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[気づくと先ほどまでいた使用人たちが居なくなっていた。
読書に没頭していて気づかなかったらしい。
雨の音だけが広間に響く]
今って…何時ごろなのかな。暗くてよくわからないな……。
[一人ごちて再び本に目を落とす。
著者が実際に遭遇したという「能力者」の記述に差し掛かった]
『―――遭遇した女性の能力の発現は一週間程度であり、詳しい観察・調査を行うことは出来なかった。
周囲の者の証言によると能力の発現に伴い著しい精神活動の変化が見られ―――』
―二階・客室―
[風の音で寝付けずに幾度か寝返りを繰り返して、ベッドサイドに置いた鞄に目を留める。
中に入っているのはここでの代金と幾つかの小物。そして怪我をしたときのための薬と…]
「ギルバート、忘れ物はないかい?」
大丈夫だって。ちゃんと、ほら…
[そう言って、鞄の奥に忍ばせた物を見せる]
「気をつけるんだよ?今の季節は山の獣は危ないからね?」
[これからの時期、山の食料が減れば人に危害を加える物もいる。とはいえ、この辺りでは野犬がせいぜいで]
ったく、大袈裟なんだから…
[ぼそぼそと呟くのは半ば寝言のように。
そうして迎えたのは短くて浅い眠り]
―夢―
[そのきっかけはなんだったか、強い風が吹き、雨が降っていた時のこと。
幼い記憶には人が殺されて誰かが人狼の仕業だと騒いだことからだったと思う]
「人狼だっ!人狼がでたぞっ!
これは人狼の仕業に違いないっ!」
[叫ぶ一人の村人、小さな村のこと殺人事件のことも村人の叫びもすぐに村中に伝わった]
「殺せっ!見つけ出して殺すんだっ!あんなむごたらしい殺し方、人狼の仕業に決まっているっ!」
「落ち着け、まずは落ち着いて話会おうぜ」
「お前が、お前が人狼なんだろうっ!」
[叫んでいた村人をなだめに入った村人はそのままナイフで刺されて死んだ。
疑りあいと、人殺しの連鎖が始まり、それはもう止まらない。言葉が疑惑を生み、そして殺人に繋がる。
やがてその連鎖は自分たちの両親に向けられる。理由がなんだったかは覚えていない。]
―夢―
[人狼の両親にとっては人狼の力を使って村人一人を返り討ちにすることは容易かった。
けれどもそのことによって両親が人狼だとばれた。
殺気だった村人達が家の周りを囲んでいる。両親は安全になるまで家の中に黙って隠れてなさいと告げて外に出て行った]
おとうさん、おかあさん……
[家の中で恐怖に震えていると、周りの争うよう音、殺せとか、お前達のせいでとか怒声が聞こえてくる。
どれくらいの時がたっただろうか?
それまでの間、聞こえてきていたのは雨音よりも強い狂ったような叫び声、悲鳴、金属音、何かがぶつかる音。しばらくして争うような音が少なくなる。
恐る恐る窓の外を覗くと、辺りは真っ赤な血の海、ところどころに体の一部と思われる肉片、そして村人達の引き裂かれた死体。
悲鳴をあげそうになる口をおさえて窓から離れて尻餅をつく。]
―夢―
「くそっ、化け物がっ!生き残ったのは俺たちだけか」
「まだ娘がいる。あいつも殺せっ!家の中にいるはずだっ!」
「俺たちだけでやれるのか?」
「人狼っていったって子供だろう?それにやらなきゃやられるんだっ!」
[外から聞こえてくる声は両親のものではない村人達のもの、数名の声。
何かを引きずる音、玄関の戸が開けられる]
「でてこいっ!隠れたって無駄だぞっ!」
[家の中に怒声が響く、咄嗟に机の下に隠れて玄関の方を覗く。
村人達が引きずっていたのは散々いたぶられた変わり果てた姿の両親。
何かが、心の中ではじけた。両親よりもより濃くなった人狼の血が…。]
―夢―
[家にきた村人が何名だったか覚えていない、次に気づいた時にはもう村人達は数を数えられる状態じゃなかったから。
家の中は村人達だった肉片と血にまみれていた。]
とう…さん…かあ…さん……
[両親の死体にすがり付いて泣く、返事はもう返ってこない。
両親は自分に隠れていろと言った。安全になるまで隠れていろって。
言葉に従って家の地下倉庫に隠れることにした。家の中にいるだけじゃまた見つかるかもしれないから。]
皆様の御予定は聞いていませんけれど。
そのような方も居られるのでしょうか。
[雫に濡れ、時折音を立てる窓から目を戻した]
それは結構なことです。
[踊り子の返答を聞いて、再び微笑む]
宜しければ、後でその時のお話を伺いたいものですね。
御主人にはもうお話しになられたのでしたか。
―夢―
[どれくらいの時がたっただろうか、地下倉庫の中で震えている。安全になるまで隠れていなさいと最後に残した両親の言葉に従って。
