情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
少年 ティル に 3人が投票した
小説家 ブリジット に 1人が投票した
シスター ナターリエ に 1人が投票した
ランプ屋 イレーネ に 7人が投票した
ランプ屋 イレーネ は村人の手により処刑された……
次の日の朝、青年 アーベル が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、教師 オトフリート、神父 クレメンス、少女 ベアトリーチェ、少年 ティル、陶芸家 アマンダ、貴族 ミハエル、小説家 ブリジット、騎士 ダーヴィッド、シスター ナターリエ、職人見習い ユリアンの10名。
[その微笑に、手を差し伸べた瞬間、封護の力は荒れ狂った。]
…イレーネっ!!!
[母の封印を破って、暴走しかけたその強大な力に、封護結界は反応してしまったのかもしれない。
手を伸ばすが届かず、空間の割れ目に引きずり込まれる様になすすべもない。]
[アーベルに、答えようとした時には、その姿は、うねりに呑み込まれ消えていた]
なんというか…無差別ですか?
[呆れたような、声]
[不安に、ただただ、ユリアンを見上げていた苗床は、
その力にようやく目を離す。
手は離さずにただ、見る。
消えてゆく、竜の姿。
そして、心の魔と対峙していた水の精の――]
……アーベル?
[自分に水の気を与えてくれていたかれの姿が消え。
呟くように名前を呼ぶ。]
[落ちてきた力に、とっさに反応しようとしたものの]
……くっ!
[目眩が走り、その場に膝をついた。
予想以上に消耗した身体は、場の状況に対する事ができず。
今、癒した同族と。
流水の精霊が、うねりに取り込まれる]
……イレーネ……アーベル……。
[掠れた声で、名を呼んで]
!
[身構えていたからか、昨日よりもハッキリと力を感じ取れた。
消えてゆく気配は二つ。水の同族と、生命の竜と。
そこで目を見開いた]
え?
[自分で思っていたのとは違う感覚に驚いて]
−墓地−
[やって来たうねりは、イレーネを飲み込んだ。
アマンダは、ただただそれを見ていることしか出来なかった]
…ィレー…ネ……
[イレーネから見れば、お得意さんとランプ屋という関係だけかもしれない。
けれど、アマンダにとっては彼女は確かに友人だと思っていて]
また…間に合わ…なかった……
[皆の輪からまだ少し遠いその場に、へたり込み、俯く。
千花はその腕から定位置へとよじ登り、その頬を静かに舐めた]
[喪失感。
対なる流れる水も、その力に呑まれ…。
目の前で消えた同族と、傍らで消えた対なる気配と。
胸の奥で燃え上がろうとする憤りを、拳を握り締めて必死で抑える。
己の力は強すぎる。荒れ狂えばどうなるか判らない。]
[力の奔流に思わず目をつぶり。
存在する手のひらの感覚に安堵しながらも、
その目ははっきりと消えていく二つの存在を取らえていた]
イレーネさん、アーベルさん…。
[ぎゅっとティルの手の握る力が強くなった]
[掴もうとして伸ばした腕の
閉じたままの拳を開く。手の中で生まれて砕けた氷塊の、欠片が落ちる。]
オトフリート。
お前が”歪み”を引き寄せたのでは無いか?
……落ち着け。
[拳を握り締める若竜に、小さく呟いて]
……俺が、ですか。
何故、そう思います?
[それから、ミハエルの問いに、静かに問いを投げ返す]
…あの歪みは、書を封じていた、封護結界のものだと言ったな。
結界の力が書を取り戻そうとして動くものだと。
そうであれば、書を求めて、力を求めて動くのだろう。
竜の封印を解けば、巨きな力が動く。封護結界を、誘導する事が、刺激する事が出来るだろうな。
[火竜に相対するかのような、抑える風もない静かな怒りを言葉に乗せて]
[今の感覚をどう伝えたらいいのかと。
悩んでいる所にミハエルの声が響いた]
”歪み”を引き寄せた?
[ぐるぐる。
取り乱しはしないものの、疑問で頭が混乱しそうになっている]
[大きな歪みが今回飲み込んだのは]
……今度は、アーベルさんとイレーネさん?
!? くっ……
[突如襲う激しい頭痛にその場に*膝をついた*]
[...はそっとティルの手を離した]
はな、大丈夫か?巻き込まれなかったか?
[そっと呼びかけると、三つ花の蝶が二人の周りをひらひらひらり]
ナターリエさん!?
[握られていた手を強く下に引かれ、慌てて支えようとする。
力が足りずに一緒に座り込むような形になったけれど。
今度は意識的に力を流してみながら、視線はミハエルとオトフリートの方に再び向いて]
ああ、確かに。
俺が知る知識では、そうなっている。
論理的にもそれで間違いはないだろうが。
[静かなままに、投げられた言葉を肯定した後。
一つ、息を吐いて]
それは、つまり。
俺が同族を見捨てれば、誰も失われなかったのだと。
そう言いたい……と、解釈していいのかな?
もう一つ付け加えるなら、俺自身の刻印は解いてはいない。
解いていたなら、右目を失い、今頃はありえない形の龍がここにいる。
[返す言葉は、静かで。
氷精に向けられる紫と翠の眸には、僅か、哀しみらしきものも浮かんでいたか]
−Kirschbaum・一階−
[小さな肩に、ショールがかけられます。影輝の王であるハーヴェイは、力のうねりを感じ取ったことでしょうか。ベアトリーチェが睡りに落ちる間際、そのからだからなにが離れていったことも。もっとも、それはすぐに紛れてしまったのですけれども。
残された今のこどもは、まるで空っぽの器のようでした。]
[風の子の手は離れ、苗床は大丈夫だよ、というように微笑み。
左の瞳の金の亀裂は、消えることはないのだけれど。]
はなは、僕の中にあるから。
どこへゆくも一緒だ。
……あ、ケイ。
[まだ戻していなかった茎を呼べば、それは苗床の身体に引き寄せられ、勝手に中に入るだろうか。]
[遠くから耳に入り、通り過ぎていく言葉たち。
けれど、掠めた名前の一つに顔を上げる。
その頬に涙の痕はない。片頬に千花の舐めた痕が薄く残るのみ]
…オト、が?
竜の、封印を…解く?
[アマンダはその時いなかったから、均衡の保たれた影輝の王の下にいたから、判らない。
わかっているのは――]
……オト、あの時、どうして――遺跡に居た、の。
何かしてた、よね?
・・
未だ、何も起こって、なかったよ…ね?
[声は硬質でひび割れたよう。届いたかどうかはわからない]
あのね、あのね。
イレーネは書を持っていなかったの。
ううん、書に多分触れてもいなかったんだと思うの。
だって。
混沌の気配なんかなかったんだもの。
消えていったのは、純粋な、生命の気配。
[だからあの力は書に引き寄せられて動いたのではないと。
そう言おうとして戸惑った。
ミハエルが言ったのは、大きな力ならば全てということか?]
精霊は和を重んずるもの。
対となるものは、それ自体が和を為すもの。お前などから見れば個々の精霊など些細なマテリアルかも知れないが。
対を侵されたという事は、自身の領域を侵されたという事に等しい屈辱だ。
お前が同族を、助けようとするのと同じことなのだろう。
そのどちらに重きを置くかといえば私は私の視点からしか物を言う事が出来ない。
[アマンダの言葉を、聞いて]
もしお前があれを損なったのであれば、私はお前を容易く赦す事は出来ない。
[時の竜を見やる
その目には困惑の色もあったか。]
虚の世界にしたくないといった時の竜は、
僕にとっては疑うことなどできない。
[かれの言の葉には、それを信じさせるだけの力があったから。
それを信じさせるだけのこころがあったから。]
守りたいものが、大切なものが。
何よりもやりたいことがあるだろうに
それを自ら壊すまねなどせぬだろう
[書を持っていようがなかろうが。
その力があろうがなかろうが。
命の、今はここにない竜のことなど、苗床には関係ない。
かの女に対してしたことは、それなど関係することでないのだから。]
[精霊たちの言葉に、一つ、息を吐いて]
さて、どう言えばいいのやら。
ま、何を言えども、言い訳と捉えられるのを覚悟で、言えるだけを話すのみ、か。
遺跡にいたのは、予兆を感じたからだ。
鍵の書を抱える、封護結界のざわめき。
破られずにすむのであれば、そのまま見守り。
破られたなら、追う。
それがあの場にいた理由。
そして、結界は破られ、書がそこから離れた。
だから、それを追わせた。
[もっとも、それは打ち消されたが、と呟いて]
……己が視点で物を言うのは、当然の事か。
それを責めるのは愚かだな。
どう言ったとて、皆が俺を信じきれるとは思わない。
だが。
俺は、何者の喪失も望まない。
そのための行動を起こす意思など、持ってはいない。
それだけは、はっきりと言える。
−Kirschbaum・一階−
[しばらくして、ベアトリーチェはもぞもぞと起き出して、大きく延びをしました。外の騒ぎなど知らずに暢気なものだ、と思えたでしょうか。けれども辺りをきょろきょろと見回して、こてんと首をかしげます。]
……誰か、居なくなった?
[そう声をかけられたハーヴェイは、少し愕いたかもしれません。ベアトリーチェは、ただのこどもの筈だったのですから。それからほんのわずか、天聖の力とは違うようなものが混じっていたのにも、気附いたかもしれません。]
[ごめんね、と小さく呟いてナターリエの傍を離れる。
そのままミハエルに近づいて]
ね、ミハエルさんも落ち着いて。
昨日はミハエルさんが私にそう言ってくれたんだよ。
言い争ってる場合じゃないよ。
それでも書の力が使われていることは間違いないんだから。
それを早くなんとかしないと!
[ミハエルの傍に寄って必死に言い募る。
許されるのならその手に触れようとしながら]
[ティルの言葉に、僅か、表情は和らいだようにも見えただろうか。
それから、一つ、息を吐き]
……俺は、この世界を失いたくない。
損ないたくもない。
あるもの、あるがままに全て。
定められし輪転の刻が来るまで、見守りたい。
ただの虚。虚無を詰め込んだだけのモノに。
経験という、何にも変え難い宝を与えてくれた、始まりの世界……だから……。
[言葉の途中で、その身がゆらり、傾いで。
意識が途切れる。
周囲で、言葉が飛び交っているのをぼんやりと聞きつつ。
*暗転*]
お前は、底が知れん。
解っているのだろう、自分でも。
[目はオトフリートを見据えていて
体は手の先まで、触れれば熱いと感じる程に冷えて居た。
触れられても、それに気付くことが無い程に。
欠けたバランスの所為もあるのだろう。怒りの所為もあるのだろう。]
お前が虚無を望むことは無いと、思っていた。これまでは。
[落ち着けと言われて
首を振った。
目を閉じ、息を吐く。]
……自分の言った事へ自分が従えて居ないとは。
[アマンダは、ミハエルとオトフリートを見つめる。
交わされる真剣な言葉に、嘘などない…ように見える。
けれど、けれど――それならどうして]
どうして…ハインも…イレーネも……
[「…ここに、いない?」
その言葉は、口の中だけで。音にならず、消える]
[今にも荒れ狂おうとする、己の中の力を押さえつける。
吐息は熱く、胸の中の憤りは鎮まらず。
倒れる同族に、声をかけようとしてとどまる。
手も出せない。
触れるもの全てを焼き尽くしてしまいそうな己の力が怖い。]
[倒れたオトフリートを、支えるでもなく見やる]
どなたか、宿に運んであげてください。
私に触れられたのでは安心できないでしょうから。
[時の竜の倒れるのを見て、
一つ、ふたつ、瞬きを。
近づくその手はかれに触れようか。]
考える時をたがえば、すべては狂ってゆくだろて。
落ち着け、氷の精。
[それはながき時を生きた故の、どこか諦念を含むもの。]
オトフリートさん!
