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[アーベルの言葉を聞けば]
[笑顔が固まった。そりゃもうきれいに]
そうですか、コケてましたか。
やっぱりわからなかったんですね、言っても
[お説教確定した]
[キィ、と開く扉。部屋に踏み入る]
[仔猫がとたたた、と駆けて行った。暗闇の中、瞳が光を放つ。
それを追って、声のするほう、寝台へと近寄って]
……エーリッヒ。
[優しい言葉をかけるのも、彼女には思いつかなかったから。
手探りに、彼の手を取って。現実を伝えるぬくもり。
それから、額をぺし、と軽く叩く]
夢、だよ。
[気配もなく会談を下り居間に現れたザムエルが目に入ったが、そのまま暖炉の前に留まるのを見て何も言わずに]
[いつの間にか目覚めたらしいブリジットに微笑んで会釈を]
[階段で座り込むアーベルには相変わらず怪訝な視線を向けて]
[居間に現れた老人は記憶に無く。
記憶にある身上書を思い返せば彼がザムエルだろうかと判断する。
特に何かするわけでもないが]
[椅子の背に手をかけ、体を半分捻った体勢。
腕に顎を乗せ、視線は階段に向けたまま]
形があるものは何時かは壊れるさ。
もしかしたら邪魔になって捨てられるかもしれない。
心に残ることが出来るものの方が凄いと思うけどな。
[ふ、と苦笑を零して]
…無いもの強請りっつか、隣の芝は青い、っつか。
言っててもキリなさそうだな。
[手に伝わるぬくもりと、額への軽い衝撃。それから、短い声。それらは、夢の深淵の奥へ奥へと堕ちる意識に辛うじて届いたか]
……う……ルー……ツィ、ア?
[無意識に、この場にいない者の名を呼んで。
夢に抗うように、身を震わせる]
ー階段ー
[彼は、ふと視線を感じて顔を上げ、エルザを見ると、にこりと笑った]
エルザ。さっきの歌、とっても綺麗だった。きっとみんな喜んだと思うよ。また、歌ってね。
[鎮魂歌をまた、という意味を解って言っているのかどうか、表情には屈託がない]
……人の、名前………
間違える…のは、感心……しない、な………?
[ついでとばかり、仔猫を抱き上げてエーリッヒの上に乗せる]
[再び伝わる衝撃は、先ほどよりも強く、意識を揺さぶり。どうにか、夢からの脱出を導く]
っつ……。
[ゆっくり、ゆっくり目が開いて。周囲の様子を、ぼんやりと見つめる]
俺……あれ……?
(あの青年……何故あんな所に……。 人一人座った程度で塞がれる幅ではないが、椅子もソファもあるというに)
[火に当たりながら、先ほど脇をすり抜けた時のことが……そんなどうでも良いことが頭に浮かんでくる。
暖炉の中では薪の爆ぜる音が時折響いていた]
[アーベルの様子も気にかかるものの]
[幼馴染との優先順位を考えるとやはり幼馴染で…]
―→エーリッヒの部屋の前―
[ノックしようとしたが、ふと声が聞こえたので、とめる。]
[イレーネ?][彼女は確か熱が…]
[…説教対象者が増えた]
―二階・エーリッヒの部屋―
………起きて、……ランプ…下に……
取りに………行こうと、したら…この子が、鳴いて……いた、から。
…魘されて…いた、みたい……、だね。
[感謝するといいよ、と仔猫を撫でながら]
と、いうか……普通、逆………じゃ、ないかな…
[後半は独り言のように]
─二階・個室─
ペルレが……?
俺、うなされてた……?
[呆けた声で呟きつつ、ゆっくりと身体を起こす]
ていうか、逆って?
[独り言のような言葉に、不思議そうに瞬き]
[彼はユリアンに声をかけられると、きょろりと辺りを見回す]
ああ、そうだね。それに邪魔になっちゃう。
[照れ笑いに似た表情を浮かべて立ち上がり、カップを持ったまま窓辺に歩み寄る。朝から今まで、覗こうとしなかった窓の外を見つめ、あ、と声をあげた]
また、雪が降り出してるね。
[瞬く様子に、僅かばかり首を傾げて]
……お姫様、…みたい………?
[男女の役割が逆と言いたいようだ。茶化すような響きを持って]
[それから、呆けた声に、少し考えてから、]
――……ルー…ツィア。
[しばらく、悩んで][一度、目をゆっくり伏せて]
入りますよ? そこの病人二人。
[微笑みながら、扉を開けた]
―→エーリッヒの部屋の中―
[完全に背凭れ側を向いて。
本来の座り方とは逆方向に落ち着いた。
だらん、と両腕を椅子の背から垂らして]
残るだろ?
…皆の、餞にもなるだろうし。
[皆。
それが誰を示していたかは明言する必要もないだろう]
[アーベルが動くのを目で追って。
自然に窓の外へと視線は移る]
ああ…降り始めたか。
[赤はもう白に隠れただろうか。
思うだけで言葉には出さずに]
[彼は窓ガラスに張り付くようにして、空を見上げる]
また沢山積もったらスノーマンに友達作ってやれるかなあ?
[呟く声音は*子供のようだった*]
[にこにことしながらまずは]
イレーネ?
あなた確か熱があったんじゃないですかね?
[微笑んで]
[固まってるベッドの住人には、まだお説教はしないらしい]
[ユリアンの言葉に少し寂しげに微笑み]
…残る…わよね。ありがとう。
でも…もうあんな悲しい思いで歌いたくはない、わね…出来る事なら。
[餞…と言う言葉に少し表情を曇らせて。
視線が動くのに釣られて窓を見る]
…雪?
[外はやがて白を取り戻すだろう。
心に残る不安も覆ってくれたならと密かに思って]
[窓際じゃあやっぱり風邪ひくんじゃないだろうか。
思いはしたけれど、何となく声はかけ難く。
毛布でも持って行くべきだろうかと考えるに留まる]
[無論――というかなんというか、熱なんて下がっていない]
…居間の……ランプ、取りに…行こうと、しただけ………、で。
[先程、エーリッヒにしたのと同じような説明を。しかし、いつも以上に歯切れが悪い]
[聞こえただけ、という言葉に、ようやくうなされて呼んでいた、という事実を把握する]
…………。
[取りあえず、成り行きを見守る。明日は我が身。そんな言葉が脳内をぐるぐると]
[にこり、と微笑んで、イレーネに近づいて]
[それはもう優しげに。優しげ、というところがまたポイントだが]
ランプはすぐにはなくなりませんよ?
それに…
熱、下がってるんですよね?
[寂しげな笑みに、失敗したかなと内心舌打ち。
フォローは元々得意じゃないんだと心の中で言い訳]
そうだな…
……人狼が…
[いなければ。それは呟きにすら成らず。
窓から視線を逸らし、背凭れの上で組んだ腕に顎を乗せた]
[空になったカップを手に、ソファーを立つ。
先ほど入ってきた時よりはわずかに顔色も良くなっただろうか。
キッチンへ行ってカップを置き、タバコでも吸おうかと胸ポケットを探ると…
指先に触れたのは、手帳に無造作に挟んだ紙片。
それをしばらく見つめている。]
雪か……、吹雪くな。
[屋上で感じた風がその事を告げていた。
冷え切っていた体はようやく温まったようだ。
ゆっくりと、立ち上がり。 皆に、軽く頭を下げて、無言で退出した。]
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