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…無理はしないでくださいね。
私はミリィの笑顔を見ていると心が落ち着きますが。
苦しみを押し隠して笑うのを見たいのではありませんから。
[立ち上がり、その肩に手を置いて静かに言う。
それから隣の椅子を引いて自分も座った]
さあ、私たちも少しは何か口にしましょう。
身体を動かすのも何かを考えるのも、活力源が無ければできませんからね。
[ふと、治療が終わって見渡してみると、随分と人が減っていた]
あれ……?
話し合いは、もう終わったのかな?
考えてみれば、私、何もしてないな。
はは……。
何しに来たんだろ、私。
[役立たず、才能無し。
そんな言葉が頭に浮かんだ。
頭を軽く振って、暗くなりそうな気持ちを、無理矢理に奮い立たせ、笑ってみせる]
[オトフリートの言葉には]
……大丈夫。本当に苦しいときは笑えないから。
そんときに、助けてもらえれば、それでいいよ。
……それから、やっぱ私、家に戻るね。
ご飯。家にあるから。それ食べなきゃ、母さんに怒られるよ。
それに、絵の続きも、描かなきゃいけないから。
じゃ……また明日。
[立ち上がり、笑顔で手を振って、走って誰も待つものがいなくなった*家へと戻っていった*]
滅亡や終末の芽は容易に見つかる。
何故か。無数にあるからだ。
蓋が天でなく地にあれば――
ああ。有限であるからこそかい。それも真理。
そうする事にするよ。
[語りを一旦止め、ハインリヒに。有難う、とは短く言って。それから暫くは食事をとったり、ノートに何かと書き綴ったり、また語ったりして過ごしていた*だろう*]
そうですか。
…何かあったら呼んでください。
すぐに行きますから。
[家に戻るというミリィに付いて行こうかと一瞬思ったが。
常に共に居るというわけにもいかない以上、笑顔で手を振る姿に頷いて見送ることしか出来ず]
いいのですよ。
女の子には一人の時間も必要というものでしょう?
[こちらを見てくるティルに苦笑を返しながら座り直す。
しかし実の所自分にも食欲は無く。水と干し葡萄だけを頼むと、それをかなりの時間をかけて飲み込んで*いった*]
-娼館・自室-
[目が覚めたが、ベットから起き上がることは出来なかった。
ころと横になり、その手の中に有る物を握ったり見たりしながら、小さく息をついた。]
…駄目、かな。
[そう、ぽつりと* 呟いた。*]
−回想/昨晩・厨房にて−
[そもそも普段調理は姉二人に任せているのだから、アーベルがこうして進んで厨房に入る事自体珍しい。理由は二つばかりあったがー
訝るエルザにはノーラを見ていて欲しいと言いくるめ、その場から遠ざけた]
さて、と。
とりあえず、スープと軽いつまみでいいかな。
食欲なさそうなのもいたから。
そっちは……玉葱よろしく。
[鍋やら材料の準備をしつつ、やって来たユーディットに任せるものは、若干酷い]
[昨晩。
物珍そうに若干きょろきょろしながら、アーベルの後について厨房に入った。]
ここってこんな風になってたんだー……。
[アーベルに声をかけられれば、慌てて頷き]
ん、わかった。玉葱ね?
みじん切りにしちゃって良いかな。
[確認しつつ、]
……野菜切る以外のこともできるから遠慮なく言ってね?
[一応、釘を刺してみる。]
客は入らないからねえ。
[そう広くないとは言え、二人が入るには申し分のない広さ。ユーディットの近く、まな板の置かれた場所に、玉葱を乗せる]
いや、スープ用だから薄切り――
と思ったけど、御不満ならミートボールでも作る?
[釘を刺す様子に笑う。
自分はと言えば、じゃがいもの皮向きをしつつ]
で。
[短く、話題の転換を告げる声]
ユーディットって、人狼に詳しいの?
村の人間じゃないにしちゃ、反応が大きかったからさ。
あ、そっかそっか。
[容赦なく玉葱を微塵に切りかけていた手を止め、薄切りに切り替える。]
ちゃんとスープだって作れますっ。もう。
[むう、と少し頬を膨らませてみせながら、玉葱に向き直った。
アーベルの次の言葉には、ああ、と納得したような声を出す。
さくさくさく、と包丁を動かしながら]
話したいことって、それだったのね。
別に皆の前で聞いてくれたって良かったのに。
[わー辛い、と玉葱の刺激からか鼻の前に手を当てたりしつつ。]
詳しいっていうよりね。
ここに来るまでは、私は人狼に仕えてたものだから。
んー……もっと正確に言うと、飼われてた、の方が近いかな?
