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すぐに戻るよ。
[少女には笑顔で告げ、立ち上がった。
少し離れた所に、眼鏡の娘とホラントの姿。]
ホラント殿…少し、いいかな?
[話しかける顔は、厳しい騎士のそれ。]
[月明かりと、揺れる灯。
緩やかな旋律に踊る影。]
妖精の宴って……こんな感じなのかな……
[そのうち、ツィンカが舞を終えれば]
……よし。
それでは探しますか。
[立ち上がり、気合を入れる。]
[手を離したホラントは、好き勝手に小川のほとりで探し物。
ゲルハルトが主に近づいてゆくのには気付かず小首を傾げ]
ええ、空の月と小川の月・・・吟遊詩人さんの髪もかしら。
・・・あら、どうかしました?
[元通りの眼鏡姿で、惚けた声を上げたマリオンに瞬く。
月下の舞の美しさに見とれて足元に何かあったのかと]
[ルイと視線があったような気がして。
一度振り返れば、ルイは月を仰いでいた。
ツィンカの舞も終わっており、視線を戻す]
うん…え?
[小さく頷き。
しかし、こっち、と立たされれば、目を瞬かせる。
そしてようやく気付くか]
確かに、大変だけど…
そんなに転びそうに見える?
[何処か、それは拗ねる様で]
―小川―
[誰よりも先に見つけ出そうと駆け出して、けれど、聞こえてきた歌声に、また唐突に足を止めた]
相変わらず、ルイくんのうたはキレイだねぃ。
[ほにゃっ、と笑って、小さな声でその童謡をなぞるようにくちずさみ]
そう言う意味じゃなくて。
[拗ねるよなマルガレーテに苦笑が零れた]
万一を考えてだよ。
小川の淵って、草があると境目が判りにくいからさ。
僕がこっちを歩けば、足を取られたとしても僕が落ちるだけで済むだろ?
あ。
ええと、ええと。
な、なんでも。
[ドロテアさんに見惚れてた、と言えるような質ではなく。
逃げるように、月下の舞へと視線を戻してみたり。
こちらもこちらで、見惚れる美しさがあったりするのだが]
あ、んーん、気にしないっ!
すっごく綺麗だったし。
[戻ってきたツィンカのごめんね、という言葉にはふるる、と首を振って、また手をつないだ]
[後ろから聞こえる少女の声に、微笑み手を振った。
そしてまた、厳つい顔に戻ってホラントに話しかける。]
君の畑が我が君の領内にある事、
知らぬわけではあるまい?
[驚く男を子供たちから少し引き離すよう、
木立の中へと連れ歩く。]
・・・あら、まあ。
[少し遅れて近づいてきた影に気付き、主と騎士を見比べる。
言葉を差し挟むことなく、奉公人らしく離れて後方に控えた]
[傾いだ首と同方向の少女の頭。
薄らと細めた瞳は笑みの形にも似て]
求めるものはなあに?
誘惑の迷宮
[アナから離れた視線は一時クルトへ向かい]
ミルク色の霧の彼方
確かな愛が欲しい
[口ずさむヒルダに流れた視線は、
その言葉に応じ、礼のように一度伏せられた]
……あれ?
[そうこうしている間に、横を通り過ぎて行った騎士。
なにやら、難しそうな雰囲気に、こてり、と首を傾げる]
……なんか……難しい話、してる……のかな?
[ぽつり、と呟いて。
問うような視線を、ドロテアに向けてみたり。
でもきっと、まだ少し、顔は赤め]
冷たいこのつま先を
白鳥の羽根でくるんで
[つい、と離れ行くホラントを遠目に見遣り]
「月の宮殿」の王子さまは
貴方に似た瞳で笑う
[銀糸に眩しげだったドロテアへは青が向く。
ち、と小さな声を残し]
[薄らと細まる瞳
じっと窺っていただけに小さな変化にも気付く
笑っているように見えて、少女も釣られ微笑。]
…誘惑のめいきゅう?
[本当に小さな声で、呟いた。
歌の内容は良く解っては居ないが。
ただ、綺麗だと感じるから詩手の動きを追う。]
…
[クルト、ヒルダ、と一拍遅れて同じ人を見る]
・・・、・・・。
[ゲルハルトの厳しい表情と言葉にオロオロと視線が揺れる。
けれど口を出すことなど出来るはずもなく]
・・・若様。
[小さな声が零れたのは二人が木立の中へと分け入った後]
万一、って…
それだと、イゾルデが濡れちゃうじゃない。
[今度は困ったように、口を尖らせる]
確かに、その。嬉しい、けど…
私の代わりに、って。いうのは。
なんだか、やだ。
―回想―
えー、俺が面倒見られる方なの?
