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麒麟殿は、望んでいらしたわけではなさそうですね。
清浄の気を好む種の方には、ここは少々雑多に過ぎるでしょうか?
お加減が悪そうだ。
[どこか、儚げに見える相手に、心配そうに言葉を繋ぐ]
そうなの。
[シャツを着込む]
ていうか溺れてた訳じゃないんだけど……ええと、ありがと。
[セーターに腕を通した]
それにしても、大変な事になってるっぽいのにおじさん[に、見える]そんな格好で、元気ね。狩り?
[かけられた労わりの言葉に、私は愁いを帯びた瞳を瞬かせた。
理由を告げてもいいものか、しばし躊躇う。
なれど、込められた心配の響きに…私は掠れる声で言葉を紡ぐ]
…ええ、望んでは…参りませぬ。
私は…人に馴染む事が出来ませぬゆえ。
[種としての『人』、つまりは人間が苦手だと告げる瞳は、精霊である青年への恐れは抱いてはおらず]
ああ、人間が苦手でいらしたか。
[獣形の種にそういった者は、少なくは無い。理由は様々だろうが]
ここは精霊界ですから、基本的にはあまり人間は居ませんが…そう、今回偶然に引き込まれてしまった人が二人ばかり。ですが悪い人では無いと思いますよ。
あまり気を張られずに、御過ごしあれ。
僕は少々、用があるので失礼しますが…ああ、そうだ、厨房にサラダと果物があります。
良かったら召し上がってください。
[確か、彼の種は草食だったと思い出して、そう勧めた]
[傍らに、先だって、アーベルの引っかかった木が一本。トン、と地を蹴り、その幹をするすると昇る、窓際近くまで達すると、そのまま身軽に幹を蹴って、窓枠に取りついた]
ああ、髪が絡んじゃったんですねえ。
ん〜狩り…はあながち間違って無いかなぁ。
大変なことになってるのはそうらしいが、かといって焦っても何もできんしな。
腹が減っては戦もできないし?
でも君は何してたんだ?
[からからと笑いながら。]
[納得された様子に、私は安堵の息を吐く。
更に告げられし言葉を受け取り、事態の理解に勤め――瞬き一つ]
…二人?
なれど気配は十を越え…
[精霊、竜、そして獣族も。
私はもたらされた情報に、幾度も唇を開けては閉じて。
言葉は終に出る事なく、彼の精に勧められるを素直に頷く。
少々痛みが走るも、私に用を果たしにいく青年を止める気はなく。
行くならば見送ろうとした]
なんかアレね、呑気?
大地だから?
[やや呆れた。スカートや膝についた砂を払い落とした。
何処かにぶつけたらしく、膝のあたりに青あざが出来ていたが特に気にはならなかった]
…………ていうか、”オトさん”を探してたんだった。
ま、いいや。居ないし。
一回お屋敷に戻るけど、まだ狩りする訳?
[何やら見詰め合ったかと思えば、身軽に窓枠にまで達した青年に、私は潤んだままの瞳を向ける。
「髪」「絡む」
嗚呼、気付かれた事に耳が仄かに赤くなろうか]
……えぇ。
[返事は髪が絡んだ事へのもの。
なれど青年の矢継ぎ早の言葉が先を越して、触っても良いと許可を与えた形に成る]
では、少し動かずにいてくださいね。
[笑みを浮かべて、指先を絡み合った腕輪と白金の髪に伸ばす。ほんの僅か、雷撃の力が指先に宿っているのは感じられたか。触れるか触れないかという一瞬に、するすると、何かに引き寄せられるように髪が腕輪から解けて離れる]
さあ、これで大丈夫。
[もう一度笑って、窓枠から飛び降りた]
…呑気、かぁ。かもしれんなぁ、でも何とかなるよ、なんとかする…ってお〜い…。
[頭を掻いて苦笑し、話す間に小さくなる少女の姿。
腰に手を当ててひとつ、口許に笑みを浮かべたまま溜め息をつくと、魚を担いでパラソルなどの横をざくざく歩く。
途中、すっかり渇いた服を木から取って身に着けることは忘れずに屋敷へと草を踏み。
大地の心地よい感触に目を*細めながら*]
では、失礼します。麒麟殿。
[にこにこと手を振って、今度こそ駆け出していく]
[途中、リディやマテウスと出会えば、リディには少し呆れたような、同時に安心したような笑みを見せ、マテウスには機鋼竜の話をして、ファクトリーの入り口を探すのを手伝ってくれないか、と*頼むだろう*]
[「動かずにいてくださいね」
笑みを向ける青年の言葉に、私は何故か逆らえず動きを止める。
明らかに敵意なき気配故だろうか]
あ……
[伸ばされる指先。
触れるか触れないかという刹那、蓬髪は緩やかな痺れを帯びて仄かに広がろうか。
次の瞬間、何事もなかったかの如く白金の輪が腕を滑り降りて。
私は言葉を発する事も出来ず、青年の笑みを見返す]
……あ、ありがとうございまする。
[声が出たのは、青年が窓枠から消えた後]
やっぱり呑気だし。
[辺りの風景を満喫しているらしいマテウスを、顔を顰めるようにして笑う。ユリアンに出逢ったが、彼がマテウスに語った機鋼竜の話などは興味が無いのか、適当に聞き流してさっさと屋敷に向かう]
ライデンは忙しそうだし。
[すっかりユリアンの姿が見えなくなってから]
まー、元気ならいーんじゃない?