血の色と匂いに染まった村、外では振り続ける雨の音以外にすでに動くものの気配が感じられなくなった村。
それでも自分は隠れ続けている。いつが安全なのかわからないこともあった。一人で待ち続けるのは怖かった。]
………っ
[そのまま震えていると倉庫の入り口が開けられた。
一人の若い男の姿、おびえる自分に優しく手を差し出す。
もう怖がることはない大丈夫だからとそんなような言葉をかけられる。
殺気だった村人達と違う優しい雰囲気、そのまま抱きしめられ……]
……っ…
[目を覚ます、くまさんのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた]
『数年後筆者の入手した人狼の物と思われる骨を女性に見せた所、女性が人狼に遭遇した時と同一の症状が現れた。
能力の発現と精神活動の変化である。
この事から女性の能力は人狼(生体もしくは体の一部)に近づいた時に発現する物と考えられる。
ただしこれは一例に過ぎず、得られる結果が同じでも精神活動の変化が伴わない者や対人狼に特化しているわけではない者等、数々の記録がある。
特に後者の場合たまたま人狼に遭遇し、能力を行使した結果と言える。』
─書庫─
[セシリアがやって来たことなぞ気付きもせず、ラッセルは昏々と眠り続けた。
書庫にラッセルが居ることを知らされた使用人達は、どうするかを相談し始める]
[風邪を引いてしまうわ] [でもあの人は触られるのを]
[このままにするわけには] [直接触れなければ良いんじゃ]
[しばらく後に、毛布を一つ持ち書庫へ向かう男性の使用人の姿があった。
最悪毛布に包んだまま運べば良いと言うのが同僚との結論。
軽いノックの後に書庫へと入ると、ラッセルは未だ眠りの中にあった]
……んー?
[薄く覚醒してごろりと寝返りを打って]
……あー、大分静かになってんな…降ってる事は降ってるみてーだけど…
[外はまだ暗い。
ならば、明ける頃には雨も止むだろうか?]
止んでたら、朝飯だけもらって帰るとするか…。
特に何か聞いたわけではないけれど。
雑貨屋の彼なんかは、やっぱり、仕事が気になるんじゃないかしら?
[軽く、首を傾げて推測を呟く]
いえ、まだよ。
あまり、早く話してしまうとたのしみがなくなってしまうでしょう?
[ふふ、と笑いながら言う様子はどこかたのしげに]
─書庫─
[もし起きて居れば、と言う使用人の淡い期待は破られ、ラッセルを毛布で包んで運ぶ覚悟を決める。
運んでいる途中で起きなければ良い、と願いながら、まずは毛布をラッセルへとかけようとした]
…………?
[その所作に気付いたのか、それとも丁度目覚めたのかは分からないが、使用人が毛布を広げたところでラッセルが眼を開ける。
使用人は一瞬ぎくりとしたようだったが、ラッセルは騒ぎたてることはしなかった。
どうやら寝ぼけているらしい]
…………ん。
[おはようございます?と疑問形でぎこちなく使用人が訊ねる。
それに対しラッセルが返したのは短い言葉だけだった。
寝てしまう前のことを覚えているのか居ないのか。
今のところ取り乱すような様子は見せず。
立ち上がると使用人の横をすり抜け、出入り口へと向かう。
呆ける使用人をその場に残したまま、ラッセルは書庫を出て行った]
―二階・客間―
[目を開けて外を見る。雨や風は収まってきているのか、昨日より窓を叩く音は小さかった。
窓を開け、身を乗り出し外を見る。雲の薄い部分もあるが、風上の方はまだ厚い雲が続いていた。]
晴れるか…は、微妙な…う、っぷ。
[ぶわりと急な風にあおられ、顔に雨がかかった。
袖で顔を拭くと、これ以上濡られないよう、窓を閉めた。]
ふぅ……晴天には程遠い、かな。
[どこまで回復するのやら。
そう思いながら、濡れた服を着替えた。]
『――なお、前述の女性はさらに数年後人狼に関わる事件で死亡している。』
……分からない事だらけって感じがするんだけど……。
[扉の開く音に顔を上げると、使用人が朝食を運んでくる所だった。
一人で食事するのは気が引けるため使用人に誰かが来てから頂くと告げ、再び読書に戻った]
―二階・客室―
[屋敷の主―アーヴァイン卿とか言ったか―の部屋に挨拶に行き、宿と食事の礼を述べる。わざわざこのような辺鄙な場所に屋敷を構えているのことからそれなりの変わり者かとも思っていたが、実際に会ってみれば非常に話しやすい好人物であった。
しばしの間歓談に興じ、自分のことや故国のことなどを話すなどした後、彼の自室を辞して自分にあてがわれた客室へと戻る。]
ここの主殿はなかなか信用できる人物のようだな。
天候が回復するまでいつまででも滞在してよいとも言われたが、あまりご厄介になるのもまずいだろうし、どうしたものであろうか…?
