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―台所―
[顔を洗って朝食でもと、台所に行くと誰もおらず、扉が開いたままだった。
薪か水かと思いながら、扉から外に顔を出すと、新雪にの上に残された足跡がいくつか西に伸びていた。
ああ散歩かと、内側に戻ろうとしたら、ずきと頭が軋んだ。]
痛っ…。
[痛みに顔をしかめて、もう一度外を見る。見れば痛みは襲ってこない。]
外に、いるのか?
[何が、とは口にはできなかった。]
―外・西の崖付近―
[たどり着いた時には、ハインリヒとエーリッヒが何やら崖を覗き込んだり、探しているような素振りだった。
予想はしている、分からないのは誰だという事だけ。
ゆっくり近づいて、下を覗いた。]
ローザ…。
[薄紅の髪と赤い血が、白い世界に鮮やかに広がっていた。そしてその上に揺らめくものは。]
――がう、ローザもちがう。
人狼じゃ、ない。
[はっきりと、今度は意思をもって呟くと、白い揺めきは、次の瞬間には消えた。暫く後に、ハインリヒの傍で何度か見かけることになる。]
[ローザの死が事故じゃない事は、胸のナイフが物語っていた。
小さなナイフは調理用のものではない。だが見覚えがあった。ごく近い間に。]
……あれって、どっかで見たことが。えーと……。
ああ。グラーツ殿が持ってたやつか?
[ぽんと手を叩き、エーリッヒを見て―――つまりはエーリッヒがローザを殺したのかという事に気づくと、青い顔で彼を見ていた。]
[それにオトフリートが返事を返した頃か。それとも埋葬を始めたころにか、ハインリヒがきて]
ハイン兄…さ…ローザ…っっ…ァ…
[新たな足音に振り向いて写ったのはハインリヒ。そしてナイフが刺さったままの状態で抱えられていたローザ。
足元が一瞬ふらつき、頭を抑える。予想していたといえばしていたけれど、でも不意に来た光景にはこたえた
触れさせたくないように大事にしている様子は昨日の自分を彷彿とされる]
ぁー…もう…なんなんだよ…
[吐き出すように呟く本音。でもきっと自分はこのままずっと*寝させてもらえないのだろうか*]
―一階・廊下―
[呆然とした頭の中に、問いが入り込んでくる。
玄関から視線を剥がし、フォルカーを見た。ゆっくりと、頷く]
そう、です。
僕の、片割れ。
ビー。
ベアトリーチェ
[拾ってくれたのだ、と、呟いた後で認識して、ありがとうと礼を告げる。
受け取ろうと手を伸ばして]
あ。
……僕は。
[少し言葉は詰まったが、玄関へ、広間へ、視線を交互にやって]
冷えてはいけませんから、広間に、行っていてください。
僕の事は、気にせずに。
[決めあぐねた声で、そっと*囁いた*]
─台所→広間─
[勝手口の外が騒がしい。ようやく食器を洗い終えて気付いたこと。けれど外を覗くことはせず、広間へと足を向けた。何が起きたかは想像がついたから]
今度は誰かな……。
[今日顔を見ていないのは誰だったか。顔を合わせたのはフォルカーのみであったため、確定は出来なかった。碌に思考は巡らさず、ソファーに座り、膝を抱える]
……フォルが無事なら、それで良い───。
[大事なものをもう失いたくない]
フォルが生きていれば、それで、良い。
[喩え自分が消えてしまっても。深層の意識を抑えられる唯一の事柄。これだけは、譲れない]
―少し前・西の渓谷―
[ローザの遺体の傍に降りる前、やってきたダーヴィッドが「違う」と言うのを、意味がわからないと思いながら聞く。
それは彼が何を知ることができるのかをしらなければ当然のこと。
しかし、昨晩広間でヘンタイだと騒ぐ中ライヒアルトのことも「違う」と言っていたようなことを思い出し、
もしかしたら、オトフリートと同じかもしれんと考えた]
当たり前だ。そうであって、たまるか。
[そう、自分に言い聞かすように呟いた。
しかし、ナイフの持ち主についてダーヴィッドが零した言葉にピクリと表情を歪め、エーリッヒを見据えた]
あれは、あんたのナイフなのか?
