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―翌朝/黒珊瑚亭―
……誰か、シーツか何かを…。
先生を、運んであげないと…。
[どのくらいそうしていただろうか、
誰かに声を掛けられれば、どこか焦点の合わない瞳のまま、
ゼルギウスの頭部をそっと降ろして。
服と体をゼルギウスの血に染めて、運ぶ手伝いを求めた]
― 回想/二日目夜 ―
[部屋に閉じこもったあとで扉をたたく音が聞こえる。
それがゲルダからはなれてどれだけ時間がたってからかも考える気になれないまま]
――だれ……
[泣いて擦れた声で、ぽつりと零す。
扉の外にいたアーベル>>107がその声を拾ってなのりを返すのにゆるりと瞬き]
アーベル……
ゲルダ、しんじゃった、ね……
[扉まで近寄ったもののあけることなく言葉を紡ぎ]
あした……には、なんとか、平気な顔、するから……
[だから、ごめん、と呟き。
扉は開かぬままだった]
─ 昨日/黒珊瑚亭 ─
[はらはらと零れる雫は枯れることなく。
ゲルダから零れ出た紅で染まった手を見詰めたまま、かけられた声>>75を聞いた]
─── こうするしか、なかったのです。
時間になってしまえば、それまでに決められなければ。
自衛団の方々がどんな行動に出るか……。
それでは護りたい者を護れません。
あの子達を 護れません。
[誰が居て、どんな風にその言葉を聞いたかは知れない。
睡眠も取らず、食も得ずに居た身体は当然のように思考力を低下させていて。
それが凶行に走らせた原因であることに気付く者は居たかどうか]
人だと判っている者を護るためにも、こうするしか ───
[うわ言のように紡がれる言葉。
それはそこで一度途切れる。
怪我の確認のために腕を引かれれば、それに逆らうことなく動いて。
その際に紅に染まったゲルダの部屋から連れ出されることになった。
タオルを渡され手に付いた紅を拭って、それからゼルギウスの手により傷の治療が為される。
傷は腕や背中などへの打撲と、頬や手に付いた引っかき傷。
幸い、ナイフは自分の手から離すことが無かったため、それによる傷を受けることはなかった]
[治療を終え、目立つ紅だけはきちんと拭い取り。
問われることには答えるが、夜が更けると教会へ戻ると言い出す。
引き止められても泣き腫らした目をした顔を緩く横に振り、深く一礼した後に黒珊瑚亭を後にした]
─ 昨日/→教会・聖堂 ─
[夜だったこともあり、外は出歩く者も少なくて。
鉄錆の匂い纏う姿であっても嫌悪の視線を受けることはあまり無かった]
[教会へ戻ると一度自室へと向かい、修道服を着替えてから聖堂へと入る。
祭壇の前に膝を付くと、昨日と同じように両手を組み祈りを捧げた。
不思議なことに空腹や睡魔は訪れて来ない。
祈りの姿勢になり、小声で聖句を紡ぎながら夜明けまでを過ごした]
― 二日目/黒珊瑚亭 ―
[自衛団が決めた期限が迫るのを感じながら過ごす時間。
誰を選ぶか悩むのは何が最善か分からないから。
エーリッヒのいうように>>91自分なりの答えを出さねばならない。
思考を巡らせ信じたい生きて欲しいと願うものを選択肢からはずし
思い浮かべたのは繋がりの薄い島の住民だった。
ユーディットとは親しい友人であったように思う]
――…誰を選んでも、誰が選ばれても、
悲しむ者がいることには変わりないんだよな。
[身寄りのない子供たちでもきっとそれは同じで。
そんなことを思えば席を外したナターリエの事が気になったが
探しにゆくほどの行動力はなくその場に残っていた]
― 二日目/夜 ―
[五号室の寝台に座り、男は盛大に溜息を吐いた。
父から教えられたまじない。
母を守るためにあった其れ。
細工師であった父が作ったであろうアミュレットには
銀製の枝葉に珊瑚で出来たローズマリーの花が咲く]
――…。
[指の腹にのる程度の小さなアミュレットを掌に置き
じ、と見詰めて、それから思案するように目を閉じる]
守りたいものは沢山あるのに……
なんで全部守れないんだろうな。
[ゆるり首を振り再び目をあけ前を見据えた]
― 二日目/夜 ―
[部屋を出て廊下を歩む。
エーリッヒの部屋の前までくると立ち止まり
人気が無いのを確認してからアミュレットの紐をドアノブに括りつける。
継ぎ目のあたり目立たぬように施す細工。
父から教わったまじないを口ずさんだ]
……一人で泣くなよ。
[泣き出しそうなあの表情がちらつき立ち去り際に零す言葉。
微かな響きは宵闇にとける。
細工は夜の間そこにあり、早朝になればまた持ち主の手許に戻った]
― 翌朝/黒珊瑚亭一階 ―
[エーリッヒ>>109がきて、ゼルギウスの目を閉じさせるまで、その瞳が開いたままであったことにすら気づかず。
震える手はまるで昨日のカルメンのようで、ただぎゅう、と自らの手を組み合わせて握り締めた。
カルメン>>125に視界をふさがれてゆるりと瞬き]
かる、めん……?
