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いえ、大丈夫です。
[逆に謝り返されて首を振った。
それから青年の言葉を聞き、一つ頷く]
そうか。
なら、案内は任せても?
[青年に合わせてやや小声になる。
心理は分かっているからか、特に咎める気もなかった]
[小声で返す二人の気遣いに、さんきゅ、と笑って]
ん、さすがに最奥は無理だけど。
それなりまでは、行けるから。
[一体、サボりの合間に何をしているのか、と突っ込まれそうな事をさらりと言って。
ハンスが戻ってくると、先に立って*歩き出す*]
[とりあえず、女性組でカヤの提案する巡回ルートの追跡に赴く
その過程、教会や孤児院、そして宿場で目撃情報などを募るが、決定的な情報は得られず、精々が巡回しているのを見かけた程度のものだった*だろう*]
[カヤの示した道順を辿り、会う人に訊ねては、期待外れの――予想通りの結果に終わる、そんなことを繰り返して暫く経った頃、不意に口を開いた]
男だの女だのって、嫌よねえ。
子供の頃は、全然気にしなかったのに。
[上がらない成果に気分を変えようとしたのか。
グループ分けの時の事を言っているのは、明らかだった]
一緒にいるだけで、とやかく言われるようになるし。
当人は何のことだか、さっぱりなのに。
昔は良かった! なぁんて。
[茶化すように言って、こんなときにごめんなさい、と笑った。
通りかかった人を捕まえ、同じ質問を繰り返す。変わらない答えが返ってきても、諦める様子は*見せなかった*]
それなり、か。
[帰ってきた答えにはそう言うだけで、明確に突っ込むことは控えた。
今はそういう場合でもないというのもある。
同じく行商人を待ってから、先導に従い歩き出した。
ちなみに少女と別れたこともあり、当初の目的はすっかりと*忘れているわけだが*]
まあ、多少なら俺も顔通じる場所はあるが。
あくまでも取引先というのが殆どだからな。
[サボりの先はどこなんだと][直には言わずとも苦笑した]
[エルザの視線に気づいても軽く手をあげ誤魔化すように]
[やがてアーベルの後に続いて華やかな道から逸れてゆく]
アーベルは気づいているかもしれないが。
団長さんがこうなると自衛団が多少の無茶をやり出すかもしれない。上の連中が余計な茶々を入れる可能性もあってね。
[誰かと行き会う前に二人へと向けて小声で言う]
それも覚悟しておいてくれ。
─回想・自衛団詰所─
[ぽつりぽつりと]
[青年が語る言葉を静かに聞く]
[犯人を探すと] [諦めるのは嫌だと]
[青年の決意はしっかりと己へ届いた]
……オーケイ、なら交渉成立だ。
何か分かればお前に教えよう。
お前も何か掴んだら俺に教えろ。
ギブアンドテイクだ。
良いな、”アーベル”。
[そこで初めて青年の名を呼ぶ]
[ビジネス対象として見た証拠]
[いつもの小馬鹿にした笑みはなく]
[目線の下にある青年の瞳を隻眸で見つめ、条件を告げた]
それともう一つ忠告だ。
犯人を探すつもりなら、少しでも違和があれば顔見知りでさえも疑え。
自分の知らぬ者だけが犯人と思うな。
その覚悟を忘れんなよ。
[己が青年へ情報を与えたのも犯人の可能性を低く見たが故]
[怪しい者は全て疑うと言う姿勢であるのが窺い知れることだろう]
[この言葉に対する相手の様子はどうだったか]
[これで動揺するようならあまりあてには出来ぬが、とは心の中だけの言葉]
[見たところの決意は揺らがぬようで]
[ひとまずは信じることにする]
[続く告げられた言葉には僅かにだが片眉を上げ]
……分かった。
タバコの匂いが混じるかも知れんが気にするなよ。
[返したのは皮肉げな言葉だった]
[この場では理由は問わず、外に出る青年と共に己も外へと出た]
[出たところで相手と別れ、その後姿を隻眸で見つめる]
……『風の寵児』ってとこか?