[どうなんだ、とはっきりと問いかけて。
自衛団員を呼んだのは、その後のこと―]
―エルザの墓前―
[ユリアンがローザの遺体を見て取り乱したように見えたのにも表情を変えず。
ただ、昨日のエルザの遺体の傍にいた彼の気持ちは、こうだったのかもしれないとは思いながら。
穴を掘り終えればそこへ横たえるためにローザの身体を抱き上げた]
きっと、生きてたら真っ赤になってるんだろうな。
[抱き上げたローザの冷たい頬に自分の頬を当てて、小さく笑う。
もう、真っ赤になって恥ずかしがる顔は見れないのだと思うと、無性に腹が立って、悲しくて。
涙を見せずに努めて冷静を装っているが、胸の裡は―]
野郎ばっかり残っちまったな。
[やがて遺体を埋め終えたなら墓標を見て苦笑した。
ライヒアルトの墓標もそこにあっただろうか。
それから集会場へ戻るすがら、密かに固めた決意から、
やっと口を開くようにはなっていただろう。
問われれば答え、自分も問いかけ。何としても*生き延びるために*]
―一階:廊下―
片割れ?
ハシェさんは……双子、ですか。
[緩やかに上がり、ウェンデルに向いた少年の眼差しは、先とは異なり、驚きを持って彼を捉えた]
――……そう、でしたか。
ここから、生きて帰って……………
会えると、いい、ですね。
[声に、視線に、羨望にも似た色が混ざりそうになるのを押し隠せたかは、少年自身にはわからない。
彼にしっかと手紙を渡したあと、指先は、知らず首元のブローチに触れる。
彼のいらえに頷きを返して、広間へと足を向けた]
―一階:広間―
[廊下に比べればマシだったが、暖かいとは言い難く室内。ソファの上、膝を抱える幼なじみのほか人気はなく、静かだった]
……レーネ、……………寝てる?
[尋ねるではなく、そうであれば良いと願うよう。
暖炉により、火を起こす。部屋の空気が暖められるまでは、まだかかりそうだった。
いらえの有無に関わらず、片隅に畳まれていた毛布を幼なじみの元に運び、肩にかける。
隣に腰掛けはせず、窓辺に立って外を眺めた]
─外・エルザの墓近辺─
[忘れてくれ、と言うユリアン。視線の動きに、一つ、頷いて。
続けて投げかけられた問いに、薄く、笑む]
……『見つけ』たので。
『成すべき事』を果たす……それだけです。
[返す言葉は淡々として、常とはどこか違う冷たさを帯びる。
実際には、内を巡るものが酷く沸き立つような心地がしていた。
今、口にした言葉は、身の内の力が何よりも欲するものだから。
けれど、それは冷たい笑みにざわ、と毛を逆立てた猫が甲高く鳴く声と、足を叩く感触によって打ち破られる]
─広間─
[体勢も体勢なために僅かばかり意識が落ちていた。意識を戻したのは肩に重みがかかったのに気付いた時]
……ん……。
[膝から顔を上げ、手の甲で目を擦る。かけられた毛布に気付くと、周囲に視線を巡らせ]
………フォル?
[窓辺に立つフォルカーに気付き、声をかけた]
……っ……ああ、ユエ。
大丈夫。大丈夫だから。
さて……ユリくん、ちょっと手伝ってくださいね。
いつまでもこのままにしておいたら、さすがに怒られます。
[不安げな猫に笑いかけ、それから、埋葬のための作業にかかる。
もっとも、身体的な部分はだいぶユリアン頼みになってしまうのだが。
ハインリヒの訪れは、その最中。
動かぬローザと、それを見たユリアンの変化に戸惑いつつ、眠るための場所を用意して]
……小言と突っ込みは、後からな。
そう、遠くなく……直接聞けるだろうから。
[小さく呟いた言葉を、場にいた者はどう聞くか。
翠は静かなまま、内心を物語る事はない]
―一階:広間―
[彼方に向けられた少年のまなこはぼうっとしていて、目に映す光景も見ていないようだった。
かかる声に一度瞬き、上半身を捻る]
起こしちゃった?
