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かわいくっても……!
[ぎりぎりでよけられた拳は、開かれ。
ぐっと掴まれる。
その瞬間、――無我夢中で繰り出した。
足を、股間に向けて。]
………ん、なん、
わかんねぇよ、
[いつもと同じようで、違う仕草]
ただ、今のスケさんは、
…おかしい。
[無意識に、仔犬から手を離す。
地に降り立った彼は、鳴き声をあげた]
[ぐ、と。相手の服を捕らえた。その感覚を確かめると、
相手の身体を引き寄せようとして。]
…っ、な、
[ちょ、待て。
無我夢中とは言え、繰り出される攻撃に。
思わず、ギリと掴んでいた拳に力が入る。
パリ、と。僅かにプラズマが指先から放たれて]
ふーん。
[鳴き声をあげる仔犬を一瞥し、]
変わらないって言ってんのに。
…まあ。
如何でも良いか。
[ポケットに、携帯を持ったままだった手を突っ込んだ。
かさりと、何か擦れる音。]
[小さい女が攻撃するなら、確かにそこが一番だが。
なんともえげつない攻撃に、バチっと、嫌がっていたはずの彼の力が。
かすかに痛みを覚えるものの、それよりまずはそこにめがけて思い切り足を振り上げて――あたった。
どれだけ痛いかなんて知らないったら知らない。]
変な力使う奴の、味方して。
[携帯の代わりに握られたモノは、薄く。
腕を延ばしたまま横に滑らせ、丸い釦に指を置いた。
――刃が飛び出す。]
……もしかして、イチ君なのかな?
[……だがしかし!
そんなことを考えるはずもなく。
本気の力で振り上げた足のおかげで、悶絶している彼の頭にめがけ、
ぐっと右手を振り上げた。
言葉はない。]
………は?
[問いかけの意味が、わからなかった。
ただ。
視界の端で、刃が、煌めくのが見えた]
―――リュウ、逃げろっ!
[反射的に、声を飛ばす。
その分、相手への反応は遅れた]
[人間の中で鍛えられない急所への攻撃で動けないところへ、そうするなど。
えげつないに決まっているのだが。
それは少女には関係なく。
幾度も幾度も、叩きつける。
口元に笑みが浮かぶ。
どこかでばりっと音がした。]
[それは彼の最後の抵抗だったのだろうか。
だけれど身にうけていたとて、そんなことも気にならなかっただろう。
いくどもいくどもいくどもいくども、繰り返して叩きつけるバトンは、銀に赤がこびりついて。
ふりあげるたびに跳ね上がった赤が、白のワンピースに新しい花を咲かす。]
あはっ……
おわ、った
[やがて最後の一撃を加えると、口元に満足げな笑みが浮かんだ]
[バトンの攻撃を何度も何度も受け続けた頭は、既にその形をとどめてはおらず。
色の薄かった髪はどこか黒くも見えるか。
日のひかりが彼だったものを照らす。
ふと痛みを覚えたけれど、それはすぐにまぎれた。]
[元より、返事を待つ気など無く。
仔犬には目もくれず、刃を握った手を相手の胴へと突き出した。
その目は既に、親しい友人を見るものではない。]
あは、せんぱいが、そうだったんですかねぇ?
だったら、カタキウチにも、なるのかなぁ?
マァ、どっちでもいっかぁ
[くすくすと
口唇はあかく
頬も赤く
白の服も、その手も、使い慣らそうとしていたバトンも。]
体洗わないとなぁ……せっかくの服だったのに、もったいない
あ、せんぱい。
[しゃがみこんでその顔――と思われる場所を覗き込んで]
パスタ、本当においしかったんですよ。
それじゃぁ、ありがとうございました
[*真っ赤に染まった足跡が、扉へ、階段へと向かった*]
[避けきる事は出来ない。
それでも半身を捻り直撃を避け、刃は脇腹を掠める。
痛みが走った。]
………シャレ、なんね…っ
[構わず、横に転がった。
荷は邪魔だと判断して、肩から外す。
取りやすい位置に入れてあった獲物―――
幾らか刃の長い鋏を抜き去り、
後の荷物はヨウスケ目掛け投げつけた。
牽制にしかならないが、そのうちに体勢を立て直そうと]
[飛来する荷を避けようとし、けれど移動は間に合わないと判断したか。
刃を持たぬ腕でそれを受け止めた。]
……ッ…
[堅い物がぶつかる音。鈍い痛みに眉を顰める。
荷はそのまま落ちて足許に転がった。]
[逃げる、という考えは思いつかなかった。
低い体勢から地を蹴り、自ら、相手に向かう]
………んなトコで、死ねねぇっ!
[鋏の持ち方は、本来の用途ではなく。
横から握り、切っ先を相手に向けて突き出す。
それでも狙ったのが胴体ではなく腕だったのは、
躊躇いがあったか]
[声に大きな鋏が迫るのを視認した。
荷に気を取られていた先程の今で隙は大きく、咄嗟に荷を受け止めた腕をそのまま鋏の前に。]
―――ぐ、
[先程よりも鋭い痛みに、喉の奥から微かに悲鳴が洩れ、それでも無事な片手には刃が握られたまま。
肩口目掛け、小さな刃を振り下ろす。]
[溢れる赤に、手が止まりそうになる。
直ぐに手を離して下がればよかったのに、
生じた躊躇い故にそれは叶わず、
気付いた時には刃が迫っていた]
『―――やば、』
[膝を曲げてしゃがみ、
身体をバネにして相手の懐に潜り込むようにして、
体当たりを仕掛ける。
自ら一撃を受けに行く形にはなったが、
刃は肩口を浅く切るに留まった]
…!
[あかい血が見え、自らのそれに妹を重ねたか。瞳の色が翳り。
体当たりをまともに食らい、衝撃に少し下がった。何とか倒れずに踏み止まりはしたものの、刃は相手の肩口を掠めるに止まり、握る手が僅かに緩む。]
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