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うわさ?
[アーベルが汗をかいていることも知らず
判らない事だったので、口元に笑みを浮かべたまま
首を傾け、アーベルに問う。
ほかのひとの様子は、みていない。]
当たり前だ。
[憤慨した様子で眉を寄せる]
まあ、その辺りの心配があるし、
誰が犯人ともわからんゆえに、公に言うわけにもいかない。
こうして、お前にだけ言っているわけだが。
[そんな話をしていると、なにやら周囲がきょとりとしていることに気付く]
? なにか、あったのか?
[エーリッヒから身を離して、周囲を見回した]
[アーベルの言葉に、ぴき、と額に青筋が浮かびかけたとか]
・・・・・・お前は・・・・・・・いや、いい。
[なんとか堪えて、本日何度目かのため息]
今、話していたのは、絵師殿の絵筆が盗まれたという話だ。
[アーベルの返答を聞いて。
暫し、沈黙が落ちた]
…。
もしかして、知りませんでした?
[ややあって、小さく尋ねる。
主にオトフリートの反応とか気にしながら]
ん、確かに大声で触れ回れる事じゃないしな。
んじゃあ後で……。
[渡すから、と。
言うより先に、周囲の空気が変わったのがはっきりとわかり]
……って、一体何の話してたんだ、そこの君らは……。
[屈めていた身体を戻しつつ、呆れたような声をあげ]
こまる。
こまるのは、こまるわね。
こまるのは、いや、ね。
[オトフリートの言葉は判り易かったので、
呟いて手を片頬へと持って行き、
思案する形に。]
ああ、噂…なんだけど…なんか俺だけ誤解してたっぽいような
[エルザがきょとんとしている。エルザは知る限り騙すようなタイプではなくて
気まずさに和みを求めてエルザの頭をまた撫でて]
ぁは…やっぱ違ってましたか…って…ぇ……えーーーー!?
[オトフリートの額に青筋が浮かびかけてたのにも気づかず驚く]
絵師が持つ絵筆って。なんかとても重要なものでしたよね。確かだけど
[とはいて具体的にわからず驚いていたけど]
ああ、飯を食っていないようなら、
家に行くついでに料理を作ってやろうか。
[潜めていた声の音量を上げ、言い足した。
ちなみに。
調合の腕前と料理のレベルは全くの別物である]
[アーベルに撫でられて、
また嬉しそうに目を細めながらも]
うわさって、なぁに?
[興味津々といった風に
じっとアーベルを見つめた。
周りの空気なんて勿論気がつかない。]
いや、だってよ。なんか噂してんなーって思ったら。ミリィ先生が逃げたとかなんだとかばっか聞こえたし…
[気まずそうにミハエルに。ちょうど噂の上下関係が覆った直後に来たのだとか。だがそんなの...にも知る由もない。
話も終わってこちらに注視が来たミリィやエーリッヒに気づいて気まずい思いが更に加算されてる]
…えっと。
勘違いが起こってたみたい、です。
[ミリィや兄が問うのに、アーベルに目を向けつつ答え。
直後の驚きっぷりに思わず目を見張った]
いや。
重要だからこその、大事なんだが。
[アーベルが上げた素っ頓狂な声に、思わずこんな突っ込み一つ]
……はい?
[それから、薬師の申し出に一つ、瞬き]
……いやいやいや。
そこまでお手を煩わせるわけには。
ぅっ
[エルザの純粋な眼差しと問いが精神衛生上とても危ない。
隠すのもエルザに悪い。ついで両親に怒られる。でも自分が思ってたのって]
あーっと、噂だからな。あくまで噂。真実じゃないぞ
[とりあえず前置きして]
オトフリート先生とミリィ先生が、仲がいいって噂
[これなら大丈夫だよな。過度でもないし嘘じゃないよな。とか色々思ってる]
まあ、…無理はないですね。
[アーベルに苦笑を向け。
広場で交わされる会話の中にも、確かにそんな言葉が混じっていたようで。
それが原因で、初めにミリィと出くわしたのだし]
仲がよいのが、うわさになるの?