[問いかけたあとは、言葉を探して黙り込む]
……………しずか、だね。
……本当に。
見事といえば、見事な状況ですね。
ユエまで含めて、圧倒的に男性ばかりだ。
[野郎ばかり、というハインリヒの言葉に苦笑して]
とにかく、戻りましょうか……やる事、やらないとなりませんし。
[一度、集会場へ戻ろう、と促し、歩き出す。
道すがら、ダーヴィッドの話やローザの見つかった状況などは聞く事ができるか。
それから、集会場に入る前に足を止め]
と、ユリくん、ちょっと先に行っててもらえます?
俺、こちらに大事な話があるので。
[にこり、と笑って。告げるのはこんな言葉。
それに、返る反応はどうだったか。
ともあれ、ハインリヒと二人になると、静かな瞳をそちらへ向ける]
見つけた…?成すべき…ぁあ…エリ兄が…
ってことはオト兄が落雷を落とす人だったんだね
[オトフリートの冷笑を直視するにも複雑で、無視するにもできず、酷く中途半端に見返す。当然ながら落雷関係ありません。]
もち。長い間外にいるだけでも俺極刑ものなのにこれで無視までしたら七代ぐらいは酷い人生を追いそうだからね
[内心では既に七代たっても酷い人生を送るのだろうと思いながらも埋葬のための作業に移り]
そだなぁ…甲斐性のない野郎だらけだ
[野郎ばかりというハインリヒの言葉にこたえる。
当然なのか自分はそこには含めていなかったりする]
ん。わかった。あんま長居しないでな。
俺は俺で整理する…いざ見つけたとかいわれるとどうも上手く頭に入らない。
…というか、その前に、オト兄が見た中で誰が大丈夫な人なの?
[それは見つけるものというオトフリートの言葉と、エーリッヒのことについてというようにしつつも、他の人について誰をみたのか可能ならば聞いてみて。]
じゃ。また
[素直に二人を置いて集会場内に入った]
―→ 集会場廊下―
─広間─
ううん、大丈夫。
[問いかけにはゆるりと首を振った]
……うん、静かだね。
他の人は、外なのかな。
さっき勝手口の外が騒がしかった。
[かけられている毛布を胸の辺りで合わせ、体を包み込む。縹色はフォルカーを見つめ、その後窓の外を見るよに向いた]
─外・集会場前─
まあ、普通に考えれば、そうですよね。
[上手く頭に入らない、というユリアンの言葉に掠めるのは苦笑。
向けられた問いには、一つ、息を吐く]
……残念ながら、もう、ここはいませんよ。
今、眠らせてきました。
[ハインリヒの事には、敢えて触れず、端的に返す。
ヘルミーネの事なのは、これだけでも伝わるか。
ともあれ、ユリアンが集会場へ向かうのは、そのまま見送った]
また、誰か――……………
[所々が曇った窓の向こうに見えるのは、死者の眠る墓のある、針葉樹林とは逆の方角。雪の上に残る足跡は、人の行き来があったことを示していた]
……静かに、なった。
[先と、似た言葉を繰り返す]
もっと、静かに、なるのかな。
さて、では改めて本題に。
今のやり取りからも、お察しいただけるかとは思いますが……見つけました。
[ハインリヒに向き直ると、静かに告げる。
誰を、と問われたなら、返すのは、旅の商人殿、という言葉。
何故そこを確かめたのか、と問われたなら、浮かぶのは苦笑]
……やっぱり、俺は甘いみたいで。
子供たちを疑いきれなかった、って事にしといてください。
……それと。
[ここで一度、言葉を切り。それから、逡巡。
けれど、これは報せておくべき、と思い直して]
……フォルくんの事、ですけれど。
俺の推測が正しければ……彼もまた、力を持つ者。
だから……気をつけてあげてください。
[昨夜、二人の間にあった事は知らぬ身。
否、知っていたとしても、報せる事が叶うのは彼しかいないから、小声でこう告げた]
……俺は……正直、いつまでいられるか、わからんので。
