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― 宿屋・食堂 ―
あ、久しぶり、っす。
[あまりの衝撃に挨拶が抜けた。
言葉は申し訳なさそうな調子を帯びた。
片やローブ、片や普段と違う村人。
雰囲気は気にしなかった]
連絡して貰っても、俺は一月前に此処に居たんで。
入れ違いになってたかと。
いや、あなたが好きに動けば良いと思うし。
まさか此処で会えるとは思わなかった。
―― 一緒しても良いっすか。
[そんな風に問いかけて、諾を得ればテーブルを同じくする。
食事の間に話す内容は、近況を報告したり、彼女の研究の成果をねだったりと、話題に事欠かない。
やがて食事が終わると、自宅へと戻る事になるが、其れまでは楽しい時間を過ごす事に*なりそうだった*]
[周りの様子をそれほど気にしない為に、同じく普通に再開の喜びを分かち合いながら会話を続ける。
好きに動くのはいつものことなので、再度口元だけ見える笑みを返しながら]
そう……、
でもこの村を勧めてくれたのはウェンデルなのだから、半分は会いにきたようなものかしら?
[一緒することに否定をする理由もなく、口元だけ見える笑顔の承諾]
ウェンデルは、最近はどうだったのかしら?
[問いかけに変える答えには、短く「そう……」と返し、
その反応の様子は前にあったときと変わらない様子をウェンデルに思い起こさせるだろうか]
[自分の近況や研究のことを聞かれれば、返す調子はやはり前に会った時の様に]
あの後もいくつかの村を回って興味深い話はいくつか聞けたわ。
その中でこの村の自衛団団長をやってるギュンターさんの名前がでてきて、こうして足を運んできたのよ。
案内といえば、明日にギュンターさんのところへ案内してもらってもいいかしら?
村の人の口ぞえがあれば、話もしやすくなってとっても助かるわ。
[お願いの言葉を聞き入れてもらえたならば、今まで一番の笑みが口元に浮かぶだろうか。
その後も会話を続けながら、ウェンデルが自宅に戻る時が、自分が部屋へ戻る時となるだろう*]
―自宅―
[静かな問いかけにゆっくりと説明する。
ヨハナを迎え入れる時には確かに悩んだ。しかしヨハナの愛情は能力以上に疑いようがなく、いざという時は相討ってでもと覚悟を決めてその手を取った]
選んだことは辛くなどなかった。
覚悟も決めていたつもりだったんじゃが。
[現役を退いて長年経った今になっての通達に躊躇いを覚えてしまった。
妻ばかりではない。巡回から詰所に戻って確認した時に反応した影は12、村人や顔見知りばかりだった。それが酷く辛く感じられた。
恨み言一つ言わずに抱擁を返してくれる妻を抱く腕にもう一度力を篭めて、ゆっくりと身体を離した]
…そうだの。
[心の篭った食事は温かくて美味しかった。
けれどそれを口に運ぶ動きはどこか機械的で硬かった。
夜は静かに更け、雨の音が遅くまで*響いていた*]
雨は、途中から叩き付けるような勢いで降り始めた。
陽の差し込む隙間がある通路を見回っていた自衛団員も、危険を感じて詰所に戻るほどの強さだった。
嵐に見舞われ、洞窟の外、本来は穏やかな川も表情を変え荒れ狂う。
嵩の増えていた水は川筋を越えて外まで溢れ出し。
一部は村と外を結ぶ洞窟の中まで勢い良く流れ込んだ。
夜半を過ぎても勢いの衰えなかった雨は、低い場所にある通路を完全に水没させてしまい。
泥水の溜まった洞窟は、到底通ることの出来ない状態になってしまった。
水が引くまで、どれ程掛かるものか。
もう何年にもなかった事態に陥った村は、孤立してしまった。
―昨夜―
行って来る。
[夕食後、短く告げて家を出た。
もう一晩だけ。そう思い帰った家だが、長居をすればするだけ決意が鈍ってしまいそうで。
時間が経つほど雨は酷くなり、広場も水浸しとなって一晩中詰所から出ることはできなかった]
―朝/水没通路―
「団長!」
[悲鳴のような団員の声に駆けつけると、水没した外との通路に浮かんでいる影があった。
人間のものである首は胴から離れて左目左耳を失っており、体の方も胸元を裂かれて肝臓と心臓が見当たらない。
引き上げられた骸の惨状に、顔色を失くす団員もいた]
人の仕業ではないの。
だが野の獣に食われたとしては不自然。
…やってくれおったわ。
[重たい溜息を吐く]
各自、指示しておいた通りに各家に連絡せよ。
例の12名へも、宿に集まるよう伝えよ。
―水没通路―
影の見分けられなんだ中にいるのは間違いない。
容赦は出来ん。
[自分に言い聞かせながら左袖を捲くる]
此れは我らが使命。
[前腕に掘り込まれた銀の印を見つつ、結社の者がよく使う言葉を*呟いた*]
─ 翌朝/自住居穴 ─
[昨夜は雨と風の音が酷く。
