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―回想:昼―
[ここしばらくはきちんと眠れていない。
そう彼女は思って苦笑する。
部屋の中には紙がやはり散らかったままになり、未完の絵が捨てられていた。]
あ、見に行こう。
[ふと、昨夜の執事の言葉を思い出して、彼女は部屋を出る。
まだ明るい時間。
階段を下りて、向かうは庭園。]
――すごい。
[先日とは違い、花が綺麗に開いた様子を、彼女は十字架を宿したまま見つけ。]
[だんだんと冷たくなっても、彼女はただただ、その薔薇を見つめて。
それでも、それを描くことはできない。
黒と白の薔薇。
手を伸ばすことはなく、ただ目に焼き付けるように。
それは陽が沈んでも。]
……ところで……ローゼ?
[ふと、何か。睨むような視線を感じてカーバンクルを見やれば。
真紅の瞳にはやや、怒ったような色彩。
その色彩と、まとめを始めた時と同じ空の色に。
自分が『やらかした』事に思い至る]
……あー……また、やっちまったか。
[研究に没頭して、食事をとり忘れるという、ある種の日常茶飯事。
それを、この真白の妖精が快く思っていないのは知っているのだが]
……わかったわかった、何か食べに行くから!
そう、怒るなよ?
[苦笑しつつ立ち上がり、身支度を整えてから、カーバンクルを肩に乗せ、部屋を後にする]
─…→ホール─
[ホールに顔を出せば、昨日よりはいくらか、慌しさは鎮まっていただろうか。
その代わり、緊張らしきものは張り詰めているようにも感じられ。
取りあえず、飲み物と軽く摘める物を用意してもらい、一先ず空腹を誤魔化しておく]
……別に、研究中はいつもの事だろうに……。
[中々機嫌を治さないカーバンクルの頭をつつきながらこう言えば]
「今は、おやすみなのにー」
[返って来るのはこんな言葉]
―客間―
よ…く、ねたか、ね。
[たどたどしい口調でぼけっと起き上がり
そういえば結局泊まったんだったか…なんて思いながら
日課どおり知恵の輪を弄りつつ、昨日あったこと思い出す]
―回想/ホール―
あ、オルゴールの絵を描いていたんだ。
[ナターリエからそう聞き、あー、そりゃ見に行けばよかったなーとこっそりと呟きながらも、出来上がったら見せてもらえるらしいので]
そのときはよろしくお願いいたします
[と、お願いした。その横で、ナターリエとヘルガが絵、というよりオルゴールやギュンターの容態について喋っていたようだがそれには加わらず考える。]
[単なる予想とはいえ、なんかこの状況は帰れそうにないな。じゃあ自分は何をしようか。工房とかでもないのかな。とか悩んでいると、それを心配したのか。ザムエルに声をかけられる。それに対して...は考え込みながらもザムエルの顔を見て。
書庫だな。
と、その思慮深き雰囲気からかインスピレーションを感じたのだろう。
もし考えている途中にヘルガやナターリエやブリジットに声をかけられていたら庭園だっただろうか。
それはわからないがそれはともかくとして、声をかけてくれたザムエルに大丈夫ですよ。と一度言った後]
いえ、ただ同じよう早く落ち着かないかな。と思ったのですよ
[内心でそんなことを思っているとは知らないだろうが、別に嘘ではない。そうじゃないと仕事が…とは続けなかったけども]
さて、と。
[当初の目的を果たしてしまうと、一人で─正確には一人と一匹、だが─ここにぼんやりとしているのも居心地が悪く]
……庭にでも行くか。
[部屋に戻るのもなんだし、と思うと結局そこに行くしかないようで。
ふらり、ホールを出て庭園へと足を向ける]
─…→庭園─
[昼の陽の下と、夜の月の下。
表情の違う黒白の花は、しかしいつ見ても綺麗なもの。]
オルゴォルにも合うかしら。
[思い出して呟くも、それを形にすることができず。]
[さて、どう過ごそうかも決まったな。ということでホールを去ろうかと思っていた頃。
噂話にあげていた人物。オトフリートがホールへと顔を出した。
噂をしているときはそこには居らず、去ろうとしたら現れる。そのタイミングについての見解が、ヘルガに内心で同意しながら
オトフリートは皆に、伝えるべきことがあるという。
そこからオトフリートが反応を探ろうとしているのか。などということは頭に浮かばず。
やっぱり何かあったのか…と半分は予想していた通りだったのでそれぐらいしか漠然と思わなかった。でもオトフリートが口にするということは必要だからこそ喋るのだろう。
それは明日。ということなので。じゃあ明日。ということで、今日は帰るのは諦めて
書庫に向かい、いくつか本を借りて客間に戻ったのだった]
─庭園─
[庭にやって来れば、今日も今日とて先客があるらしく、人の気配が感じられ]
……そういや、ここで誰にも会わないって言うのが少ない……な。
[そんな、どこかずれた事を呟きつつ、ゆっくりと奥へと歩みを進めていく。
夜闇は静か、月光はもまた同じく静かで。
その心地良さにふ、と、抱えていた緊張が緩むような気がした]
……で、誰がいるのかと思ったら……?
