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――?
[何の話をしているのかはわからずに、疑問が表情に浮かぶけれど、
たずねることもしない。
棺へと入れられたマクシームの体を見て、一歩前に出て]
ごめんなさい、ちょっと良い?
これ、入れておきたいと、思って。
[銀の軽いブレスレットを差し出して。]
何も答えてあげられなかったから。
考えもしなかったし。
そのお詫びに。
[恋愛感情はなかったけれど、嫌いなわけでもなく。
視線に気付いていたから、それだけと。
そっと困ったように笑った]
――いまさら、要らないかもしれないけれど。
―― 広場 ⇒ ――
[ユーリーが手伝うというのに頷いて、それから。やがて準備が整えば皆と歩調を合わせてレイスのいう水辺の小屋まで遺体と棺を運んでいく。それは誰かに指示をされれば言われるがまま]
……………
[全てが終われば、誰かに呼び止められない限り黙って自分の作業場へ。実は昨日は一晩ここで仕事をやりながら眠ってしまってた]
[そこでぼんやり何かを考え込んでいるだろう**]
それは、ころすがわ、だから。
殺される側には、何も変わらない。
[そう思う。
きっと、人として人を殺すことも、
人狼として人を殺すことも、どっちも考える必要がある。
どうせ殺すなら勿体無いから食べたいと思うのは、キリルの言う「繋がる」とは少し違うのだろうか、とも想い。
自分の手を、見下ろした]
[イヴァンの方を見るキリルへとそっと声をかける]
キリル、行っていいよ。
カチューシャの傍には俺が居る。
[そっとカチューシャの腕に、また伸ばした指先で触れる。
暖かい温度が、自身の冷たい指に感じられた]
[棺に何かを入れるイライダを見て。
自分には入れるものがないな、と、頭の隅。
幼馴染の兄。色々と、世話になった事は数え切れない]
…今まで、ありがとう。
[もう喋らない彼に向けた言葉は、謝辞だった]
[イライダの手からマクシームへと差し出される銀色]
――…。
憧れの女性からの贈り物に
厭な顔するようなやつじゃないと思うよ。
[幼馴染が如何思うかは知れぬが
彼女の行動を遮るような真似はしない。
謝るロランと視線が交われば困ったような笑みを浮かべ]
……ロランの優しさに助けられてるって
何時になったら気付いてくれるのかな。
[ぽつ、と小さく呟いて
マクシームへの言葉を聞く]
[ユーリーの小さな呟きに向けたのは少し見開いた眸。
聞き間違えたかな、とか、言い間違えたのかな、とか
そういった不思議な表情]
…俺。
優しくないよ。
[視線が絡んだから聞き間違いじゃないのかと。
頭を斜めに傾いで花色を見返した]
…何もなく、殺されることが…?
[分からないというように語尾をあげる、
この思考はより捕食者に近いものであるかも知れない。
微かに眉を寄せて、短い時間考えた]
でもボクたちは、仲間を殺すことはしないのに。
[目を細め、死者を送る風景を見る]
…そう、かな?
そうとも言えないかもしれない。
俺が見つかって皆に殺されることになるなら。
キリルもちゃんと、そこに参加しないといけない。
[優しく無い、という言葉の奥で囁く言葉は
ほら、やっぱり優しく無い、と、口端を上げて]
…っ、
[それでも一瞬足は動きかけた。
けれど、と再び首を振る。そうして幼馴染の烏色の瞳を見た]
あとでいい。今は…送ってあげるのが、先でしょう?
[恋人との会話はあとでも出来るのだと告げる。
棺に腕輪を入れるイライダを見た。
カチューシャもまた動くのならば、止めることをしはしない]
…ボクが、ロランを…?
