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……ったく。
[ぽつり。
零れ落ちる、コエ。
それを聞くものがない、という認識は、未だないままに]
……ほん、と。
つき、ない、なぁ……。
― 1階廊下→ナタの部屋 ―
分かった。
[ロザと一緒に階段を上がる。
ナタの部屋がどこなのか、ロザに教えてもらって扉を開けた]
……クロ。
[ナタの胸に突き立っているのは、アベさんの形見のスティレット。それを突き立てたはずのクロは瞳に涙を滲ませて、悔しそうにも哀しそうにも見えた]
そう、だね。
すごくできが悪い。
[少女は、エーリッヒの言葉>>11に頷く。
ツルバラは、誰の目にも視認できる位置まで伸びていた。]
うん。
前にも、そういってくれた、ね。
[少女が手を汚す必要はない。
ローザがカルメンを殺した日に聞いたのと同じ言葉に、クスクスと笑った。]
……我が儘だけど両方、かな?
人としてのあたしは違うって言って欲しい。
朱花としてのあたしはそうだって言って欲しい。
[問いに返された問いに、正直に答える。]
―広間―
[先程まで男の座っていた椅子の上には、一冊の黒い手帳が置いてあった。
表紙には名が刻まれていて、誰のものかはすぐ知れるだろう。
その頁の途中には一枚の紙が挟まれ、閉じたままでも分かる程度にはみ出していた。
真面目な男らしい、几帳面な文字の並ぶ手帳の中とは違い、紙にあるのは殴り書いたような乱雑な文字だったが、それでも何が書いてあるのか判別する事は可能な筈だ。
そこにあるのは、過去に起こった一連の人狼騒動の真実。
人狼の発祥と、教会の関わりと、『場』の条件と、快楽と苦痛と。
そして一番下に、丁寧な文字の一文が加えられていた。
『何らかの要因により、通常とは異なる形で、“場”が崩れるケースもある――』]
― →階段―
[二階へと上がる階段の途中で、男は立ち止まった。
シスターを人狼と告げる娘の声>>8が、その耳に入った]
嗚呼。
彼女でも、越える事はできなかったか。
[小さく息を吐いて、手を組む。天井を仰ぐ]
……願わくば。
止まらぬ『突風』の進む先が、主の御意志に沿うものでありますように。
[教会ではなく、神の意志と、男は呟いた。
2つは似ているようで、大きな隔たりがある。少なくとも、男はそう思っていた]
間に合わなかった。また。
[クロの首筋から吹き出したのだろう血は、部屋を赤く染めていた。ナタの手は、人が持つはずのない鋭い爪が伸びて同じ赤に染まっていた。けれど]
……ナタ。
[倒れてもなおクロの方を向いている、その顔に浮かんでいたのは慈愛に満ちた微笑だった。
シスターらしく、優しすぎて、胸が苦しくなる]
[青年の答えは、どうだったか。
少女は表情を変えぬまま、青年の方へと足を踏み出す。]
…本当なら、役目を重んじるべきなんだろうけど。
でも、あたしにとって一番大事なこと、なにより優先させたいことがあるの。
[少女は青年の正体と共に、目を背けていた感情を認め、受け入れ。
あと一歩、踏み出せば手が届く場所で立ち止まった。]
― →ナターリエの部屋前―
[男は決して急ぐことなく、その部屋へと向かった。
先に立つ2人の背後から部屋の中の惨状を見て、眉を顰める]
……相討ち、という事か。
[死の直前の彼女の望み>>4:172通り、その死を悲しんではいたのだろう。
それは人間に対するものと変わらず、他人に対するものとも変わらない。
男はそっと十字を切って]
弔いをせねばな。
[そう言い出したのは、それからどの程度時間が経っての事か。
神に仕える者は、ここにはもう一人しかいない**]
……俺、は、『俺』。
エーリッヒであり、ラファール。
[人としての名と、銀の獣としての名。
その二つを同時に告げる]
けれど、どちらか一方を選べ、と言うなら……。
俺は、風で……ラファールで、あり続けるよ。
[そう、静かに告げて、手を離す。
あの時──家主に、記憶が戻ったか否かを問われて、剣を向けられた時。
そうある事を受け入れ、その在り方で生きると選んだのだから。
それを曲げる意志は──ない]
[告げた後、踵を返して向かうのは、窓の方。
容易くは開かぬように、確りとした建て付けと施錠のされたそれを、半ば力任せに開く。
吹き込む風に翠が細められるのは、一瞬。
窓枠に手をかけて床を蹴り、そのまま外へと飛び出し、森へと駆ける。
金色は、すぐに消え。
白へと消えるは、銀色の、影。**]
うん、我が儘だよ。
どっちもあたしだもん。
[えへんぷい、とやりながら、少女は伸ばされる手>>23を拒むことはない。]
ラファール…。
[明かされたもう一つの名>>25を口にして。]
ちがっ、あたしはそんな意味で言ったんじゃ…!
エーリッヒさ…、ラファール…!
[続いた言葉に否定を口にしたものの。
離れる手に。確りと建て付けと施錠された窓を開け、森へと狼の姿をとって駆けて行く人>>26の名を、叫んだ。]
[暫くの間、エーリッヒであり、ラファールでもある窓の外にある森を眺めていたが。
何かあった時のために、開け放たれた窓を細め。
完全に閉めないのは、青年が屋敷に戻ってこれるよう。
ふと広間を見渡すと、確かにいたはずのライヒアルトの姿が無くなっていて。
修道士の代わり、と言うように黒い手帳>>16が残されていた。]
…なに、これ。
[手帳からはみ出した紙に気づくと、それを引っ張りだして。
少女は真剣にそれを読みはじめた。**]
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