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実験室。途中で声をかければいいか。ありがとうノーラ。
[石像と化した人達やユリアンを置いて行くのがつらくないわけではないけど。口に出さない。でもずっと忘れない。傷みとして思い出すだろう。]
ううん。生きるって決めたもの私。
ここに、みんないるもの。
[手で、胸を押さえる]
全部、覚えてるから。
[足を引きずる音が聞こえて、ノーラのほうへ寄る]
ノーラさん、一人で歩ける?
足、動かないの?
[補助をしようと横に立つ]
[ライヒアルトの笑みに、返す笑みは自然にあふれるものになった。]
行こう。生きる為に。
[強引にと言うのには頷いて、強く手を握り返した。]
[矛盾している。
生きたい――会いたい。]
……っ
[ベアトリーチェが、優しいこの子が大切で]
[苦しい][我慢して][生きていても][―――]
ごめん…なさい。
[生きるために、という言葉。
頷く。
手を握り返す感触に、感じるのは、こんな状況でも安堵]
……ああ。
なんとしても、生きて。
先へ。
[頷いて、歩き出す。
先に進む事は、過去を断ち切る事に繋がる、と。
今は、そう思えていた]
[謝ったのは今は動かない彼に向けてのもの。
視線だけ一度、そちらに向けて
そっと胸元に手を置いた。
――ちゃんと いる、と確認するよう。]
[支えようとしてくれるベアトリーチェに頷いて]
無理をしすぎたみたい。
でも、貴方が居てくれれば歩けるわ。
私は貴方の目となるから…
貴方は私の足を助けて。
…行きましょう。
[生きましょう。]
[謝る言葉が聞こえた]
ノーラさん、あのね。
エーリッヒさんに怒られるのよ。
エーリッヒさんは、自分が石になったことで、それでノーラさんが生きることをあきらめたりしたら、きっと怒るわ。
エーリッヒさんなら、待っててくれるのよ。
だから、生きなきゃ、駄目。
みんなのために。
でも、最後に会って行きたいのは、私も一緒なの。
エーリッヒさんもだけど。
まあ、壊れるだろうね。
[ベアトリーチェが濁した言葉を]
[口にする]
[生きる]
[守る]
[ノーラとベアトリーチェの言葉]
───そうだね。
[ハインリヒの言葉]
[少しだけ思い出す]
[エーリッヒは誰よりもみんなが生きてくれる事を望んでいた。家族の期待、兄の面影、仄かに視えた彼の過去。
優しくて、時々、ずるい笑顔を浮かべていた。]
……
[逢いたい。逢いたい。
「我慢」しようと―――想いを堪えた。]
[『……多分、自分が我儘かもと思うことが、
甘えるってことかもしれませんね。』]
…ぁ、…
[彼の言葉が頭の中で蘇って、遅すぎる理解。]
[また場違いだって笑われるだろうけど、言いたい事がある。一歩一歩、歩きながら言葉を紡ぐ。]
ね、ライヒ。病気、治って帰れたら。あたしと……。
[紡ぐ言葉を止める。どれほど低い確率だろう。それを思うと口に出せなかった。]
やっぱり、いい。無事だったら言うから。
[ピシリと体の中で音がする。蝕まれ侵されてゆく。涙が溢れるけど、声に湿っぽさは出さないように。]
―実験室―
[まだ、まだ、生きてる、と思った。
何か様子がおかしい…。]
[でも立ち上がりたいけど、
それこそ、全身石になりかけているかのように重くて。]
[ノーラの言葉に頷いて、瞼を開ける。翡翠は変わらず光を映さなかったけれど、ノーラを見る瞳は焦点があっていて]
うん。
生きるの。
[微笑むと、歩き出した]
……治って、帰れたら?
[途中で途切れた言葉。
天鵞絨を数度瞬かせ、蒼を見る]
……何なんだ、まったく。
中途半端にされると、気になるだろうが。
……どうした?
[追求の言葉は、唐突に止まった歩みに途切れる。
続けられた言葉。
天鵞絨は、数度、瞬く]
[時間は許さない。
彼がわたしたちに生きろと言うのなら]
――…えぇ。
[焦点の合わない翡翠を見下ろして
屋上の方を目指して歩き出そうとする。
彼に別れの言葉は言わない。
心の中で生きているのだから言う必要はない、と。]
[――身体が重い。
痛い。
痛くない。
一歩離れたところで立ち止まる。
《――生きるために》
それがいま、支えの言葉。
もし、そう伝えられたなら
かれはうらむだろうか。
それとも、困ったように笑うのだろうか。]
……会わなくて、か。
[零れた呟き。
天鵞絨は、休憩室の方へと移ろう]
多少、遠回りになるが。
……寄り道、するか。
挨拶くらいは、せんと。
ノーラさん、少し、遠回り、しよう?
