこじゃねーかな。
[そのわりに、個室に監視ナシなのは余裕なのかなんなのか]
や、だから、賢いって問題じゃないから。
[楽しげな笑いに、やっぱり突っ込みを入れた頃には、建物の前までついていたか]
驚きすぎだと思うんだけど。
そりゃ、隣だとは思ってなかったけどさ。
[相手が竦める様子に、小さく苦笑しながら。
その肩に居座る友人の尻尾が揺れる様子に、薄く笑むと
軽く一撫でしようかと、手を伸ばして]
――…ああ、アレか。
まぁ…うん、聞いたよ。
[投げられた問いに、翠をゆると瞬きながら肯定を返す。
呆れ混じりの吐息こそ零すものの、
そこには危機感も、緊張感の欠片も見当たらずに]
…もしかして、それで凹んでる?
[はしゃぐイレーネに笑みを浮かべると]
はいはい、じゃーん、けーん……
[1、2:ぐー 3、4:ちょき 5、6:ぱー]
{5}
勝ち負けはそこら中に転がっているよ。
早食いでも、駆け比べでも。
[ナターリエの言葉には軽く頷いて。
呆気にとられているイレーネに笑って答えて]
でもじゃんけんは確かに楽でスマートな方法だね。
あいこが続くと時間が掛かるかもしれないけれど。
[勝負の行方を面白そうに見ていた]
[イレーネのじゃんけん勝負は先程までの雰囲気を払拭する程和やかに思えて。
思わず柔らかい笑みが漏れる。
広間を出るブリジットを気にしつつも、しばしじゃんけんの様子を眺め見る]
随分と無垢な方がいらっしゃいますね。
[しかしこの少女も既に『遊戯』の参加者に数えられている。
果たしてこの和やかさはいつまで続くのか]
お見通し、かぁ。
ボクはいいけど、ご主人様の機嫌が悪くならないといいなぁ。そゆの好きくなさそーっ。
[言いながら、玄関の扉に手をかける。]
たっだいまー♪
[上機嫌に声をあげると、広間の方から人の話し声が聞こえる。
きょと、と一度アーベルを振り返りつつ、広間へと向かった]
―→広間へ―
[自分の振り下ろした手と、ナターリエの手の形を見比べて]
――負け、ちゃった。
[ちょっと残念な顔をして、自分のぐーを見詰める]
一度負けたらもう他の人とは戦えないの?
[ティルの方を見て。
暗に『あなたとは戦えないの?』と問いかける]
そこまで考えてる奴らじゃねーだろ。
[そも、人の感情など考える集団ではない、というのが、自身の印象。
その印象のままにそう返して。
広間から聞こえる賑やかな声に、す、と蒼を細めつつも、自分も広間へ足を向けた]
─ →広間─
ああ、まったく。
…悪趣味なことだよ。
[後半は小さな声で。注意していなければ聞こえない程度だろうか]
おや、おかえりなさい。
[和やかな雰囲気にあわせるように。
広間に入ってきたユーディットにも軽く返した]
[何かから逃れようとするように、階段を駆け上る。
鞄のポケットから覗く飾りが揺れて、音を立てるのが、煩い。それは「日常」の名残にも思えたけれど。
二階に到達して――そのまま部屋に向かおうとして。
先にいる人の気配には、気づいていなかった。]
早食い、駆け比べ。
果物なら、勝てる――かも?
走るのは――飛んじゃ駄目?
[飛んでもきっと、アーベルには負けちゃうかなとか。
ユーディットは結構早かったなとか、そんな事を考えたろう]
おや、残念だったね。
一本勝負ならここで終わりだと思うけれど。
[イレーネに右手を出して]
まだできそうならいいんじゃないかな?
諦めなくても。
[やるかい?というようにかるく振った]
まさか廊下に出ていきなり人に会うなんて思ってねえもん。
[伸ばされる指先を視線で追えば、それは猫のほうに伸びて、まぁ猫のなんと気持ちよさそうなことか]
…やっぱ、俺だけじゃないんだ。
[小さく零れた声は少しだけ気落ちしたようかもしれない。
だからこそ、理由を当てられればなんともいえないような顔して頬を膨らませ]
う、うるさいな。
凹んじゃ悪いのかよ。
[己の言葉に返答したティルの後半の言葉は聞こえていなかっただろうか。
仮に聞こえていたとしても、表情は特に変わらなかっただろう]
ユーディット様、アーベル様、お帰りなさいませ。
[広間に現れた姿を見てお辞儀をする]
その辺は相手次第かな?
僕なんかは飛べないから、ハンデが欲しいところだ。
[チラリと後から入ってきたアーベルを見ながら。
あくまでも軽く返していた]
できる、できるっ。
今度は負けない、よ?
[翼をはたはたと振り、再度右手を上げる]
じゃーん、けーん――。
[1、2:ぐー 3、4:ちょき 5、6:ぱー]
{3}
─広間─
[広間が賑やかなのは何故なのか。
入ってみたなら、妙に納得したかも知れない。
オトフリートの挨拶には、よ、と言いつつ手をひらりと振り。
ティルの視線には一瞬、微かな笑みで返すに止めた]
あは。
何してるのぉ?
[ティルやオトフリートに笑顔を向けながら、ふと、ナターリエに視線を移し]
あ、初めましてぇ、だよねぇ?
ユーディット・クリューガー、です。
[にっこりと笑い、両手でスカートをちょいと持って腰を落とし、お辞儀をする。]
[先程まで耳をすます為じっとしていた少女が、
俄かにキョロキョロと周囲を見渡して。]
…………。
[目に写るのは階段。]
[でも、今の声はこっちじゃない。]
…………。
[少女は階段に背を向け、
廊下の十字路になっている部分へ足を向ける。]
僕だって、思ってないよ。
[気持ち良さそうな猫の顎下を指先で擽って。
一度ゆるりと身体を撫でてやると、満足そうにゆるりと手を離し]
…少なくとも、この建物全体には聞えてたんじゃないかな。
外はどうか、知らないけどさ。
[内容的にも、多分ね。と、軽く首を傾げながら、ぽつりと呟いて。
気落ちしたような相手の声色に気付くと、小さく苦笑を零す。]
別に。…凹んでも良いんじゃない?
むしろそういうのに凹んでる方が、フェイらしいし。
――ただ、ずっと凹んでたって、なるようにしかならないんだからさ。
[もっと気楽にしてたら? と小さく笑って。]
イレーネ様がじゃんけんをすると仰いまして。
ナターリエ様とティル様がお相手になっていたところですよ。
[訊ねてくるユーディットに簡単に状況を説明して。
イレーネとティルの勝負を見やる]
あらら、またイレーネ様が負けてしまいましたね。
[少女は一人、今まで感情の乏しかった面に
やわらかい笑みを浮かべ…それを見るのはおともだちだけだったが
半ば駆け出すように廊下の十字路に出
気がせくように、くるり。周囲を見渡して。]
[ユリアン以外にもう一人、人物がいるのなんて
まったく気にしない、まったく躊躇わない。
まっすぐ…駆け出すようにして、一気にユリアンの元へ。]
…………!
[白い頬は淡い桃色に。少女は先程よりも強い喜色を浮かべ
ユリアンにタックルをする。]
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