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随分、人が集まって来ましたねえ。
[鏡の迷宮の近くで「神秘のカード」という看板を掲げて小さなテーブルの上にカードを広げている]
[待つ事しばし。
呼び鈴に応じて出てきたメイドに、連れていた猫が入り込んでしまった、と事情を話す。
黒猫は既にメイドに捕まえられていたようで、大人しく連れられて出てきた]
どうも、すいませんでした。
ああ、そう言えば……。
[頭を下げて謝った後、何気ない口調で話を振る。
先日、エレノアと一緒にサーカスに行った事、色々あったが、疲れてはいなかっただろうかと。
メイドは少し、困り顔で応対して。
また、新しい出し物があるらしいが、出てくるのかと。
世間話のように問えば、「体調を崩されて、朝から休んでいらっしゃいますので……」と、歯切れの悪い言葉が返される]
・・・誰からそれを?
[ややあって発される疑問。朝から尋ね回って、レベッカ以外は誰一人として良い返答が得られなかった故か。]
ピエロさんは働き者だな。
はい、いらっしゃいませ。
これは古代エジプトに伝わる神秘のカード、お客様の心を見通す不思議な力を持っています。
[覗きこむ客の前で、カードの絵柄を当てるマジックを披露し始める]
……そうですか……。
それでは、お大事に、とお伝えください。
[普通の体調不良を案ずる様子とはどこか違うメイドの態度に、ほんの少し表情を険しくしつつ。
一礼して、その場を辞する]
……あの様子だと、何かあった、な。
今朝、感じたものが予想通りなら……。
[視えるかも知れない、と。その呟きは口の中に留まる]
とりあえず、あそこ、行ってみるか。
[小さく呟き、その歩みは広場へと]
どうした、ウィッシュ?
[突然の声に肩の相棒を見やれば、黒猫はとんっと地に下りて走り出す。
後を追って行けば、話を聞こうと思っていた者──ラッセルと、リックがいるのが目に入るだろうか]
っと……や、お二方御揃いで。
[軽い口調で声をかけつつ、そちらへと近づいて]
うん。
知ってる人だよ。
大丈夫。
アーヴァインさんのこと、なんで忘れ……
って、こんにちは、ハーヴェイさん。
お前は可愛いなぁ、猫。
[マジックの最後に、カードを白い造花の花束に変えて、拍手の中で一礼]
今宵は我が魔術団による、魔術の実演がございます。
どうぞ皆様、お誘い合わせのうえ、お越しください。
あ、・・・今日和。
ウィッシュも。
[ふ、と微笑んで見せる。]
ん、そうか・・・
有難う。
[問い掛けの応えには、それ以上追及しようとはしない。]
うん。そう。
大切だから、ラッセルさんでも、内緒。
ハーヴェイさんにもね、もちろん。
でも、本当に、アーヴァインさんどこいったんだろね。
さっき団員さんに聞いたけど、知らないっぽかったし。
はい、こんにちは、と。
[挨拶をしてくる二人に軽く返す。
黒猫はゆら、と尻尾を振り、疲れたような様子のラッセルに、案ずるような声で鳴く]
……アーヴァインさん、どこにいるか、わからんのか?
[それから、リックの言葉に低くこう問いかけて]
[看護婦にぺこりと礼をして、
家の前で別れて扉を開けて、
居間に祖母の姿を見つけて。]
ただいま、グランマ。
何、しているの?
[少女が近寄って見てみると、
くるくる二本の棒を操る手が、
ふわふわの毛糸を編んでゆく。
老婆は孫にも編み物を勧めようとしたけれど、
片手の治療の痕を見て目を驚きに瞬かせる。]
あ、……だいじょうぶだよ、
ぜんぜん、痛くないの。
きちんと手当てしてもらったから。
[頷くラッセルに、黒猫はもう一度小さく、鳴いて見せる。
無理しないで、とでも言いたげな様子で]
……わからない……か。
町の連中も、あの人の事は忘れたような感じだし。
というか、昨日、サーカスの方で見かけた時から、どこかおかしかったし……な。
[ちらりと見かけた様子を思い出して、呟く]
……て、ピエロ?
[リックの言葉に、一つ、瞬いて。
それに関する話を聞けば、広場の中心部へと目をむける]
ねえ、
グランマは長く住んでいるから、
町のひとたちのこと、
とてもよく知っているのよね?
