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ここにいる、か。
大切なことだね。
[声のする方を見てはいる。だがまだ視界は白くて]
何?
[境界で迷ったまま。不思議そうに首を傾げた。
視線は…合わない]
うん……。
出来ること、探して、みる。
[蓮実に小さく頷いて。撫でられ、感謝するように微笑んだ]
…え…?
[その後に聞こえた言葉の意味が分からなくて。疑問の声を漏らすも、蓮実はどこかへ行くようで]
うん…分かっ、た。
[撫でられるままにし、離れると言う蓮実に頷く]
……あー……。
[紅の中、ただぼんやりと]
そいや、随分、煙草吸ってねぇ……。
[零れたのは、ある意味場違いな呟き。
ごそり、と左手でポケットを探り、箱を探す。
幸か不幸か、濡れて全滅、は免れているようで。
無事な一本をくわえ、いつもよりも緩慢な動作で火を点けた]
[階段を登る。ノックもせずに扉を開ける。
映る光景は予想していたけれど]
人…でした
[なぜ。とも聞かずに呟けば、裕樹の近くに膝を着く]
ただの…恨みでは、なかったのですよね?
……ふーみんせんせーのところに、戻ろう。
りきっちゃんもいるし、
[でも、いない気がしてならない。
ぎゅっと手を強く握る。]
きっと、だいじょうぶだよ。
…うん。ありがとう。
[強く握られた手は少しだけ痛い。けれどその分震えも逆に伝わりにくかったかもしれない]
……だいじょうぶ。
[返した言葉は小さく小さく。頼りなかった。
それでも足は踏み出して]
[蓮実を見送った後、ゆるゆると床から立ち上がり。そのまま椅子へと座り込む]
[がらんとした食堂内。今、ここに居るのは自分だけ。二階に史人達が居るのは分かっていても、がらんとした中に一人だけ居ると寂しさが募ってきて。無意識に、椅子の上で膝を抱えていた]
[その状態で考えるのは、心の中で引っかかっている疑問。彼に問うつもりが、自分が取り乱してしまったためにタイミングを失った。彼の姿も、ここには無い]
[心配が募っていく。
でも、りきっちゃんなら大丈夫だよね、と。
そう信じるように、願うように、思って。
やがて辿り着いた旅籠。]
玲ちゃん。ハタゴ、ついたよ。
[扉を開けて、手を握った先の玲ちゃんを引く。]
[入ってきた蓮実の問い。
向けるのは、緩慢な視線]
……ん。
……なんか、やるだけやっちまったら、よくわからなくなった。
[ぽつり、呟いて]
取りあえず、後悔は、してねぇ。
……そんだけ。
良かった。
[安堵の声。景色は見えなかったが、明るさの違いでその通りなんだろうと思う]
ただいま…?
[けれど予想より更に人の気配が少ない。どうしてだろう]
[中に入る。
はるなちゃんがいる。]
――りきっちゃんは?
[玲ちゃんをまずは、椅子のほうにつれていってあげないと、と、思いながらも、尋ねた。]
[じっと膝を抱えていると、出入り口の扉が開く音がした。顔を上げ、視線をそちらに向ける]
…涼、ちゃん。
玲ちゃん、も。
[涼に対しては先程のことで若干警戒の色を強めたが、続いて手を引かれ入ってくる玲の姿を見ると、それもすぐに消え失せ。椅子から足を下ろし、立ち上がった]
外、行ってた、の…?
無事で、良かった…。
[二人が外へ向かったことは気付いていない。外から戻ってきて無事であるのを見ると安堵の色を浮かぶ]
そうか…
ま、あなたに、後悔は、似合わないですしね
[幾分声を震わせながらいって、大きく息を吐いて]
さすがに、余裕がないな
こうも続けて、大事な存在を亡くすのは辛いな、やはり
[裕樹の顔を覗き見て、指でそっと目を閉ざす]
榛姉、ごめんね。
[反射的に涼を追いかけて飛び出していたことに対して謝る。
榛名の声が聞こえた辺りに顔を向けて]
探偵さんも?
もしかして探しに出ちゃったとか…?