[確かめるように鸚鵡返しに問い返す。
少し考えて、それにもやっぱり首を横に振った。
視線が僅かに地面に落ちる]
───…分からない。
[自信のない曖昧な響き]
ロランは優しいよ。
僕が保証する。
[花色はロランの双眸を真っ直ぐ見詰め
確かな音色でそう告げた]
さて、と。
行こうか。
[イヴァンやレイスへと声を掛けて
ミハイルへとチラ、と視線を向けてから
マクシームが眠る棺代わりの木箱を川辺の小屋へと運ぶ]
そうかしらね。
……一言でも、ごめんなさいっていっておいたら、他に好きな子を見つけられたかしらね。
[困ったようにいって、棺の中に銀のブレスレットを落とす]
運んであげて。
手伝えなくて、ごめんなさいね。
[マクシームの棺が遠ざかるのには、一度目を閉ざした。
先に祈りは捧げたけれど、再びの瞑目を彼へとおくる]
マクシーム兄さん。…安らかに。
[無残な姿の彼へと捧げる言葉が、我ながら虚しかった]
駄目だよ。
ちゃんとそうしないと、俺が殺されても無駄死だ。
勿論…人の目を盗んで食べてくれるのは構わない、けれど。
人として、食事じゃなく殺す事は同胞でもある。
…必要なければ、したくないけれどね。
[告げる声はむしろ乾いてあっけらとすらしていて。
首を振る様子に、困った風に眉を寄せて口元だけで笑った]
…俺が優しい筈、無いよ。
[真っ直ぐ見られる花色を烏色で見返すけれど、
すぐに耐えられないという風に逸らしてしまった。
優しい筈は無い。だけれど、ユーリーが保証するという事までは否定しづらくて、口を噤んでしまった。
少し視線を彷徨わせる間、棺が持ちあげられるのを見て]
…気を着けて。
[川辺は足場が悪いから。
その背に告げた。
脇のカチューシャを一度、見上げる。棺を見送る様子は一緒だっただろうか、それとも思い返して着いて行くと言うだろうか。
その場にとどまるならば、その傍を離れる事はしない。]
如何かな。
それでも想いは変わらなかったかも知れない。
[イライダの言葉にゆると首を傾げ]
仮令報われずとも……
キミを想ってたシーマは
微笑ましくなるくらい幸せそうに見えたよ。
[発つ前にそういい残して男は棺を見下ろした。
ロランの声にひとつ頷く。
何時もなら手を掲げてみせるところだが
棺を持つ為にその両の手は塞がっていた]
[川のせせらぎが近づく中。
男はイヴァンへと声を掛ける]
そういえば……
“大事な恋人”とは仲直りできたのか?
[尋ねは確認にも似る響きで
からかう心算は毛頭なかったが
イヴァンには如何響いたか]
…カチューシャ、
今日は、あまり一人で居ない方が良いんじゃないかな。
[ふと、葬列歩むを見詰めたまま、呟きを落とす。
マクシームと共に過ごした家で独りで眠るという事が、
なんだか辛いのではないかと思えたから。
自分の所という訳には行かないから、
イライダとキリルへと顔を向けて問う視線を投げた]
嗚呼。
[棺の中に落とされる銀色。
それを見届け、瞑目をし、それから掛けられた声に従う。
歩き出してからは、僕は時折方角を告げるだけで、他は黙って歩いた。
ユーリーがイヴァンに掛ける声にも、僅かに視線を向けるのみ。
川辺にある小屋は、主を失って何年経つだろうか。僕にとっては懐かしいと同時に、寂しい場所。
錆びた鎌や擦り切れた縄や、最早生活に役立たない幾つかのものはあるけれど、もう殆ど空に近い。]
変わらなかったかしらね。
……わからないけど。
結局答えられないなら、答えておけばよかったっていう、後悔ね。
[ユーリーの言葉に、苦笑を浮かべて]
そう。
幸せそうだったのね。
……そこまで、マクシームを見ていなかったけど。
ユーリーが言うならそうなんでしょうね。
[少し、笑うような呼気がこぼれて。
それから、棺を運ぶのを、見送った]
[ロランの言葉に、カチューシャを見る]
うちに来ても、大丈夫だけれど。
[幼馴染の方が良いのでは、という視線が向かう。
カチューシャの希望に沿うつもりで]
……ん。
[諭すような言葉に、短い応え。
どこか納得はし難いように、けれど考えるように頷きを落とし]
その時は…、覚えておく。
[困った風を滲ませる気配に、可能性だけを短く返すのだが]
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