役目、って……
[駄目だといわれても、動く事もままならないから。
ぼんやりと問い返した]
― 前日夕方/黒珊瑚亭 ―
[それは確かに知ってる人の声だったのに、
全然知らない声にも聞こえて戸惑った。]
…ナタねー?
[鳴き声や嗚咽は不安をくすぐり、
子供も不安そうなまま、するりと廊下へ向かっていった。]
うわ、なんだこれ、肉屋くせー…。
[村で精肉を扱う店の前を通った時と、同じ匂いがして顔を顰めた。
子供は後のほうにきたらしく。
いろんな人が其処にいたせいで、奥の様子はよく見えなかった。
仲間と呼べるロミが、知らない大人に宥められていて、
よくわからない不安は余計につのったが。]
─ 翌朝/教会・聖堂 ─
[昨日同様、夜明けを聖堂で迎え。
ナターリエは伏せていた顔をゆっくりと上げる]
………主よ……。
[呟きは短く、顔は目の前の像を見上げた。
その上、ステンドグラスからは弱いながらも光が降り注いでいる]
[昨日泣き腫らした目はある程度治まっていたものの、連日の睡眠不足で疲れた目元は隠せなくなっていた]
……あぁ、今日も、また……。
[人の死ぬ日がやってくる。
人狼に襲われる者と、人の手によって殺される者が現れる。
1人を手にかけたことで、もう既に後には引けぬ状態になっていた]
[ゲルダを刺したナイフは彼女の胸に残ったまま。
籠も落としてきたために手元にひとを傷つけるものはない。
黒珊瑚亭へと向かう前に、自室へと戻り出かける準備をした。
別の籠の中に忍ばせるのは昨日と同じ形状のナイフ。
何本も持っているわけではなかったから、部屋にある分はそれが最後だった。
聖職者が持つには似つかわしくないものを籠に潜め、それを手に自室を出る。
途中、神父と顔を合わせることとなったが、弱々しく笑み頭を下げるのみでその場を辞した]
─ 翌朝/→黒珊瑚亭 ─
[島民の冷たい視線に晒されながら、黒珊瑚亭へと向かい足を踏み入れると、入って直ぐの床に紅いものが長く伸びていた。
それが伸びる先へと瞳を向けると、人が数名居るのが見える]
……どなたか、襲われたのですか?
[問う声は然程大きくはない。
紅く染まる床を避けるように進み、人の集まる場所へと歩み寄った]
― 翌朝/黒珊瑚亭 ―
[差し伸べられた手をぎゅ、と握り返す。
カルメン>>130に支えられてよろよろと立ち上がり。
ゼルギウスに近寄る前に立てなくなったから汚れてはいないけれど、震える手はおさまることなく]
……ありがと
[笑みを返そうとして、くしゃりと顔が歪む。
いままでに亡くなった人を見た事がないわけじゃない。
それでも、ゲルダの、そしてゼルギウスの死に様には衝撃をうけるしかなくて。
上手く笑顔を作れなかった]
─ 昨日/教会への帰り道 ─
[帰り際、紅を綺麗に拭い取った手を小さな手が掴んだ>>133。
引くその手の主を見て弱く微笑んだのは一瞬。
ナターリエの表情は憔悴したような状態を維持していた]
………。
[訊ねられた直後>>134、直ぐには声が出て来ず、しばし反応に間が開く。
何度か言葉を紡ごうと唇が動くが、音としては発されず。
働きの悪い頭の中でカヤへの説明を整理していた]
……誰か、1人、 疑いのある人を、殺さないといけなかった、から
私が、選んで ────
[そこまで言って、喉を詰まらせる。
言葉を紡ごうとして唇だけが動き、またしばしの沈黙が流れて]
── 私、 には、護る義務が、あるか ら っ……!
