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[大きく手を振られれば、一瞬きょんとして、その後で慌てたようにもう一度小さな会釈を返す。
そのせいなのか何なのか、何時もは怖くてあまり内容を聞かないブリジットの声と語られる言葉が、今日はやけに耳に残った。
空を見上げる。星は今日も変わらず綺麗で。]
憂鬱でいられる間は、終わりじゃない…。
[何度か瞬いて見上げた後、小さく溜息をついて、ブリジットの少し後に宿の中へと。]
お邪魔しよう。そう、この戸には血は塗られていない。
子羊の血は見えないのだよ。
それが不偏で普遍であり、何より不変であるかはわからないが。
ああ、お邪魔しよう。
今晩は、諸君。
ブリジット=フリーゲがお邪魔するよ。
[戸を少しく見上げていたが、アーベルの声と前後したか、そのうちにイレーネに先んじて中へと入り]
……それなりの対処が成されるんだろ。
[問いにも似たアーベルの言葉には端的に返して。
何を意味するかは理解しているが、はっきりと口にするのは憚られた]
…「間違いでした」では済まないんだろうな。
確信があるから、こんな対処をしてる。
何も起きなかった場合は。
──……容疑者を全員消しちまえば良いって腹なんじゃねぇの。
[誰が人狼か分からずとも、容疑者として挙がった者の中にそれが居ることは確実のようで。
そうでなくば名指しもすまい。
村からしてみれば、それが一番確実でもあった]
……まあ、そうだろうね。
[疑わないと、という言葉に掠めるのは苦笑]
それでも、そうしたくない気持ちが働くのは、仕方ないさ。
誰だって、親しいものを疑いたくはないだろうし。
[呟くような言葉は、どことなく他人事めいた響きを帯びて。
礼の言葉には軽く、肩を竦め]
現実的な話をすると、君がいないと家の中が片付かない、というのもある。
そういう意味でも、あんまり疑いたくはない、かな?
[冗談めかした言葉はどこまで真意か、それは読み取れず。
歩みはやがて、酒場の前へと]
私はいつも手助けをするだけですよ。
ミリィの強さが、ミリィの命を救ったのです。
[ゆるく頭を振る]
…忘れさせてさしあげたいですが、そうもいかない事態ですね。
昨夜聞いた限りでは、宿で今後を相談することになりそうでした。
それに何か少しでも口にしておかないと、暑い盛りに体力がもちません。どうしても無理そうならやめておきますが、大丈夫だったら顔を出しておきませんか?
イレーネたちも心配するでしょうし。
……ある意味では。
何かが起きた方が幸運なのかもね。
事実を目にすれば、人間は行動を起こせる。
理性を打ち負かす本能に従って。
そして、為す事に対して“正当な”理由をつけられる。
[為す事。それが何か。本来ならば、罪とされる事。
開く扉からは、一歩分、横に離れた。
通る声の主はわざわざ見ずとも明白で]
いらっしゃい、先生。
[宿の中へ、小さくお辞儀して入ると、ユリアンの姿を見つけて心底ほっとした様子で傍に近づいた。
ユリアンとアーベルとの会話は、終わりの方
「容疑者全員を消す」
そこからが耳に入り、少し固まる。
困惑したように、二人を見上げ。
何か物言いたげに口を開きかけるも声にはならず。]
イレーネもいらっしゃい。
[少女の問いたげな様子は察しながらも、此方からは何も言わない。
先程までの重たい会話も嘘のような、普段通りの口調だった]
好きな席に座るといい、今日は選び放題だから。
今日だけじゃなくて、暫くになるかもしれないけど。
[オトフリートの言葉に、ミリィが力無く首を振った]
ううん。
私は弱いよ。
弱いから、人に頼ってばっかりいる。
人に頼ってばっかりだから、弱くなる。
イレーネや、ティルのように、一人で生きていける強さは、私には、無い。
だから、それを隠したくて、知られたくなくて、いつも色んなことを考え込むの。
勉強とか、絵とか……恋とか。
色んなことを考えてれば、それに気づかなくて済むから。
[続く言葉には、少しだけ口元を引き締めて、頷いた]
うん。分かった。
行こう。宿に。
その時には、きっといつものような私に戻ってみせるから。
大丈夫。みんないるから、私は私でいれる。
……先生?乙女の秘密、誰にも言っちゃ嫌だよ?
おや? 違和感、違和感。
何だね。何か妙な気がするが……
嗚呼、そうだ。私はフリーゲではない、フレーゲだよ。
誰だね、私の名前を間違えたのは?