[倒れた彼は酷く消耗した様子で。
先程の一連の力の行使がかなりの負担になっているのだと知る。
それでも冷たい手をしたミハエルから離れることも出来ず。
その手を握りながら周囲を探れば、消耗している者も多いようで]
い、一度戻ろう?Kirschbaumに。
[そうは言ったものの、どうしたらいいだろうかと悩んでいた]
[ふと、ダーヴィットの様子がおかしい事に気がつく]
ダーヴィットさん、どうしたの?大丈夫?
お腹でも空いた?僕、チョコレート持ってるよ。
[尋常じゃない気配に、笑わせようといつもどおりの軽口を叩き、そっと近づこうとする。ふわり、無意識に風をまとい]
自らのみが苦しむものと思うでないよ。
バランス狂えばここの地は、影の王の支配がありきこの地は。
とてもすみにくく変わるだろう。
多くの属性をここまでそろえられるのはかれの力がゆえに。
……あぁ、僕が運ぼうか。蔦なら力はあるだろう。
[ゆる、と背から再び蔦が。
右の手の変わりになるように、倒れた身体を抱き上げる。]
[オトフリートの身体がゆっくりと、倒れていく。
アマンダはそれを、黙って見つめている。
硬い墓石並ぶ地でも、大地はその身を傷つけることなく受け止めるだろう]
…。
[ティルの言葉に、深く細く息を吐いた。]
[消耗したオトフリートの姿に、歯を噛み締めて逡巡し]
[徐々に冷気がひいてゆく]
[ようやく握られた手に気付いて、それを払おうとした]
…近寄るな。
[風の少年を見返す瞳は、縦に切れた爬虫類の眼。]
静めてこないと、何もかも壊してしまいそうだ。
[背を向けて、歩き出す。
暖められた大気が、向こうの景色を僅かにゆらめかせた。]
[ほんの一瞬だけ合った視線は、直にアマンダによって逸らされる。
けれど、対の疾風が歌うように囁く言の葉は、確かに届いていた]
…そう。それも、知ったのだね…
[ティルと手を繋いでいた姿を思い出し、小さく息を吐く。
きっと、アマンダが理不尽な態度だった事も全て知っただろうと]
そうか。
また、今度。
[心の魔に目をやって、苗床はそう言う。
同時にそっと、かれへ、口だけで囁いた。]
『どうしてこうなってしまったのだろうね、君も僕も。人の世界で何をやっているのだろうね。』
[訝しげに、クレメンスの背を見送った。
オトフリートへ言い募った時の物とはまた、違った猜疑を持った目で。ティルに運ばれる彼を見る目は戸惑い]
[そのどちらもから目を逸らして、ブリジットと目が合った。
彼女の手を指差し]
…。人の器は冷気に弱いものだ。
[立ち去るクレメンスを複雑そうな表情で見送る。
彼がオトフリートに投げた言葉。
それを否定するだけの論理的根拠は彼女の中に無く。
その言葉で皆が一気に揺らされてしまっていて]
どうして。
[悪くなってきた状況に軽く唇を噛んだ]
[ゆると持ち上げる蔦の力。
ひきずらぬように気をつけながら、蔦がかれを持ち上げる。
時の竜はそんな乱暴な扱いにも目覚めぬか。]
僕は、ゆくよ。
先に影の王の元へ。
かれを休ませてやらないと。
ここまで消耗しているのは、僕の責でもあるのだから。
えっ?
[指差されて自分の手を見る。
赤くなったそこは少しだけチリチリとした感覚を返してきて]
あれ?
[指先の感覚が消えていることにきょとんとした]
[倒れたオトフリート。
炎が揺らいで見えそうなダーヴィッド。
そして火傷しそうに凍りついたミハエル――と、その手を握っていたブリジットに、ようやく気付く]
ああ…いけない。
安定を、支えを。私はその為の存在(もの)なのだから…
[静かに呟いて、へたり込んだまま前屈みに大地に手の平を当てる]
さあ、永久の眠りを…邪魔しては、いけない。
それに…彼女の血も、還して…あげないと……
[茶色の目を閉じれば、ゆっくりと大地の力が伝わっていく。
砕かれた墓石と、流された生命の血を、大地へと還していく]
[ダーヴィットの視線をうけて、条件反射的に固まる。
が、すぐにいつもの様子に戻り]
あ、忘れていた。ダーヴィットさんは火の竜だっだね。
今の状態からすると、僕の存在は危険だね。
小さな火でも、風で大きな火事になっちゃうから。
まあ、これでも食べて元気出すといいよ。
[ひゅんと、ダーヴィットに向かって手に持っていたものを投げた。こつんとその頭に、シガーレットチョコが当たるかもしれない]
[墓場に満たされる大地の兆しに、...は体を震わす。
安定を嫌う自由の性質が静かに反発する]
ごめんね。僕、アマンダさんのこと知ってたんだ。
ティルに教えてもらって。
僕の存在自体がアマンダさんを傷つけているんだよね。
[ふわっと風が吹く。自身ではコントロールできない力。
ただ彼女の仕事を遠くから眺めることしかできない]
―→Kirschbaum―
[町の中から隠れるように、人のいない道を選んで辿り着いたKirschbaum。
時の竜の部屋は知っている。一つ上の階なのだ。
影の王と一言、二言。
それだけ告げて三階に。
多分梟はついてきてるのではなかろうか。
ベッドの上に、かれを眠らせる。]
う、うん。
[困ったように自分の手とミハエルとを見比べて]
えーと。ナターリエさん大丈夫?
[まだ膝を突いたままの彼女の方を振り返った]
[元々、昨夜無理をして倒れたばかり。
しかも、十分に回復することなく調べ物をしていた。
そして友人と精霊の仲間が消えたことへの喪失感を、押さえつけて支えようとする大地の力――それに対する反動。
それは、彼女の血を大地へと還した安堵と共に訪れて]
…ぁ 「ヂヂッ! アンッ!」
[アマンダの身体は前に傾いだ姿勢のまま、ゆっくりと*崩れ落ちた*]
封は大丈夫か、時の竜。
今は眠ってくれたまえよ。
……かの女は封印の地の中で、少しくらいかの子らのことを考えてくれたろうかね。
[そっと呟いて、かれを置いて部屋を出る。
それから苗床は、階下へと]
―Kirschbaum3F→1F―
[森の奥へと歩み、その先の川へ飛び込むように、その身を沈める。
鱗の浮いた肌は、じゅぅと音をたてたかもしれない。
流れる水に、熱くなった身体を沈め、
見上げた水面には細い月が揺れた。]
−Kirschbaum・一階−
[ティルがオトフリートを連れて上がってゆくのを、ベアトリーチェは黙ってみていました。ぼうとした様子はいつもと変りないのですが、いつもよりも騒がしくはありませんでした。
もう一度降りて来たのに、にこりと微笑いかけます。]
……こんばんわ、ティル。
[首をかたむければ、金いろの髪はふわりと揺れました。]
今日は、誰が、居なくなったの?
こんばんは。
[聖なる気の少女へと、苗床は微笑んで。]
今日は、水の……アーベルと
命……イレーネ、だったかな。
二人がいなくなったよ。
あまり長く放っておかない事だ。
[Kirschbaumへ向かうのであろう人々へ背を向けて、森の中へ入って行く。まだ醒めやらぬ冷気を抑えながら、醒めやらぬ炎の気配を辿り、やがて川へたどり着く。]
[水を浴びるダーヴィッドの姿を見付け]
[河面に手をつけ、ちからを流す。
水面は凍てつき、火竜を目掛けてその範囲を広げていく]
水……、命……。
アーベルと、イレーネ。
[属性のことを云われても、よくわからなかったでしょうか。けれども名前はきちんと憶えていましたから、こくん、と肯きを返しました。]
ああ、約束は、駄目になってしまったのだね。
[指きりをした自分の手に、眼を落とします。ふっと顔を挙げると、じっとティルの腕を見ます。せいかくには、腕のある筈の場所の、なんにもないところを。]
腕。どうしたの?
―墓地―
[ふんわりふわり。三つ花を風で弄んでいると]
[ばさり倒れる音と静寂を切り裂く叫び声]
アマンダさん…!
[慌てて駆け寄ろうとする...に、
千花が前に回りこみそれを阻止しようとする]
…!
そうか、対極の僕が近づけばアマンダさん傷つく。
でも、このまま放置というわけにもいかないし。
[噛み付きそうな勢いの千花を前に、思い悩む]
約束……?
[少し、意識を他へむけていた苗床は、その言の葉にかの女を見やる。
それから、尋ねられたことに、あぁ、と見やり]
これは、終わりの時間がきたから壊れただけだよ。
困ることはないから、大丈夫。
[水面から顔を出し、しばらくぼんやりと流れの中に佇む。
流れがその身体を冷やし、力は静まっていく。
失ったものを補うように、その身を晒す。]
取り戻さなくちゃ…な。
[構造までは知らないが、あの結界のなかには、捕らえたものを逃がさぬ迷宮があるらしかった。]
再封の時に、救出できるだろうか…。
[しかし悩むのはあっさり止め]
とまあ、悩んでも仕方がない。
やったことないからうまくいくかどうかわからないけど。
ティル、はなの力をちょっと借りるよ。
[つうと腕を掲げ、優しく蝶の名を呼ぶと、
薄紅色の光は彼の中指の上に止まり。
その羽を振るわせる]
[ふんわり彼の表面を覆う風。
しかしその風は彼本来の束縛を嫌うものではなく。
大地に根付く、樹の力]
[冷気に気付いて、目をやれば氷の気配。]
…居たのか。
[部分的に鱗に覆われた身体を水の中から引き上げる。]
…だいぶ、落ち着いた。
うん、ありがと。
[森の方へと向かうミハエルを見送りながら手を振って]
ナターリエさん、そろそろ戻ろう?
[声を掛ければようやく彼女も回復してきたようで。
アマンダが倒るのには再び歩みが止まったが、すぐにユリアンが駆け寄り、優しい力を使うのを見て]
お任せすればいいね。
[そう言うとナターリエと一緒に町へと戻って*いった*]
うん、変な人が居たら、教えるのだって。
約束を。
[困らないとの言葉には不思議そうにティルを見ていましたが、椅子に座ったままで、前のように触れることはありませんでした。]
終わりの時間。
……ああ、かたちあるものは、いずれ、壊れるのだね。
[花は散るからこそ、美しい。そう云ったときと、おんなじように。]
変な人?
[困惑の眼差しで問いかけようが、
少し、疲れの色は見えるだろか。]
そう、形あるものは。
僕も、君もかな。
[そう笑った。
*区切りがつくか何かすれば、部屋に戻り眠るだろう*]
[力のあるものならわかるだろうその変化。
しかし今の彼には実感がわかず]
千花、これでいいだろ?