屋上までなら、そんなに掛からないもの。
[そう言って、足を向けるのは休憩室のほう]
[天鵞絨を見つめる蒼は、ただライヒアルトを映す。]
気になるなら、生きよう。本当は、あなたから言って欲しいけど。
[瞬く天鵞絨に目を細める。それが移ろえば目を伏せ、繋いでいた手を離す。]
いってらっしゃい。
[誰かが側にいるな、と思った。]
[視界に移る、金糸の髪]
[ああ、わかりやすい]
……議員……なに……か
[何か起こっているみたいです]
[休憩室の方へと行きたがるようなら悩んだ様子。
この足で、走って――15分あれば、おそらくは。]
…解ったわ。
[ライヒアルトとナターリエが実験室へと向かうようなら
後で必ず会おうと、2人に言ってから、一度だけ心配そうにナターリエを視た。]
[―――― アルフェラッツが 白く輝くアンドロメダ。]
ライヒアルト…彼女を、護って。
―石像の前―
…… ――アルドルフ
[ころした。わたしが、断ち切った。]
…断ち切ったからには
……責を負うのよ
[守る。彼女は――その中に、
きっと、自分を入れられないでいる。
いばらが守るのは、――“自分以外”]
…… ――まもりますわ。
[そうして、初めてだろうか。
柔く、悲しげに、けれど確かに、微笑んで見せたのだ。]
[そう、本能的というより、職業的な勘で]
[わかる、何か不穏な空気……]
[こんな状態でも、]
[失われていない感覚]
[離れる手に、零れるため息]
……一緒に行く、という選択肢はないのか、そこで。
俺は、もう。
手を、離したくはないんだが。
今までに。
手を離したものを、悉く失ってきたから。
[困ったように言うのは。
先の記憶の交差のためか]
[休憩室へと向かう途中、ハインリヒの石像の傍、ブリジットの姿。その声。何を言っているのかは聞き取れなかった]
待って、ノーラさん、ツヴァイさんに、お別れを言っていくの。
[足を止めて。先ほど首を絞められた、場所。ハインリヒの虚ろな目も、表情も、何も見えていなかったけれど。
その温かさは、覚えている]
ツヴァイさん、あのね。
……。
ありがとう。
[手を離したのは、他のおんなのひとを見るライヒアルトが見たくなかったから。でも。視線を感じて見れば、ノーラがこちらを見ていて聞こえる言葉。
ぎゅっとライヒアルトの手を握り治した。]
行く。あたしも離れたくない。だから。
[ノーラ達が休憩室から出てくれば、入れ替わるように休憩室へ。イレーネのところへ。]
……。
…………。ツヴァイさんのこと、忘れない。忘れられるはず、ないの。
だって、、。
[言わない、言えない。言った気もしたけれど]
……じゃあ、もう時間がないから、……さよなら、だよ。
[頭を下げる。
そして歩き出した]
[祈るような、ノーラの言葉。
天鵞絨を細め、そちらを見やる]
……わかってる。
決めた事だから。
[短い答えは届くか否か。
握り直される手。
向かう先は、ピアノの傍で石と化した少女の元。
鍵盤に触れるものがないためか他に理由があるのか。
周囲は、静かだった]
……そういや、言うのを忘れてた、な。
お前の演奏。
綺麗だった。
[紡いだのは、ごく短い言葉]
[散っていく人々]
[其々思うところがあるのだろう]
[この城に遺される"未練"たち]
───。
[瞳を細めた]
[僅かな羨望]
[自分には]
[解りえない、感情]
[だから]
[足はゆっくりゆっくり]
[屋上に向かう]
[まるで]
[自分の居場所を求めるように]
[休憩室、その階段の傍にその石像はあった。あの時と同じ姿のまま佇む、エーリッヒの姿。
近寄って、手を伸ばす。
触れるとやはり硬く冷たいまま]
エーリッヒさん、ノーラさん、連れてきたよ?
でも、今からここから連れて行くから、ごめんなさい。
エーリッヒさんの声、好きだった。
色々助けてもらったの。
まだ、エーリッヒさんのところにはいけないから。
[足音が遠くなる。
たたずんで、白い石と化したハインリヒから
眼を離さなかった。
虚ろを秘めた常緑の、いばらのいろをした眼。
いばらの花は咲く。
いばらの花は――咲く
ちいさく、唇が動いた。
撫ぜて離れた手。
落ちた雫。
幾粒か、幾筋か。]
─ 実験室 ─
[眠りに落ちると言うより、徐々に天国の階段をのぼって行くようなダーヴィッドの様子に、沈黙していた。
自分が伝えた意思を。腕の中で落ちる途中、ダーヴィッドが彼に伝えようとした言葉を。ぐるぐると考える。選択を迷う。
当たり前の事だが、自分自身の命は一つしかなかった。
瞬きの回数が多くなり、金の巻き毛は蛍光灯に反射してキラキラ光り、自分では邪魔に感じられる。]
ダーヴィッド?
何かが、起きて──いる。
[そう言いたいのか。実験室まで音は響いていなかったが、時間が無い事は理解していた。]
[2階、階段を下りれば、すぐにオトフリートの姿があるだろう。それでも、足の悪いノーラにそこまで無理はいえなかった]
先生、温かい言葉を、ありがとう。
[いつも、温かかった、その手のぬくもりを忘れないように]
−屋上−
[風が強い]
[嵐の前の静けさ]
[なんだろう]
[胸騒ぎ]
[鋼鉄の羽根を見上げる]
[四枚羽]
[かしゃん]
[ファインダーを覗く]
[写真を撮る]
[風に、煽られて]
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