[手に蘇る刺した時の感覚。
繋いだ手が震え、手を握る力が強まった]
― 翌朝/黒珊瑚亭・1階 ―
[その夜、ゼルギウスの部屋を訪ねて痛み止めを分けて貰った。
火事の熱気にやられた気管は治りが遅い。街で処方されていた分も見せて、他の者には言わないでくれるよう頼んでおいた。
朝の目覚めは相変わらず遅い。けれど悲鳴が聞こえれば流石に目は覚めて。一番近い部屋を借りているのに、少し遅れて一階へ降りた]
先生か…。
…俺が聞いてこよう。
[カルメンには>>125どう反応したものか分からなくて無表情になり。
まずはカルメンの代わりに>>130エーリッヒの求めに>>111応じようかと、ゼルギウスの無残な姿は遠目にしただけで踵を返そうとした]
─ 二日目 夕刻 ─
[ナターリエの事はゼルギウスやヘルムートに任せるのが良いだろうと、足を止める事無くゲルダの部屋へと入っていったから彼女が零した言葉>>114を耳にすることは無かった。
部屋の外、ユリアンが居るのは見えたけれどそちらにも声はかけず─かけられず。
カルメンが落とした呟き>>89も耳に捉えられず、エーリが彼女を気遣う声もどこか、遠く。
やってきた自衛団員に気付くまで、ゲルダの傍から動けなかったのだが]
…ちょっと、ユー坊の様子見てくるわ。
[ゲルダの身体が運び出され、空虚になった寝台に視線を落としたまま誰にともなく告げ。
その足で、ユーディットの部屋へと向かった]
─ 翌朝/黒珊瑚亭 ─
[歩み寄った先>>144で襲われた者の名を聞き、人が減っていくことで開けた視界にその姿が映れば、籠を持たぬ手が口許を覆い隠した]
ゼルギウスさん、が……。
[凄惨な現場を目にして少しえづくも、胃の中は空っぽ。
出るものが無いため惨事には至らなかったが、喉奥に酸っぱいものが込み上げた]
ゲルダさんは違った、と言う事なのですね…。
[被害が出たなら自身が手にかけたものは違ったのだろうと、単純な思考で言葉を紡ぐ。
昨日カルメンが口にしたこと>>89は耳に入っていない。
その余裕はありもしなかったのだから、当然といえば当然だった]
─ 二日目 夕刻 ─
……別に、いいんじゃねーか。
無理、しなくても。
その方がお前が楽なら、とめねーけど、さ。
…俺は。
無理してまで、笑うのは、きつい。
[そういった自分への返事はあったか、なかったか。
ごめん、という呟きにそれ以上言葉は重ねようと思えなかったけれど]
…俺こそ、ごめんな。
[開かぬ扉の向こう、少女へと向けた謝罪の意味は胸の内に秘めたままその場を立ち去って。
その足で部屋に戻った後、朝まで出ることはなかった*]
― 三日目朝/黒珊瑚亭 ―
[やってきたシスター>>138の声に、小さく震える。
ゲルダが死んだことを思えば、彼女のほうを見ることはできなくて。
カルメン>>144につれられるまま食堂の隅の席へと腰をおろす]
……ありがとう、ごめんね。
[人が増える気配を感じながらも、まだどこかぼんやりとしたままで。
父親がいつのまにか置いていったお茶にも気づかない。
庇いだてをしない父親はそれをすれば死が近くなるだけだと知っているかのように、何も言わぬまま。
食事を求める人がいるかどうかも気にせずに普段どおりに動いている]
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