…多分大丈夫だと思うけど。
[彼を見て、千花は黙って頷き道を空けて]
[翠樹の気配をまとったまま、アマンダを抱きかかえ]
さて、気の強い眠り姫を送ろうかね。
[ぶつぶつ呟きながら、しっかりとした足取りで歩き出す。千花もその後についてくるだろう]
そうか。
冷ましてやろうと思ったが
[河岸を、ダーヴィッドのほうへと歩いて、手を伸ばす。
崩れたバランスと怒りに呷られて、乱れた力の細く流れ出る手から、滴る川の水は見る間につららのように*凍っていった。*]
…暖めてくれないか。
このままでは宿へも戻れない。
[凍りついた水面に触れると、それは静かに溶けてゆき。]
水を介して、対なんだろうな…きっと。
[濡れた身体を乾かして、服と鎧を身につける。]
そうだね。
ティルも、ベアトリーチェもだ。
……もしかすると、世界も、なのかな。
[後から小さく呟いた声は、*聞えなかったかもしれません。*]
―アマンダの工房―
[ベッドの上にその肢体をそっと横倒し、
そっと布団をかけて]
しかし、こうしてみるとアマンダさんも普通の大人の女性にしか見えないな。柔らかくて温かかったし。
[素直に思った感想を口にだすと、
千花ががぶりと噛み付き]
冗談だって。僕がここでアマンダさんを襲うとでも思ってるのか。いくらなんでも、そんなことしな…あれ?
体に力…が入らな…い……
[ずるずると彼の体が崩れ落ち、
ベッドに上半身を突っ伏すように倒れこむ。
コントロールしきれない力が、彼の許容範囲を超えたことに気がつく前に、そのまま意識は闇の中へ]
[三つ花の蝶がひらりひらり
*そんな二人を上空から眺めている*]
[差し出した、まだ火照りの残る大きな手を、冷たい小さな手はとっただろうか。
途中で拾った、小箱のチョコレートを、一本相手に渡す。
共に連れ立って*森をあとにした。*]
―昨夜・中央、広場―
触れたのも触れられたのも、とても久しぶりの事だ。
[ダーヴィッドに手を引かれて、街へ戻った。人の子供がするようだと思ったのは、大分後の事だったが。]
[広場まで来て足を止め、ダーヴィッドの手を掴んだままで泉の縁へ腰掛けた。
触れた部分から伝わる熱が、余剰な冷気を打ち消す。]
[水が生まれて、繋いだ手から雫が落ちた。]
もう少し付き合ってくれないか。
鎮めておかないと、無駄に傷付けることになる。
[気持ちと、ちからを]
[*やがて、宿へ戻る。*]
─Kirschbaum・3階東/昨夜─
[翠樹の魔が部屋から去った後。
白梟はしばし、不安げに眠る時竜を見つめ。
それから、ふ、と窓の方を見やって首を傾げる。
しばし、間を置いて。白梟は、歌を紡ぎ始めた]
「いまはおやすみ時のいとし子
巡る輪のうちこぼれし子
わたしの腕のうちにいるまは
皆と変わらぬいとしい子
世を彷徨いし時のいとし子
終わり無きを定められ
御魂の安らぎえられぬ子
今はおやすみただゆるやかに
わたしの腕をはなれたようとも
変わること無きいとしい子」
[響く歌は、彼が幼竜の頃に育ての母が歌ったもの。
幼い器にあわぬ力と知識、記録に押し潰されかけた時、時竜に安らぎを与えたもの。
だからだろうか、やや、苦しさを帯びていたその表情は。
*ほんの少し、安らいで*]
−昨夜/墓場→工房−
[千花が恐れたのは、対極である疾風の力ではなく、それを制御できないユリアンの無意識。
彼に傷つける意図が無くとも、深い眠りにあるアマンダは、それを和らげる事が出来ずに受けてしまうから。
けれど今、彼が纏っている樹の力は、アマンダに馴染み深いもの]
…
[千花は黙って頷き道を空け、アマンダを抱きかかえ運ぶユリアンの後ろを付いて行く]
[千花は、アマンダを寝かせるユリアンを、円らな目で見つめる。
噛み付いたのは、彼が噛み付かれても仕方のない暴言を放ったから。それに関しては、何も知らないユリアンは、まったく悪くはないのだけれど、そこはそれ。
そしてアマンダの上で力尽きたユリアンに、小さな小さな溜息を付いた事も、きっと仕方がないのだろう]
−翌朝/工房−
[窓から差し込む朝の光。その眩しさに、土の床――大地に伏せていた千花は、目を糸のように細めて起き上がった。
ベッドに飛び上がり、アマンダの頬を舐める。
けれど、大地から離れ眠っていたアマンダは、まだ回復が浅いのか、起きる気配は微塵もない。
ユリアンの鼻先も前足で叩くが、帰って来るのは小さな呻きだけ]
「…チチ…チィ」
[千花はアマンダの顔――その器の仮面を円らな目で見つめ、前足を伸ばした]
[千花は小さな前足で、アマンダの頬を幾度も撫でてから。アマンダのしている千の花(欠片)が封じ込まれたとんぼ玉の首飾りを外し、自分の首輪へと重ねて着ける]
「チィ…」 『おやすみ…』
[千花と呼ばれていた小さな獣は、その姿と気配を一つに還し――]
…おやすみ、千花。 ありがと…
[毛並みと同じ色の長い髪に包まれて、ベットの上に座り込み、アマンダと呼ばれていた陶磁器の器(身体)を見下ろしたのは、そこに眠る人形と同じ顔をした*大地の精霊だった*]
−昨夜/ベアトリーチェの部屋−
[ベッドの上にごろりと仰向けになって、ベアトリーチェはぼうと考えごとをしていました。今日学んだことを復習するように、小さく繰り返します。]
違えるものがあるから、
対なるものがあるから、
世界は調和が取れている。
[それから指を折って、なにかをたしかめるように、数えます。]
光が消えて、雷が散って、水が失せて、命が還って。
……ああ、たくさん、崩れてしまっているのだね。
[そばに置いていた、曲りくねった輪を手に取ります。鎖の部分を持って、ゆらゆら、ゆらりと揺らします。表も裏も終わりもない、不思議なかたちの輪。]
ベアトリーチェの対は、居るけれど、居ない。
でも、共にあると、不思議な感じがしたんだ。
[そしてそれが失われると、きっと寂しいとオトフリートは云ったのでした。]
……それは、どんな感じなのだろう。
[ベアトリーチェは一度も、自分から「寂しい」のだなんて口にしたことはなかったのです。だって、ベアトリーチェにはその感情がわからなかったのですから。]
―アマンダの部屋―
[彼は目を覚ます。
一瞬自分がどこにいるのかわからなくて、
不思議そうな顔をするがすぐに思い出し]
ああ、アマンダさん寝かしつけてそのまま力尽きたんだ……。
[目の前で動かないアマンダの姿をみやる。
視界の端にふわりナニカ目に入り、
条件反射的にそちらの方に振り向く]
[そこにはベッドに腰掛けて髪をたなびかせている――]
[ザ・プチパニック]
ちょ……!!
そこのお姉さん、なんて格好なんだよ!
思春期まっただ中の青少年には刺激的だから!
せめて、これで隠して!
[わたわた近くにあったシーツを彼女に被せ、
ぐるぐる巻きにしてみた]
あっ、僕は決して怪しいものでは!
アマンダさんを送り届けたら、うっかり寝てしまっただけで、決してやましい事なんてありませんから!
……ていうか、誰なんですか?あなた。
アマンダさんの双子の姉さんとか。
[パニックすぎてなにやら意味不明なことを早口でまくし立てる]
[アマンダは、どうしてユリアンがパニック状態なのかわからない。シーツでぐるぐる巻きにされて、不思議そう。
その表情には、ユリアンも見覚えがあるだろうか]
ん…? ああそうか、人は服を着なくてはいけないのか。
毛皮が無いって、不便だね。
[観点がおかしいが、アマンダは気にしない。
そして「双子の姉さん」とか言われてようやく理由(の一部)がわかって納得]
ああ…、そうだね。うん。
ティルも、ここまでは知らないかな?
私は、アマンダだよ? 君の、知っている。
眠っているのは…千花に借りていた器(身体)。
私は人の姿をとるのが、とても苦手だから…ね。
姿と意識を交換していたんだ。
[そう言いつつ、首元に手をやり愛しそうに撫でる]
[アマンダの唇に笑みが浮かぶ。仮面で無いその表情は柔らかい]
千花は眠ってる。
今は、私が人の姿を取る、手助けをしてくれているんだよ。
[「私が元の姿で元気な時は、人形に千花を着けてあげれば起きてくれるんだけれど」なんて呟きにも似た説明は、ユリアンの耳を通り抜けて行ったかもしれない]
[頬を赤らめながら、彼は叫ぶ。
多少互いの話が食い違っていても気にする余裕はない]
「アマンダさん」が「千花」で、
「千花」が「アマンダさん」ってこと?
しかしとりあえず人間の女性の時は、男性の前では絶対服を着てください。
そんな綺麗な姿をみせらられたら理性が持ちません。
[本人も変なことを口走っている自覚なし]
−北部・門−
[青い天は今日も遥か彼方にまで続いておりますが、空気はどこか乾いているように思え、町ぜんたいから活力がほんの少し失われているように感じられました。それは力あるものにしかわからない程度の違いだったのかもしれませんけれども。
朝のお祈りもせずに、ベアトリーチェは北の門の近くまで来ていました。こっそり、きょろきょろ、建物の陰から辺りを窺います。こどもが外に出るのは危ないと云われていますから、なるべく自衛団の人たちに見附からないように、そして人ごみに紛れて門番の眼を掻い潜ろうとしていたのです。]
[町ではない、外の世界へ、二歩、三歩、大きく足を開いてあゆんでゆきます。頭の上に広がるそらはおんなじの筈なのに、なぜだか違って見えました。長く続く道の遠くには、古めかしい建物があるのが眼に映ります。あれが遺跡なのだと、すぐにわかりました。]
…… メーラ、足りない、の?
[虚空を見上げながら、ぽつんと呟きます。
けれどもその声は弱くて掠れてしまっているし、緑の眼の光は薄くてぼうっとしていて、少しだけ淡いいろになっていたかもしれません。]
[アマンダはどうしてユリアンが赤くなっているのかわからない。
不思議そうに首を傾げて、説明しようと試みる]
そう、姿と意識は交換してた。
けれど、私は私。かわらない。
君の知ってる【アマンダ】のまま。
…まあ、落ち着け。うん。
[滑らかになったとは言え、いつもと変わらぬ口調で言い切る。
続く言葉の意味はよく判らないが、ベットから降りて背を向けた]
…とりあえず、服を着ればいいのかな?
[そのまま服を取り出し、シーツを床に落として着替え始める。
髪で体の曲線は見えないけれど、余計に目の毒なんて気付かない]
ちょ!人の話きちんと聞いてたのか?
[彼は彼女から目を逸らしつつも、
しっかりと視界の端で彼女を凝縮。
たぶん精霊には理解できない複雑な少年ごころ]
しかし、じゃあ、今なんでそんなに苦手な人型をとってるんだ?
別に今まで通り千花の中にいたっていいだろうに。
……何か人型にならないといけない理由とかあるの?
[...はとりあえず意識を逸らすため、話をふる]
[ズボンを履き終え、シャツを着ながら振り返る。千花の身体は凹凸がないから胸当て着けてなかったりしたけど、たぶん見えなかったはずだ]
ん? ちゃんと聞いているよ?
[アマンダはきちんと聞いている。
精霊なので、複雑な少年ごころを理解できていないだけ]
[人型の理由を問われれば、気まずそうに視線を逸らす]
…あー、うん。
まあ、なんだ…力を二つに分けていると、倒れやすくてね?
