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[左手に右手を重ねて。静かに見続ける。
過剰な干渉は逆に余計な反発を引き起こす。だから直接に関わることはしない。できない。雷撃にも翠樹にも]
……。
[対となる者が、対立する者達が引けばホッと息を吐いた]
……?アーベル?
[歩き出すアーベルに気付いて声を掛ける。
でも、気付いていないのかそのまま歩を進めるアーベルに、
僅かに眉を寄せて。――そのまま、アーベルの背中を見送って。
ふと、その間にとりあえず収束したらしい騒ぎに、一つ溜息を零す。
――すこしだけ、困ったなと思う。
リディが、事を知ってるとは思わなかったけれど
庇うとも思ってなかったから。…どうして、なんだろう。]
…とりあえず、戻ろう。
[オトフリートと、一緒の従魔と。
近くにエーリッヒもいた。…リディに引き離されちゃった?
忘れないように黒猫にも声を掛けて。 ゆっくりと屋敷へと向かう。
両手の掌の中には、リンゴが*一つ*。]
[オトフリート達が戻ってくると、ユリアンがお茶の提案をして。
淹れに行ったオトフリートについて一緒に厨房の中へ。
こっそり自分の分をアイスティーにさせてもらって]
うん、今はこれがいいの。
[何も入れないそれをちびちびと飲みながら*話を聞いたりした*]
―昨夜―
[髭の御仁が引いたのを見、私は震える息を吐く。
「風が教えてくれた」
そう言い切った男が、恐らく私と…灰銀の少年の話を知ったであろう事はたやすく想像が付いて。
彼が護ろうと…しているが故の激昂とは知らぬであったが、少女らに煽られしままに罠に嵌るを助けたかった故に]
……そう、その方がよかろうの…。
[穏やかに見えて反論を許さぬ雷精の言葉に頷き、戻りし者達を迎える。
額の角へと視線が向けられたならば、拒むよに視線を逸らして。
なれど逃げる事なく、振舞われるお茶をいただき。
彼の仔が未だ震えていたならば、細き腕の内に柔らかく抱きて、
心を鎮める――引いては眠りへと誘う事に繋がる――波紋を、静かに紡いだろうか]
―図書室―
[やがて眠りし彼の仔が時の竜と共に去れば、私も静かに場を辞して。独り向かうは、知識の眠る場所。
誰かに見咎められたならば、眠りすぎたが故と応えて消えようか]
……。
[書を閉じ、私は広間にて見せていただいた本と属性について得た知識を照らし合わせ――そして言い争うが二人の『人間』を思い、苦しげな息を吐く。
心の内に刻まれし恐れはたやすく消えず、私は震える肩を抱いて。
愛し仔の為に出来る事は何かを想い……深く沈んでいた]
[やがて――震えが収まりし明け方の頃。
私は細い白金の輪についた、親指ほどの菫青石を撫で――美しき天蓋を開ける。
機鋼が王から賜りしそれは、一見小さな手巻き時計と見えようが、螺子を巻くための部品も穴も何一つなき滑らかにて完璧な品。
澱みを抱きはするものの、己が天聖の属――全てに干渉しつつ、同時に何物にも干渉を受けない存在――そしてこの品を示せば、私が翠樹の少女が『協力者』たるを*見つけたと言うは可能なりやと*]
< なんだか、言い争いのけはい。
猫は昨夜、猫の耳があったらしっかり垂れていたことでしょう。
かわりに、猫は考えていました。
リディの言った、ことばの意味を。 >
< おでこの人(火炎の竜)が廃棄エリアにいるって、猫は…わからなかったし、
消えちゃったときに、リディはそこにいたのだったっけって思いました。
なんにもしらないって言いながら、他の人がきえたっていうのもしらないって。
なんだかおかしなことね >
< 人間とか、精霊とか、魔族とか、竜族とか、なんだろう。人間みたいに、いろいろ考えなきゃいけないって、大変なこと、って猫は思いました。
戻ろうっていわれて、猫も戻ります。黒猫にゃーん。ちょっとつーんってされたかもしれないけど、ぎゅうっとだきしめます。
なんだか、不安で、しかたなかったんです。
それからそのまま、ソファで寝ました。ちょっと雷撃の精をみてたんですけど、まだこんらんしてたから、お話はできなかったみたい。 >
< むかしからの知り合いで、いつもじゃらしてくれたマテウスがいないのを、朝おきて、猫ははっきりとさとりました。不安なかんじはおさまっていません。三対のさいごの一人だからなのかもしれませんけれど、猫にはそれがわかりません。
そして、機鋼竜に協力するとか、そういうことも。ただ――それが、そういう不安をまねいていることは、わかりました。
ちりちり、しるしがいたみます。
――お前が、もし、だれかにさらわれたとしたら、お前のこころはやさしいから、その相手に手助けをしかねないね。
そうやって言った人のことを思い出します。そういうことなんでしょうか?