何かあったら、お願いします。
[やや一方的な言葉に、返されたのはどんな表情か。
ともあれ今は中へ、と促し、集会場の中へと戻った]
―二階自室―
[もってきた荷物に触れる。だいたいこの位置にこれがあると決まっているためみなくとも何がどこにあるかわかり、一つ一つ手に取り服に納めるたり、防寒のためのように布を縛ったり、微かな火薬の香りを消すように服を着なおす]
ま、お互い嘘ついてるんならいいよね
[いいわけがないだろうけど今はそう誤魔化した]
ぁーあ。見つかっちゃったと。
…まあいいか。そのほうが
[燻るような熱とともに胃液がせりあがってくるが、それを無理矢理嚥下して]
さーて、エリ兄は部屋の中にいっかなー
[のーんびりとした態度でエーリッヒの部屋へと向かい。そして入る]
─広間─
───……。
[返ったのは沈黙。何かが無ければ騒ぎも起きない。肯定の沈黙だった]
静かに……なるかもしれない、ね。
人狼が見つからない限り、減り、続ける……。
[声が、震えた]
―エーリッヒの部屋―
[ノックをして返事も待たずにずんずんと中に入る。
部屋にいたならば挨拶を軽くしつつ、中に入ると窓を開けて、身を乗り出すようにして外を眺めた]
だから、早く
[手を当てた窓は冷たく、掌が濡れた]
…… レーネは、終わったら、どうするの?
[不自然に途切れた声には、ちぐはぐな続きが継がれた]
もう、止める人もいない。
─二階・個室─
[中に入ると、一度向かうのは二階の個室。
猫も、その後についてくる。
一人になった途端、気が抜けて、その場に膝をついた]
……ほんっと、きついな……あとどれだけ持つのやら。
[呪の対価は命。削られる量は、正解を引き当てられたかで代わる]
祖父ちゃんは、よく、あれだけ生きられたもんだよ……。
[ぼやくような声で言いながら立ち上がり、向かうのは鞄。
着てきた上着は、ヘルミーネにかけたままだった。
借りていたフォルカーのカーディガンを、自分の上着と取り替える。
その内側に滑り込ませるのは、波打つ刃。手元にある、唯一の武器と呼べるもの]
……問題は、どこまでやれるか……か。
[零れるのは、小さな呟き。猫が、不安げな鳴き声を上げた]
─広間─
[早く。どうするべきなのかは理解出来た。けれど不自然でも別の言葉を向けられると、縹色をフォルカーへと向ける]
……分かんない。
でも、多分……村を出るよ。
[止める人が居ない、と聞けば、僅か表情に翳りが帯びる。分からないと言ったが、本当は悩む必要もなく、村を出ると決めていた。以前とは別の理由で、だが]
フォルは、やっぱり残るの?
[返したのは何気ない疑問。以前のままなのかと問う]
―一階:広間―
……そ、っか。
[ようやく窓の外から目を背け、振り返った少年の表情は、普段と変わらない。
少し眉の下がった、困り顔]
僕は――……残る、よ。
……本当に、いるって、分かったから。
それに、村にも、可能性があるかもしれないから。
鉄鉱の脈。
見つかって、賑わったら、きっと村も変わる。
さむぃな
[身を乗り出すのはやめて、それから口を開く]
話がしたい。って言ってたから来たけどどんなことかな?
手早くしたほうがいいよ。
オト兄やハイン兄さん…他にも誰かがエリ兄を殺しに来るかもしれないから
[場所を変えるなら別だけどというように窓から外を見る]
─広間─
村の外を見るのは、ボクの望み、だから。
[そう紡いだ言葉はどこか空虚染みていて。表情の翳りは消えなかった]
ん……それが、フォル自身が決めたことなら。
ボクは応援するよ。
[近付いてくるフォルカーに向けたのは少し寂しげな笑み]
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