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いや、似合わないと思う。一般的に、ああいう事を言って許されるのは、おそらく20歳くらいまでだろ。
[旅籠の玄関で折り畳み傘を閉じる。
雨音はさらに激しく、雷鳴も聞こえ始めて]
…地面がどろどろなのは……困るな。
あの細い山道で、タイヤが滑ったら大事故の発生は免れない。
これでも安全運転を心掛けてるから、事故は嫌だな。
えー。そうかなー?
年齢かんけーないと思うけど
[ごろごろー]
…コダマだいじょーぶかな?
[ちょっと心配]
でも、タイヤが滑っちゃったら大変だから、だめだよ!車!
ふーみんせんせーみたいになっちゃうよ!
[雨の音が強いから、ハタゴの中には聞こえてないはず!]
涼ちゃんも、きっともう少し大人になれば分かるさ。
[けらりと明るく笑う]
あれ。雷は…猫も犬もだめなんだったか?
うちでは飼えなかったからな…未だによく分からない。
今は一人暮らしだが、飼う余裕はないしな。
………史人は、もう事故経験者か。
そう言えばこの間も、危険運転をしそうな事を言っていたな。まったく…それで玲ちゃんを泣かせたらどうするのつもりなのか、と。
[旅籠の扉を開け、中に入る]
ただいま、と言うのも変だが、ただいまー。
[桜の丘を追い出された後は、とっとと旅籠に戻り、手早く荷物を纏めると、]
[雨が降りそうなのにも構わず、雨具を着込んで出発していた。]
[桜は見たし、祭りもない。もう残っている理由は無いと、宿にいた面々に暇を告げ、スタスタと出て行ったのがほんの2時間ほど前。]
…なんだよ、こりゃあ。
[村を訪れた際に、それを一望した丘陵を越えた場所に立ち尽くしている。]
[ただし、そのときと反対側を向いた聡の眼前には、本来なら蛇行しながらその丘陵をいったん下り、またその先の山間部へと続いていた道が、ごっそり削げ落ちていた。]
おじゃましまーす
[ゆきおねーさんの後ろから中に入る。]
うーん、コダマどうなんだろ。たかちゃんに聞けばわかるかなー?
ふーみんせんせーはねー、あんまり言うと怒るからやー。
事故したらしいってしか知らないけど。
この雨のせいか…。
[アスファルトは途切れ、一部にかけらが残るのみ。土砂崩れだろう。視線を丘の下方に転じると、蛇行する道のあちこちが、同様の土砂崩れに寸断されているのが見て取れた。]
…。
[進むのは自殺行為だ。確かに車でない自分は、もう流れていない土砂ならば、越えて進むことが出来るだろう。しかし、雨が続いている以上、自分が歩いている足元が崩れる危険が常につきまとう。]
ここも危ねぇかも知ねぇ。急いで戻るか…。
[踵を返し、来た道を戻り始めた。]
[ばたばた、と旅籠に飛び込んでくる。]
っかぁー、濡れた濡れたぁ!
おーい、乾いたタオル貸してくれねーか?
[言いながら、雨の滴る合羽を脱ぎ捨てる。]
[適当な席に座り、温かいお茶を主人に頼む]
あ、そういえばもう聡は、戻って……って。
この雨の気配の中、出て行ったとか、阿呆か。
[主人の言葉に、呆れたような声。
コダマが部屋の隅にいたのをみつけ、ちょいと手招き]
…怒られるんだ。あんまり、聞かないほうがいい事なのか…?
確かに、多少情けないことではあると思うが。
あ、わたしもー!
[お茶に挙手!]
さっちゃんにもー!
[おー、ゆきおねーさん、ナイスコントロール!]