猫は、そうしないように、決して犯人とかかわらないようにという魔法をつけられているのでした。だけれど、それは猫自身でもちゃんとはわかっていないのです。
もしかして、機鋼竜が自分たちをここにつれてきて、でもなにか、のっぴきならない事情があったからで、それを知った人がてだすけしてるのかなと、猫は*思いました* >
―図書室→広間―
[私は深く…心の奥からの深い息を吐き、緩やかに立ち上がる。
本をそのままに、翠樹が少女を訪ねようと廊下へと出る。
なれど階段を上がる前に、そのほの暗さに気付き脚を止めた]
……。
もう少し日が昇らねば…起きてはおられぬかも知れぬの。
[人を訪ねるには未だ時は早いかと――私は一度広間へと戻りソファーの隅へと腰掛ける。
再び本の頁を捲りながら物思いに耽るうち、疲れた心と身体は、
*まどろみに引きこまれようか*]
―昨夜―
[痛みを隠して、と言う言葉には、曖昧な笑みで返したか。
それでも、信じる、と言う言葉への返事には、微か、安堵したような表情を掠めさせ]
『……イレーネになら……いや、イレーネには。伝えておくべきか……セレスの事』
[青の青年を案ずるよに見つめる従魔を撫でつつ、ふと思う。
同族だからこそ、それは報せねばならぬ事とも言えるから]
『後、話せそうなのは……彼、かな』
[あるいは、『裁定』の領域に属す精霊。
彼らであれば、と。
期せずして、浮かべたのは幼き頃の自身を知る者たちばかりで]
[ともあれ、広間にもどり。
ユリアンにお茶を頼まれれば、従魔をナターリエに預けて準備に向かう。
ブリジットの小さなわがままには、微かに笑みをうかべつつ]
[さすがに和やか、とは言い難い雰囲気のお茶の時間の後、眠り込んだ従魔を伴い、自室に戻る]
……ふう。
[増えた情報。
それぞれの動き。
それらに思い、巡らせつつ]
さて。
どうしたものかな。
どうすれば……誰も……。
[続いた呟きは、*睡魔に飲まれてか、途切れ*]
[熊がいなくなり、メイドがいなくなり。
呆然とする前に、最早呆れるしかなかった]
…まったく、これがカラクリの世界の理だって言うのかね。
[わけのわからないまま竜が消え熊が消えメイドが消えた。
次に消えるのは誰なんだとばかりに薄く空をにらみ、*ため息ひとつ*]
< 目をさました猫が、台所で、ごちそうをさがしていた時、ナターリエが戻ってきていたようでした。ソファの上でねむっています。
足が。
きのうのことを思い出して、猫はまゆをよせました。人の姿は、感情をゆうべんに かたってくれます。
それから、そっと頭に手をのばして、 >
…痛くないように、させてあげられればいいのに
< 猫はつぶやきました。
本当は、そう、どうやったらきずを なおせるのかって、ものしりさんに聞こうって、おもってたんでした。
でも、それより、リディのことを(猫はかの女のことをよく知りません、家出娘としかね)聞かなきゃいけないと思っていました。
声はたぶん、本当にちいさかったから、とどかなかったでしょう。でも、手がふれたら、目をさましてしまうかしら?* >
─屋敷・自室─
[お茶会の間、しれっと混じってお茶を飲んでおり、たとえその最中に改めて問い詰められても変わらず同じように返答していたか。
そして、お開きになると自分の部屋に引っ込んだのだが]
うーん、困ったねぇ。
[天井見上げて、改めてぽつり。]