[数日前言ったのとほとんど同じ事を言って]
お邪魔しよう。
早速話し合いでもしていたかい。していないかね。
どちらもまた不可思議ではないがね。
[冗談のよう口にしながら、少し奥にいった辺り、適当な席へと就き]
誰だって。ええ、そういうものなんでしょうね。
[他人事のように話すエーリッヒの口調に、一瞬だけその目を盗み見たが、判ることは何もなく。]
あら……じゃあエーリッヒ様から疑われないために、お仕事ますます頑張らないと、ですね。
[くすり、と声に出して笑う。
エーリッヒの前に立って、酒場の扉を開けた。]
やっぱり、皆ここに来るんですね。
[先に集まっていた面子に、こんにちは、と挨拶する。]
起きた方を幸運と思うか、起きないことを幸運と思うか。
どう感じるかは人によって変わりそうだな。
…為すべきことが見つかるなら、起きた方が良いかもしれないとは思うけど。
[紡いだ言葉はどこか歯切れが悪く。
何が起きるかを考えると、悪い方向にしか考えが向かないために。
そんな会話をしながら開いた扉に視線をやった。
相変わらず声高に言葉を発しながら入ってくるブリジットと、その後ろから歩いて来るイレーネの姿。
その姿を見ると僅かに雰囲気が和らいだ。
しかしイレーネは困惑したようにこちらを見てくる]
…イレーネ、どうした?
[笑う声に、期待してるよ、と軽く返し。
ユーディットに続いて扉をくぐり、中へと入る]
……や、どうも。
皆さん、お集まりのようで。
[場にいる面々に投げかけるのは、いつもと変わらぬ口調の挨拶]
頼ることがいけないわけではありません。
もっと自分のことも信じてあげてください。
[ぽむりと軽くミリィの頭に手を乗せて]
それに。人は誰しも一人だけでは生きられません。
一人で何でも解決しようと思うと、思わぬ失敗をするものですよ。
残念ながら、丁度今、集まり始めたところでして。
話し合うにせよ、フレーゲ先生のように、
博識な方がいらっしゃらなければ、
それもまた無意味なものであったでしょうが。
[相変わらずというべきか、ブリジットに対して投げる言葉は回りくどく、些か――どころではなく、芝居がかったもの]
そう言えば。予知夢の正体とは、これでしたか。
[宿の扉を開け中へと入る。中の空気がざわついているのは容疑者の自分が来たからなのか、それとも別の理由からか]
…よぉ。
[目に付くのは、何人かの知った顔で。どう声をかけるのがふさわしいのか分からないまま、小さくそれだけを呟いた]
それなら良かった。
いつもの笑顔が見れると、私も嬉しいです。
はい、二人だけの秘密ですね。
大丈夫です、医者は口が堅くなくては務まらないんですよ。
[笑いながら頷いて、二人並んで酒場へと向かった]
ま。考えたって解らないし、人間から事も起こせない。
起こる出来事を待ち受け、踊らされるしかないのかもね。
[ユリアンへは、一転、気楽な口調で言った。その内容に沿うものではなかったが。
次いで現れたエーリッヒとユーディットへは、軽く手を挙げて]
や、おふたりさん。
ユーディット、厨房空いてるけど作ってく?
[場に合わない提案をして、くつりと笑んだ]
あ、はい…。
[アーベルの変わらない口調に押されたのか、こくりと頷いて。いつも通りユリアンの隣に座った。
言った通り、店に何時もの賑わいはなく。
その原因のことを思うと少し俯いたが。
ユリアンに名を呼ばれれば、顔を上げ。]
…あの、ね。
[手にはぎゅっと、黒い宝石が握られたまま。]
……ん。
[後から入ってきた気配と力のない声に、そちらを振り返る]
や、どうも。
[挨拶を返しつつ、いつになく力のなく見えるハインリヒの様子に僅かに眉を寄せ]
何か……ありましたか?
[更にやってくる”容疑者”の面々を見れば、座ったままで会釈を返して]
[やや後に注文していたセットが出来上がり、テーブルへと運ばれてきた。
周りの雰囲気を気にすることも無く、料理に手をつけ始める]
どうも、バウムさん。
普段通りにしてていいよ。
この状況で、他の客もそうそう来ないから。
[ハインリヒに告げ、ようやく壁から身を起こすと、何か飲むかと周囲に訊ねる。無論、無料奉仕の心算はさらさらない]
[最悪の末路は、何も言わせず、言わせられずに強制される11人全員の死。
それは、嫌だった。死なせたく、なかった。
それは心からの。]
…見分ける方法があれば、いいんだよね。
[躊躇いがちに見上げて。
一つ息をついて、口を開いた。]
昨晩は何事もなかった?
[イレーネ、ユリアン、アーベルが集う方に近づき、真面目な顔で問う。
つい、と首を店の奥に向け、]
ブリジットさんも……大丈夫みたいね。
[確認するように呟く。
背後からかけられた低い声には、驚いたように振り返った。]
ハインリヒさん。
ああ、貴方も容疑者……でしたね。
……大丈夫ですか?
[元気がなさそうですが、と言い掛けて、その理由は判りきっていることに思い当たり、飲み込む。]
私、わかるの。
人狼と、そうじゃない人が。
父さんが、私達はそういう事が出来る家系だって。
おしえて、くれて。
「その時が来れば、生者の真実の姿を見抜く目が与えられる」って。
だから。その。
[言いながら、微かに震えていた。
それは緊張の為か、それとも恐怖の為か。
それとも他の何かの為か。]
……。
[オトフリートの手が頭に触れていて、あったかい。
ミリィがにへら、と笑う
少しだけ、このまま時間が止まればいいと思った]
……やっぱ、先生優しいな。
[ぽつりと呟く。
私はこの人を好きになれてよかったと、心から思った。
そして、幸せな一時は終わりを告げ、時計の針は動き始める]
[エーリッヒの言葉を受け止めた後、きょとんとした顔をして]
…さあてな。何が起きてるかはしらねーが。
これから何が起きるかと思うと…な。
[そういいながら苦笑して。ペンでコリコリと頭を掻いた]
[と、アーベルの提案が耳に届き。]
お手伝いが必要なら喜んで。
……と言いたいけど、ええと、いつものお店の味とは大分違ったものができるけどそれでも平気?