[部屋のソファーに腰を下ろして寛ぎながら、窓の外の天候を眺めてぼんやりと考えている]
嗚呼、フェイバーさんですか。
確かにお忙しそうです。
お仕事に支障が出なければ良いですが。
[客室を振り向いた。
件の雑貨屋がその中の何処にいるか、墓守は未だ知らなかったが]
そうでしたか。
御主人も退屈せず済むでしょう。
[また表情を緩める]
嗚呼、すみません。
何処かへ行かれるところでしたか。
[それからふと気がついたように、問いを発した]
─ 一階・廊下─
[手の甲で眼を擦りながら廊下を歩いて行く。
前方や周囲に注意を向けることも無く、ともすれば人や壁にぶつかりそうな様相で歩みを進めた。
視線は床へと落ちている]
〜〜〜〜〜っ…!
[案の定、広間へと向かう通路の曲がり角で、曲がり損ねて正面の壁に頭をぶつけた。
ぶつけた額を抑えて廊下に蹲る]
―自室→廊下―
[窓の外に目をやる、天気は悪いまま。
寝ていたこともあり時間の感覚もはっきりしなかった。
くまのぬいぐるみをしばらくぎゅっと抱きしめてから広間へ向かおうと歩き出した。
途中会話をしているユージーンとキャロルにすれ違い]
……(ぺこり
[二人に会釈をする。]
―二階・客間―
[風呂は誰かが使っている可能性があったので、桶に湯を借り身体を拭いた。
身なりが整うと、朝食を求めに館内を歩く。
使用人に声をかけると、広間でどうぞと言われたので、そのまま広間へと向かう。
丁度、朝食が用意されていた頃だろうか。
中には使用人と、セシリアの姿があり。]
おはよう。早いね。
[そうにこりと笑み声をかけた。
ふと、手にしていたものに目がいく。]
ああそれは……あったんだね、ウールヴヘジンの左手。
[少し懐かしそうな目で、簡素な装丁の本を見た。]
でも、無理な下山で事故に遭われてもいけないし。
……雨降らしの機嫌がよくなるのを期待するしかないわね。
[軽く肩を竦めた後、碧の瞳は窓から館の内へと]
アーヴ殿は熱心に聞いてくれるから、私としても話しがいがあるわ。
[実際、そうでなければ幾度も立ち寄る理由はなく]
え? ああ……お湯を使わせてもらおうかと。
エッタ様にも、舞を、と言われているし。
身を清めておこうかと思って。
[向けられた問いには、抱えた包みに視線を落としてから、さらりと返す]
―玄関先―
雨だー
[人に止められるのもなんのその、起きた後はこそこそと、あちらこちらを見て回る。
とはいっても決して物に触れず、最後にたどり着いたのが外だっただけで。]
何人しんじゃったかな。
[仲間、というほど強いつながりではないけれど、ちょっと思い出して小さく呟いた。
雨風の音に消されてしまうくらいな声。
水に濡れるけど、そんなのはどうでもいい。ここは中が温かいから。
この様子じゃ、あの女の子は外に出てないというのは、よくわかった。]
─2階・廊下─
あら、シャーロット嬢。
おはようございます。
[階下へ向かう途中なのか、やって来て会釈するシャーロットに一礼する。
両腕は塞がっていたから、礼は略式のものとなったが]
―廊下―
御早うございます。
[養女に気がついて、やはりそう挨拶をする。
墓守の手には食器がある為、一礼は普段より少しばかり浅くなった]
よく眠られましたか。
[先に踊り子に向けたのと同じ問いを、少女にも繰り返す]
[また暫くうとうととして、気がつけば先程よりは明るい空]
朝、かぁ?まだ暗いけど。
[もそもそと起き上がって窓の側に]
……止んでねぇのか。困ったなぁ。
まぁ、吊り橋さえ気をつければ何とかなるけど…あの吊り橋が最大の難所なんだっての。
[誰も聞いていないのをいいことに盛大な溜息]
[少し勢いの収まった雨の下、あちこちへと動き回る。
渡ってきたつり橋に触ったりして、玄関に戻ったらタオルを渡された。
いっぱいぬぐって、今はおしまい。
お風呂はちょっとこわい。]
ええとね。
ごはんはまだ、いらないー。
だって、おなかへってないよ。
昨日いっぱいもらったし。
[にこにこ笑って、ぐっしょりではなくしっとり濡れたまま。
とりあえず玄関先に座ることにする。
水がたれてこないくらいまでしっかり拭いたので、本人にとってはなんの問題もない]
─ 一階・廊下─
[ズキズキと痛む額に手を当てたまま、ゆっくりと立ち上がると今度はちゃんと角を曲がり広間へ向かう廊下を歩き出す。
少し涙眼になっていたのは不可抗力であろう]
―廊下―
[キャロルに向けたのは笑顔にはならなかったが暗い表情というわけでもなかった。]
…………(こくり
[ユージーンの質問にはやや長い間を空けて頷く。
視線は二人の手元にいき、再度お辞儀をしてから広間の方を指差してそちらに歩き出した。
二人もどこかに向かう途中のようだったから]
おはようございます、ハーヴェイさん。
まさかこんなに早く本が見つかるなんて…ハーヴェイさんのおかげです、ありがとうございます!