んーとねー
ふーみんせんせーって絶対みえっぱりだから、怒る。
[テレるのかな、よくわかんない!*]
おう、すまねぇな。
[裕樹の投げたタオルをぱし、と受け取る。それで水浸しの頭を拭いていると、旅籠の主人も山盛りでタオルを持ってきた。]
[「忘れ物か?」「どうしたんだ、帰ったんじゃなかったのか」といったようなことを問いかける周囲に告げる。]
土砂崩れだ。道が塞がってやがる。
[近寄ってきたコダマを抱えて、お茶が来るまでの暖を取る]
さっちゃんの分のお茶まで頼むなんて、涼ちゃんは優しいなあ。
[けらりと笑い]
……見栄っ張り、か。なるほど。
[ふむ、と一声上げるだけに留める]
いや、特に気にしなくても良いさ。
[聡にひらり、手を振って]
……ち、勢いが足りなかったか。
[こっそりとそんなことを呟いてみたり。
そう言えば]
どうして戻ってきたんだ?
やっぱり、雨がきつかったのか?言えば車で送っていったのに。
[からかうように笑うけれど、土砂崩れとの言葉に瞬く]
それは、どこの道だ?まさか。あの一本道なのか?
っへ、あくびが出るぜ。
[きっちり憎まれ口を叩いてから、顔を思い切りしかめる。]
「あの一本道」ってのがどの道かわかんねーな。俺が来た道だよ。
[そこへ、「この村に、外へ通じる道は一本だけだ」、と宿屋の主人の補足が入る。]
…だそうだ。閉じ込められたな。
[暖かいお茶が出される。]
お、助かった…。(ずずー…)
ふー、生き返るぜ。ありがとよ。
ガキも気が利くじゃねーか。[笑顔で言った。]
・・・降って来やがッたな。
[西行院家の玄関先。
行き掛けにぽつぽつと降り始めた滴は次第に強くなり。
しッかし、未だ終わんねーのか。
[扉を振り返り、息を吐いた。]
[濡らしたタオルを投げるべきだったか、など内心思いつつ。
更に激しくなってきた雨音と、雷鳴に眉を寄せた]
このタイミングで、村から出られないってのは…全く誰かの作意でもあるんじゃないかと疑いたくなるな。
まあ、俺は別にもうしばらく滞在する予定はあったが…もう一度、葛木家にいかなきゃならないしな……だから、問題はないが。
一応、村の外に連絡は、取れますか?電話とか。
[宿の主人に尋ねてみる]
─雨の降り出す少し前─
[曇天をしばし睨んでいたものの、やがて、そこから視線をずらして着替えを済ませ。
ふと、目を向けたのは空っぽの本棚の隅に置かれた桐の箱。
しばしの逡巡。
それを手に取り、中の細い包みをジャケットの内ポケットに入れて、居間へと向かった。
居間には既に、簡単な食事が用意されていて]
……親父は、櫻木の方に行ってんのか?
ん……そっか、じゃ、後にする。
[いずれにしろ、すぐに話せる内容でもないし、と納得しつつ、食事を済ませ。
片付けは自分でやるから、と食器を重ねて立ち上がる]
あんまり、足に負担、かけるなよ?
それから……無理は、するな。
[短い言葉、そこに込められた意は通じたか。
ぽふり、と。昔と変わらぬ手つきで妹の頭を撫でてから台所へ向かい、早々と食器を片付ける。一人暮らしの長さのためか、手つき自体は慣れたものだった]
……さて、雨が降り出す前に、愛車を退避させて……。
[言葉を切り、しばし、逡巡]
……ま、行く、つったのは、俺だしな。
[小さな声で呟くと外に出て、玄関横に止めておいたバイクを納屋へと避難させる。
一応、シートは被せてあるが、やはり、雨ざらしは避けたかった。
それらの作業が一段落した所で、出かけてくる、と中に声をかけ、門をくぐる]
……っとに……やな天気、だな。
[重苦しい空の色彩と、湿った空気と。
それに、低く呟きながら、*早足で歩き出す*]
土砂崩れで閉じ込められた、くらいは職場に連絡しないと。
[抱いていたコダマをその場に残し、主人の示す電話の受話器を取る。
けれど耳に当てても、音はせず]
……故障…?まあ、慌てる話でもないからいいか。
雷のせいなら、停電が先に思い浮かぶが…。
[困った顔で主人にその受話器を渡す]
そ、玲ちゃんと、史人の家。祭の後にじっくり見せてもらえる話だったんだが…ちょっと難しくなったかもな。
少なくとも、雨が止んでしばらくして、土が固まるまではこの村を出られそうにねーな。
[ため息。]
一応俺も連絡しとかねーとなぁ…。電話、直ったら貸してくれ。
[主人曰く、急ぎの電話であれば、西行院家や葛木家、商店の幾つかを借りると良いとの事。
西行院家であれば、ついでに土砂崩れを伝えて欲しいとも]
俺はあんまり気分が乗らないな。さっちゃんは、どうする?
