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……だめ。
[子供の我が儘のような言葉に返したのは
こちらも、まるで子供のような言葉だった。
たのしそうに目を細めてわらう。
満たされた今、何時ものように無表情を湛えて居られなくなっている事に対して、ロランの自覚は無かった*]
―広場→川辺の小屋―
[棺にマクシームを納め、ユーリーの視線>>212にこくり、と頷いた。
レイスの案内に従い、マクシームを運ぶ。
密かに思いを寄せていた、イライダのブレスレットと共に。
川辺の小屋まで運び、棺を一度撫でた。]
(すまない。痛かったろ、苦しかったろ…。
近くにいたのに、気付けなかった…。)
[イヴァンを呼ぶユーリーの声を聞いて>>222、なんだ?と首を傾げる。
そう言えば、夜、彼の家に報せに行った時には返事が無かったな、と思い出したりして。
戻ろうか、との声に無言で小屋を出た。
広場までは戻らず、途中ふらりと皆と別れて自宅へ。**]
[それからイライダからのお茶の誘いには幼馴染二人と視線を合わせて]
うん……二人と一緒に行く。
[こくりと頷いた。
ロランがキリルをからかうのには小さく笑って。
イライダがお茶の用意をしてくれれば、しばらくは穏やかな時間が戻るのだった**]
―― 回想 ――
[葬送の作業をしながら、友人とイライダのやりとりを聞く。
何も言わなかった。
正直自分は彼女はあまり得意ではなかったので、マクシームのアピールもとりあえず笑って見ているだけで常日頃から何も言わなかったからだ]
………………
[棺の中のプレゼントを眺めながら運んでいると、ユーリーからキリルとのことを聞かれた]
どうかな。したと思ったんだが……無理っぽい。
[はふ、と答えを詰まらせ、段差を越えたからだと言い訳した]
さっきの感じじゃもうだめなのかもしれない。
大好きだし愛してるけど。まあ、全部自業自得だ
ちょっとね、酷いことしかけたから。
完全に怯えられてるかもしれない。
でも、それでいいんだ。多分そういう姿勢で正解なんだ。
シーマには申し訳ないけど、彼女だけはこんな風になってほしくないから。
[とつとつと語る。
レイスの方を見て、謝るように黙礼した]
[その件について語るのはそれだけだった]
―― 作業小屋 ――
[花摘みの作業も途中だし、それが終われば花卉の洗浄や乾燥などやらなければいけないことが山積みだ]
………………
[ただ、どうにもやる気にならずぼうと作業小屋に座ってた。
後で話があるといったユーリーに、ここにいると告げたから、その場にいた人たちなら自分の居場所は分かるだろう]
[自分の座った周囲には、紙くずが丸めていくつも散らばっている。普段は整理しているだけに、割と酷い有様だった]
[ここに誰が尋ねてきても、ノックをされれば物憂げに「どうぞ」と声だけかけて扉を開けることもせず話をするだろう**]
[イライダの家で、ハーブティーを御馳走になる。
慣れない香草の薫りは気持ちを確かに落ち着けてくれたけれど、
口の中の脂が無くなる感じがして、あまり好みでは無かった。
勿論、それをイライダに伝える事は無いけれど。
甘くないクッキーは美味しくて、そちらばかり手を伸ばした。
女の子達のお喋りに耳傾けて、
気づいたら日の光は遠くなっていた。
きちんと礼を述べて彼女の家を出る頃、
見えた空は紫とピンクの交じる茜色]
―― 回想 ――
[恋人との事に答えるイヴァンの声が詰まれば
怪訝そうに片眉が持ち上がる。
段差が理由と言われれば、追求せず]
――…ん。
酷い事しかけたなら怯えられても仕方ないな。
けど、怯えてるだけじゃないんじゃないか。
本当にそうなら、名前を呼んだりしないだろ。
話したいと思うから声を掛けたんだと思うけど?
[僕の見当違いか、と尋ねるように首を傾げた**]
[ロランが笑う。
ボクはその声にむくれたけれど、無論本気ではないじゃれあいだ。
その原因になった彼の笑い声は心地好く響くから、ボクは殊更彼に、それを指摘することをしなかった]
狼が、どうかした…?
[やがて聞こえた声に問いを向ける]
[レイスの言っていた赤い月を思い空を仰げば
傾きかけた太陽が空を茜色に染めていた]
シーマが最期に見たのも赤い月だったのかな。
[暫くは見られぬ満月と幼馴染を思う。
彼の見た最期の景色が犯人の顔でなければ良い。
誰の姿であれ、きっと彼は心痛めるだろうから――]
―― 作業小屋 ――
[途中、車椅子の啼く高い音が聞こえた気がしたが
材木置き場の方へ行った彼の姿は見えなかった。
別れ際にイヴァンから聞いていた場所を男は訪ねる。
扉を叩けば、幼馴染からの応えが聞こえた]
邪魔するよ。
[名を言わなくとも幼馴染だから声で誰かは分かろうか。
扉を開けて中に入れば珍しく散らかった様子が目に留まり
花色の眸が驚いたようにはたりと瞬いた]
なんだ。
片付ける間もないくらい忙しかったか?