[髪に触れる気配に、私は跳ねるように顔を上げる。浮かぶは恐怖。
なれど手の持ち主を見れば、大きく息を吐いて震えを止めんとする]
……エィ…リ殿…であったか…
…うたた寝しておりました。部屋に戻って休んで参りまする。
[声は届かず、今私が浮かべているは純粋な驚きと…動揺。
優しき彼の猫をだます事も巻き込むことも嫌で、私は彼から身を引くようにして床を蹴り、二階へと上がってゆく]
―広間→二階―
……っ…
[急激に変えられた半身が――傷付けし脚が鈍い痛みを訴え、私は意識を集中して姿を解く。うたた寝でも僅かに効果があったのか、辛うじて人の姿へと変わる。
なれど脚はふらついて、壁へと身を軽く打ち付ける。
その小さな衝撃は、翠樹の部屋へと伝わろうか]
< まぎれもなく わがっているのが、猫にはわかりました。 >
うん。
ゆっくり、休んで…ね。
< そっとなでて、その姿を見送る。
でも。
動揺したその様子が、気になって。
せめて、去っていくその人に、水をくんでいこうかな。そう思って、猫は、一度台所に行きました。
こわれていないコップです。水を注いで、足おともたてず、猫はあとを追いました。まだ、寝ている人も、いるかもしれませんし。 >
─屋敷二階・個室─
[むくれたまま、行く宛ても無く行ける先も無いので部屋の中、ベッドの上で膝を抱えている]
まさか本当に、判っちゃうひとが居るなんてねえー……。
[ゴツッという音が壁の向こうから響く。]
……ん?
[よっと起き上がり、ドアを開けると、壁に寄りかかっているナターリエ。]
…………大丈夫?
[痛みに零れそうになる声を耐え、唇を噛む。
呼吸を整える間も下からの足音はなく、私は静かに身を起こして、鼻先を上へと上げた。
獣の鼻が昨夜覚えておいた匂いを辿り――急にそれが強くなる、と同時に扉が開いた]
……あ、翠樹の……
[微かに息を飲み、私は震える声で頷く]
…はい、大丈夫です…。
なれど、そなたに…尋ねたき事がござります。どうかしばしの時を。
[真摯な光――敵意ではなきそれを浮かべて懇願する]
そう。よかった。
[そして、真摯な目でこちらを見てくるナターリエをジッと見つめ返していたが]
……どうぞ。
[そう言って、部屋の中へ入ることを促すか。]
…かたじけのうござりまする。
[促しに従い、私は部屋の中へと入る。
扉が閉められるを確認し、私はまっすぐに燃える様な瞳を見つめた]
……手短に申し上げまする。
私はそなたが機鋼竜の『器』へと協力せしを知っております。
私は…全てに干渉せし天聖が属、そして機鋼が王に仕えしが故に。
[差し出す手には白金の腕輪。
その菫青石の天蓋を開ければ、機鋼の力帯し時計が現れる]
< 何か音がした気がしましたけれど、急ぐと水をこぼしてしまいそうでしたし、猫はそっと上にあがります。
ぱたん、と閉じたとびらが見えて。
猫はけげんに思いました。そとに、気配は、ありません。であるなら、中に入ったのでしょうが――そこはナターリエが使っていた部屋ではないようです。
そっと足をすすめました。
気配を消すのは得意です。だって、一匹猫だもの。
人の耳は、獣よりも悪いので、少しだけ声が聞こえました。
「機鋼の王に」……? >
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