ま、後で聞けばはっきりすることだな。
[魔術の心得があれば青年の周囲で風が色々助けて居たことは少なからず感じることは出来る]
[最初に遭遇した時もそうだった]
[やや不自然とも言える風の動きで死角から迫った青年に気付いたと言っても良い]
[青年の姿がだいぶ小さくなったところで己も移動すべく足を動かし始める]
[当面は宿屋に戻り、術の疲労を取ることに*なるだろう*]
─回想・宿屋─
[夜中の出来事だった]
……ンの野郎……。
[疲れを癒すために眠っていたのだが、唐突に目を覚ます]
[否、ここに居ない同僚に叩き起こされたと言うのが正しい]
[最低限である日に一度の連絡をしなかったため]
[嫌がらせも込めていつも夜中に声を飛ばして来るのだ]
[むくりと身体を起こし、思い切り眉根を寄せながら荷物から紙を取り出す]
………アロー。
夜中に叩き起こすのは止めろと何度も言ってんだろうがこのタコ。
こっちは悪い方向に進展してる。
事件を調べてた自衛団長が行方不明になった。
俺が術で捕まえてた時に起きたことだから、浚われたのはほぼ間違いない。
引き続き調査を続行するが、この様子じゃ俺に手が伸びてくるのも時間の問題だろう。
…ああそうだ、実行犯は二人、街の有力者が関わってる可能性があるのが分かってる。
そこも押さえとけ。
それと術符の残りが少ない。
本当に日に一度くらいしか使えんのも覚えとけ。
じゃあな。
[一枚に一気に詰め込み燃やし尽くすと、そのまままたベッドに潜り込んだ]
[向こうも承知したのだろう、その後は叩き起こされることなく時間が過ぎて行く]
─現在・詰所付近─
[外へ出たのは陽も昇り南中へと辿り着く前]
[一夜経っても自衛団長の姿はやはり見つからなかったらしい]
[詰所では団員が動揺を隠せず何やら言い合ってるのが聞こえて来る]
……こりゃ一波乱起きるか?
めんどくせぇな、こっちに捕まるのも御免だぜ。
[中には入らず窓から詰所の中を覗き見る]
[怪しい奴を捕まえて連行する、などと言う言葉も聞こえ]
[呟きながら軽く眉根を寄せた]
[昨日己が青年に向かって事件解決のため協力する、と宣言したことを知っている団員も多いだろうが]
[頭に血が上った人間は何をしでかすか分からない]
[風貌から目をつけられる可能性は十分にあった]
随分とスリルのある仕事になりそうだ。
戦場ほど危機感はねぇが、な。
[そう呟くと気配を消したまま詰所から離れ]
[広場へと一旦足を向けた]
─詰所付近→広場─
─広場・噴水傍─
[先日のように噴水傍の段差へと腰掛け]
[今回はいつもの手巻きタバコを作り口に咥える]
…さて、とは言え誰から調べるべきかね。
小僧を完全に手駒にするなら、姉を調べて安心させるのも手か。
[そう呟くも、もう一人調べておきたい人物は居る]
[奴ではないと信じておきたいところだが、現状それを裏付ける根拠が無い]
[しばらくの間、手巻きタバコをふかしながらどちらを調べるか思案し続けた]
―回想・裏通り―
[二手に分かれて向かった下街]
[アーベルの知名度は予想以上だったり]
[途中でライヒアルトと顔を見合わせてしまいそうになる]
[そんな場面すらあったかもしれない]
[それでも欲しい類の情報は集まらなかった]
[団長の目撃証言も普段と同じ場所でのみ]
[上がらない成果に苛立ちそうになる]
仕方が無い、この辺でやめておこう。
これ以上は余計な厄介事を増やしそうだしね。
[アーベルの行動範囲を確認して溜息をつく]
[周囲から向けられる視線は不穏なものも混じり始めていた]
[提案に二人の青年はどんな反応を*しただろう*]
ちょっとオレ、上から見てくるよ!
[それからどれくらい歩いただろうか。
始めたのはまだ朝だった筈なのに、随分時間が経った気もするし、そうでもない気もする。
お腹がくるくると鳴ったのを誤魔化すように、少女はぴょいっと道端に置かれた木箱に飛び乗り。
油か魔法のランプが吊るされた背の高い街灯をよじ登ると屋根へと上がった。
煙突掃除を生業とする彼女に取って、簡単なコト。]
[まるで軽い口調だったのに、返ってきたのは低い声。
そのときは、そうね、と相槌を打つばかりだった]
[それから暫く歩いて、少女は言うなり街灯を登っていく。いつの間にか中天に昇った陽が隠れるくらいの高さに辿り着き、小柄な姿は屋根の上。]
こぉら、危ないじゃない!
[彼女の生業を知っていても、そんな言葉がついて出る。弟を見ているから、条件反射のようなものだった]
でも見えないトコも見なきゃ、だろ?
オレは大丈夫、煙突掃除人だぜ?!