止む気配も無いために外に出ることは叶わなかった。
窓から見る広場も川のように水が流れ、歩くのは困難のように思えた。
その日は仕方なく住居から出ず、大人しくしていることとなる]
[翌朝、目覚めてリビングに行くと、リスが余したマカロンを齧って朝食にしていた。
雨と風の音も止み、外に出れるかと窓から広場を見てみる]
……昨日よりは落ち着いているわね。
[広場を流れていた水は残っているものの、歩けない程ではない。
これなら出られるかと考え、朝食を作って口にし、余分に作ったそれをバスケットに入れて家を出た。
バスケットから漂う香ばしい匂いにリスも鼻をひくつかせ、バスケットの蓋の上に乗る。
どうやら着いて来る心算らしい]
―宿屋:食堂―
[ロミがハンカチを抱きしめる様子に、その感謝の言葉>>59に
ゲルダの表情がやわりと、微かに緩む。
そっとゆっくりと動いた手が ロミの肩へと触れ、
小さく横へと流れたのは、そこに埃でも見着け落とした風。
なんとなく気恥ずかしい様子でノーラへと視線向けられぬまま
暫し 周りの言葉を何気なく聞きながら腹を満たしていると
ふと 視線は黒いローブへと留まる。
何となしに見て居れば 扉から入ってきてそちらへと歩み寄るのは
同じ集合住宅に住む青年の姿で。
彼の言葉に、周りの村人たちがざわめいた。
それへと向けるゲルダの視線はいつもと変わらず――
岩の隙間から落ちる雨の勢いは衰えず。
部屋は空いていますからという宿屋の女将の言葉に甘えて、
その夜は整えられたベッドで 眠る事にしたのだった*]
―朝:宿屋―
[何やら外が騒がしい。
宿屋のベッドで目覚めたのは、走る音と声のせい。
もぞりと起き出して身支度を整え、ブーツの紐を結ぶ。
足音無く、階段を下りて外へと出た]
……――――な 何…?
[みっちり詰まった土嚢を抱えて走る自警団の男達。
無表情に怪訝な色を仄めかせながら、彼らの脇をすり抜け
ゲルダは食堂で朝食を取ったのち、自宅へと向かった]
─ 昨夜/宿屋・食堂 ─
ん、まあ。
恩義には礼を持って、というのは、わかるけど。
[ミリィの心中>>93は知らず。
これ、恩義に当たるんだろうかとか、どこか惚けた事を考えながらも、包み>>99は受け取った]
後は、叶う限り迅速に、天気が回復するのを祈っとけ。
でないと、作業にかかれん。
[軽い口調で付け加え、窓の向こうを見る]
……とはいえ、今日は大分、荒れそうだが。
[聞こえてくる風と雨の音に眉が寄った]
[そんな、どこか渋い表情も、礼と共に包みを差し出されたなら掻き消えて。
こちらも居住まいを正し、ノーラ>>97の差し出す布包みを受け取った]
……叶う限り、迅速に。
[誓いの証であるのは、依頼を引き受ける時に聞いていたから、それだけを返して。
やって来たウェンデルと見慣れぬ黒尽くめとのやり取りには緩く首を傾ぐものの、特に突っ込みは入れず。
その後、宿から自宅へと戻る者たちには、気をつけろよ、と声を掛けたりしながら、自分は食事と部屋を用意してもらった]
─ 翌朝/広場 ─
……だいぶ、荒れたな。
[翌日、早朝。
朝一番に部屋を引き払い、自宅兼工房に戻るべく、宿を出た。
足元を流れる水、壁面に残る濁流の跡。
それらが、眠る前に響いていた風雨の唸りとあわせて昨夜の天気の猛威を知らしめる]
……親父がいたら、龍神の怒りだ……とか、言い出したんだろうな。
[翠を細め、懐かしむように呟いた後、自宅へ戻ろうとして。
ふと、村の出入り口の方が騒がしくなっているのに気づいた]
…………。
[見に行くべきかどうか、僅かな逡巡。
とはいえ、何となく、行く気にはなれなかった。
行くとしても、玉と珠、それから預かり物を自宅に置いてからがいい。
そんな気がしたから、一度、自宅兼工房へと、足を向けた。**]
― 食堂 ―
あー、えっと、光栄っす。
[会いに来たようなものだなんて、聞けば嬉しそうに頬が緩んだ。
同じ席につかせて貰い、黒いフードが隠さない口元を見る]
最近……っスか。
街を出てきて此方、何も変わらないんすよ。
ほら、娯楽も少ないんで。
翡翠しかないってか。
[そんな事を本気の調子で言う物だから、殴られたりしても文句は言えまい]
ギュンター?
[名前を聞いたと言われ、怪訝そうに視線を向けた]
案内は出来る……んすけど。
なんでまた?
[問いに答えが返らなかろうとも、ギュンターの所に案内はすると約束する。
笑顔に、なんでわざわざフードを被っているんだろうと疑問を覚えるのは常の事。
過去、問うこともあっただろうけれど、今は発する事はしない。
楽しい時間は早く過ぎ、宿を出る頃には雨音も激しくなっていた]
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