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−東殿回廊−
[どうしようかなあ、どうしようか。
右に行っても同じような廊下、左に行っても同じような扉。
口の中の飴はもうすっかり無くなってしまって、今は薄荷の香りとともに。
ずるずるとした布と共に動いていたけれど、ぴた、と足が止まる]
…疲れた。
[迷子、とは決して口にしない。
むく、と頬をふくらませて]
[指と指を突き合わせて、どこかで見たような光景だとか、そんな話は置いておいて]
だから、ダーヴの平気はあてにならないんだって。
あ、黒いのとか触っちゃ駄目だからね?!
焼こうとしても駄目!
[ああ、このままデコピンしてやりたい、とか猛烈に思ってるみたいです…メタルの方の手で]
天秤を揺らす、つまりバランスを崩すということではないかの。
世界のバランスをな。
[ダーヴィッドの問いに己の見解を口にする。居ることに気づいてはいたが、話の途中だったために後回しに。その姿に視線を向けてから右手を上げ挨拶の代わりとする]
此度の竜王様達の封印。
これが「揺らすもの」の介入となると、ダーヴィッドが読み取ったバイパスとなる存在、それが「揺らすもの」に干渉された者と言うことになる。
さて、その干渉された者と言うのが誰になるのか。
それが問題じゃな。
[改めてやるべきことを整理し、口にする。
木陰傍にノーラの姿を見止めると、そちらに対しても右手を上げることで挨拶に代えた]
― →西殿―
[中庭を抜け、人の集まっている方へ。
こちらに気がつく者がいれば頭を軽く下げただろう。
後は交わされる会話を邪魔してしまいそうで、静かに聞いていた]
成る程。
ああ、被害は少ないのに越した事はないしな。
[そう口にするのは、生命竜としての性か。]
俺とオティーリエには無理…だろうな。
ちとそっちも任せるわ。任せっぱなしで悪いが。
[アーベルにそう告げながら、オティーリエの言葉には。]
ん?逃げ場所…?
[重ねるようにして尋ねた。]
…あぁ、それは聞いてる。
谷の方でも色々それでえらい事になってるらしいからなぁ。
[真顔で答えるも、指先はちょんちょんとつついたり遊んだり。]
まぁ、あれだよ。動けるうちは平気じゃんさ。
[その発想がよくないにちがいない。]
種……か。
[聞こえてきたユーディットの言葉を小さく復唱する。
ミリィの視線に気づくと、だいじょぶだいじょぶ、と言いつつひらひらと手を振り。
それから、改めて両手を当てて目を閉じ、周囲に風を呼び寄せる。
閉ざされし空間にも、風は行き交うのか。
内にあるものの存在は、微かに感じ取れた]
ん。
やっぱ、見たり聞いたりは、無理、かぁ……。
ちぇ……ギュンターの爺様と話せれば、情報も入るだろーに。
[オティーリエの問いに此方もそっと囁き返す]
入りたいと願えば、貴女の心の絡んだ印が反応します。
送り込むのよりもずっと易しい筈ですよ。あちらは結界と関係ない他者ですので心の力を多く使いますから。
クレメンスも同じように入れます。
ですが他者を伴うのはやはり無理ですので。
[安定した移動は後から整えられても、結界の大部分は最初の発動に使われた心の力に準じているのだと生命竜に説明した]
―西殿―
[ブリジットの視線に気づけばへらり、軽薄な笑みを返し。
遅れて現われたエルザとノーラには、ひらり手を振っておく。
ふと、エーリッヒとダーヴィットの会話を聞いて、機鋼竜のが触りそうな気がとか思ったりとか。]
…………。(ふるふる
[ブリジットの問いかけには、無言で首を横に振る。]
私にはそういう手段も力もありません。
ただ、それが善であろうと悪であろうと、私はこれまで蓄えてきた知識と照らし合わせても、それを肯定するきが更々無いのは事実です。
[毅然とした態度で断言。だが、すぐににっこりと笑うと]
……そして何よりも。
彼らは我が主に手を出しました。それだけで万死に値するのは当然です。
[それは笑顔で言う台詞じゃない。それはあまりに怖すぎる。]
[ 此方に意識の向いたものには一礼を返したり手を振り返したりはしたものの、口は開かず暫し耳を傾ける。
少し事態を把握したところで、彷徨う眼差しが周囲を見回す。
騒動の跡は既に薄く、力の残滓が僅かながら感じ取れるばかりだった。]
[しばらくそうやっていたものの、やがて、結界から手を離し。
話の輪の方を振り返る]
……オレ、ちょっと、蒼天の座に戻る。
ねーさん、心配だし……。
『座』の力、借りれば、天気とか、マシにできるかもしれねぇから。
[かけた言葉の返事も聞かず、たん、と地を蹴る。
常磐緑のマフラーが翻り、その身は容易く空へと舞う。
直後、同じ色の光が弾け。
次の瞬間、空には天翔ける*疾風の竜*]
焔の若竜殿の読み取る存在。
それで見つけられれば…――
[眼鏡の奥で濃紅の目を細める。
疾風の竜が手をひらひら振るのを見た時、ユーディットの言葉が耳に届くと小さく頷いた。
自分の記憶に彼女の王が会議に出た覚えは無い、それでいてこの騒ぎに彼女が怒っていても無理も無いと思っていたから。
――勿論、彼女の本当の心中は想像するしかないのだけれど。]
ん、俺もなのか?