迷惑をかけまくっているようだから…ね。
[実際には、自分に力を分けているせいで倒れやすいのを心配した千花が、力を還しただけなのだが。概ね間違ってはいないはず]
…ああ、そうだ。昨夜はありがと、ユリアン。
[最後に上着を羽織ってから、感謝を込めて微笑む]
[人形の中に完全に入らなかった理由はさり気なく誤魔化す。
「君の無意識の力で千花お気に入りの器が壊れたら困るからです」とか言える訳が無い]
[微笑まれて彼は戸惑う。
彼女が彼に笑いかけると言うことなど数日前まで想像すらできなかったから]
まあ、あそこに放置して置くわけにもいかないし。
感謝なら、力を貸してくれたこの子に。
[ふわり、三の花の蝶に意識をやり]
─広場・夜─
[泉のほとりに並んで座る。
ひんやりとした小さな手から伝わる冷気が心地よく感じた。
幼いその姿の、頭を軽く撫でてやる。]
…怖かった。
寄れば溶かしてしまいそうで。
[温もりを求めて寄り添う幼子を受け入れて、気が済んで帰るまで*傍らに居た。*]
[アマンダはユリアンの戸惑いに気付かない。
普通に笑いかけていることに、気付いていないから。
精霊であると――そして対であるとばれてしまった緊張の緩和か、力を一つに還した事への安定かはわからない。けれど、今までのような近づくのも辛いというほどの苦手意識はなくなっていた]
そう、ティルも。お礼を言わないと、ね。
[一つ頷いてから、ユリアンに首を傾げて問う]
――ところで、せめてお礼に朝食でも奢ろうかと思うのだけれど。
ご一緒に、いかが?
[断られなければKirschbaumへ行き、一緒に何か*口にするだろう*]
[服をきた彼女に彼はいつもと違う意味で安堵のため息をつき。「残念」という気持ちはないとはいいきれないが、もし人に指摘されたら真っ赤になって否定するだろう]
そういえば。
「Kirschbaumに戻る」って言ってたんだっけ。
もしかしたら心配してるかもなあ……。
うん、お腹空いたし、朝ご飯食べに行くか。
今の僕、とても食べるから奢らすのは気が引けるなあ。気持ちだけでいいよ。
[多分ハインリヒがこの場にいたら怒りそうな台詞を吐いて、*彼は笑った*]
―朝/Kirschbaum2F―
[昨夜、聖なる少女と話した後、部屋に戻り眠っていた。
力の供給を絶った体は、すこしすこし、普段より重い。
起き上がってしばらくの間は、ぼう、としていた]
―現在/Kirschbaum2F―
下に、おりていようかな。
[つぶやきながら苗床は上を見る。無茶をしたかれの様子を思い出す。]
影の王に食事用意しておいてもらおうか
一応栄養にはなるだろね
―→Kirschbaum1F―
こんにちは。
食事もらえる?
[首をかしげて王に願う。
きっとでて来れば、器用に食事をとって、
そのまま*寝てしまうだろう*
その前に3Fに食事をとたのめるかどうか……]
―Kirschbaum・3階東/朝―
[ふと目を覚まし、傍らを見る。
白梟は歌うのを止め、その顔をじっと見つめた]
ヴィンター……?
お前……ずっと?
[歌っていたのか、と苦笑して。
そっと、その真白を撫でる]
思えば、お前もおかしなヤツだよな……。
俺と盟約を交せば、輪転の輪から弾きだされる。
……滅びすら、得られんと言うのに……。
[なのに何故、と。
問いはしない。
問うた所で、答えは返らないから]
……ありがとな。
[だから、代わりにこう呟くだけ]
……さて……。
これから、一体どうしたものか……。
[壁に寄りかかるようにして、呟く。
*その意識が途切れたなら白梟は再び歌をつむぐだろう*]
―町に近い森・昨夜―
[ゆっくりと二人で歩いてゆく。
ナターリエの歩調に至っては時折止まりがちで]
本当に大丈夫?
[彼女が覗き込もうとすれば、小さな苦笑と共に手を振って否定はしてくれるのだが。
心配を掛けまいとしてか、それとも「もう一人」の意図なのか。
ナターリエはもう一つの気配をしっかりと隠していた]
でも少しおやすみしよう?
[けれどやはり平気そうには見えなくて。
そう提案すると二人はとある木の根元に腰掛けた]
私ね、どうやって説明すればいいのかわからないの。
[困ったような顔で彼女は話し出した]
「何をですか?」
オトフリートさんとクレメンスさんのこと。
どちらを信じるかと言われたら、オトフリートさんを私は信じるの。
「何故です?」
そう感じるから。
でも、説明がむずかしいの……
あのね。
今はみんなの気配が揺れているの。
対の者が封じられたりで、力の均衡がとても取りにくいし。
[それは目の前の女性もだったけれど]
でもね、一人だけ揺れてないの。
それがクレメンスさん。
揺れないままの、大きな気配。
それなのに、揺れていないのにハッキリしないの。
[けれどそれは彼の人が上手に他の気配すら纏ってみせるからでもあって]
混沌の力を感じるわけじゃない。
でも、あの人からは安定した不安定を感じるの。
[矛盾する言葉。それをどう表せばいいのかが彼女には分からない]
このままじゃ、鍵の書が開放されちゃう。
そんなことになったら困るのに。
[混沌の力は本来作為的に操れるものではなく]
鍵の書もまた世界に必要とされてるもの。
均衡を保つためには必要なものなのよ?
でも、みだりに触れていいものなんかじゃないのに。
[困ったようにナターリエを見る]
どうしたら、止められるのかな?
[鍵の書が使われれば、あるいはそれを壊されてしまえば
世界の均衡そのものが崩れる可能性が高い。
それは幼いとはいえ影輝の精霊である彼女にとって、絶対に許されないことの一つだった]
[ナターリエは言葉少なく考え込んでいる。
二人の間に沈黙が降りた]
……本当に、むずかしいの。
「そうですね」
[ポツリと呟く。ポツリと言葉が返る]
うん。
……でも今日はもうおやすみにしないと。
無理はしたら、いけないの。
[散々皆から釘を刺されて。
そして無理をした実例を目の前で見てしまったので]
そろそろいこう?
[肯いたナターリエと共に町へと戻った]
―中央広場・昨夜―
「私は、ここで」
あ、うん。
[そこで思い出した。
彼女が戻るはずの場所はもしかして教会だったのではなかろうか]
えーと。きをつけて?
[それでも自分に伝えられることは伝えたから]
おやすみなさい。
[そう言ってKirschbaumへと戻っていった]
―現在/西の桜・枝の上―
『だからやめろって!本当に何もないから!』
[いろいろ動揺しすぎて、コエが空気を震わせ、
声になっていることに我に返る]
[桜の花びらがひらひらひらり。
三つ花はからかうように彼の周りを飛び回る]
−北部・自衛団詰め所−
うん、大丈夫だよ。
[自衛団員の大人たちの言葉に、ベアトリーチェは微笑って応えます。ぺこりとお辞儀をすると、大きく手を振ってあゆみ始めます。揺らぎはだいぶん収まり、髪も元の金いろを取り戻しておりました。]
[きいっと睨む...に三つ花は。
ひらりと逃げるように...の元から遠ざかる。
とその動きに波長をあわせるかのように突風が吹き、花が風に煽られる。]
[慌てて蝶が彼の側に戻ると突風が嘘のように収まり、
先程と同じそよ風が再び吹き始めた]
―現在/Kirschbaum1F―
眠っていたんだね、僕は。
ごめん
[笑いながら影の王にそう言う。
影の王はといえば苗床のわらうのに怪訝そう]
気にしないで。
とても子どもみたいでもう…
おもしろくてかわいらしいよ
どうみてもコントロール出来てないな……。
今ははなが側にいるからなんとかなっているけど。
どうも「相思相愛」にはきちんとなれてないようだ。
[意味不明なことを口走る]
今思い返すと、僕が感情的になると、
風が吹き荒れたりしていたなあ。
前はアマンダさんを不愉快にさせるぐらいだったけど。
ここ最近は特に不安定だ。
「鍵の書」が奪われてから、特に。
[と...はいきなり渋い顔をした]
[広場のそばを通りかかると、花壇から昨日の花はもう消えてしまっておりました。そこを過ぎて、いつものように「Kirschbaum」へと向うのです。西の通りでは、春の匂を運ぶ風がそよと吹いて、花がちらちら舞っていました。]
[...の顔が半泣きから一気に笑顔になった。
その百面相を見るものはいないのは幸いか]
いくらなんでも自分の引き起こした風で、
枝から落ちるとか「風の申し子」として有り得ないだろう。
それにこの二三日の異様なほどの食欲と眠気。
せめて足を引っ張らないようにしないと。
……でも、どうしたら風をうまくコントロールできるんだろう?
[...が首を傾げると、また風が一段と強くなった]
[ブリジットとの帰路。未だ彼女の頭には煩わしい残響が響く
だがそれをブリジットに悟られないように気を張り、覗き込む彼女に苦しげにも笑みを返す
彼女からの休憩の提案には体の方が求めるか]
[ぱさぱさと髪と服とが靡きました。少し考え込むように首をかたむけてから外れに向って通りをあるいてゆくと、町のシンボルでもある巨きな桜の木に行き当たります。お花見をしている人は、今日はほとんど居ないようでした。]
―西の桜―
[突然、桜の木の上の方がわさわさざわめき出す。
風が突然桜の木から生まれ、枝を揺らす]
[三つ花の蝶が避難するようにひらり。
そのままベアトリーチェの目の前までやってくる]
[すこしやさしくみえる微笑みはどうやら意地悪もまざってはいるらしい]
桜、みにゆこうか
[Kirschbaumの庭の桜はだいぶ散って、新緑が鮮やかだ。
あの樹は今はまだ綺麗だろう]
−現在/Kirschbaumの桜の樹の根元−
[Kirschbaumでブランチを取り、ユリアンから昨夜の出来事を聞いた後、アマンダは桜の木の根元に寝転んで、瞼を閉じていた。
安定を欠いている西の桜の大樹に枯渇したまま近づいては、余計に均衡を崩しかねないとの判断だった。
アマンダは目を閉じて均衡整った大地から力を分けてもらいつつ、先程の話を思い浮かべる。誰かがその表情を見たなら、哀しそうに見えただろう。
大地の育む樹の命が無駄に奪われた事も、友人であるイレーネを同じく友人と思っているティルが傷付けたというのも、どちらもアマンダにとっては辛い事]
…どうして、こう…なったのかな……?
鍵があったのは、もうずっと前からなのに…どうして…?
[呟いても答えは返らない]
[ひらり、降りて来る蝶に、緑の眼を大きく開いて、閉じて、またたきをします。てのひらで小さな器を作って、それを受け入れるように手を延ばしました。]
……翠樹の力?
[ぽつん、確認するように云ったのでした。]
はな!こら!逃げるな!
[蝶が飛んでいった方向、下の方を見ると
ベアトリーチェがいるのが目に入り]
ベアトリーチェ、こんにちは。今日はお花見?
大分桜散ったけど、まだ綺麗だろ?
[桜を散らした原因の三分の一ぐらい責任があるくせに、知らない振りして笑った]
[アマンダは、枝を揺らす風に茶色の目を向ける]
ユリアン…?