仲が良いのは素敵ね、すてきだわ。
[アーベルの答えに満足したらしく
にっこりと、満面の笑みを浮かべた。]
……私は逃げてない、逃げてないぞっ
[アーベルの言葉を耳に留め、思わず言った。
しかし、オトフリートの顔を正視出来ないのは、
理不尽な行動をしたと認識しての後ろめたさゆえ]
[エーリッヒに対しては、無駄に自信ありげな笑顔]
気にするな。
私も久々で、腕が鳴るぞ。
[むしろ、それが問題だった。
普段は母親か助手が料理を作っているわけで]
えっと、で、ですよねぇ〜
[あはは。と乾いた笑みで頷くが、なんで重要かいまいちわかってない表情
思いを繋いで絵師が絵を描いて。そして心の力を集めてみなで空へ向かう…だったっけか。とかの知識はあるが。絵筆のほうの知識はなくて]
だよな。そうだよな。ミハエル。俺のせいじゃないよな。きっと。
[色々な気まずさがあったからミハエルの言葉にとても助かった]
[交わされる会話に、頭痛がするようで、眉間に皺をよせたまま沈黙していたが]
ともかく、今重要なのは絵筆の行方だ。
[無理矢理話題を集中させようと口を開いた]
何か見聞きしたものがあれば絵師殿に知らせろ、いいな。
あ、ああ。まあそういうこと。仲が良いことは良いんだがなぁ。
[笑みを浮かべるエルザに、それに対しては同意。誤解だったらしいけど]
いや、俺が言ったんじゃなくて聞いた話ですよ。
[と、ミリィに。それがなかったら誤解することもきっとなかったのにとかぶつぶつ]
……いや、ほんと、真面目に大丈夫なんでっ。
[無駄に自信有りげな笑顔がなんだか怖いのだが。
普段の不摂生からすれば、説得力は皆無なのは明白]
って、あのねぇ。
……まぁ、仕方ないが。
[大げさなため息は、自身の運命にか、それとも、アーベルの表情を見たためか。
ともあれ、『絵筆』に関しての詳細は、滅多に外には出さない以上、わからないのも無理はないのだが]
タイミングもありましたしね。
[アーベルにはやはり苦笑を向けて]
…で。
盗まれるまでの間、一体何をしてらしたのですか。
兄さん。
[ぐるり。
傍観体制の兄に向けるのは、ちょっと種の違う笑顔。
と、普段彼に対してだけは使わない筈の敬語]
[オトフリートの言葉に、アーベルから視線を移して
こくり、頷く。]
はぁい。
お仕事場でも、みんなに言った方が良いのね?
[それから、エーリッヒに向うミハエルを
目を丸くして、見た。]
……ああ、そだね。
じじ様に知らせるとうるさそうだし、俺にこそっと教えてくれると助かるなぁ。
[幼馴染の言葉に乗るように、皆に告げる]
何事もなく、戻ってきてくれれば、俺はそれでいいから……うん。
[長はそれですむかというかも知れないが。
絵筆の『力』が無闇に使われるのでなければ、実質、実害は全くない。
それ故に、強く咎めるつもりはなかった]
え……なに、って?
[唐突に、弟から投げかけられた問いに、きょとり、瞬く。
口調が丁寧なのが、妙に怖いのは、多分、気のせいじゃない]
ああ、ええと。
採取に、行ってた。
なにごとも、なく。
…うぅん、だいじょうぶ。
ちゃんと、手伝うから。
長のこころがあれば、きっとつよくて。
[表には出さず
くすくすと笑みは、心の中でこぼれる。]
わすれもの?
わかりましたー!
[にへらと笑って、受け取った本を見る。
ついぺらぺらと捲ってしまうのは、学生なので仕方ない。]
はへ?
[いきなり呼ばれて、少女は彼を見上げる。
言いかけてやめられて、きょとんとしたまま、撫でられた。]
おてつだい、だもんね。
[本を読みながら、少女はそんな風に伝える。
思うと伝えるがおんなじで、ちょっと不思議な感じだった。]
はーい。
[気まずいのとか色々合って、オトフリートの意図に気づいたので返事したが]
ぁー。でも絵筆が盗まれたってことらしいですけど
[ため息をつくエーリッヒを見てやっぱり重要なのだろうとか思うが、重要さがいまいち実感もわかないとかで]
絵筆なんて他にもあるし、なんか他と違う特徴とか…ぁ、それに変わりのじゃ駄目なんすか?
「リディ、ちょっと、聞いたの?」
んー、なにを?
今本読んでるのー
「自分のじゃないでしょ、さっき言われてたやつでしょ。
で、絵筆が盗まれたんだって。」
絵筆?
絵筆なんてそこらにあるんじゃないの?
「違くて! 絵師様の!」
[そんなわけで情報収集はちょっと遅かった。]
僕の記憶が正しければ。
あの時、「逃げるな」と。
言った筈なんですが。
[妙に区切りつつ、変わらず笑顔で。
言外に「逃げたんだ?」と問いつつ]
採取に行って、肝心の絵筆盗まれてちゃ、元も子もないじゃないですか。
もし、長様をちゃんとできたら、
他の人のも集めないと。
そういえば、絵、描かないとなんだよね。
一緒にかく?
ひとりでかく?