お前が行かないなら、俺が行くけど?
[聡の答え次第で行く先を決める*つもり*]
[最初は史人の家に電話を借りに行くつもりだったが、家が少し離れているために母親はなかなか首を縦に振ってくれない。それならば、と家の傍にある商店で借りることを提案する。近くならば移動中の危険は少ないだろうと考えたためだ。母親も、それなら、とようやく許可してくれた]
それじゃあ、行って来る、ね。
[母親に告げ、傘を持って自宅を出る。外は既に雨模様で、傘を持たぬ村人が駆けて行くのが見えた。傘を開き、商店へと向けて雨の中を歩き始める]
土砂崩れの件は、確かに見た俺が伝えるのがいいよな…。
おっけー、仕方ねー。西行院サンにぁ俺が行くぜ。
電話も含めて一手間で済ますのがいい。
[告げると、だいぶ乾いたがまだ水浸しの合羽に代わり、旅籠から傘を借りる。道順を主人に聞くと、出かけた。]
[目的地の商店には5分もかからず到着する。からりと扉を開け、商店の中へと足を踏み入れた]
こん、にちは。
おじさん、電話、借りても、良い?
[挨拶と共に用件を告げる。しかし、返事が、無い]
………?
おじさん?
居ない、の?
[店の中には誰も見当たらない。店番も置かずに居なくなると言うのはまずあり得ない。不思議に思い、家へと繋がっている扉へと近付いた。軽くノックをする。返答は、無い]
誰も、居ない、の?
[この商店は夫婦で経営している。いつも少なくともどちらかは店か家に居るはずだ。返答が無いと言うのは、おかしい。不思議に思いながら、家へと繋がる扉をゆっくりと、開けた]
……───っ!!
[目の前に広がったのは、見慣れた部屋。ただし、床も、壁も、家具も、紅いモノに彩られていたが。奥には人の形をしたモノが2つ、並ぶようにして転がっている。それを見てしまい、それが何だったのかを、理解してしまった]
い、やぁっ…!!
[反射的に後ろへとずり下がり、がたん、と後ろにあった物にぶつかる。両手で口元を押さえ、ガタガタと震え始めた。誰が、どうして、そんな考えと恐怖が榛名を襲う。その場に居るのが耐えられなくなり、逃げるようにして商店を出た。傘も差さずに家へと駆ける]
お、母、さん…!
商店、の、おじさん、達、が…!!
[少しの距離でも榛名の身体には辛いものがあり、駆けた影響で息を切らせながら家へと飛び込む。玄関で叫び、母親を呼ぶ。が、居間に居るはずの母親が姿を現さない]
…おか、あ、さん…?
[もう一度母親を呼ぶ。返事は、無い。嫌な予感が心を支配する。
恐る恐る、家へ上がり、居間へ続く扉をゆっくりと、開ける。母親の姿は見えず、先程のような紅いモノは無かった。少しだけ、安堵。しかし先程まで居たはずなのに母親はどこへ行ったのだろうか?]