[不思議そうに呟くも、動こうとはしない。
もう少し、力を満たしておくつもりなのかもしれない]
[上から降ってきた声に顔を挙げると、そらよりもあおい髪が眼に入りました。]
こんにちわ、ユリアン。
風が吹くのに、誘われて来たんだ。
[それはつまり疾風の力を感じ取ったということでした。そばに近寄ったのなら、魔法を使っている訳でもないのに、ベアトリーチェのからだを天聖の力が薄く纏うように包んでいたのがわかるでしょうか。]
─桜の木の下─
[風に舞う花びらは、静かに地面へと舞い落ちて。
手に残る冷たい感触は、まだそれが残る限り、冷静で居られるように思えた。]
…アマンダ?
[いつもと同じ姿のはずの彼女から、感じる雰囲気が違うのは何故だろう?]
―Kirschbaum2F・西の部屋―
んー?
……痛っ!
[あれからKirschbaumまで戻ってきて。
その時には1Fにはもう誰もいなかったのでそのまま自分の部屋へと戻った。
均衡の取られている空気にホッとしてそのまま寝台に潜り込んだわけなのだが]
うー?
[涙目で見れば、両手が真っ赤になっていた]
[アマンダは、振り返ったティルに微笑んで手を振った。
アマンダとユリアンがKirschbaumに来た時、彼は疲れて眠っていただろうか――もしかしたらユリアンとお話中だっただけかもしれない]
ああ、うん。私だよ。
こんにちは、ティル。おはようかな?
どこか、お出かけ?
[その目は自然と失われた腕へと向いていただろうか。
アマンダはさっきまでティルがその腕を失ったと知らなかったから]
「風が吹くのに誘われた」ね……。
こちらとて意識して風を吹かせたわけじゃないんだけど。
[...は枝からよっこらせ、と飛び降りた。
風を使ってふんわりと着地する……予定だったのだが。
落下するスピードは変わらず、
そのまま重力に引っ張られた。どすん]
……痛っ!
[今までと違う意味で涙目]
ああ、君もいたんだね、火の竜
こんにちは
[昨日よりおちついた様子のかれにわらい
それから地の精に首をかしげた]
こんばんはかもしれないね
ん、君だとわかるよ、アマンダ。とても綺麗だ
西の桜を見にゆこうかと思ったのだけれど
…どうかした?
どうしちゃったんだろう。
[赤い部分と白い部分とが入り混じり。ジリジリとした痛みが走る]
……あ。
[ナターリエとの会話に夢中で、すっかり忘れていた。
去り際にミハエルに「手当てしてもらえ」と言われたことを]
えーと。どうすればいいのかな?
[一つは変化を解いてしまうこと。本性に戻れば恐らく自然と治るだろう。けれどそれをするためには左手の鎖を外さねばならず]
それはだめ。
[均衡の崩れてきているこの状態でそんなことをすれば、いくらこの部屋にいても自分を保つ自信など無かった]
こういうときって、どうすればいいんだろう?
―西の桜―
大丈夫だよ……多分。
[どう見ても大丈夫じゃないのだが、やせ我慢。
いてて……と腰をさする。
蝶はびょこんと...の頭、いつもの定位置に止まる]
[ふとベアトリーチェを見て一言]
なんか、いつもと違うね。
髪の毛でも切った?
[...はベアトリーチェから普段と違う気配を感じるものの、それが「天聖の気」とわかるほど鋭くはなかった]
[アマンダはダーヴィットの驚いたような声に、やはり鋭いなと思いつつ苦笑する]
ん。私だよ、ダーヴ。
ちょっと「千花」に手伝ってもらって、力を落ち着かせたんだ。
[「千花」と言った時に、二連となった千花の玉の首飾りを優しく撫でる。気配を探れば、その意味は概ね伝わるだろう。
腰まで流れる髪は後ろに一つ纏められて、寝転ぶ姿では見えないか]
あー、だれかに聞いてみないと。
[最初に思い出すのは階下にいるここの主だが]
……また怒られそう。
[それはちょっと勘弁だったので]
だれかいる、かな?
[そっと気配を探る。
外の桜の元に、いくつかの気配が。
いつもと違う感触のものもあったけれど]
いってみよう。
[パタパタと階下に降りてゆく。
王には短く挨拶だけして、庭へと出た]
―…→庭へ―
[アマンダは、ティルの言葉に嬉しそうに笑う。
君だとわかると言われた方に。美しいという言葉は気にしない]
ん、大丈夫かな、と思って。
君は、きっと大丈夫と言うのだろうけれど、それでも心配だから。
友人を心配するのは、当たり前。
[アマンダは、ティルの目をまっすぐ見て言い切る。
そして、目元を和らげて]
だから、私の…いや、君を心配する者たちを、忘れないで?
気をつけて、いってらっしゃい。
[帰ってくるようにと含ませて、引止めはしないと手を振った]
−西部・桜−
[ユリアンにすっと手を延ばして腰をさする手に重ねますと、柔かに眼を細めます。]
『天聖はすべてに干渉しながら、なにものにも干渉を受けないもの。
だから、無理にするのではなくて、ほんの少し力の流れを変えて。』
[心の中に響く声を聞きながら、イメージしてゆきます。ここに作用する大地と生命の力とを少し借りて、自らの天聖を用いて流れを変えてゆく様子を。
いつもなら溢れるばかりの光があったのでしょうが、今はぽうとわずかなきらめきが零れただけでした。それでも上手くいったのなら、痛みは治まったことでしょう。]
これで、どうだろう。
[粒子が消えたのを見送って、ベアトリーチェは手を離します。]
ううん、切っていないよ?
[後の問いかけには不思議そうに返すばかりでした。]
[答える彼女の表情は、いままでよりもずっと豊かで。
それだけに、見つけた時の気配の色が、戸惑いと悲しみに揺れていたように思えた。]
大地は礎、大地は安定。
だが、安定とは不変ではなく。
[いつか聞いた言葉を口に。]
移ろいも、揺らぎも、受け入れて、
支える事が安定なり。
俺にこいつを作ってくれた方が、そう言ってた。
[腰に下げた鋼の銃を、抜いて掲げて見せ。]
なんとなく、思い出しただけだけどな。
[それだけ言い残し、*歩み去る。*]
―西の桜―
[どこか別のところに意識があったのか、
...はベアトリーチェに触られたことにも
気づいてないようだったが。
声をかけられ、痛みが消えたことでやっと我に返る]
うわっ、凄い。すっかり痛みがなくなった。
そういや「神の御子」だったっけ?
[...はそっとベアトリーチェの頭を撫で撫で]
[..の撫でる手の上にひらり。三つ花が止まる]
[アマンダはダーヴィットの言葉を、茶色の瞳を向けて静かに聴く。
銃の金気には僅かに眉をしかめるも、重々しく頷いて]
――移ろいも、揺らぎも、受け入れて、か。
押さえつけるでなく、拒むでなく…受け入れる事で支える、か。
いい言葉だね、ダーヴ。…ありがと。
[きっと、見られていたのだろう――そして慰めてくれたのかと。
立ち去る背に感謝の眼差しを向け、柔らかく笑んで呟いた。]
そっか、よかった。
[かけられた言葉と撫でられるのとに、うれしそうに微笑います。けれども、「神の御子」と呼ばれたことには、少しだけ迷った様子がありました。]
うん、そう呼ばれるね。
けれど、そんなことはないと思うよ。
[ユリアンの手の上に止まった蝶を見ながらも、気になるのは別のことで。]
……風邪でも引いたの?
[赤かったかおに対する質問でした。]
―Kirschbaum・庭の桜―
あれ?
[去ってゆくダーヴィッドとティルの後姿を見て]
落ち着いたのかな?
[どちらとも取れない感覚に小さく首を傾げながら呟き。
それから残っている彼女に向き直った]
こんばんは、千花のアマンダ。
[常に共にいた存在と一つになった気配をしている大地の精霊をそんな風に呼んでみて。にっこりと笑った]
[...はさらに撫で撫で]
んー、まあベアトリーチェは神の御子ではないな。
人間の女の子だしね。
[と突然最後の質問に動揺。風がざわめく]
だだだだから!
べべ別に何にもなかったから!
[微妙にされた質問とは違う回答]
[アマンダは、ティルが去ってから、目元を少し哀しげに。
進んだ刻は、戻らない。
樹はいつか朽ちて、土へと還る。
その土が、新たな若木を育てるのだ。
それを知っているから、心配はしても、引き止める事はない]
[それからようやく影輝の精霊に気付き、その呼びかけに微笑んだ]
…ん。こんばんは、ブリジ。
千花は、ちょっとおねむさんだけど、ね。
[アマンダの手は、首飾りを優しく撫でる。
けれど、千花の気に入りの姿のアマンダは、寂しそうではなかった]
[心地良さそうにしていましたが、ざわめく風にきょとん。]
なにか、あったんだ?
[こどもは、ある意味ではとても素直なのでした。]
─Kirschbaum・3階東─
[ふ、と目を覚ます。
一度目を覚ました後、壁に寄りかかったままうつらうつらとしていたらしい]
……と。
もう、こんな時間か。
[呆れたように呟く。それでも動かずかにいた事と、白梟の歌をずっと聴いていた事とで、心身はだいぶ落ち着いていた]
……俺は、もう大丈夫だから。
……食事して来い。ここにいれば、俺は心配ないから。
[歌い続ける相棒をそっと撫でると窓を開け、空へ向けて飛び立たせる]
[樹の下。ブリジットがぽつりぽつりと語る言葉に真摯に応えていく
鍵の書の封印。今そのためには所有者を見つけ出さないといけない
おそらくクレメンスは何かを知っているのだろうが、先ほどの様子を見ると何も話す気はないのだろう]
「……本当に、難しいの」
……そうですね
[そろそろ行こうかという言葉に頷くと、街へと帰っていった]
―西の桜―
だーかーらー!
何もないよって何度も言わせるな!
[...はぺちんとベアトリーチェの頭をはたく。
明らかに八つ当たり]
ん。ベアトリーチェ。
デザートおごってやるから、何もなかったことにしろ。
[三つ花がからかうようにふわりふわ。
蝶にもコエがあったら笑い転げているのは間違いない]
うん、千花のおかげ。
[アマンダは笑って、ブリジットの言葉に不思議そうに首を傾げる。
けれども、素直に頷いた]
いいよ、なに?
[その時、飛び立つ白梟の影が落ち、なんとはなしに上を見る]
さて、と……。
大丈夫とは、言ったものの……。
[果たして、階下まで歩く気力はあるか。そこが問題。
取りあえずはと乱れた髪を整えようか、と髪留めを外し]
……ととっ!?
[その瞬間、手が滑って。
銀と金緑石の輪は、空中へ]
……待てって…………って、わっ!?
[とっさに身を乗り出し、掴もうとするが間に合わず。
更に、乗り出した事でバランスが崩れ]
[ベアトリーチェは、はたかれた頭を両の手で押えます。どうしてユリアンがそんなにむきになるのかがわからなくて、疑問符がいっぱいに浮んでいました。けれども、「デザート」の単語に、すぐさまこくんと大きく肯きます。]
うん、なんにもなかった。
[こどもは、やっぱり素直なのでした。辺りを舞っている三つ花の蝶なんて、眼に入りません。それより早く行こうというように、身を翻します。]
あのね。
こんな風になっちゃったときって、どうすればいいのかな?
[赤と白の斑になってしまっている手を見せた。
凍傷という言葉は知らず。同じ精霊である彼女ならどうすればいいのか知っているだろうと思って。
こそこそとしていたからか、上空の影には気が付けなかったのだが]
ふぇっ!?
[さすがに隣に落ちてきた影には気が付いた]
…あっ!