[へっへ、と鼻の下を擦ってエルザに笑って見せ
少女は洗濯物を下げる紐に手をかけ、更に上へと上って行く。]
[表通りを回りながら、目撃情報を集める
だがしかし、犯人もさるもので、芳しい結果は得られない
必死そうに聞き回るカヤを後ろから見つつ]
……やっぱり、必死になるよね
うん、家族っていいものだ
[優しそうな笑みを浮かべてそう呟く
そして、エルザの言葉には、苦笑いを浮かべ]
うん、まったくだよ
一人旅をしていると、特にそれが実感できちゃって
こう見えても、色々と苦労してるんですよ
……だから、弟くんには必要以上に噛みついちゃった
ごめんなさい、てあとで伝えといてくれると嬉しいな
[たははと笑いつつ、エルザにそう頼んでおく]
いいと思うけどなー、女性扱い。
……あーあ、アタシなんて性別以前に子供扱いだもん。
[エルザに羨望の眼差しを送り、また道行く人に聞き込み]
え、上?
[器用に屋根へと上がるカヤを見上げ、感嘆の息]
性別や立場なんて関係なく、
“その人だから”言う人も、いるんだけどね――
[そう独りごちるように言ったのは、いつのことか。
不意に吹き抜ける風に、縛った髪が煽られ押さえながら頭上を仰ぐ。閃く白布に眉根が寄った]
―裏通り―
[勝手知ったる様子で踏み込む裏通り。
ベル、という、ここでだけ通じる名で呼びかけてくる知り合い相手に、団長の事を問い歩くものの]
……やっぱり、か。
[手応えらしきものは得られずに、嘆息する]
よっぽど……って事、かな。
[零れた呟き。
行けるぎりぎり近くまで行ってもなんら情報を得られない、という事は、よほど周到に事がなされたか、強い『力』がかけられているか。
もしくは両方。
周囲から感じる視線の険しさも、それを裏付けているような気がした]
だ、ね。帰らせてもらえる内に帰らないと、ここらは怖いから。
[ハンスの提案に、軽い口調で同意する]
……俺もあんまり、ここでいざこざ起こしたくないし。
[そこらはわりと本音で。戻ろうか、と動き出そうとした時]
「……ベル」
[先ほどまで話を聞いていた男が、低く呼びかけてきた]
ん……なに?
「……あんまり、裏の事に深入りするな。
お前はあいつの一番のダチだったし、いいヤツだとは思ってるけどよ。
お前はやっぱり、表の住人なんだから、な?」
[諭すような言葉に、一瞬浮かんだのはどこか寂しげな表情。
でも、それはすぐに*消え失せて*]
……進展ないわね。
[半ば予想はついていたといえ、有力な目撃情報は得られず]
ほんと、どこ行っちゃったのよ。カヤ残して。
見つけたら文句の一つも言わないと気が済まないわ。ぜーったいに見つけ出してやるんだから。
あ、すみませーん、ちょっと聞きたいことがあるんですけどー。
[自衛団長の行方が知れないとの噂が街中に広まるのは、そう遠くない話だろう]
[いなくなった者を探すうち、
いなくなったという話は広まっていく。
上げていた視線を落として、唇に指を添えた]
「おい、何をしているんだ」
[女性ばかりの人探し集団はよく目立つ。
声をかけてきたのは、自衛団員の男だった]
─広場・噴水傍─
[どうするかを決めかねて]
[別の考え方からその判断をしてみるかと思考を巡らす]
[己が術について知る者は今のところ居ない]
[明かすべきことでも無いし、明かしたところで信じてもらえるかと言えば微妙]
[ただ、結果的に調べたことは後で伝えなければならぬのだから]
[今情報を教えることになる対象に伝えて信じてもらいやすい人物を選ぶの適切か]
[尤も、結果如何では逆にこちらが疑われる可能性もあるのだが]
……となると、選択肢は一つしかねぇな。
[己が行動は決まった]
[どんな結果が出ようが、己のやることは一つ]
[胸ポケットから予め作っておいた手巻きタバコを取り出し]
[馴染んでいるかのチェックを始めた]
[女達が口を開く前に、男は言う。
素人は余計なことをするな。
我々の担当だ。
噂を広めて不安を煽るつもりか。
頭を失い冷静さを欠いているのは、よく見て取れた。
楽師たる女は反論はせず、黙して団員を*見返した*]
…よ、…
[マフラーに口元を隠したまま、エルザの前の男を上から見詰める。
するするとサルのように壁や柱を伝って、ぴょい、と
男とエルザの間に立つように、飛び降りた。]
不安を煽る心算なんてねぇよ。
あんたらはそれを解消するのが仕事だろーが!
[男は、団長と共に住む少女を知ってか知らずか。
キッと、少女を睨み見下ろしてくるのを、
少女も負けじと男を睨み上げる。]
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