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[ふぁさ。
そんな音を立てて、翅が消える。それに合わせて、瞳の色彩も、いつもの青に。
それから、アーベルの疑問の声に、一つ頷いて]
結界同士の継ぎ目……そのもろい所に、あり得ない衝撃を叩き込んで、ぶち破る。
それで、どーにか状況打破できねーかと思ったんだけどね。
……こういう事になるとは思ってなくて、な。
[ふと向けた視線の先には、髪を短くした金髪の少女がいて。
……そちらからはすぐに、目を逸らす]
……何ていうか……お疲れというか。
……本気で、親父が何考えてんのか、わかんなくなったんだけど、俺。
[怒りに震える声に、ぽつりと呟き。
肩の相棒も、こくこくと頷いて]
[昼行灯とかバカ親父とか何処かの誰かが言っていた悪態がぐるぐると頭の中で浮かんで消える事無く溜まっていく。
もう一言口に出そうとして]
……あ、あぁ………こんばんは。
[アーベルの声に漸く我に返るも。
口から滑ったのは妙に間の抜けた気がする挨拶で]
[ダーヴィットに声をかけた耳に届いたユリアンの説明]
……思ってなかった…と言うことは不発…なのか?
…………ミリィは…何処へ
[クレープ全体が机が落ちたのにも気がつかず呆然と。]
私も全くわからないよ…
[些か落ち着きを取り戻したか、ゆるりと溜息を吐いて]
……誰が連れて行かれてしまったのだろうな…
[ぽつりと、呟き]
今のは、不発じゃねーよ。ミリィが……自分で……俺に。
他の……誰かを送るなら……って……。
[ぎ、と唇が強く噛み締められて。
酷く悔しげな表情が一瞬、過ぎる]
ミリィがいるのは、隔離結界の中だ。
団長と、エーリッヒも一緒にいるはず。
[あともう一人、いるような気がしたけれど。
それは、はっきりとはわからないから、口には出せず]
[フィリーネは、黙り込んだ儘、我が子を抱き寄せて、その頭を撫でる。
何とも言えない表情で、ただ、ユーディットは大丈夫だから――と述べる]
……母上は、何か……御存知なのですか?
[その問い掛けにも、曖昧な笑みを浮かべるばかり。
けれどその反応を見る限り、ユーディットの事も、あの金のひかりの事も、知らない訳では……いや、彼よりもずっと、知っているようだった]
このまま、不発が続くようなら、こっちから呼んだ方がいいかも知れんね……。
まあ。
最終的には、引っ張り出してボコらねーと、気ぃすまねぇけどな。
[……目が座っている。多分、真剣に]
大丈夫。
少し、ぼんやりしてただけだか…
[言いかけて]
……如何かした、って…。
[少女も今目の前で起こった光景は、見ていない筈が無いのに]
[まるで何事も無かったかの様に話す姿]
[青年は自分で呼びとめたダーヴィットも、零れ落ちたクレープも気にせず
席を立ち机越しにユリアンに詰め寄る。]
……なんだ、それは……
ミリィが結界の内から綻びを作る役目なのか?
もう一人って言うのが単にミリィなのか?
なんで…
……申し訳ありません、母上。
[それだけを告げて、失礼します、と部屋を後にする]
[漸く部屋から出て来た彼に、イザベラが夕食はどうなさいますかと問うて来るも、首ヲ振って。乾いたばかりの外套を受け取って、……タイが無いのは、どうせ下になって見えないのだからと其の儘に、コートを羽織ると、外へと出る]
[心配そうな顔でノーラを見上げる。]
なんともないですか……?
[それから、問われたことには、
少し考えた。]
あんまり見て無かったですけれど。
今度は銀色でしたね。
[ぴくり、と身体を震わし…]
…そう…ユリアンは、あっち、ね…
[軽く頭を振ると、出店にはCLOSEと貼り紙を貼り…周りの出店の人々に]
お先に、失礼します…
[と頭を下げ…妖精が示した方向へと向かう]
自分の送った妖精が私たちを見付けているというのにこれではな。
明らかにその方が手っ取り早い気もしてきた。
…その時には私も手伝おう。
[きっと、此方の目も据わっていただろう]
[詰め寄るアーベルに、静かな調子は崩さないで]
もう一人がミリィなんじゃなくて。
……理由はよくわかんねぇけど、ミリィも妖精の影響を受けていて……。
妖精同士の、意識の会話に加われた。
それで、話し合って。色々、どうするか。
その結果……なんだよ。
[すたすたと、再び、通りを歩く]
[今日見たのは、金のひかりだけだった。ならば、銀のひかりは何処に?
……相変わらず宛てがある訳では無かったが、昨日、エーリッヒの消失を目撃した者達なら、何か知っているかもしれない。そう、思って]
っとに……何考えてんだか、ぜんっぜん、わっかんねーよもう……。
[はふ、とため息をついて]
ま、その前に、俺がぼこられそーだし。
恨み、倍返しでいくとしますかね。
…ええ。
[戸惑いながら、頷く]
[やはり可笑しいと思う]
そう…だけど。
…また、連れて行かれちゃった、みたい…よ?
[淡々と話す姿に、もしかして気付いていないのか、と]
[言いながら、ミリィの消えた場所――リディの居る場所へと、目を向ける]
――――……なに、
[数刻の間、呆然と立ち尽くして。…漸く発した呟きも、雪へと落ちる。
視界の向こうに、ユリアンとアーベルの姿が入って
…ゆっくりと、其方へと歩み寄る。
――――彼らが何を話しているのは、良く判らないけれども]
[友人の名前が聞こえれば、自然と意識は其方へ]
……ふざけるな……
[低く…怒りを押さえようと抑揚の無い声で呟く]
…………理由はわからん…どんな話しあいかも
けど、お前は自分の親子喧嘩の尻拭いも一人じゃ出来ないのか…
妖精同士のいざこざに、人間巻き込まなきゃ片がつかないのか…?
[ぐっと…机上の手が拳を作る。]
[密かに目蓋を伏せ、ゆるゆると溜息を吐く]
…止めるくらいはさせてもらうぞ?
[アーベルの剣幕にちらりと目を向けて]
[ところで子供はあまいにおいに気づく。
どうやら近くに、何かあまいものがあるようだ。
きょろきょろとあたりを見回す。
と、苺の屋台(ちょっと違う)の前の、
金色の、髪の少年を見つけた。]
あ、ミハエルさん。
連れて行かれたんですね。
銀色のに。
[誰が? とも聞こうとはせずに、
子供はそう言って。]
やっぱり、悪い妖精がさっさとつかまらないのが悪いです。
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