[結界に関しては、ほぼ任せっきりだったので、アーベルの言葉は少し以外そうに返し。彼が告げた説明は耳に入れた。
あまり真剣に聞いていたので、少し表での反応が鈍ったかもしれない。]
…ああ、それは了解した。
まぁそれこそ俺犯人ですカミングアウトになるからやらんけど。
[もっとも、それに近いことはやっているが。]
[現れたノーラにも小さく会釈をし。
カチャリ、音を立てるのはいつしか落ちていた肩をあげて伸ばしなおした背筋ゆえ。
歳甲斐もなく怒りに身を任せて暴れた身は少々の疲労を訴えていて、小さく溜息をついた。]
すみません、私は少し休んで参ります。
何かありましたらお呼び下さい。
[自身を雷光として東殿へと向う程の元気も無く。
ぺこりと深く頭を下げ、東殿へと向けて足を踏み出した**]
―西殿―
そうですか……難儀ですね。
[少し視線を落として己の手を見つめるが、直ぐに視線を戻す。
何やら恐ろしげな時空竜の笑顔が見えたが、困ったように微笑むだけにして。
そこで聞こえてきたのは、雷竜の言葉で]
――若焔の。
確か、結界の力と繋がっているかどうかで、判断する……でしたか?
[ちら、と機竜と戯れる炎竜に視線を送る。
そこで気になるのは、やはり命竜のあの言葉で]
―西殿―
[勢いよく飛び立っていく風竜と、東殿へと歩いていく雷竜。
ブリジットは、雷竜の背へと向けて、]
ありがとう。ゆっくり休んで。
[色々な意味を込めて。感謝の言葉をもう一度、ミリィの背中へと伝えた]
いえ、クレメンスには色々と情報を集めていただいてますから。
役割分担ですよ。
[混沌の欠片を任せると言うクレメンスに微かに笑みを含め返す。
実際に試みても欠片に影響は及ぼせないのだが、今はまだ判っては*いなかった*]
[蒼天の座へと向かうティルには、気をつけるんじゃぞ、と声をかけ。東殿へと向かうミリィにも、ゆっくり休めよ、と声をかけてそれぞれ見送る]
…儂も一度戻らねばのぅ。
何事も無くば良いが。
[そうも行かぬだろう、とは心の中だけで。出発するのはここでの話し合いが終わってからに*なるだろうか*]
あぁ。
この結界は、何者かを経由している力で維持されてるっぽいから…個別に力の流れを読めば判るかな、って。
なんか途中にブラックボックス的なものが挟まってて、結界側からは読めないなぁって感じがするんだけどさ。
揺らされてるとかそういうのは…あんまりよくわからないんだけど。
いってらっしゃいませ。
[ティルが天翔けるのを、髪を抑えながら見送って。
ミリィが戻るのにもゆるりと頭を下げた]
ユーディット様。
お伺いしたいことがあるのですが。
[カミングアウトになると言う生命竜に微かに苦笑する]
そうですね、それはよくない。
あぁ、それと。
一度中に送り込んだ他者は結界を解くまで外へは出せませんので。
無理にすると結界が壊れかねません。
[そう告げて心話を一度止め、表の――他者の話に*耳を傾ける*]
動けるうちは、ね。
[動けなくなってるじゃんよー、しょっちゅうさー、とか色々顔に出てる出てる。多分精神竜でなくても読めます]
いいよ、もう。判ってるっていうなら。
[けれど、今回は割合にあっさりと諦めた様子で、焔竜から顔を背けて溜め息をついた。ちょんちょん突ついてくる不真面目な指を、デコの替わりに、メタルの指で弾いておくのは忘れなかったけれど]
[ 力の残滓、というより物理的な痕跡の方が、見て取り易いか。
立ち止まり暫し眺めていたが、視線を話の輪の方に向ける。天空には駆ける竜、地には去り行く雷撃の竜の姿が見えた。]
……今回の功労者、でしょうか。
[ 疲れの覗く背を眺めながら、彼女の口調を写してぽつりと呟く。
影は乱れの痕の辺りに手を翳すと、宙を撫ぜるようにそっと動かす。]
―西殿―
[ティルが駆けていく様子は見てとれ。
あの分なら、怪我も疲労も問題ないかと、見送った。
軽く、がくりと頭が落ちたのは、おそらく疲労の為だろう。
睡眠と疲労だけは、自己再生できる部分ではなかった為。
それでもまだ少し、話を聞いてはいるが。
どこまで入ったものやら。]
声が届かなくなる直前、我君より虚竜王様のお力による「無差別の取り込み」があるやもしれぬと伝えられました。
虚ろの君の力に対抗するはまず無理であろうとは理解しておりますが、その一部なりと力として借りることは難しいでありましょうか。
[いまだ悩みながらも言を継ぐ]
干渉されし者がいるであろうことは、もはや明確だと思います。見つけ出したとして、その相手をどうするのか。
…或いはその形で封じることは適わぬかと。
ティルさん、ミリィさん、気をつけてー!