[白い花に指先を伸ばす。
触れた感触は上質の絹より柔らか。]
…綺麗ね。
ここで咲いてるのが、きっと一番綺麗。
[ふわと笑って、その手を引いて。
振り返った彼女は、ようやくそこにエーリッヒの姿を認めた。]
今晩和。
あなたも薔薇を見にきたの?
あ……こんばんは。
[声をかけていいものかどうか、悩んでいた所に逆に声をかけられ、挨拶を返す。
カーバンクルも真白の尾を振りつつみゃう、と声を上げた]
いや、薔薇を、という訳じゃなく。
どうも、落ち着かないんで、散歩に、ね。
[…ぽむぽむ。
少女は自分の頭に手をやった]
…
[むぅ。小さく唸りつつ考える。
…今日の題目は、自分の頭は気持ちいいのかどうか。
ナターリエにも撫でられた。
ユリアンには、なんだか顔を合わすたびに撫でられている気がする。
少女は部屋で一人。
起きた時には日はてっぺんまで登っていて、気になったことはぼんやりと考える。
…ここまでゆったりとした時間は取ったことがないのか、ベッドに寝転がり、ごろごろとしていた]
庭園は綺麗だものね。
[不自然さには気づいているのか、しかしそれについては口にせず。]
こういう場所は落ち着けるでしょう?
あなたも
[と、カーバンクルにも微笑みかけて]
―客間―
[そして現状に至る。というか。本を読んでいて寝た。
ちなみに本の題名は…各地の名産品…とか。牧畜の方法…とか
またしても地雷を踏んでしまったらしい。まともに探せばいいのに。
こうしていらぬ知識で間違った方向に進んでいく...であった。]
ん。外れた
[知恵の輪のことである。そして目が覚めた。
さてさてどうしようか。近くにあった本をぺらぺらめくりながら思う。
そういえば、今日何があったか説明してくれるらしいが、それはいつだろうかとか。ぼんやり]
ここの庭は、特に。
俺にとっては、書庫の次くらいに落ち着けますかね。
[どこか冗談めかした口調で、こんな言葉を返す。
笑みを向けられたカーバンクルはみゃう、と肯定するように鳴いた]
書庫は行ったことがないのだけれど。
そこも落ち着けるのなら、いってみてもいいのかしらね。
…古い本とかもあるのかしら?
[カーバンクルの鳴く様子には、かわいらしいと小さく笑う。]
…
[やがて、何も証拠や理論のない題目は飽きてくる。
…最も、少女でも分かる問いというのが少ないのかも知れないのだが。
そして、思い浮かぶのは…]
…ギュンターさん、大丈夫かなぁ…
[召使いが何も言ってこないと言うことは、まだギュンターの具合が治っていないのだろう、と。
…間違っては居ないのだが…少女が考えているほど事態は甘くはなかった]
―客室―
[ぱた、と軽い音を立てながら背表紙を閉じれば、
活字へと落としていた視線を上げる。…既に窓外は夜の帳が落ちていて。
それでも尚、昨日ほどでは無いものの邸内の慌しさには変わりなく。
小さく溜息を吐けば、寝台を軋ませて立ち上がる。
何気なく窓を微か開けば、―――横を通り抜ける風]
―――…魂、か、
[ふわり。と。蒼の髪を風が攫う。
薄く開いたその口唇から零れるのは、
―――本来より、僅か低く響く声。]
―――…
行った事がないんですか。
[じゃあ、逆ですね、と。
微かに笑みを浮かべて]
俺は、ここに来たら必ず書庫を使わせてもらってますよ。
落ち着けるかどうかは、人それぞれだろうけれど。
ええ、蔵書には、古い物もかなりの数が。
御大の収蔵品に関するものは、大抵は揃ってますね。
[かわいらしい、と言われたカーバンクルは真紅の瞳をきょとり、とさせて尻尾をゆらりと。
やや、首を傾げる仕種に合わせて、額の真紅が月光を弾く]
此の邸内にある魂―――全て集めたら
どれ位のものに、なるだろうな。
[くつ、と僅か零れる笑み。
―――窓外の庭園を見据える瞳は、紅く。]
[続く言葉は音に成らずに。ふわ、と瞼を伏せる。
再び現れた瞳は、窓から差し込む月明りを返して、蒼く光り。]
―――…
[数度瞬きを繰り返せば、ふるりと頭を柔く振って。
再び窓へと手を掛ければ、ゆっくりと、閉じる。]
……あー…。
[何処か疲れたような声を上げれば
手に持った本を、サイドテーブルへと放り投げて。
気分転換に、と小さく首を鳴らしながらも扉へと向かう。
ぱたん、と、軽い音と共に再び扉が閉じられて]
―…→2F・廊下―
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