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−中央部建物内部2F・個室(K)−
[扉を閉じてしまえば、其処は閉ざされた空間。
彼女以外には、誰も存在しない。
右の手で、ベルトから小刀を引き抜いた。
己の親指に歯を立て、肉を破る。]
魂鎮(たましずめ)――
我と盟約に従い、汝の真の姿を、今、此処に。
[緋色を滲ませる指の腹で鞘をなぞり、血を与え、呼び起こす。
ドクン、と。鼓動する刃。
握る手に熱が伝わったのは錯覚か。
生物の如く、数瞬の後に姿を変える。緩やかに湾曲した、長く伸びる刃を持つ刀へと。自らの身体の一部が如く、まるで重さを感じさせない。
もっとも、それは、彼女が扱う場合においてのみだが。]
そう、餓えるな。
[眠りから覚めた幼子をあやすような、声。]
[蹴りをかわされ、逆に蹴りをもらうものの、その勢いをうまく逃がして、再びくるりと壁に着地。
狼から人間へと姿を変えたアーベルに喜色を滲ませつつ、弾倉交換。]
へぇ、こらまた器用な。
せやけど、残念やけどそろそろお開きの時間や。
……死んでんか?
[そう呟くと、全弾計19発を一斉射撃。それはすべて跳弾となり、アーベルの逃げ道を塞ぎ、死角からその命を狙い]
はっはぁっ!!
[さらに壁が陥没するほどの踏み込みをもって、彼女という弾丸がアーベルの懐に跳び込む。]
……っつーか、正気か、てめっ!
[冗談のような攻撃に、思わず上がる、声。
避けている時間は、ない。ならば]
ちっ……苦手なんだよ、『まとめて』使うのはっ!
[とはいえ、そんな事を言っている余裕はなく、意識を集中する。
獣化と、念動力の同時行使。
寿命にも関わる危険がある、と言われたが、しかし]
こんなんまともに……食らってられねぇっ!
[叫びと共に、念を解放する。
形作るのは、防御壁。
それが機能するかどうかを確かめる猶予はなく]
……んなろっ!
[飛び込む相手に向けて右手を繰り出す。そこにあるのは、銀色の鋭い、爪]
――…っ、
[射出する光に、僅かに目を見開いて。
咄嗟に、右の手を横へと薙ぎ払って。
リンッ、と、弾ける様な一際高い白金の音を響かせる。
呼応するように奔る三本の白金が、幾つかの光線を遮るも、
遮るに至らなかった掌と腕の半ばの二箇所を貫いて。]
……っ、…!
[反動か、痛みか。僅かに狙いが反れる。
勢いの殺がれたまま。
左手に握った通常の物より重さを持った其れを
五角を描く頂点の球体目掛けて、放つ]
[抜かぬ刃を地面に立てる。
床に片膝を突いた。
左手で鞘を、右手で柄を。
握り、右を僅かに持ち上げて、戻す。
――高い金属音が、鳴った。]
[ギンッ。背後からアーベルの命を狙う弾丸はその悉くを糸によって絡め取られ、彼の身体に到達すること叶わず。
そして、交錯しナイフを繰り出そうとした彼女は]
……冗談。それってチートちゃうん……かはっ。
[右手の振り下ろそうとしたナイフごと絡め取られた右腕と、腹に突き刺さった銀の爪。]
……ちきしょ……寿命、五年は縮んだぞっ……。
[全身を包む、激しい疲労感に、口をついたのは、こんな言葉。
身に宿した二つの力、それの同時行使は、これまでは『できなかった』事。
ぎりぎり状態での生への渇望が、力を暴発させたのか、他に理由があるのか、ともあれ、二つは同時に『動いた』。
そして]
……勝負……あり、だな。
[確かな手応えに、低く、言いつつ。
ゆっくりと、右腕を引く]
[熱線に相手が怯むのを見る。
振り下ろされる凶刃は
少女から球体へターゲットを変えたの見る。]
002!相手を止めて!
他は攻撃準備!照準金糸髪人間!
[前方の球体は勢いを殺すよう、
すぐに相手が体制を立て直せないよう、
接触と同時に刃を自身に食い込ませ下がる。
他の球体は再度淡く光り]
[ぞぶりと身体から引き出される爪。同時に腕を絡め取っていた糸も解かれ、身体は地面へ落下。
辛うじて四つ足での着地をするものの、腹の刺し傷が悲鳴を上げ、その場で膝を突く。]
はっ、火事場のクソ力っちゅうやつか。
ほんま、憎たらしいわ。
[痛覚をシャットし鋭い目で軽言を洩らすも、動きは取れそうにない。]
[何かに呼応するかの如く。
彼女は、動いた。
片隅の床に隠された扉を開いて、飛び降りる。
閃く布。
着地は軽い。
刀は、彼女の一部だった。
着地した姿勢から止まる事なく、
膝のばねを利用して地を蹴り、少女と青年の間に割り入る。
キュ、と擦れる音。
緩くウェーブのかかった髪が、波打つように広がった。
鞘に収められたままの刃を、左から横薙ぎに振るう。
されど距離は足りず、注意を逸らすための威嚇にしか成らず。]
[一歩、遅れるように地上へ降りる。
強引に起動した糸がばらり、と周囲に落ちた。
背の銀翼が──重い]
はっ……何せ、こちとら、化け物なんでねっ……。
生きるためにゃあ、何でもできる……って事に、しときな……。
[こちらも膝をついた姿勢で、息を切らしつつ、言い放つ。
左腕と右足からは、先ほどの跳弾で受けた傷が紅を零しているものの。
前を見据える蒼は、*力を失ってはおらず*]
[ジッとアーベルを睨んでいたが、フッと哂うと]
……ほんま、気にくわへん。さっさと死んでまえばいいんや。
[そう言って大の字に横たわる。刺された腹を押さえて止血しつつ]
あー。肝機能75%ダウン。膵臓片っぽ潰れた。出血量1リットル少々。体力残り30%。まあ活動は無理やな。
[冷静に分析。まあ、死にはしないだろうと計算終了。]
充電エネルギー……!
いやっ!!
[突然の闖入者、そしつ攻撃。
確かに、闖入者の意図どうり、その攻撃は威嚇になったが
それは、少女の咄嗟の判断を奪い、制御力を奪う。
…それは、力の暴走となり。]
[球体は悲鳴を上げた少女を守るため、光線を闖入者に向け放つ。
それぞれから放たれた光線は、総てフリジットに向かう。
出力に耐えられず、半壊球体と
エーリッヒの刃に食い込む球体が爆発。
爆風で、少女はおともだちを抱えたまま、
後方に転げて倒れ伏す。]
そういう風に言われるヤツほど、中々死なないのが世の習い、ってね……。
[返す言葉は、あくまで憎まれ口。
決着に気づいたか、『回収』にやって来るスタッフたちの気配を感じつつ、一つ、息を吐いて]
……『お守り』のお陰……かな……。
[ごくごく小さな声で、ぽつり、*呟いた*]
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