[その視界へと放り出された煌く宝石。
アマンダは咄嗟に手を伸ばし、仲間を助けようとする。
それから少し時間差で、落ちてきた影の着地点へと力を送る。
大地は擦り傷一つ増やさずに、柔らかく受け止めるだろう]
[本来の姿では、翼あるもの。
そのため、空を翔けた経験は多々あれど、落下と言うのは数えるほどしかなく。
それも400年以上前のまだ器になれぬ頃の事となれば、対処する術も思いつかず、またその余力もなく。
引かれるままに地に落ちて]
……あ。れ?
[予想外の感触に、思わず呆けた声を上げた]
[...は駆け出したベアトリーチェに安堵と苦笑]
急いでもデザートは逃げないぞ。
あんまり慌てて転ぶなよ。
[ゆっくり後ろから歩いてついていく]
―……→Kirschbaum―
[アマンダは、銀と金緑石の輪を受け止めて、落ちた竜の確認もせずに、ブリジットの手を覗き込む。
三階から落ちて死んだ竜の話など聞いた事もないから当たり前]
わあ…これは、酷い。
火じゃない、氷だ。…ミハエルが?
[昨夜の彼の様子を思い出し、不安げに問いかける]
−Kirschbaum・一階−
[ユリアンがついて来ているかなんて確認せずに、ベアトリーチェは扉を大きく開きました。カランカランと、備え附けられたベルの音が鳴渡ります。]
こんばんわ、ハーヴェイ。
[カウンターの椅子によじ登ろうとして窓の外に眼をやると、庭の桜のそばに皆が集まっているのが見えました。]
[きょとんとしている彼にこちらもめをぱちくり]
えーと、こんばんは?
[とりあえずそれだけ声を掛けて。
続いたアマンダの問いに肯いた]
うん、手当てしなさいって言われたのに忘れちゃったの。
[あれは仕方の無いことだと思っているので、問われたのとは少々ずれた答えになったが]
ー教会・私室ー
[窓辺に立ち、外を眺める]
静かだな。
[傍らの黒猫が遠くを見つめている]
喜ぶ者、悲しむ者、疑う者、信じる者…
傷つく者、怒る者、夢見る者、愛する者…
[人ならぬ目に映る、命の抱く心の色を数える]
[声をかけられて、ようやく我に返り]
……ああ。こんばんは。
[惚けているな、と思いながらも挨拶を返して。
自分が落ちた原因はどこへ行ったかと周囲を見回す。
アマンダが受け止めて保護してくれた事には、気づいていないらしい]
―Kirschbaum・一階―
[...はベアトリーチェの後から入ってきた]
こんばんはー。マスター。……ん?
[ベアトリーチェの視線を無意識に追った...の
視界にアマンダが映った。
ふい、っと外すのはここ三年間の日常通りで]
[いつもと違うのは...の顔が赤いことだけ]
…そっか、では手当てしよう。
『うん、後でミハエルの様子を見に行こう』
[ずれた答えを気にせずに、そんな事を考えつつ頷いて、ブリジットの手に片手を優しく被せる。
手から手へと流れ出す大地の癒し、育む為の豊かな力]
こんばんは、オト。
酷い扱いするなら、返さないよ?
[振り向かぬまま、もう片手は金緑石を優しく握って言い切る。
乱暴な扱いに怒り気味]
[みょうなところで鋭いベアトリーチェが、それを見遁す筈もありませんでした。じいっとユリアンを見つめます。]
アマンダと、仲直り、したんだ?
[昨日の出来事を知らないこどもの認識はずれていたのですけれども。]
わあ。
[流れ込んでくる優しい力。
その力に癒されて、本来の安定した状態を取り戻してゆく]
ありがとう、アマンダ。
痛いの、なくなった!
[力を注いでくれた手を握り返して嬉しそうに笑い。
ほんの少しだけお礼のつもりで力を込めた]
[怒りを込めた口調に、しばし戸惑い。
それから、ああ、と納得して]
すまない。
……本来なら、もっと大切に扱わねばならないんだが……不注意に過ぎた。
二度と放り投げるような真似はしないから、返してもらえないかな?
それは……『魂の父』が、知識以外に与えてくれた、唯一の物だから……。
[...はベアトリーチェの言葉に固まる]
なっ……!
いいか、そもそも僕とアマンダさんは前にも言ったけど、仲が悪いとかじゃないし……。
[後の方は語気が弱くなる。
鬱屈した思いを抱えた...は腹立たしさ紛れに
ふわりからかうように飛び回る薄紅色のかけらに
よりによって丁度手にしていたふわもこを投げた]
[ベアトリーチェは、訊ねて置きながらユリアンの答えなんてきちんとは聞かずに、庭に繋がる窓を開きました。]
皆、こんばんわ。
[少し遠かったので、大きめの声で挨拶をします。]
[大地の精にいってくると言ってから、
なぜか向かうは東の方向。
否否、それは東ではなく
あぁ、聞こえたコエの意味を探るうちに、
どうやら中央部にやってきていたようだった。]
……本当、どうかしてるよ、僕は。
でも来たからには、行くかなぁ。
[教会の前で立ち止まる]
―南通り―
[この日は朝一番に宿の主人へ会う。自分の後から来た旅人は昨夜火急の用で街を発ったこと、自分が言伝を預かったことなどを最もらしく話すことで結局は昼過ぎまで時間をつかった。最後は金子が物を言う事になったが。]
[声が届けばそちらを振り返り]
こんばんは、ベアトリーチェ。
それに、そっちにいるのはユリアン?
[何だか慌てているな、と思ったら彼の手から何かが飛んで]
ちょっ……!
[その正体に気が付いて固まった。
ぬいぐるみと思われているとはいえ、それは同族の]
やめてー!
[思わず叫んでしまった]
[アマンダはベアトリーチェの視線もユリアンの赤面も気付かない。
気付いたとしても、子供と同じく風邪でも引いたかと思うだろうが]
ん、よかった。今度から、気をつけて。
下手したら、手が落ちる。
[アマンダはさり気なく物騒な事を言いつつ、ブリジットの喜びように小さく笑う。
込められた力には、こちらも軽く握り返してから、手を離した。
それから、落ちた姿勢のままのオトフリートには厳しめの顔を向け]
ん、気をつけたまえ。
君は怪我しても直るが、この子は砕ければ二度と直らない。
…イレーネを、助けてくれた、お礼。
[そう言って彼の手に金緑石の輪を乗せ、そのまま癒しの力を流す。
拒まれなければ、歩ける程度には回復できるだろうか]
[目は静かに。
その扉を見据えて――]
―→教会/礼拝堂―
[そっと扉を開けて、
中へと足を踏み入れる。
気配にそちらを見やれば、やってきたばかりなのだろうか。
心の魔を見て、苗床は、口にほほえみを上らせる]
こんばんは
[挨拶する少女の声に、そちらを振り返る]
やあ、こんばんは。
[止められぬまま流れる長い髪と、銀の紋章の浮かぶ紫と変わらぬ翠の異眸は、今までと違う印象を与えるやも知れず]
砕ければ、戻らない。
……そうだな、気をつけるよ。
[受け取りつつ、流れ込む癒しの力に目を細めて]
ありがとう……。
彼女の事は、養母の願いでもあったから……ね。
[最後の小さな呟きは、木の根元で転寝を始めたアマンダに届いたかどうかは、定かではないけれど]
[こどもはとてもマイペースなものですから、うしろの騒ぎなんて気にしたふうもなく、よいしょと椅子を台にして少し行儀悪く窓から庭の外へと出ます。柔かな土の上に降り立つと、ぐるりと辺りに眼をを巡らせます。]
ああ、ちょうどよかった。訊きたいことがあったんだ。
[アマンダやオトフリートの様子が違うのには気附いたのでしょうが、それよりも視線は他へと行くのでした。対の欠けた者たちに。]
対が居なくなるって、ぜんたい、どんな感じなのだろう。
「寂しい」?
―礼拝堂―
なんだろうね、こういうときに何を言えばいいのか僕にはわからなくなってしまった。
……君は、本当はどうなの?
否、君、としか、考えられないのだけれど。
……聞いて如何しようというのだろうね。
かの子が殺されてから、何を一番に考えていいのかもわからなくなってしまった。
―Kirschbaum―
……げっ。
[投げてから気がつく。
ふわもこは可愛い顔をして実は怒らすと怖いと言うことは、ここ二三日で嫌と言うほど思い知っているからだ]
[はながひょいっとふわもこを避け、
そしてふわもこが壁に激突する寸前――]
[ふわもこは蔦にからめ取られて激突を免れた。
蔦はひるるとふわもこをカウンターの上に戻した]
危ねーところだった……。
[...は肩でゼイゼイ息をすると、右手から延びた蔓をひるるんと消し去った]
ー礼拝堂ー
ティル、落ち着きたまえ。
君は傷ついて、混乱しているようだ。まるで、本当に、こどものようだよ?
[すでに口調はこどもに対するそれで]
[少女の唐突な問い、それは自分に向けられたものではないけれど]
……どうしてそんな事を……。
[対が欠落したら寂しい、という言葉は、以前、自分が口にしたのだったか、と。
ふと思い出しつつ]
―礼拝堂―
わかっているよ、それくらい。
子どものようなことも、自分が……
それでもかの子を殺した者を何故逃がしたとコトバが聞こえるんだ。
僕の中で。
……君が使い間をかの女のちかくにやっていながら、何故止めなかったと。
[その手を避けることはなく、苗床はじっと、かれを見る。]
ふぅ。
[カウンターにそっと戻されていくのを見て。
ちゃんと見えたわけではなかったが、どうやら無事らしいと知り]
やつあたりはよくないよ?
[ユリアンには誤魔化し笑いを浮かべてみた。
彼はもう何か気づいているようだが、それには彼女が気付かない。
そして聞こえてきたベアトリーチェの問いに]
さびしい……
[ふと黙り込んだ]
[対のものが消えたからといって、急激に変調を来す訳ではない。そもそも人間界は雑多な精霊力が入り乱れる場所で、それこそは自分の望むところだったからだ。]
[乱れたのは力よりも心のほう]
[”考える時をたがえばすべてがくるうてしまう”
ティルの言葉がよみがえり]
[部屋で思考の海に沈んだまま、陽が暮れる。]
[やがて辺りがすっかり暗くなった頃]
心…。
[呟いて、宿を出た。]
ー礼拝堂ー
[左手が、そっと頭に触れると、強い天聖の気が流れ込んだろうか。それが小指の指輪から流れる力であることに、苗床は気付いたか]
私は、誰の望みも止めはしない。
心のままに願い、生き、そして死ぬ事…それが私が世界に望むことだから。
[オトフリートの考えたことがわかったのでしょうか、顔をくるりそちらに向けます。手は無限のかたちをした輪に触れておりました。今はそこにない、指環の代りに。]
うん、あのときには、
なぜへんな感じがするのか、わからなかった。
でも、今は力故なのだと、なんとなくだけれど、わかった。
[天聖に属するこどもが、時空に属する青年の力に対して、不思議だと云ったこと。]
それでも、「寂しい」がどういうことかはわからないんだ。
寂しいよ。
そこにあるべき人がいないんだから。
何かがそこにたりないの。
[感覚を追いかけるように言葉を紡ぐ。
続く言葉は口調も変化して]
これは相対属性でも同じ事。
均衡を保つべき一方が消えるというのは大きな衝撃を対に与える。
属性の調和は本来崩されるべきではないもの。
それは自然ならざる現象。
故に欠落を抱えれば大なり小なり揺れ惑う。
―礼拝堂―
[聖なる力。
それを浴びれば思い出すのは、先ほどのコエ。
聖なる少女が使った力に違和感を覚えていた、かれのコエ。
そ、と手を持ち上げて、その手を掴もうとしただろか]
君はそうだろうね。
……そんな君だから不思議なのだ。
何で、鍵を欲し、その封を破る方法まで君が考えたのだろうかと。
[そこまで言うと、目を伏せて]
さびしいな。
エーリヒさんの音楽、もっと聞いてみたかった。
最初の日に演奏してたの、エーリヒさんだよね。
星のような音色。すてきだったのに。
[普段の口調に戻った彼女は、うつむいたまま]
オトフリートさんとベアトリーチェ。
属性の対じゃなくても、触れ合うことは少なくないよね。
もしいなくなってしまったら、きっとさびしいよ。
[ポツリと言った]
[アマンダから返された銀の輪で、髪をまとめる。
ゆるり、流れるその髪は。
刻印を傷つけた影響か、やや、黒味を増しているようにも見え]
……寂しい、が、わからない……。
俺も、この姿として生まれたばかりの頃はそうだったな。
[少女の言葉に、ふとこんな呟きをもらして]
ー礼拝堂ー
[掴まれる前に手を引く]
問いにはすでに答えたのだよ、ティル。
だが、君には解るまい。君は、すでに、心を他に手渡してしまったのだから。
あっ、悪い悪い。
八つ当たりはよくないな。
[ブリジットの声に頭をかきながら答える。
皆のいる庭の窓に近づくと聞こえたベアトリーチェの問い]
「寂しい」ね……。
[対極の属性の持ち主を見れば、木の下で微睡み中
...は対を失った少年に思いを馳せ、コエを飛ばす]
―礼拝堂―
退屈だった?