お母さん、どこ?
[尚も母親の姿を探す。ふと、仏壇のある部屋へと足を向け、襖を開けた]
[仏壇に縋るような姿勢で倒れる母親の姿。床と、壁と、仏壇と、そこに飾られた父親の写真が紅く彩られていた]
い、やああああああああああ!!
[叫びながら、部屋から逃げ出した。泣きながら、叫びながら駆けて、靴も履かずに玄関を飛び出す。勢い良く扉を閉め、扉に凭れ掛かり、そのままずるりと座り込んだ。膝を抱え、ガタガタと震える。息が荒い。発作が起きていないのは奇跡とも言えるだろうか]
[単純に厚意からか、延々と玄関に立たれることを良しとしなかったのか。
見兼ねたらしい使用人が傘を渡してくれた。]
あァ、すいません。
今度返しに来るッス。
[そう礼を告げ、傘を広げる。
随分と使われていないようではあったが、雨を凌ぐのに不都合は無い。]
[靴に水がしみている。雨の中山道を歩き過ぎた。]
[不愉快な感覚に、いっそ裸足になっちまおうかなー、などといった考えが浮かぶ。]
[と、そのとき。視界の端に異様なものを捉えた。]
…足?
[商店街へ差し掛かる道の曲がり角の、ブロック塀の影から子供のが出ている。]
[足の裏を空に向けて無造作に転がっている様子は、その足の持ち主が倒れている事を予想させる。]
[転んだのだろうか?にしては、見つけたときから動き出す様子が無い。]
……て、あちゃ、降ってきやがったっ……。
[家を出てしばらく進んだ所で降り出した雨に、舌打ち一つ]
傘持ってきて、正解だったか。
[持ってきたというか、持たされたというか、なのだが。
ともあれ、肩に担いでいた傘を開き、先を急ぐ。
雨音のせいか、周囲の異様な静けさに気づくこともなく、先を急いで]
ん?
……榛?
[目指す家、その前に座り込む姿に気づいて足を速め]
榛? 榛、どうしたっ!
[明らかに異常な様子に、慌てたように名を呼びつつ傍らに膝を突いた]
[泣き声すらない。]
…!!
[瞬間、傘を投げ出して駆け出していた。]
[角が近づく。視界に少しずつ脚部が入り始める。水溜りが出来つつある地面に横たわる脚は、動かない。]
[あれは、あの脚の周辺の地面の色は、赤土の色だろうか?]
[飛び出す。あったのは、予想通り、うつ伏せに倒れ動かない子供の身体。そしてその面に伏せった腹部から、赤く染まった雨水が染み出していた。]
!!!…こいつは…。
おい、大丈夫か!おい!
[側に跪いて抱き起こし、仰向けにする。]
…!
………ックソ…。
[首に手を当てるまでもなかった。腹部がごっそり抉れている。刃物でどれだけ切り裂いたらこんな傷になるのだろうか?]
[苦悶と、恐怖に歪んだ顔のまぶたを閉じさせながら、叫んだ。]
誰か!誰か来てくれ!誰か!!
[何で、どうして。そればかりが頭を支配する。先程見た二つの光景が頭から離れない。どちらも、親しかった者達。ショックは隠しきれず、目を見開いたままガタガタと震えていた。
膝を抱えたまま動かないで居ると、聞き慣れた声が自分の名を呼び、傍に誰かが来たことに気付く。ゆっくりと顔を上げた]
…ふ、ふみ、と…。
史人ぉ…!
[そこに居たのは幼馴染の姿。恐怖に強張った表情で史人を見上げ、それは徐々に泣き顔へと変化する。膝を抱えていた腕が解かれ、縋りつくように史人へと伸ばされた]
お、かあさ、ん、が…!
お母さん、がぁ…!!
[言葉はそれだけしか紡げず、続く言葉は嗚咽に飲まれた。ただならぬことがあったことだけは、伝わっただろうか]
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