[それぞれの領域に戻るという竜達を見送りながら手を振る。機鋼の砦にも混沌のカケラは紛れ込んでいるのかもしれないが、その事を心配する気はまるで無かった]
―西殿―
そういったのはちょっと分野が違うから……
任せるしかないわね。ありがとう。
[炎竜へと、軽く一礼しておいて。
そこで、命竜の頭を揺らす姿が目に入った]
……クレメンス?
大分疲れているようだけれど……。
話なら、私がきちんと聞いておくから。休んできたら?
[とんとん、と軽く背を撫ぜて。心配そうに、命竜を見上げて呟いた]
まぁそれくらいしか出来んからな。
[へらり、軽い笑みを返し。]
ん、了解。
まぁ出しても入れるのと同じ事なんだから、やる気はしねぇ…って。
そういえば。結界はどうやったら解けるんだろうな。
事が終わればアーベルが解くのか?
[ぽつりと告げた言葉は、単純に素朴な疑問。]
―木陰前―
種…ですか。
一体、何を芽吹かせようとしているのでしょう。
[広口の袖から覗く指先を顎に当てて、影を落とす木を仰ぎ見る。
そして疾風竜の風に乗る大きな翼を見送り、視線を戻して電撃竜の背を見送った]
ブラックボックスは虚竜王かもしれないな――…
[若焔の言葉に西殿と視線を合わさぬよう時空竜を見比べ*呟く*]
―西殿―
[背を叩かれれば、はっとした様子で目は開く。
軽く目頭に手を当てたところを見ると、意識はだいぶ拡散していた様子。]
ん…ぁ、氷竜殿か。
悪い悪い、ちっと色々あったからなぁ。
んー、もう少しならじょぶじょぶ大丈夫。
歳に勝つ気はねぇが負ける気もないしな。
[昨日の言葉などさも忘れたかのように。
へらり、心配そうな顔を見下ろし、軽い笑みを浮かべ返した。]
[エルザの言葉に顎に指をあて思案していたが、]
そう……ですね。
……もしかしたら。
先程の話ではありませんが。
強く強く願うことにより、世界の意思によって、無差別の呼び込みに対してほんの僅かながらではありますが、意味を持たせることが出来る……かもしれません。
……ただ、確証は一切ありません。
あくまで、「もしかしたら」の話、ですが。
みんな、疲れてきてるのかな。
[生命竜の様子を見て、ぽつり]
立て続けに色々起こり過ぎてる。こういうの、相手の思うつぼなんだろうけど。
[西殿の結界を睨むように見る]
―西殿―
……貴方も結構、笑って無理するタイプでしょう。
[ほぅと息を零し、クレメンスを軽く睨むように見て。
先日、機竜の仔に似たようなことを言われたばかりなのを思い出した。
少しだけ肩を竦めると]
もう少ししたら東殿にでも押し込めますよ。
[軽く背を撫ぜた所で、再度天竜と時竜の会話へと耳を傾けた]
[ 力の流れを均し終え、ノーラは輪の傍へと戻る。事の顛末を知っていそうな大地の竜に事情を訊ねて、再び、交わされる会話を聞いていた。]
世界の意思。強き願い、ですか。
……しかしもしも、干渉されしものの願いが強ければ――
[ 俄かには信じ難い話。影は呟き口許に手を添える。]
強く願えば…でも…
[願う力は、揺らすものの影響を受けた者にもきっとある…もしかしたら誰よりも強く…しかし、浮かんだその考えを口にはしなかった]
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