[さくさく、と玉葱を切る音が響く。]
酷かったよ。
喉がからからに渇いてるのに、水一滴貰えなくて。逃げることも許されなくて。
水が欲しかったら、人狼の命令通りに動くしかなかった。
生きるためって思ったら、人って何でもできるものね。
多分あの頃の私って、狂ってたんだと思う。
[口調はあくまで軽やかに]
幸い、結社っていう機関から派遣された人たちが助けてくれて、心身ともにリハビリしてくれてね。
元通り、とまではいかないけど、今ぐらいには回復できたから良かったけど。
それは聞きたい事。
話したい事は別かな。
[それだけなら、皆の前でもいいんだけど。
そう付け加えつつ、芽を角で抉り取り、慣れた手つきで、包丁で皮を削いでいく]
へえ――飼われてた?
[水を張ったボウルに、一先ず剥き終えたじゃがいもを放る]
なるほど、ね。
……それは災難だ。
[手を止め、軽く肩を竦めた。同情を示すでもなく、世間話の態で]
それでかな。
イレーネの告白もすんなり受け止めたの。
普通は胡散臭いって言いそうなものだから。
ああ、話したいことはまた別件?
[ちらっと横のアーベルを見て]
そう、災難。それも特大級のね。
[こちらも肩を竦めてみせる。
そこには、かつての過去を語ることに対しての怯えは見られない。
ユーディットの中ではある程度消化されてしまった話らしい。]
んー、そう……なのかもね。
結社の人だって、私を飼ってた人狼を「見つけた」んだから、人と人狼を見分ける何かしらの方法はあるんじゃないか、とは、薄々思ってたし。
切り終わったら、鍋にバター溶かして炒める。
後、作り置きのクルトンがそっちにあるから。
[話しながらも確り指示は飛ばす。
じゃがいもを幾つか投げ込んだボウルの淀んだ水を流して、千切りに]
確かにね。そうでもないと、お手上げだ。
この村には伝承があるから、割と皆信じてるみたいだけど。
――でさ?
俺にもそういう力がある、
って言ったら――どう思う?
[手を止め、薄い笑みと共に、ユーディットに視線を投げたのは一瞬。
すぐに再開して、切ったじゃがいもは水に漬け、ピーマンとパプリカも同じように、切った]
はい、了解致しました。シェフ・アーベル。
[指示には冗談めかして返し、言われた通り鍋を火にかける。]
伝承か。なるほど、それで割と皆、人狼って存在を受け入れてるのね。人狼、それなーに?って人も、世間には多いけど。
……ん?
[何か含みを持った話題転換の声に、アーベルの顔を見る。]
……アーベル、も?
[ゆっくりと目を瞬かせた。]
え、アーベルも誰が人狼かわかるの?
それって……。本当に?
だって、それだったら、イレーネと力を合わせればあっという間に人狼を見つけられるじゃない!
[勢い込んでアーベルに向き直る。]
どうして皆の前で言わないの?
昨日、言ったと思うけどね。
俺は自分の興味で動くって。
[それは、探偵と称されたときに発した台詞。あの時には、他愛のない会話でしかなかったが。
当人は至って冷静な素振りで、料理の手を進める]
他にも理由はあるけど。
人狼も含まれているかもしれないのに、
皆の前で宣言するのは、襲ってくれって言うようなもんでしょ。
誰が人狼か、その牙に太刀打ち出来るかすら解らないのに。
後、俺が言っても嘘臭いだけだろうし?
[現実主義。客観的に見れば、そんな評価だろうと思った]
……そういえばそうだったっけ。
[昨日の会話を思い返しながら。手が留守になっていたことに気付いて、(焦げ付きかけていた)玉葱を炒める作業を再開する。]
ん、そうか。人狼を見つけられる能力がある人は、それだけ人狼にとって脅威なわけだから……。
……あ、人狼には1対1じゃ勝てない、ってことだけは教えておくね。人狼自体が言ってたし、結社の人も言ってた。
特別な力でもない限りは無理だ、って。
だから、アーベルがそうやって能力のことを隠してるのは……うん。良いアイデアかも。
[真面目な顔で同意した。でもそうなると、名乗っちゃったイレーネの方が心配だね、と独りごちる。後半の言葉には、呆れたように]
……嘘臭いって。まあアーベルってちょっと底知れないとこあるけど、でも……。
[言いかけて]
……待って。嘘、って。
[忘れていた、可能性。]
ねえ、アーベル。人狼が嘘ついて、「人狼を見つける力があるんだ」って名乗りをあげる、ってことも、もしかしたら。
流石。
探偵助手志望は、聡いね。
[ようやっとユーディットに向き直った彼の、笑みは深い]
同質の力を持つ者同士が同じ場所にいるのと、
片方が嘘を吐いているのと――
さて、何方の可能性の方が、高いんだろうね?
それは……。
[深い笑みを湛えたアーベルに、言葉を詰まらせる。
自分たちを見つける力を恐れる人狼が、こんな大事になっているときに何もしないでいるとも思えない。
とすれば、圧倒的に後者の可能性がはね上がり――]
……じゃあ、アーベルはイレーネを疑ってると。
そういうことね。
[ため息をつく。]
用心はして置くに越した事はないからね。
[遠回しの肯定]
最後に信じられるのは自分だけ――
結局は、そういう話だよ。
[笑みを軽いものに変え、フライパンを手に取る]
[アーベルがフライパンを手にとれば、ユーディットもスープ作りに手を戻し。]
……わかった。教えてくれてありがとう。
で、ひとつ聞いてもいい?