[ここに居るか居ないのかも確信はなく]
――っ、
はるなちゃん、玲ちゃんを、お願い。
目、見えないって
[返事も聞かないで、玲ちゃんの手を離す。向かう先は、――わからない。
でも、探さないと。]
……後悔とか、しはじめたら、きり、ねーよ。
[ぼそり、呟いて。
目を閉じさせる様子に、緩慢な瞬きを一つ]
……俺、いねー方がいいか?
邪魔なら、隣辺りの空いてるとこにいる……。
[少し、一人で落ち着きたいと。
その意は伝わるか]
[玲がこちらを向いていることから、まだ見えていないことには気付かないだろうか]
ううん…無事、だったから、それで、良いよ。
[落ち着いた様子で小さく笑んだ]
探しに…?
二階に、居たりは、しないの、かな。
外へ、出たか、どうかまで、は、私、には、分からない、や。
涼ちゃん!
一人じゃ…!
[慌てて声を掛ける。だが手を離されてしまえば今は追いかけることもできなくて]
…言いつけ、守らなかったから。
[後悔の念が浮かんできた。唇を噛んだ]
え、え?
[目が見えない。まずそのことに驚き。そして外に向かおうとする涼に瞳を見開く]
外は、危ない、んじゃ…!
[反応は数瞬遅れ。しかしその僅かな時間でも、涼の姿を見失うには十分だったか]
そうですね…
[後悔について、頷くが、自分でもどんな表情をしているかわからないが、申し出には首を落とすようにして頷いて]
そうしてください。私
今は、自分が制御できるか。わかりませんので
[目を閉ざす。どちらも己には縁をもった存在で、今は顔も見れない。ただ手は裕樹の手を捜すように動かして]
[声も掛けずに伸ばした腕は、何時もの通りその核を狙う。
抵抗はあっただろうか。
それとも、気づきすらしなかっただろうか。
何れにせよ結末は同じ。]
[赤い色が流れた。]
[心配する声も聞こえたけど、走る。
向かう先はわからない。もしかしたら、死体を見たのかもしれないと、商店街へ。
走って、見つける体。
琉璃の体。
小百合の体。
立ち止まって、場所を覚える。
此処は、どこだろうって。
でも、また走り出しても、見つからず――]
…うん…。
[手を引かれ、椅子の一つに腰掛ける]
気が付いたら見えなくなっていた、の。
涼ちゃんに、言われて。
多分…コエを聞いてしまったから。
聞いてはいけないと、言われてたのに。
揺れてはいけない、と。言われてたのに。
[ゾクリとした。濡れた寒さからか、他の何かからか。
けれど一番怖いのは]
もう、視れない、かもしれない。
まだ、終わっていないのに…!
[赤い色は、水滴に混ざり。
花弁のように、身体から剥がれ落ち。
桜の樹へと還って行く。
――ふつり、ふつり。
花は色づき、また増える。]
ん、わかった。
[蓮実の返事に、ゆっくりと立ち上がる。
桜を刻んだ黒檀の短刀は、今だ右手に。
その時になってようやく、手の強張りに気づいた]
……っと……おかしく捻ったか……?
[ぽつりと呟き、部屋を出る。
蓮実の様子は見なかった。
二人の間に、どんな縁があったか、自分は知らないから。
何も言うべきではない、と思って。
ふらつく足取りで廊下に出て、空いている部屋に転がり込む。
そこでようやく、短刀を離して。刃を拭い、再び内ポケットの鞘へと戻す]
……後悔は、しねぇ……絶対に。
[ベッドの上に座り、壁にもたれるようにしつつ、呟く。
薄暗い室内に、ぼんやりと紫煙が*広がった*]
はい
[足音だけで去っていくのがわかるが]
史人。
私ら昔なじみの中で最年長はあなただ。しっかりしろ
私も少ししたら戻ります
[その声は届いたかどうか。だが別にどちらでも構わないだろう。己のように後悔しないのならば]
[ゆっくりと、立ち上がる。
人影を捉えた。]
アハハッ。
見つかっちまッた。
[愉しげにわらい、涼のほうへ近づいて。
だが立ち止まることは無く、傍を通り過ぎて行こうとする。]
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