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[それはまるで、くもの糸。
地獄に下りた、くもの糸。
壁に小さくあいた穴。
もう助からないものと思い始めていた。
こんな、年端も行かぬ少女に切りさかれて。
ああ、神様!
(信心をもたぬ自分がこんなところで感謝するのは、
なかなかな筋違いだとおもうけれど)]
[くもの糸を逃すまいと、穴をくぐる。くぐりかけた。
けれども、その瞬間目にしたものは。]
ギャ!!!!!!
[けれども彼の一瞬の安堵は。
追ってくるその少女と、
まったく同じ顔をした首に、打ち砕かれて。]
ふりかえれば、同じ顔。同じ顔。
少女の首。否、彼女には胴体があって…それから、手には武器を携えて……武器?ぶき?
武器ってなんだ?僕にはわからない。
武器ってなんだ?
これは…ベアトリーチェ、
君は、だって、『犯人』の、しくんだことで…
[彼の言葉を待つことなく、
きらきらと、刃がなんども振り下ろされて]
[困ったようにベアトリーチェをうけとって]
ええ、ゆっくりおやすみなさいな。
傷は癒しましょう
[少女の姿にそう囁き、
fatherの姿を見送った。]
[傍らのエルザをチラリと見る。相当緊張している]
そうです。エルザが彼を視ました。
先程死体は消えてしまいましたが、僕も銀糸を見ましたし。
[神父を見つめてそう告げた]
[オトフリートの曇った顔を見つめる]
立ち、向かわなくても、そのうちきっと、殺されるわ。
クレメンスも、ナターリエも、ベアトリーチェも、変。かな、しい・・・。
狼さえ、倒して、しまえば・・・。
[オトフリートは気付いているだろうか。
初めて話した夜に比べて、...の言葉は流暢になっている。
感情は少しだけはみ出る。
それはここで、みんなから、得たもの]
やだ・・・殺してほし、くない、の・・・。
[眉を顰める。これは...の、悲しいとき、苦しいときの癖で。
死にたくない。
それは大前提だけど、でも、悲しくて]
ギャ! ギャア!
[旅人の叫びは、少女の振り下ろす回数に反比例して
少なくなり。最後は、振り下ろされる刃に対して、
なにも、なにも、反応を示さなくなり。]
少女は旅人の胸にうずくまっていた。
かわいそうなこどもを、母親がだきしめるように。]
へーき、はんちゃんは、こう、ならないから
[小さくつぶやいた彼女のささやきを、聞くものはいない。
壁の外の彼女の首は、彼をみつめて。
彼を殺した彼女は、やさしく旅人の目を閉ざして。]
[近づいてくるクレメンス。長く伸びた影。その黒衣]
[神に仕えるものは、何故黒衣を好む?]
ええ、ここにいたわ。
[月も傾いたせいなのか、もう、噴水に虹は架かっていなかった]
[オトフリートの最後の言葉には]
・・・・・・特定するわ。
[強い視線にをたじろぐことなく、受け止めた。きらりと目が、月光に照らされ]
そう。・・・あなたを。
[瞬きを一つ。アーベルの想いはまだエルザの中から失せきらずに、蒼い煌めきを瞳に宿すか]
彼の首から、ロザリオが外れていたわ。
[その意味まで問うことはしなかった。哀しい妄想かもしれないから]
獣の王にして、太陽の煌きを持つ金の狼。
その君が何故、エルザを庇おうとしているのか理解が出来ないね。
[クレメンスは、続ける]
……僕、が?
[流石に何を言われたのか分からなかった]
何、を……
[けれど自分は何の血を引いていた?
揺らぐ。揺らぐ。揺らぐ]
違う……
[呆然とただ否定する]
ロザリオ…アベールが身に着けていたものだね。
それも消えてしまったのか……。
[呟き。
そして、ミハエルに]
いいや、君は人狼だよ。
君を見た。
[再度告げる]
僕は、ただ。
ただエルザを護りたいだけ。
[震えながら答える]
何故、貴方は僕を人狼だと言う?
[気が付きたくなくても気が付いてしまった]
[傍らのエルザが震えている]
[そちらを見ることが出来ない]
[キッとなって、クレメンスをみる]
…世迷い言は聞かないわ。
そういうあなたは何者なの。何を証拠にミハエルを、人狼だなんて言うの?
言っただろう。
・・
私は、君を「見た」
ジプシーの人狼の御伽噺のカードゲームには、「占い師」というものがあるらしいね。狼を識る能力を持つものだ。
世迷いごとではないよ、エルザ。
君が霊を見る事が出来るように、私は「目」で狼を識る事が出来る。
[軽く、目を擦った。モノクルがなくても、ここに来てからよくなった視力、そして]
見た?占い師の能力で?
僕を見たのならその答えは出ないはずです。
[息を吸い込む]
[顔を上げてキッと神父を睨みつける]
…そうか。そういうことか。
残酷な神が支配する、神の箱庭。
その神が楽しむための駒として使うのは。
聖職者。
神の声を代弁し、神の代わりに力を振るう者。
そういうことですか。
[震える手で剣を抜き、構える]
ならば、貴方が人狼だ。
[くすり]
…そういえばあったわね。狼を知ることの出来る能力者が。『狂信者』と言うカードだったかしら?
誰の趣味なのかしらね。似合いすぎているわ。
[エルザの言葉に小さく瞬く]
[そうだ、そのカードも在ったのだ]
人狼、でなければ、人狼に組するもの。
狂信者、ですか。
…させませんよ。
僕には力は無いけれど。
エルザをみすみす殺させるようなことはしない。
人狼は、皆、常にそういうらしいね。
[クレメンスは、懐から一冊の本を取り出した]
人狼達の生態を詳しく書いた本だ。
そう、だが、私が何故人狼だと君は言えるのかな?
ジプシーのカードゲームには「狂人」というカードもあるらしい。それは、人間でありながら、人狼に味方するものだ。
では、尋ねよう。
狼に高らかに問う!
…。
[何か熱とは違う、温もりにも似た物が伝わってきた気がした。]
はい…
イレーネが何か口走っても、
問題ないように…
皆から少し距離を置いていますが…
[軽く頭を振って]
其方でも、何かなされているのですか?
クレメンス。
[歌うように声が響く]
契約の神、嫉妬する神の僕であるばかりか、あなたは人狼にまで跪くのかしら。
[くすくすと笑う]
…退きなさい、月に魅せられし者よ。自分もまた哀れな生け贄と気づかないの?
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