[にこり微笑んで祖母が頷き、
じっと真っ直ぐ少女は見つめ、
それから、
行方不明の自警団長の事を尋ねたけれど、
帰って来たのは予想通りの返事。]
嗚呼、それが――
誰に聞いても知らない・・・というか、アーヴァインさんのこと自体覚えてない、と言われて。
覚えてるのはここにいる人と、レベッカさんと――あと一人。
僕が聞いた内ではそれだけです。
[訥々と言葉を紡ぎ、それからリックの言葉に顔を上げる。]
・・・・ピエロ?
やあ、こんにちは。
今日も来てくれたんですね。ハーヴェイさんに、ラッセルさん。
[見つけて声をかけた中に、少年が含まれていないのは、見覚えていないのか、それとも身長のせいで目に入らなかったのか。後者であれば、少年の猛抗議を受けたかもしれない]
ううん、何でもないの。
へんなこと聞いて、ごめんなさい。
少し疲れちゃったから、お部屋で休むね。
[老婆とよく似た笑みを浮かべて
居間を後にする少女を見送り、
皺のある白い手が再び編棒を繰る。
遠く聞こえる音色に乗って、
彼女は楽しそうに編んでゆく。]
……覚えてるのは、ごく一部だけ、って事か。
[ラッセルの言葉に、低く呟く]
まるで、世界そのものから、弾き出されたみたい……だな。
[低い呟き。平時であれば、それは冗談めいた響きを帯びるのだろうけれど]
[少女を一度送り届け、診療所へ戻った後。
いつもの通り、手伝いを終わらせた。今日は買出しは無いらしい。
お疲れ様でした。と挨拶と共に一足先に診療所を後にした。
帰路へ着こうと、いつもの通りメインストリートを歩いていく。
軽快な音楽に導かれるまま、このまま真直ぐ進めば、広場だ。]
……。
[足を、止める。小さく溜息を零した。
…判っている。不安を解消するならば、直接、見に行けば良い。
けれど]
嗚呼、確かに。
昨日は変でしたね・・・
[昨日擦れ違った時の様子を思い出したか。黒猫の意思は通じたか、其方に手を伸ばす。避けられなければそっと頭を撫でるだろう。]
[部屋に戻り扉を締めると、
テディベアを寝台に乗せて、
少女は椅子に座って頬杖突いて、
眉を寄せて難しいかおになる。]
アリス、どう思う?
[彼のことばは彼女の声だから、
もちろん答えが返って来る訳はない。
子供に似つかわしくない、溜息ひとつ。
視界の隅では狭い空間で
窮屈そうに赤い風船が浮かんでいて。]
……っと。
や、どうも。
[不意に投げかけられた声に、ゆるく瞬いてそちらを見やる]
相変わらず、賑やかなようで。
ああ……なんか、昨日まではいなかったピエロがいるんだって?
そんな話を、彼から聞いてたところ。
[言いつつ、リックの方をちらりと見やる。
黒猫は、ラッセルの手を避ける事無く、大人しく撫でられて]
ああ、新入りのピエロさんですね。
なんだか言葉の話せない人なんだそうですよ。それでマイムが御上手なんですね。感心しますよ。
あ、今日和。
[やって来た銀の髪に気付き、会釈をする。
大人しく撫でられる猫に眼を細めながら、ピエロの説明をする青年に同意の意を示してか小さく頷く。]
へえ……なるほどね。
それなら、後で見に行くのもいいかな。
その前に、人捜しをしないとならないが。
[コーネリアスの返事に、ひょい、と肩を竦めてこう言って。
ふい、と銀髪の男から逸らされた視線は、虚空に何かを捉えようとするように見えるだろうか]
ええ、今夜は魔術の実演もありますし。是非楽しんで行ってください。
[ハーヴェイの言葉に頷いて、人捜しと聞くと首を傾げる]
人捜しですか?どなたか迷子でも?
あ、もしかして、この間デートしていた可愛らしいお嬢さんですか?
新入り・・・・
この町の方、なんでしょうか。
[猫を撫でながら、言葉を話せない人って居ただろうか、などと呟く。それから2人の会話にはたと顔を上げる。]
嗚呼、そうだ。
アーヴァインさん、知りませんか?
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