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散々お前が厭がる事して来たんだから、其れくらいは聞かないとな……。
[ 黒曜石の双瞳は緩やかに細められ、クスクスと薄く笑う彼も叉、獣ではなく人としての青年のものだったろうか。然れどももう彼の時は還らないと知っていて、其れは全て己が所為だとも解っている。伸ばされた手は、少女の頬を撫ぜるか。
ぽたり。叉一つ、床には緋い染みが広がり朱い焔は全てを覆っていく。]
好いよ。
俺が死ぬ前に、――お前を殺す。
[ 其れはハーヴェイの、恐らくは最初で最期の約束。]
……ほんとだよね。
怖がってるの、わかってて、あれなんだから……。
[笑いながら、返す。
やり取りは、以前と変わらない。
けれど。
そこにどんな変化があったとしても、今となってはどうでもいい事なのかも知れなくて。
頬に触れる感触に、僅か、目を細める]
うん……約束、だよ?
[呟いて。その約束を。自身の中に。しっかりと刻み込む]
……忘れたら……怒るから、ね?
止められてたら、とっくに止めて……、
[ 言葉の途中で喉を押さえたのは徐々に部屋を包んでいく朱の所為か、其れとも喉の渇きの所為か。双瞳が再び揺らぎを持てば月の光も叉宿り掛け、二、三度瞬けば触れていた手を離して、]
……情けな……。
[ 浮かぶのは自嘲の笑みか。]
[既に広間は]
[燃え広がった焔に包まれつつあり]
[充満した白煙が喉を焼く。]
[此の中に在っては]
[仮令強靭な生命力を持つ人狼と雖も無事に済む筈も無い。]
[此の儘留まり続けるのも][そろそろ限界に近い。]
……いいよ。
止められるものじゃないのは、わかるから……。
[途切れた言葉に呟くようにこう言って。
それから、心配そうな瞳をじっと向ける]
……大丈夫?
[不安げに問うた直後に、自身も軽く、咳き込んで]
[少女の首に回した腕を解き]
[殆ど][優しいと言っても良い手付きで]
[投げ出された儘転がる][緑の髪の女性の傍に]
[少女を寝かせる。]
[……軽く咳き込む。]
[二人寄り添う様に][横たわる姿を]
[暫しの間見ていたが]
[少し離れた所で][向かい合う青年と少女の二人に向かって]
[振り向いた時には既に]
[其の表情には][一欠片の感傷も窺えず]
大、丈夫……つったら嘘になる、が。
[ 存外素直に其の言葉を口にして、右腕から零れる緋色の雫を舐め取る。其の程度で渇きが収まる筈も無いが暢気に“食事”を取っている訳にも行かずに。]
そうも云ってられない、だろう。
[ 端目で永遠に目覚めぬ睡りについた少女を見遣り、其れから服を裂いて自らの右腕を縛る。]
……うん。
[こく、と頷いて。
それから、呼びかけてきた声の方を振り返り。
横たわる、二人の少女の姿に、瞳は僅か、揺らいで]
……あの言葉を聞いたら。
キミは……それに従った?
[問いは、赤毛の少女に向けて。
勿論、答えは返らないのだけれど]
否。
[未だ聲を持たぬ][人ならぬ人][獣ならぬ獣は]
[実声で応える。]
俺は…彼の人と一緒に行けなかったが。
彼女は行くと言って呉れたのだろう?
……って、ちょっ!
[唐突に抱き上げられ、声が上擦る。
更に似合いと言われ。
焦り]
あ、え……と……。
[だからと言って、逆らう理由もなく。
そのまま、身を預け]
ならば。
其の日まで一緒に居ると好い。
[然うして][今度は碧の髪の少女に顔を向け]
離すな、最期の日迄。
[祝福する様に、][鮮やかな笑みを。]
……る・せ・え、つってんだろう。
[ 男に云い返しつつ半眼に成る其の青年の双瞳には、現在は獣の輝きは無い。其れは束の間の事であるのかもしれないが。然し其の後の言葉には瞳は瞬かれ、]
……………、……然様で……。
[何処と無くバツの悪そうな表情をしながらも、然う呟く。]
こっちのが、早いんだ。文句云うな。
[ 人の姿をしては居れど、其の力は矢張り獣の其れを有す。軽々と少女の躰を抱えれば扉の外へと駆け、人には在らざる速さで外へと向かう。]
解ってる、ての。
[ 数日前迄の平穏だった館の姿は何処にも無く、全てが焔の朱に包まれて燃え落ちるのは、最早時間の問題と思われた。――幾つもの死を包み込んで。]
別に、文句言ってるわけじゃ……。
[掠れた声でぽそぽそと返しつつ。
しっかりと、しがみつくようにして]
……あ。
[燃え落ちる館に、ふと、思う。
残っていた、もう一筋の、糸──ピアノの事を]
……ありがと……。
[小さく呟いた言葉は何に向けられたのか、それを知るのは、少女のみで]
[──でも今は。]
[少なくとも、彼の人が]
[仮令何時か、自分を殺してしまうかも知れないと分かっていても、]
[其れでも一緒に行きたかった][生きたかった]
[のだと]
[知る事が出来たのだから。]
……あ゛ー、本……勿体ねぇ。
[ 少女を抱えた儘に燃え落ちていく館を見上げながら僅かに冗談めかしてぼやきつつも、青年が想うのは部屋に置いて来た一冊の手帳。雨に濡れ粗用途を為さなくなった物ながらも、其処に書き残した、唯、一文――忌避し逃れ続けても、何れは訪れる時なのだろうが。]
……命を奪い続けた者の咎、然う容易には死すらも赦されはしない、だろうな。
[ 小さく呟きを落とす。]
[轟音に包まれ、燃え落ちて行く館。]
[湧き上がる黒煙]
[夜空をも焦がす様に][赫々と燃える焔は]
[雪の様に舞い散る火の粉を散らして]
[ ――朱く朱く、天までをも染め上げていく焔。
軈て赤き雨は降り止み館で起こりし惨劇は終わりを告げれども、生きとし生ける者が其処に在り続ける限り悪夢は決して終わらず、犯した所業も失せる訳ではなく、閑かに閑かに重く重く降り積もっていく。]
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