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たから。
じゃけ、きれいなんじゃなぁ
ゆめも眠ってまうんじゃろぅなぁ
[うれしそうにこくり]
[うなずいて]
みんなで見よ!
ご飯食べたら、もっときれいかもしれん!
[*はしゃいで彼女と館へ戻るか*]
全ては選ばれし時より決まっておるか…
[はらり空色が解けるを眺め、ふわり月白を頭に被る。]
選ばれしは、望みしゆえではないであろうに。
選ばれなくば、なんと呼ばれたのであろうの…
[衣覆うその刹那に、慈しむよに琥珀は蜜を見つめたか。
されど衣はゆるり面を隠し、僅かに唇動くが見えようか。]
着替えの手間がいらぬであろ?
…さて、我はゆくとしよう。ではな。
[声音はいささか不似合いか。
ふわり衣翻して立ち上がり、*すいと廊下を滑り消ゆ*]
〔晴れし空には幾重にもかさなる光の帯、
幼き童の手を引きて黒衣の女は野を歩む。
日が暮れども闇の訪れねば夜無きやう、
刻の移ろひをいずこかへ忘れ置きしやう。
館へと戻れば変わらぬ童子らの出迎えて、
雨露に濡れし小さき傘は庭にて干されるか。
臙脂の子が夕餉をと座敷へゆくを見送りて、
女は緩く歩みを進め縁側の方へと向かふ。〕
[こぼれそうになった息は薄荷茶とともに飲み込まれよう。
澄んだ月の白の残像に蜜色をはらりと揺らしながら]
…さぁ、のう。どうであったのか。
[椀を静かに置き、つぶやく。
薄い朱鷺色がゆれるのは蜜色にも確かに見えて]
…淋しいことを申すの。
ああ……またな。
[ほつりとその白を瞳で追いかけ*薄荷茶をもう一口*]
〔紫黒を細めて零せし声は誰へのものか、
たとい答のかへらずとも気にする風もなく。
空の君の声に眼差し移せば見ゆる白衣、
口を閉ざして笑みを象りそれを見送らむ。
童子の運びし茶に朱唇つけ喉を潤して、
されど言の葉交えるでもなく唯静かに。
空を仰ぎ広がりし七色を静かに見つめ、
*耳に届くはいずこよりかの鈴の音のみ*〕
[いつの間に彷徨い出たものか、いつからそこに居たものか、さやさやと吹く風に髪を嬲らせ、男は独り、白き花の野辺に立つ]
[見上げる空には、七色の帯、眩しげに目を細めて、手を翳す]
[てん、てん、とん。
幾度目かの繰り返しの後。
ふと、小窓より差し込む光に顔を上げ]
雨、止んだのだね。
[独りごちつ、小さく見える空見上げ]
……外にゆこうか?
[お前も外を走りたいよね、と。
小さく呟き、部屋を出る。
人の気配のある場を避けるよに。
足音忍ばせ、館の外へ]
[外へと出でて、空を見る。
広がる色彩は鮮やかに。
紅緋細めつ、それを見て]
……あ。
[駆け出す仔うさぎ、その姿に。
しばし、悩みて後を追う]
[うざきを追って、駆け行く白の内。
やがて、そこには異質な色彩が見えようか。
白の内に、佇む紫苑]
…………。
[何故か、ぴたりと足を止めるも。
仔うさぎが先に進むのを見れば、後を追わねば、と再び足を前へと進め]
[夕食を手早くとって]
ご馳走様じゃぁ!
[座敷から出たなら]
[縁側にたたずむ人たちの姿]
お食事、美味しかったんよー
[にこにこぱたぱた]
[笑いながら手を振って]
[再び外に出てゆくのは、子供の性か]
[水をまだ含む土]
[空には高く橋が架かる]
[橋の根元は宝とゆめ]
きれいじゃぁ。
ほんま、きれい。
[嬉しそうに]
[その視界]
あ。ふうれんさまじゃぁ
[隠された真実は]
[最初からそうであったように]
[不思議な様子にきょとんとする]
[それはまったく己の呼び方に気付いておらず]
虹、見にきたん?
消える前に、ねっこを見に行きとうならん?
[にこにこと話しかけて]
[探し人は見つからず、夕餉の時が近付いて、夕餉の席なら会えるかと、戻る道行その途上、真白き花の只中に、探す紫苑を見かけるか]
なんだ、こんな所におったのか―
[そのまま近付かんとするその途上、臙脂と濃色の童を見つけ、ぴたり足を止めたるか]
ええと、確か風漣と―音彩だったか?
[自信の無きは人伝に聞いたのみ故か]
[新たに呼びかける声に。
遠くへ向けし紅緋をそちらへと]
雅詠のにいさま。
お散歩なのですか?
[雅詠に問うは、いつもと変わらず。
しかし、もう一方からの問いには。
なんでもないよ、と短く言うばかり]
[問いかけに、ゆる、とまばたく。
どこか虚ろな面持ちは、呼びかけ方によるものと。
その呼び名されても笑めるのは。
露草色の若人だけと。
言にして語るはできず、ただ、ゆる、と首を振り]
……なんでもないよ?
俺は―と、風漣が先に言っちまったか。
[苦笑を浮かべ]
まあそう言う訳で宜しくな、音彩。
[散歩かと言う二つの問いに]
まあ散歩といやぁ散歩か―ちと烏の兄さんに用があってな。
ほんま?
[何かを感じ取るも]
[それが何かはわからず]
[……というよりも己の違いを感じてはいないからだが]
なぁんもあらへん?
[尋ねて]
ふうれんさまが元気のうと、おらぁいやじゃぁ
よろしうね、がえいにいさま。
[心配そうな眼差しと一転]
[にこにこと笑顔をにいさまへ]
からすにいさま?
[ちょっとぼうっとしていたらしい大兄を見て]
[きょとん]
烏のにいさまに?
[雅詠の返事に二人を見比べ。
それから、仔うさぎが烏の近くに留まるのを見つければ、そちらへと。
それは、何かから逃げるようにも見えようか]
なんでもない、よ?
風漣は……元気。
ああ、そうだねえ。
けどねいろ坊の願いだから、てるてる坊主も聞いてくれたのかもしれないよ。
[言いながら、仔うさぎを追う風漣に、ふと目を向ける]
[草食む仔うさぎの傍らへ。
紅緋は小さき獣へと]
元気だよ、風漣は。
[短く答え、ついだ問いには答えずに。
目を向けられるのに気がつけば、紅緋はそう、とそちらを見るか。
微か、不安を浮かべし色彩で]
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