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[斜線上を通り過ぎ、びたんと音を立てて地面に落ちた。]
……邪魔なんて、あ
[フユが上体を起こして見ると、サヤカは桜の樹に叩き付けられた所で、]
外さないように。
…──『憑魔』。
[窓の外へと意識を向け続ければ続けるほど、
チリ、と何処か焼け付く様な感覚が続く。
この感覚が導き出す「答え」をぽつりと零して。
途端、窓から飛び出して駆け出すマコトに、僅か目を見開く。
頭の何処かでは、行かなければならないのだと、判っているのに。
──ギリ、と僅かに奥歯を噛締めて。
と、突如扉を開け放つ音に、其方へと思わず視線を向ける]
……センパイ、
[ヒサタカに仰向けになって受け止められている人物に、
思わず目を見開いた。]
[勢い良く腕を叩きつけて桜の樹までサヤカを弾き飛ばし。
振り返ると同時に跳躍する]
ねがいを叶えるのには力がいるの。
手を伸ばさなければとどかないの。
[薄く微笑んだまま。
サヤカの言葉は届いているように思えない。
だが何故か一筋だけその目から何かが零れて]
ちから、ほしい。
それ、ちょうだい。
[目の前に降り立つと。
躊躇い無くその心臓へと腕を突き出した。
鋭い爪を具えた手を]
[仔犬を抱えていたためにぶつかるかと思われたが、
扉を開いた張本人より支えられて、床に着く事はなく。
伸ばされる手に、一瞬怯えが走ったが―――
それはすぐに消え、幾度か、目を瞬かせる。]
[サヤカが桜の木に叩き付けられ、ヨウコが爪を突き立てようとするのをフユの向こう側に見ると]
!! やめろぉぉっ!!
[そう言って、横に跳躍すると一か八か空中でヨウコに向かって弓を放つ]
…大丈夫?
[一瞬の怯えには気付かなかったか、隣で支える人と同じ問いを重ねた。
それからその大柄な先輩に向かって、小さく頭を下げる。]
[背後で、窓を開けて飛び出したマコトの気配は感じたが、支えたショウを放り出して追うわけにもいかず、振り向いて、アズマを見る]
……一人で行かせちゃ、危ない。
──…っ、
[ヒサタカの言葉に、一瞬、躊躇いに視線が泳ぐ。
僅かに息を呑んで、吐く。ぐ、と胸元を握り締めて]
…、判った。
[センパイの事ヨロシク、と短く告げると
そのまま、マコトの後を追う様に窓に手を掛け、外へと]
[冷たく言い放ちながら、左腕で伸ばされた腕を払いのけ掴もうとするも……払いのけることすらできず。深々と異形の爪が左腕に突き刺さる。]
―――――――――!!!
[声にならない叫び。]
[それでも、とっさに右の手に握り締めていたそれ―七味唐辛子と胡椒を混ぜ合わせたものを包み込んだラップ―を爪で引き裂き、ヨウコのおでこに向けて投げつけた。]
[既に、今の彼女を動かしているのは生への執着心のみだろう。]
……、大丈夫っ、
[一瞬力の緩んだ隙に、
仔犬が抜け出して地に降りた。
自由になった腕で、支える手を払って、
自らの力で起き上がろうとする。]
……ァッ!
[腕に刺さった爪を引き抜こうとすれば、何かが額に当たって。
そこから広がった粉は目に入り、視界を奪う]
―――ァァアアアッッ!!
[意味を成さない悲鳴。
それでも本能はまだソレを求めて。
否、ダメージを受けたからこそ、更に強く。
爪を振りぬき、即座に突き出す。
それは違えることなく左胸に吸い込まれて。
引き抜いた緋い果実を口に含む。
頭の後ろを掠めた矢すら気にならない様子で。
その味を堪能する]
[解放された事を知り、立ち上がる。
外の騒ぎに、ショウは気づいてはいなかった。
しかし風に乗って、微かに耳に届く咆哮―――
幻聴かとも思ったが、自然と、身体が震えた]
……、…サンキュ。
[小さな感謝の言葉は、
ヒサタカとヨウスケ、両方に向けてのもの。
ビニール袋を半ば引っ手繰るように受け取ると、
仔犬を促して、その場から逃げるように駆け出した]
[耳を覆いたくなるような悲鳴もお構いなしに。残る力を振り絞って、右足を蹴り上げようとした瞬間、其の時はやってきた。]
[痛みと言うよりも焼ける様な熱。]
[何が起きたのかも理解できぬまま、ごぼりと口から血を吐き出しながら、霞む目は自身の左胸に深々と突き刺さる腕を視認する。]
[追いかけて来る足音に、余計、速度は上がる。
けれどそれは焦りを呼び、
階段を駆け上がろうとして、バランスを崩す。
最後の一段を登ったところだったのは幸いか、
慌てて手を突いて激突を免れるも、痺れが走った]
………ってぇ。
『ああ…そうか……あはは……。』
[なぜかこみ上げてきた笑いを吐き出したいのに、吐き出されるのは溢れる血のみ。それでも、貫く腕の先に微かな笑みを向け、声にならない声を呟く。]
『さようなら哀れな子。貴女は何も手に入れてないわ。』
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