隠れて描かないとばれちゃうよね。
代わりというか、つがいの一本は、俺の手元に残ってる。
[アーベルの問いに、視線をそちらへ向けながら答える。
弟の視線から逃げてるなんて、そんなことはない。きっとない]
でも、一本だけじゃ、だめなんだよ。
二本はつがいの一対、揃っていないとならないんだ。
だよな…そうだよな。不可抗力だよな
[気まずい思いをしたりとか全部それのせいだーとか内心八つ当たりしつつも、やっぱりそういう噂はあまり関わらないほうがいいな。と昨日からの連なりで思った。…とはいえ今思うことは後々忘れることなど多々ありつつも、ミハエルのいつもとは違う雰囲気にきょとん]
そう、おてつだい。
[言ってから、ぱち、と目を一度瞬いた。]
あら?あらあら?
近くに居なくても声が聞こえるのね。
素敵ね、すてきだわ。
[耳じゃなく頭に響く声が面白かったから、
ぎゅ、と、鞄を手で握り締めた。]
えふで、のおかげなのかしらね?
ね、あなた、ひみつのはんぶん、よね?
[区切りながらの問いかけに、視線はどこかを彷徨ったまま]
ああ、まあ、そうだけど。
絵の具が尽きてたからなあ。
どうしても、青色はすぐになくなっちまうし、気がついた時に補充しとかないとならないから。
[この辺り、嘘は言っていない。
空への願い、祈りを込める絵であるが故に。
背景には、空の青を使う事が多かった]
……というか、普通、盗まれるとか思わんって。
正直、そんな事を考えるやつがいた事自体、驚きなんだから。
そうね、かくれてかかないと、だわ。
見付かったら大変、だもの。
[聞こえる声に頷く。
幸い、誰かと話しているわけではないので
不審な動きは気がつかれなかった。]
いっしょに、かくかしら?
そろそろ「よる」だし、あなたが眠いならひとりでもだいじょうぶ。
まだ眠らないなら、いっしょに描きたいわ?
[絵をかくのは、ひとと一緒がたのしいから。
只それだけの理由だけれど。]
大変なことだねって言おうとしたんだけどさ。
[なんだかぼーっとしながら、思わず言葉がこぼれていた。]
ミリィせんせー、本当は絵師様狙い?
[まわりの人にちょっとずつ広がってゆくのは、仕方ない。
そのうち背びれ尾ひれがつきまくることは想像に難くないが、少女には知る由もないのだった。]
さっき、おぼれかけたときに、聞こえてたよ。
ふしぎだよね。
[それから、こくりと頷いた。
でも行動にあわせてはいないのだから、まだ良かった。]
うーんと、一緒に描く。
ねむくないよ、多分。
だいじょーぶ。
そんなもんなんですか
[視線から逃げてるとか思わず、もう一本ないと。というのに、絵師がいうからそうなのだろう。と思いつつ兄弟の会話の邪魔のならないように少し黙ってる]
[「遠慮」するエーリッヒには、大丈夫だとかなんだとか、
やはり真意を理解していない答えを返して、
弟に詰問を受けるさまを他人事として眺めていた。
途中、アーベルの言い訳(事実)に鋭い目を向けたりしながら]
……ああ、そうだ。
[ぽつと呟き、エーリッヒの背後に回ると手を伸ばす。
爪先立ちになったのは、仕方がない]
―広場―
[エルザに手を握られればほっとして。
彼女の指さす先を、ぼんやり見上げたりした]
[現れたアーベルにはお辞儀して。
頭上で交わされる会話は聞き流し気味にしながら、
袋のアトリに密かに話しかけていた]
色恋沙汰っておかしいね。
普段は堂々としてる薬師さまがとりみだしたり、あっというまに噂が広がったり、ふしぎ。
みんないつもとは変わっちゃうみたい…。
どうして目を逸らすんですか。
[そこはしっかり突っ込み]
はい、それは分かります。
で。
それを理由に、逃げたんですね?
[青の理由は知っているから、そこは肯定した上で。
今度ははっきり言った]
…まあ。
それは、僕も驚いたんだけど。
[最後の言葉に、漸く笑みは消えて。
普段のように呟いた]
へ、 ショック受け……
てるのかな?
[わからないで、友人に尋ねた。
少女はそれから彼女らと別れ、ミリィのところへ向かう。
丁度料理の申し出が聞こえて、]
ミリィせんせー、本命絵師様なのかぁ。
そっか、そりゃオトせんせーがミリィせんせーに悪いっていうよね。
[声に出ちゃったのは、多分ちょっとした問題だったのだろう。]
でも仲良しなのになぁ、オトせんせーとミリィせんせー。
あ、ミリィせんせー、本預かってまーす!
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