イズーみたいに器用じゃないけどさ。
[やっぱりそこは気になるか。
口をとんがらせながらも、ヒルダと手つなぎ森の中]
そうだね、あっち。
マリオンも覚えてるし迷いはしないだろ。
[幼馴染に頷いて、ヒルダに手引かれ川へと走る]
・・・あ、はい。
きっとお仕事のお話ですわ・・・。
[少年にまで心配させてはいけないと、小さく頷いてみせる。
落ち着かぬ視線が辺りを巡り、青い小鳥と目が合った。
語られる言の葉と、「ち」と鳴く声に眉が下がる]
[皆が居る場所から離れ行くゲルハルトとホラントには気付けず。
意識は目の前のマルガレーテへと向けられたまま]
その時はその時さ。
僕はマルガレーテがびしょ濡れになるよりマシだと思ってるから。
…やだ、って言われちゃうと、流石に困っちゃうよ。
[口を尖らせる様子に苦笑も零れたままに]
”満ちては欠ける
宇宙を行く神秘の船
[音色は唐突に転調する。
三拍子の音を覆うように長く伸びやかに]
変わらないものなど無い、と
語りかけてくるよ”
[声を上げたヴェルナーへと流れて。
また、伏せられる]
[開く瞳はアナに落ちる。
再び同じ音色に戻るまでを細めた瞳が添って]
……お仕事の話?
んじゃ、邪魔しちゃダメ……だよねぇ。
[こてり、と首を傾げて。
落ち着かない様子に、持っていたランタンを一度、下へ置き。
肩には手が届かないから、なだめるように腕を軽く叩いてみた]
ん。
[少女に声を掛けられ、振り向く。]
はい、アナちゃん?
[見れば、傅く騎士の姿はなく]
おや、どうしたんでしょうか……
[視線を彷徨わせると、ゲルハルトは丁度ホラントを従えて木立へ入るところ。]
[刻まれる円舞曲に、舞う紅の衣を見つけたのなら、そちらにも、にへらと]
ツィンカくんもキレイなのだよ、うん。
あれだね。
旅人として、僕も一芸身につけるべきか悩むところだねっ!
[普段よりも抑えた声は、未だ紡がれる歌に配慮して。
そうして、また微かな声で同じ歌をうたう。
ルイの視線に気付いて、少しだけ照れたような笑みが浮かんだ]
[ゲルハルトとホラントに気付かず。
口を尖らせたまま、遠くを見つめていた]
そりゃあ、あたしもびしょ濡れになりたくない、けど。
だからって、イゾルデがびしょ濡れになっても良い、ってことじゃない、よ。
[カタ、と、手の中のランタンを揺らし]
どうしても、って言うなら。
川よりもう一歩。こっちで歩いて。
―小川―
さすがは詩人さん。
[月下で歌うルイを見て、少しの間聞き惚れた]
でもヒルダさんも上手だね。
[小さく口ずさまれる歌を聞き、ヒルダを振り向きにこりと笑う。
深刻そうな空気にはまだ気づかないままでいた]
・・・ええ。
直にお話は終わりますわ・・・
[「邪魔しちゃダメ」との言葉に頷きを返し。
ランタンを置く様子を眺める。
そうして少年が腕を軽く叩いてくる仕草に、目を丸くして]
・・・ありがとうございます。
[少し落ち着いた様子で、礼を囁いた]
こんなに月が蒼い夜は 不思議なことが起きるよ
どこか見知らぬ森の中で さまようわたし
[再び伏せる瞳。
肩の青はぱさりとひとつ、羽ばたいて]
[――間近のアナは気付くだろうか]
こんなに月が蒼い夜は 不思議なことが起きるよ
[ただ月光を浴びているだけにしては。
随分と鮮やかに銀糸が煌いていることに]
[告げられた言葉に頬を掻こうとして、ランタンで手が塞がっていることに気付く。
少しランタンを掲げる形になりながら、続く言葉に観念したよに頷いた]
分かった、そうする。
[小川から一歩陸地の位置に立ち、これで良い?とマルガレーテに訊ねた。
掲げる形になったランタンの光が、柔らかく微笑む表情を照らす]
だよね、難しい話ばっかりじゃ、疲れちゃうし。
[にこぱ、と笑ってこくこくと頷く。
落ち着いた様子の礼の言葉には、照れたように頬を掻いてから、またランタンを手に取った。
ふわ、ふわり。
光が揺れる]
― 小川傍の木立 ―
[子供らや、若者達の声が届かぬところまでくると、ホラントに話しかける。]
さて、ホラント君。
君には礼を言わんとな。
[言葉とは裏腹に、先程よりさらに険しい顔でホラントをねめつける。
ホラントの目が丸く、丸く開き、口がぱくぱく、ぱくぱく動く。
もう…あぁ、もう、我慢できない。]
[こんなに月が蒼い夜は 不思議なことが起きるよ]
……
[繰り返される一節に少女はぽーっと見惚れながらも
ぼぅやり月を見上げた。
銀月が柔らかく空に浮き、微笑んでいる。]
……?
[ゆっくり詩手に視線を降ろすと。
ようやくその銀糸が月光を浴びている以上に、
自ら煌くかの様な鮮やかさを放っている事に気付く]
『あっははははははは!
びっくりした?びっくりした?
もう、おにーちゃんってば金魚みたいな顔するんだもん。
"おじさん"の真似するの無理だよぅ。』
[騎士が騎士ならぬ高い声でケラケラ笑うと、
騎士の背からふわりと舞う金の粉。]
『おにーちゃん、皆を集めてくれてありがとう。
お礼に、おにーちゃんから宴に招待するよ!』
[王に授かった呪法を唱えると、ホラントの足元に円く穴があいた。
穴は様々な色が混ざり合い、虹色に輝く。]
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