[からかわれている(?)ことには気付かず、大真面目な顔で返す。]
やあ、今日は。皆集まってきたようだ。
話し合うとすると丁度良い事だ。そうは思わないかい。
話し合わないとしても悪くはない。
集まっていれば更なる変容は起こり難くなる。
尤も!
異形が理気的な存在と確信できればだが。
[比較的まともといえるかもしれない事を、それでも迂遠さはある話し方で述べてから]
そう、議会には頭が必要だ。
そして――そう、黒き影の本質とはこれの事だったのだよ!
ああ、恐ろしき異形!
[アーベルに向かい、叫ぶように]
[宿の扉を開け放つと、開口一番]
やっほー!
みんな元気ー!?
[と、言いながら、手をしゅぴっと上げる]
人狼騒ぎの、容疑者になったからってしけた面してんじゃないわよ?
心だけはハッピーハッピー!
ふさぎこんで、好転するようなことは何も無いんだからね!
…今は座して待つ、か。
仕方ないのかもしれないな。
[アーベルの返答には同意の念を向ける。
事実、今何か為すことが浮かぶわけでもなく。
変化を待つしかない。
隣に座るイレーネを見つめ、紡ごうとする言葉に耳を傾ける]
……イレーネ、それ、本当に……?
[告げられた言葉に、瞳を瞬かせ、驚きの表情が浮かぶ]
[夜が明けて鉱山に行けば、迎えるのは冷たい視線]
…アーベル兄ちゃんの言ってたのは、こういう事だったんだなあ。
[苦笑いをして坑道に向かおうとすれば、親分が手招きをして呼んでいる]
なぁに?
[近寄って話を聞けば、しばらくここにこないでほしいという話。
工夫たちが怖がっているので、仕事にならないと]
……
[親分の顔をじっとみては、一言]
その間の生活費、保証してくれるなら。
[その後しばらくして、数枚の紙幣を片手に、鉱山を去った]
[エーリッヒについてきたであろうユーディットには]
ああ、あのお嬢さんはいつでもあーだな。
むしろ、あのお嬢さんがまともになるよーなら、それこそマジでヤバいんだろな。
俺の方は別段問題ねーが。
[連れていかれた母親の事を思い出すが、口に出しても詮無いことで。色々聞かれるのもわずらわしく]
ま、大した話じゃねえよ。
お前らこそ大丈夫かよ?
[ここまで話して、オーダーを取り出したアーベルに向けて]
今はモノ喰う気にはならねーな…。
とりあえず、煙草ねえか。銘柄はなんでもかまわねえよ。
[胸のポケットから硬貨を取り出しアーベルにひょいと投げる]
……ぐっすり寝たよ。
徹夜した後だったしね。
[ユーディットから向けられた言葉には、返答のような、そうじゃないような言葉を返す]
好きにしていいよ?
なんたって、容疑者相手だから。
[くすくすと、小さく笑みを含んだままにユーディットに言う]
エーリ兄も、食べ慣れた味がいいかなって。
[実際には何方の回数の方が多いかなど、解りきっているが]
……まあ、先の事は、確かに。
[苦笑するハインリヒに返す表情は、やはり苦笑めいて。
ブリジットの声に、ちらり、そちらに視線を向ける]
黒い影……ね。
[呟きと共に。右手でぐ、と左の手を掴む。
その仕種は、半ば、無意識のもの]
お?
[なんか開けた扉に手ごたえがあった。
裏を見てみると、よろめくハインリヒの姿]
……何してんの、おじさん。
あぁ、分かった。
中年特有の、動機息切れってやつでしょ。
駄ー目よー?
若くないんだから、そこらへんのケアはちゃんとしないと。
恐ろしき異形――
それが人の形をした獣の存在。
……なるほど、沿ってはいますね。
[ブリジットに意識を向けるのが、エーリッヒから追及を受ける直前なのは、タイミングが良いのかわざとなのか]
神は怒れるが故に、其を遣わし給うたのか。
だとしたら、人狼は神の使徒になるわけですが。
ミリィの笑顔は、私を繋ぎ止めてくれますからね。
[繋がるとも繋がらないともいえる言葉を返したのは宿屋に着く直前だった。
賑やかに扉を開けるミリィの横から一緒に入る彼もまた、昨夜とは違ういつものような穏やかさを取り戻していた]
[ユリアンを少し潤んだ目で見つめた後、一度だけ頷いた。
言ってしまえば、重荷が取れたかのように力が抜けて。周囲の様子にもようやっと目が行くようになり。
増えていた人らに小さく、会釈した。]
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