[引かれた手を追うこともない]
あぁ、うん。そうだね。
僕の心は僕にない。
否、あるといえばあるけれど……かの女にあげているのだから。
……君が、とったのか? クレメンス。
[最後の問いは、もう、それを、そうとしか思えなくなっているような、響きで。]
……かたちあるものは、いつかは壊れる。
[いつかとおんなじ言葉を、ベアトリーチェは繰り返します。]
かたちのないものは、どうなのだろう。
[首をかしげますと、金いろの髪が光を受けて揺れるのでした。ブリジットの声は、きちんと聞えていたでしょうか。オトフリートの呟きに続くかのように、ただ、変わらないぼうっとしたかおで、ぽつりと小さく云います。]
ベアトリーチェは、足りないのだって。
形あるものはいつか壊れる。
それは、不変なる時の理の一つ。
だが、それは何かへと還り、再び何かを創り上げる輪転の理でもある。
形のないものも……壊れたり、傷付くことはある。
時には、失われる事も。
[静かな口調で言って。
それから、ぽつりと呟かれた言葉に、瞬きひとつ]
……足りない?
―礼拝堂―
…………君にそれを渡すように頼むかな。
それは人目にふれてはいけないもの。
それは誰かが持っていてはいけないもの。
渡さないというのなら
[一呼吸]
さて、どうしよか
うん。
足りないの。
いろんなものが。
[その答えはちっともたしかではなかったでしょう。けれどもベアトリーチェ自身がそれを感じ取るのは、とても難しいことで。説明なんて出来はしないのでした。]
……ほんとうは、命も足りなかった。
それを、 メーラが呉れたんだよ。
[一ぺんそらを見上げて、それから俯いて、小さく云うのです。]
いろんな、もの。
[小さく繰り返す。
寂しいがわからない、という言葉。
余り変わらない表情。
どこか、何かが、引っかかる]
……命も足りなかった。
それを、君に、くれたもの……?
[名らしきものは途切れていたが。
それが、少女のまとう天聖の気と関わりがあるのでは、とふと思った]
[伸ばされた手はよけもしない。触れられるままに]
望みだよ。
……少なくとも、言わぬ言の葉があるだけだ
[そしてコトバが呼ぶ。かれの元にいる子らを。
おいで、はな、つた]
―中央部・広場―
[Kirschbaumへ足を向ける。]
[広場を通る際に一度、教会へ目を向けたがそのまま通り過ぎて、西通りへ。]
[ゆっくりとベアトリーチェのいる窓の方へと向かう]
足りない命を吹き込めるほどのもの。
それは、いったい、なに?
[そっと右手を彼女に伸ばす]
―Kirschbaum―
[戸をくぐる。
席についていつものとおりにアイスティーを注文。
窓辺に椅子があり、窓は開いたままで(そこからベアトリーチェが外へ出たのだろう)庭の様子が見えた。]
ー礼拝堂ー
[笑む]
ああ
[影が降りる、魔の影が]
それが、ほんとうの望みか。
[右の手は、その細い頸に伸び、小枝を折るように、折り取ろうとするか]
―Kirschbaum―
ん?……ティル。
[...は振り返って店内を見渡す。
ふわもこの鼻先で鎮めていた蝶の姿がいない]
―礼拝堂―
[伸びてくる手を避けようともしていなかったが、その手の触れるか否かのところで、左の手が伸びた。]
ほんとうの望みだ。
変わらぬままに、かの女の生が、しあわせにあることだけ。
[手をかけ、力をいれ、その腕から離れる。]
君にはどうやらお気に召さなかったようだね
─Kirschbaum・庭─
[影輝の精霊と天聖を宿す少女、二人の様子を見つめつつ、考え事をしていたが。
不意に、新たに加えられた氷破の気配。
それから、疾風の少年が呟く、ここにはいない翠樹の魔の名に、ふと、思考から抜け出す。
直後に感じた羽音に、左腕を天へと差し延べ。
舞い降りる白き梟、その表情はやや、険しくもあり]
……どうした、ヴィンター?
[触れた場所からはほんの少し、ブリジットに近しいものの存在――天聖に属する精霊の力が感じ取れたことでしょうか。けれどもそれは人間と混じり合い、融け込んでしまっていて、ほとんどわからないほどにわずかなものという工合でした。]
ブリジット、どうかしたの?
[真っ直ぐに見たままに、ベアトリーチェは訊ねます。]
まるで、精霊みたい。
[触れた指から伝わってくる天聖の気配。
人間の持つそれではなく、自分達のそれに近い力。
けれどそれはすぐに人間の気に溶け込んでしまって]
……ううん、なんでもない。
きっと気のせい。
[手を離すと小さく首を振って笑った]
いきなり、ごめんね?
[引きちぎったネックレス、小瓶。
それに何か、どこか、かなしげな目を向けるも、それは一瞬。
投げたなら、それは三ツ花が受け止める。
そんなに大きくはないはずの三ツ花は、受け止めて、どこかに姿を消す]
―礼拝堂―
わかっているよ
[戻った蔦を身体に感じる]
わかっているとも。ながくを生きているのだから。
今ですら僕たちは変わり続けている。
それでもかの女が望む世界を、見せてやりたいと僕は思うのだよ。
僕がそこに居なくても、かの女が幸せに生きるこの世界を。
だからそれまでは、絶対に
鍵をあけるなどは赦さない。
[何かしら気の乱れらしきものを感じて来たらしく、やや落ち着かない相棒をなだめつつ]
……取りあえず、そろそろ冷えて来ましたし。
中に、入りませんか?
[少女たちに向けて、そう声をかける]
―Kirschbaum―
[...はミハエルの問いかけに意識を店内に戻す]
いや、なんでもない。
ところで、ティル見なかった?
[いつもとは違う厳しい声色]
[ゆっくりとまたたいて、ベアトリーチェは微笑います。]
そうだよ。
[あまりにもあっさりとした肯定は、届いたでしょうか。]
ううん、気にすることないよ。
そうだね、オトフリート。入ろうか。
[ぱっとブリジットから離れると、店内に戻ろうとします。]
えっ、あ、はい。
[桜の根元で休んでいるアマンダをどうしようかなと一瞬考えて。
今の彼女なら大丈夫だろうと思い直す]
あっ!
[ようやく窓の向こうにミハエルの姿を認め。
思わず両手を後ろに隠した。もう治っているのに]
[さらりとされた肯定に、異眸は一瞬、険しさを帯びたか。
しかし、それはすぐに溶け]
……大丈夫ですよ。
[両手を後ろ手に隠すブリジットにくす、と笑んでから、店内へ]
─…→店内─
ー礼拝堂ー
そのためにお前が朽ちて、そうして変わらずある世界を、喜ぶ者があると思うか?
ああ、そうか、それは、ただ、お前だけの望みなのだな。
お前は魔の苗床。
真に望むは、己の幸福、ただそれだけ。
[...は食い違う話に軽く混乱しつつも、
ミハエルの肩をがしっとつかみ怒鳴った]
広場?……森とかじゃなくて?
ていうか、誰かティルがどこにいるか知ってる人はいない?
[店内に入ってくる人に聞く表情は強張る]
―礼拝堂―
そうだよ、今更何を言っているの
[口元の微笑みは、どこかどこか、まがまがしさを。]
僕は魔族だ。
忘れていたのかい? クレメンス。
他よりも自分の思うとおりに生きるよ
─Kirschbaum・店内─
[入るなり、投げかけられたユリアンの問いに、一つ瞬いて]
……どうしたんだ?
ティルが、どうかしたのか?
[強張るユリアンの表情に、ふと、何か。
嫌な予感めいたものが過ぎる]
広場と言った。お前の耳は何処へついている。
見にゆけば良いだろう。私が広場を通ったのはそれほど前のことではない。それよりお前たちは繋がっているのでは無かったのか。ならば問え。
[ユリアンの剣幕に、目を戻し眉根を寄せて
肩を掴まれた手を、強く払う]
そう、ですね。
[誤魔化し笑いを浮かべながら店内へと入ってゆき]
え、ティルならさっき出かけていったよ?
[強張った表情を浮かべたユリアンに答えた]
[常と変わらず微笑んで、祭壇の前で両手を広げる姿は、その背後に架かる宗教画の移し絵にも見えただろうか]
では、望みのままに。哀れな苗床よ。
[グラスを受け取ろうと手を延ばすと、ユリアンの声が聞えてきました。]
ティル?
[ほんの少しの間、探るように眼を閉じます。以前には感じられなかった、力の流れがなんとなく、伝わって来るのでした。それにその力が“ある”のは、彼女にとても近しい場所でしたから。]
……ああ、教会。
[小さく声をこぼします。]
望みのまま?
[見据える瞳の奥でまたピシリ、小さく響く音がする]
僕が哀れという君を、
僕は哀れと思うのだよ。
[左の腕を口に近づけ、ぐいと引き抜く茎の棒]
教会……広場。
[上げられる場所。
そこには何があり、誰がいる?
そして、その者は。
今、消息を求められている翠樹の魔は、確か]
……あいつ、まさかっ!?
ティルは「森の奥に一人でいる」というけど……。
ティルは僕に貸してくれた翠樹の力を引き上げた。
僕の自立のため、とか言ってたけど……。
もしかして全力使わないといけない事態なんかじゃないかと……。
僕が、知るわけはないだろう?
[口にくわえた茎は、左の手に持ち変える。
らんと金の亀裂が、少し深くなる。
闇に薄れる黒き身体。
気配を追うのは――己が勘のみ。
闇の動きを感じ取ろうと、目を伏せる]
[溶けて崩れて、その後に、現れたのは、金の髪に青の瞳の少年の姿…まるで目の前の苗床に生き写しの…否、その姿に傷は無く、その手に握るのは、茎ではなく、白く燃える白熱の剣ではあったけれど]
[...はベアトリーチェの「教会」という単語を聞いて、思わず近くにあった椅子に蹴りつけた]
やっぱり教会にいるのかよ!