[本を持ち、柔らかく笑う]
とりあえず、飯だけもらうか…。
どうするかは食ってから考えよう。止むかもしんないし。
[洗顔用の水だけは置かれていたから、それでとりあえず顔だけは洗って鏡を見る]
ちょっとあれだけど、しょうがねぇか。
[急な宿泊で細かい用意まではしていない。
出来るだけ髪と服を調えて部屋を出た]
―二階・廊下―
早めにそうなると良いですけれど。
[今度は目線だけを窓に向け、すぐに戻した。
去って行く養女には、再び深く礼をして見送る]
そうでしょう。
御客人方のお話を何よりも楽しみにしてらっしゃいますから。
[それから踊り子には微笑みながら頷いた]
そうでしたか。
引き止めて申し訳ない。
[謝罪と共に、少し後ろに下がり道を開ける]
あ、でも。
チョコレートなら食べられるかも!
[とっても軽かった食べ物を思い出す。
笑って、食べたいとか言ってみる。
ぷるぷるとちょっと頭を振ってから、立ち上がって、広間の方に向かう。]
―広間―
いや、礼には及ばないよ。見つかってよかった。
…もう読んだみたいだね。
[広間に入った時には、開かれていた本をちらと見ながら。]
何か面白い記述はあったかい?
ああ、分からない所があったら聞いてくれ。
俺も読んだ事はあるし、内容について、氏と話し合った事もあるから。
[そう言いながら、椅子に腰掛け食事の前に、紅茶を使用人に頼んだ。]
─ 一階・廊下─
[打ち所が良かったのか悪かったのか。
壁での一撃でしっかり眼は覚めたようで。
視線は前を向くようになり、周囲にも注意を向ける普段通りへと戻る。
広間の扉が近付くその先で、小柄な姿が目に入り、思わず足を止めた]
……ぅー……。
[食事の時のことを思い出したようで、少し困り顔になる。
左手で額を抑えているために、表情の変化は見えにくかったかも知れない]
―二階・客室→一階・広間―
[部屋を出てとりあえず広間に向かう。途中誰かと顔をあわせればきちんと挨拶をして。
広間に入って、既に先客があるのに少し驚いた]
おはよ。
ずいぶんと早いんだな。
[先に広間に居た二人の邪魔はしないように軽く声をかけるだけで。
朝食が既に用意されているのを見れば、使用人に伺ってから席につく]
[閉じられた本に触れると、さっき見た骨の図を思い出した。
あの骨を見た時、父が何か言っていた気がする。
思い出したい。思い出したい。どうしようもなく強くそう思う。
けれど、嫌な予感がする――]
―客室→広間―
[居心地のいい部屋、一向に回復の兆しの見えない天候。もう1日くらいならご好意に甘えても良かろう、そう結論を出し、大きく伸びをした。しばらく野宿が続いた体が切に休息を求めていたということもある]
さてと、童っぱはあれからどうしたでござるかな。
会ったら、こっそりとあの小さなおなごのことを聞いておかんと。
[そんなことを考えつつ、自室を出て広間に向かった。]
─2階・廊下─
[去っていくシャーロットは、またね、と声をかけて見送り]
そういう意味では、来客の多い今はアーヴ殿には至福のひととき、というところかしら?
[遠方の物語に聞き入る様子を思い返してまた、笑い。
謝罪を向けられると、首を軽く横に振った]
あら、お気になさらず?
時間に余裕はあるのだし、立ち話もたのしいもの。
それでは、また後ほど、ね。
[言葉と共に向けるのは、略式の礼。
それから、ゆっくりとした足取りで当初の目的地へと歩き出す]
―客室―
[窓からまだ雨の残る外を眺めて居た。
肩を抱いて大きく震える。
寝台に戻ると深く潜り込んで身を*縮こまらせた*]
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