[尋ねて男は近くの作業台へと体重を預ける]
[じ、と花色の双眸がイヴァンを見据える。
如何切り出したものかと悩むような沈黙が流れた]
―――…、
[大きく深い呼吸が一度]
僕は何があろうとイヴァに怯える事はない。
[落ち着いた声音でそう宣言する]
―― 作業小屋 ――
[友人の訪れを座ったまま迎えた。
ふと、先ほどいわれたせりふを思い出す。
名前を呼んだということは、話したいということ]
(……そうだといい)
[先ほど、その言葉で少し気分が軽くなっていた]
まぁね。一番忙しくなるのは明後日くらいからだが。
その頃にはお前もひきずりこむさ
[日常の会話。けれど何故か現実感が薄かった。
散乱している紙くずは、すべてどこか切羽詰ったキリルへの恋文の書き損じ]
…………
[友人の作る沈黙は、特に邪魔することなく待っていた。じっと彼を見つめる]
それは……
そうか。ありがとう。友達冥利につきるな。
[そこで一度口ごもる。
作業台をとん、と指でたたいた]
正直、その信頼に応えられる自信がないんだ。
俺はたまに俺におびえるし、その俺を信じてくれるユーリーのことが信じられない部分もあるんだ。
[最後の部分では、耐えられなくて視線をそらした]
ごめん
―広場―
[マクシームを運んだ後の復路。
途中で離れるミハイルは何も言わずに見送った。向かう方向は恐らく彼の家だろう。
ユーリーとも何処かで別れたか、僕は一人広場に向かった。
気がつけば随分と時間が経っていて、もう陽は沈みかけている。]
……。
[マクシームが発見されたという茂みを見遣る。
遠目な上暗くなりかけていて、僅かに残る赤は此処からでは伺えないが。]
人狼……
[この集落には何処か遠い存在だった。
それはもう過去の話。]
……そう考える他無いか。
[篝火の跡に目を移す。
火を嫌うただの獣が、わざわざ此処まで来て事を為したとは考え辛い。
集落の他の人間に殺されなければいけない程、マクシームは悪い奴ではなかった。
考えれば考える程、その存在が現実的になる。
小さく息を吐いて、目を逸らした、その先に、
何か光るものを見つけた。]
[それを拾った事に、特に理由は無かった。ただ何となく気になったのだ。
随分と汚れていて、初めは何か分からなかった。
可愛らしい小花の髪留め。僅かに残った白い部分が、光を跳ね返していたらしい。]
カチューシャか、……イライダ姉さん?
[僕は化粧を施された妹を見ていなかった。
だから思い浮かんだのは、可愛らしい雰囲気の彼女の友達。第二候補の大人の女性がこれを付けるとは考え辛い気もしたが、他に思いつかなかったのだ。
よくよく見れば汚れは黒ずんだ血のようにも見えたが。]
後で訊いてみるか。
[2人とも遺体の傍に寄る機会があったから、その時は疑問に思うことは無かった。
先程落としただけにしては随分とこびり付いていることも、疲弊した頭では気がつかず。
拾得物を指先で摘まんだまま、暫しの間、物思いに沈んでいた。**]
[マクシームが此処に居たなら何と言うだろう。
そんな事を考えてしまうのは共に居た時間の長さゆえ。
居るのが当然だった存在が今は遠い]
……ん。
そろそろ花の収穫時期か?
[色が変わりつつある花を真っ先に連想するのは
イヴァンの生業に深く関わるものだから。
落ちる紙くずをチラと見遣りその一つに手を伸ばす]
友達冥利、か。
幼馴染だから、友達だから――…
信じたいとは思っていたがあんな事があったんだ。
何の根拠もなく信頼は寄せられない。
[本気とも冗談ともつかぬ口調で軽く肩を竦める]
[信じられない部分があるという幼馴染にふっと笑い]
――…そういう正直な所、嫌いじゃないぞ。
易々と信じると言っていたら、――…
それはそれで心配だし、な。
[己におびえるというイヴァン。
彼が自身の何処に不安を抱くかは分からない]
イヴァ。
人狼のお伽噺、覚えてるかい?
あの話の中に、人狼を見破る者が居た、だろ。
[訥々と本の中の話を語る。
それは何処にでもあるお伽噺の一つで]
―― 作業小屋 ――
[友人が書き損じを拾うのを見ると、ついと視線を逸らした。
守るから一緒に村から逃げよう、とか、そんな言葉が塗りつぶされた中に少し垣間見えるかもしれない]
あぁ。盛りはほんとに一瞬だから、種がつくぎりぎりまで待って一気にいかないと。
[窓の外には赤みを帯びた黄色のじゅうたん。
紅という本質を、可愛い黄色い皮で覆い隠す花]
根拠……
シーマをお前が食べて、次に食うのが俺だからか
[言いかけて、御伽噺のことを聞く。
あぁ、と納得したような少し残念そうにも聞こえる声を落として。それからいくつか瞬き]
[ぐっと力をこめて彼を見た]
探して、俺で外したのか。
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