つうか人には「クレメンツは要注意人物」とか忠告しておいて、自分は一人で会いに行くとかおかしいだろ!
[アマンダは閉じていた瞼を開ける。
大地を通じて宥めていた、西の桜の大樹の気配がどこか哀しげに揺れたように感じたからか]
……ティル?
[呟いて身を起こせば、何処か騒然とした気配が耳に届く]
…。
[ユリアンの蹴った椅子が、倒れぬように屈み込んで受け止め、それを直した。ミハエルにとっては椅子のひとつまで影の王の物だから。]
オトフリート。
どうやらお前が正しかったようだな。
[ベアトリーチェは、薄らと眼を開きます。緑の眼はすきとおっていて、どこか遠くを見ているようでもありましたが、クレメンスの名前を聞くと、自分の胸元に眼を落します。そこに、指環はありません。]
ごちそうさま。
[空っぽになったグラスとお代を、ことんとカウンターに置きます。]
失いたくないのだろう。
絆を結んだ君を、危険に晒して。
[椅子を蹴りつけるユリアンに、低く言って]
それにしても、無茶に過ぎる……自分だって、消耗しているだろうに!
[一度伏せた目はそのまま開く。
その声は己がものとおなじか。]
そう。
それで?
[たかが自分と同じ姿をした者。
笑みは崩れることもなく
茎の先を、かれへと向ける。]
[ミハエルの言葉に、僅かに苦笑をかすめさせ]
こんな形で証明されるというのもなんだが……な。
……行かなくては。
[言いつつ、店の外へと向かう。
大地の癒しを受け取った身、その歩みは落ち着いて]
[今し方くぐった扉をまた出て行こうとユリアンに背を向けた。]
翠樹がふたつ?
いや、問うよりも行った方が速い。教会か。
[オトフリートの苦笑に、返す言葉なく夜の通りへ駆け出した。]
[駆け、通りを抜ける。]
― →広場―
[剣や棒の技術があるわけではない。
それでも苗床の足は、たっと床を蹴る。
バランスの取り難い体は、しかし、蔦の力でうまくバランスを取り、]
ならば僕の望みどおりに
[茎を横に払うように、その胴を凪ぐように]
さっさと鍵を出したらどうだい
ううん、違う。
これは翠樹じゃない。
[焦った心を落ち着けるように呟いて]
あっ。
[皆が出てゆくのを見て慌ててその後を追いかけた。
扉を出る前に一度だけ、ベアトリーチェの方を振り返って]
……ああ。
[虚空を見つめて、小さく声をあげます。]
ベアトリーチェも、行こう。
[ブリジットを見返しますと、べつだん急いだ様子もなく、外へと向うのでした。]
[アマンダの耳に届いたのは、ティルに何かあったらしいこと、そして教会という言葉]
神父、が…? ――っ、ユリアン!?
[素性と気配が怪しいと言えば怪しすぎて、むしろ怪しくないのではと考えていた人物。彼もまた、アマンダの愛する平穏の一欠片。
けれど、確かめる事など後回し。
感情荒れ行くままに暴走しそうな対が扉の悲鳴残し消えたのを見て、急ぎ追いかけようとする]
[茎が横に払えば、その茎を剣先で払い返し、胴を薙ごうとすれば、僅かに下がって避け、同じ様に胴を薙ぐ。揃いの剣舞のようにも見えたかもしれない]
[その剣舞は、しかし、
苗床の意識がコエに一瞬乱されることで崩れる。
迫る刃を防ぐために、何の躊躇もなくあらわれるは蔦。
背より現れたそれは、剣の前に身を躍らせる。]
―広場 →教会―
…お前が…常日頃から、身の証を立てられないような言動ばかり取るからいけないのだ。
[オトフリートへ追い付いて、彼を見ないまま小さく言う。
時計塔のまわりを廻って、教会へ。開いた戸から、礼拝堂へ駆け込む。]
[そこで目にしたのは、二人の]
…なっ
[鏡写しの剣舞に、立ちすくむ]
っ――
[蔦の出現に顔がゆがみ、そしてその切っ先が、
切り裂く。
身を、切り裂かれるに等しいような。
その痛みの中で、自らの力を呼ぶのは、当然だっただろう。
ちりと「鍵はない」と言ったかれを、何かの眼差しで見ようとしたけれど、
それよりも先にほどける、封じ]
─広場─
……そりゃどうも、申し訳ない。
[小さな声に、返す笑いはやや乾いていたか。
やがてたどり着いた広場で、不意に感じたのは、疲労]
……まだ、本調子じゃない、か。
[呟いて、まずは時計塔の横で一度立ち止まる]
時の旋律……俺に、虚の申し子に、力を。
[手を触れた時を刻む音色は、その力を、時の竜へと。
ある程度の力を得てから、踏み込んだ礼拝堂で見たものに]
……悪趣味野郎。
[たった一言、ぽつりと]
[きられた蔦は力なきも、
持っていた棒が力をうけて、ぐんと伸びる。
その先が向いていたのは同じ姿をした魔。
それはありえぬほどの勢いで。
びしびしと音のするは、雷がおらぬからか。
無造作に左の手が振るわれたは、反応が遅れるだろうかれをしとめるためか]
[彼女の足では速度にも限界があり。
息を切らせて駆けつけた時には]
ティルッ!
[姿形はそっくりな二人が。
けれどその手に握るものは違う二人が戦っていて。
開放された力が空間の中で渦巻いていた]
―教会―
[皆の後から教会に足を踏み入れた...の目の前には――二人のティル]
ってなんだよ!これ!
クレメンツさんも若作りしすぎだから!
それに明らかにティルじゃないし!
[なにやら困惑のまま叫ぶも、彼には違いが歴然]
[駈け抜けてゆく皆とは異なり、歩んでゆくベアトリーチェの足取りは、まるでお散歩でもするように、のんびりとしていました。夜の帳の下りたそら、きらめく月と星とが地に陰を生み出しています。]
−→広場−
[アマンダは前へ前へと力を与えてくれる大地を蹴って走る。
前を行くオトフリートとミハエルに辛うじて追い縋ったところで、先頭に立っていたユリアンが翔けたのが目に入る]
――っ!
[強烈な疾風の力の奔流に、駆ける足が乱れる。
転倒まではせぬものの、幾呼吸か気を宥め落ち着こうと――否]
『受け入れて――支えて』
[ダーヴィッドの言葉を思い出し、残された余波の疾風を受け入れて、支え、安定をもたらそうとする]
――おいで。
私(大地)の上を過ぎる風(疾風)よ。
[初めての試みは、上手く行ったかどうかはわからない。
けれど、荒れ狂う嵐が、広場の花を全て散らすことはなかった]
[剣は茎のように伸びはしなかった。しかし伸びて来た茎を避けることもなく、僅かに身体を傾がせて、その切っ先が、左の肩を貫くに任せる]
ああ、沢山集まって来たな。
[茎を紅い血で濡らしながら、ふるわれた左手を剣で受け止めようとする]
─遺跡─
[封護の指輪と共鳴する力を辿って、奥へと進む。
胸元の刻印と同じ色、同じ形の意匠が指の上で光る。]
…構成が読めれば……。
[展開の瞬間を間近で感じられれば、結界の捕縛機能を操れないだろうか?
たとえ呑まれても、脱出の手段は無い訳じゃない。]
…そろそろ、始まるのか?
[力は歪み、軋み、うねりはじめる。]
−中央部・広場−
[はら、はら、はら、はら。ベアトリーチェがそこを通りがかったときには、もうすでに風は収まっていましたが、花びらは舞い上がり、まっ黒な天をいろどっておりました。]
命尽きるまで、きちんと咲くのだよ。
それがきっと、生きる意味なのだから。
[吹き荒ぶ傷ついてしまった花に、小さな手が触れます。流れを変えられて巡りゆく力は、ほのかな癒しを与えたでしょうか。]
−→教会−
[疾風の余波を宥めて少し遅れたアマンダが見たものは、解き放たれた翠の魔]
そんな、ティル!
[彼は今を刻と決めたのだろうか。悲鳴は哀しげに尾を引いて]
[勢いを殺すこともなく、
まわりに人の集まるのを気にすることもなく。
芽吹く時のような強い強い力をただただぶつけて、
ぐいと、剣を掴むように抱え込むように
赤い赤い血が飛ぶのは、その剣にぶつかる勢いがひどかっただろうか。
それでも握った茎を離さずに、そのまま横に引くように――
かれの身体を、斜めに裂くように]
[身を切り裂こうとする、茎を左の手で握る]
痛いだろう、ティル。
けれどお前は、怖れはしないな。
魔は怖れを知らぬから。
[それは少年の声ではなく、そして、どこか優しく響く声で]
……封護結界が、動いている……?
[波動を感じ、はっと上を見上げる]
しかし、この状況では……。
[封護の力、それは求めるものを見分けられるのか。
それは、何者にもはかれぬ事]
[溢れる力が左の目を壊し、金を広げる。
影の王の結界が、力を強くする翠樹にのしかかる。
それでもそれより、
苗床は負けられぬと。]
[膨れ上がって揺れる力に翻弄されそうになる。
声を上げることだけはどうにか抑えて、必死に戦う二人を見る]
!!
[そして力は力を呼ぶ。
大きなうねりが向かってくるのを感じる。
けれどやはり、彼女には何も出来ない]
[己の対を侵した相手を、見極める事が出来ずに逡巡。
舞う血が虚実の境界を曖昧に見せる。ユリアンには解っているのだろう。問い質すべく、振り返った。]
[争いあう二つの力が乱れ舞う。
ゆがみと、うねり
それは昨夜のように]
[遅れて着いていたブリジットをみとめ、]
お前は戻れ!王のもとへ…さもなくば、巻き込まれる
[近づいてくる、うねり
昨夜、イレーネは力を放ち、そして囚われたのではないかと聞いた]
だめだ、ティル! 逃げてっ!
―― 囚われる…っ!
[叫びつつ、アマンダが見たのは、対の少年。
まだ力を上手く制御できぬ彼もまた危険ではないかと、荒ぶる力を受け入れようと――支えようと、*試みたか――?*]
……っ!?
[空間に放たれた、天聖の力に息を飲む]
これは……これほどの力が、一体、どこに!?
[反射的に、時の流れを繰る。
均衡を、崩さぬために]
[ぶつかり合う翠樹の力の奔流に
か弱い...は立っているのがやっとだが。]
『ティル、約束だから。負けないで』
[コエをださず、声にも出さす。
ただ一人のティルから目を離さない]
−中央部・広場−
[ベアトリーチェは、睡りには落ちませんでした。彼女がそうしようとしたのを、首を振ってとめたのでした。じっと眼を見開いたままに、巨きな力がうねってゆくのを感じています。]
[ミハエルの声はかろうじて聞こえた。
しかし既に動くことは出来なくて]
だめ、なんだからっ!
[逆に表情が引き締まった。
多少の無理はこの際仕方がない。
膨れ上がりすぎた力を均そうと手を伸ばした]
ああ、
[ようやく納得いったように、ベアトリーチェは呟きます。]
そうだったんだ。
[ひとりごとは、誰にも聞えなかったことでしょう。かちりとようやく、どこかで歯車が合ったような気がしました。]
[たとい同じ姿をしたとて苗床はためらいなどしない。
ただただ、そのゆびわの力に。
それに、何かを思って、伝えようとしたかもしれないけれど。]
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新