どうして私にそれを話したの?
私だって、人狼かもしれないのに。
[信じられるのが自分だけというなら尚更、と付け加える。]
これで俺が死んだらユーディットが人狼、
……なんて遺言残しとけるなぁと思って。
どうせ喰われるなら男より女に、でしょ。
[冗談めかした言い様をしながら、油を敷く]
まあ――敢えて言うなら、
ある意味言い当てたからかな。
探偵って。
ところで。
鍋、焦げてない?
[気にかかり、訊ねてみる。
失敗していたら、エーリッヒ専用になることは間違いなかった。
いつの間にいたのか、白猫はそんな光景を見て、*暢気に鳴いた*]
[アーベルの冗談ぽい口調に、さきほどから真顔で固まっていた表情が緩む。]
一応考えてはいたのね。
安心していいよ、私は人狼じゃないし。
[あー、でも、これは誰でも言える台詞か、と少し考えながら]
言い当てた……って言うには、まぐれ当たり過ぎるけどね。
まだアーベルが偽っていう可能性も一応、あるにはあるし。
[言いながら、けれど、既にアーベルを信用しかけている自分に気付く。]
……ん、まぁ、ありがと。
これはまだ、私から他の人には言わない方がいいんだよね。
[確認をとりかけて、アーベルの指摘に、え、と鍋を見下ろす。
数瞬後、ユーディットの情けない悲鳴があがり、数分後にはそれはもう順調に、修復不可能なスープが出来上がることとなった。
がっくり項垂れるユーディットと異様な匂いのスープに、エーリッヒはどんな顔をしただろうか。
白猫のにゃあという平和な鳴き声は、その場に*酷く似つかわしいものだった。*]
[厨房の方から微かに届いた悲鳴。
それは何か、危機感めいたものを感じさせたのか、物思いを打ち破る]
今の……って。
[ユーディだよな、と小さく呟く。
嫌な予感――『現状』から鑑みれば、至極暢気で日常的なそれが、ふと過り。
それが的中したと知った時の表情は、どこか諦めたような、でもどこか安堵しているような、*なんとも表しがたいものだったとか*]
[食事というには微妙な食事をする間も視線は動く。
見分けられる力を持つというイレーネに、奥へと入っていった二人に。時折何かを考えるように手が止まる]
伝承の通りなら。
他にもまだいらっしゃるはずですよね。
[低い呟きは近くにいた者にすら聞こえたか*どうか*]
―昨夜―
[疲れたようなイレーネを支え続け。
食事をする様子に、頼んであった自分の料理を共に食した。
その間に技師の晩飯も用意してもらい。
イレーネが食べ終わるのを待ってから、代金を払い宿屋を出た。
その足でイレーネを娼館へと送り届けて。
中へ入って行くのを確認してからその場を去った]
……晩飯、持って来た。
[工房へと戻り、技師に晩飯を渡して。
いつものように自室に戻ろうとしたが、思い直してその足を外へと向ける。
技師が「どこへ行く?」と声をかけて来ると振り返り]
…ちょっと涼んでくる。
……逃げやしないよ。
[技師の心を見透かしたかのような言葉を発し。
相手が息を飲むのを後目に外へ出た]
……逃げられないなら、真っ向から向かうしかないよな。
負けるもんか。
[工房傍にある木の根本。
そこに座って寄りかかり、天を見上げながら呟いた。
新たな決意は、宿屋での決意と共に、しっかりと胸に*刻み込まれた*]
……いたたたた……。
[左手の痛みはいまだ治まらない。
痛くて、苦しくて、涙が止まらない。
それでもミリィは、絵の前に座り、続きを描き続ける]
……絶対。描き上げてみせるんだから。
人狼ってのが、もし本当にいるなら、私の命だって、いつ尽きるか分かんない。
―――死ぬ直前に後悔するような真似だけは、したくないから。
何もかも、中途半端なままで終わりたくは無いから。
せめて、この絵だけは……描きあげてみせる。
[痛みに耐えながら、ミリィが一心不乱に絵を描き続ける。
一見、昨日と同じ様に見えたが、
それは、
覚悟を為した者の、*強い意志が見えていた*]
―診療所―
[坑道の一つが崩れるという事故があったらしい。
その場では手当てしきれなかったという鉱夫が運ばれてきた]
道具を貸すだけでもいいですが。
時間も経っているのではそうもいかないでしょう!
[武器となりそうな物を手にしたままの男達に言い返す]
不安ならば周囲を囲んでいればいい。
たとえ人狼だったとしても、背後から一度に襲い掛かられては敵わないでしょうからね。
[苛立ちの篭った口調で言い、診療台の上で怯える患者に近付く。
傷口を覆っていた布を取り状態を見て、盛大に顔を顰めた]
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