べたべたになっちゃったしシャワー浴びよ。
[*屋敷へ*]
[触れて間も無く]
[結晶から][雫へ還る][小さき花]
[指先から伝わる体温が故に。]
[極寒の地なれど]
[力無きものなれば]
[完全では居られず]
……。
[掌に僅か残る液体][すぐに固体へと変わる]
[表情に詰まらなさそうな色が滲んだ]
[にこやかに手を振り駆け出していく姿を、私は潤む瞳で見送る。
彼の精の呼びかけに、ようやく名乗ってないと気付くも時遅し]
……こちらこそ、大変な失礼を…。
[既に影も形もない青年へと、そう呟いて。
私は気を払いつつ腕輪の揺れる手を伸ばし、静かに窓を閉めた]
[ごそりと懐から取り出したのは、試作の弾丸。
それを手の上で転がしていたが]
…………まずは、こっちとあっちに行き来出来る存在をどうにかしないと
実験にもちょうどいいし、ね
[ぱしんと弾丸を手の中に収める。]
―屋敷・屋上(天球図)の部屋―
[ゆるりと伏せていた蒼を開く。
実際に探しに行く程の体力は、己に持ち合わせていない以上
せめて、ある程度のあたりを付けることが出来ればと思ったのだが]
――…、あぁ。無理ね。読取れない。
…心へ直接働きかけるなら、兎も角。
[特定の気配を辿るのは、”あたし”の得意分野では無い。
況してや、不自然にまで多くの属性が揃う機鋼界では尚更精度は落ちる。
均衡を司る影輝の力が強いこの場所なら、と思いはしたものの]
[廊下を行きつ再び気配を探るは、嘆きし彼の仔を心配する故に。
やがて気配を見つければ、扉を軽く叩き。返事なきに柳眉を寄せて静かに扉を開ける。
そこに在るは健やかな眠りに包まれた仔と、傍らの無限の輪]
…未だおやすみでありましたか。
なれば、また後ほど窺いましょう。
[眠りを邪魔せぬよう、頭を垂れて静かに扉を閉めて。
私は一度、部屋へと戻った]
[同じ動作を幾度か繰り返す]
[指先が触れても]
[花を模った結晶は]
[その形を保ったまま]
[氷により奪われる体温が故に。]
[代わりに生白い肌は朱に染まるけれど]
[幾らか満足げにも見えるか]
…………私も動きますか。
[どの程度ぼけーっとしていたのかはわからないが、ぽつりとそう呟くと、ぴょいと枝から飛び下り、枝から枝へ飛び移りながら下へ。]
―二階個室→一階広間―
[昨夜残したままであった果を食べ、皿を手に下へと降りる。
一階にある気配に怯えを抱きつつも、『人は二人のみ』と告げた彼の精の言葉をよすがに広間へと入ろうか]
[ふと、蒼を瞬く。
底で揺らぐ気配に漸く、と溜息を零した。
暫しの間とは言え、ほんの微量生気を取られただけで昏睡するなんて。
呆れはするものの、少し、安堵する。]
……起きた? ノイ。
――どういたしまして。
じゃあ、変わるよ?
[返る声が思いのほか確りしていることに、小さく笑む。
体力の事を考えれば、もう暫し代わってやっても好いのだが、
どうやら、今の状況ではノイの方が向いているようだし。
一呼吸、するりと蒼を閉じる。
静かに意識を閉ざして]
[シャワーを浴び、着替えてタオルを肩に掛けた。
風呂上がりにはなにか飲みたいと思う。肉体的な欲求ではなく、習慣的な欲求でしか無いので、別に水分が必要な訳でも無いが。特にいまは、先程生気を得てきたばかりだった。
タオルで無造作に髪を拭きながら……短い状態に違和感を感じる。広間へ]
あ!
えーっと……誰だっけ
[ぱちり。目を開ける。まだ寝起き?の所為か、少しだけぼうっとするけれど、
少し”下”で休んだら随分と楽になった。]
――…、メーア、多分何も食べてないな。
[彼女は暫く表に出ていなかったから、…忘れがちなのは仕方ないけれど。
無理しちゃ、ダメ。先ほど入れ替わり様に言われた言葉を思い出して
こくりと頷きながら、天球図を模った部屋を後にする。]
[私は萎縮しながら頭を垂れて、広間へと入る。
視線を向けられても、小さく礼をするのみで隅へ逃げて――]
…っ!
[唐突に差された声(動きが連動していたかは背後から故に不明)に驚き、私は肩を跳ねて振り返った]
逃げることないじゃんー。
ていうかオヤジの顔は結構怖いけど、リディって顔怖い?
やだなあ、似てたら。
[頭を拭いていた手で、自分の頬をぐにぐにと弄った。
そう言いはしたものの、結構無頓着だ]
ねえ、その足どうしたの?
[氷の花を一輪摘み取り洞穴を出る]
[流れる水は此処では存在出来ず]
[滝も][湖も]
[真白の中に聳えるオブジェの如くに映る]
[ちらちら]
[空より舞い落ちる][白の花びら]
[吐き出す息も、尚、白い。]
[降り積もる白は穢れも無い]
[其処に足跡と][鎖を引きずる痕を残して]
[青は、色の無い世界から去っていく]
[て、て。ゆっくりゆっくり階段を下りる。
とたまにふら付く気がするけれど、大丈夫。こけない。
最後の一段をぴょい、と飛ぶように降りて。
べしゃ。]
…痛ー。
[こけた。 広間の床に膝をぶつけた。
…ちょっと調子にのったかも。無理よくない。]
[次々と投げられる力ある言葉に、私は更に萎縮する。
人か、否か。
それだけでも知りたくて見つめれど、私には知ること叶わずに]
いえ…その……顔は怖くは…
[頬を弄るのを止めたくて、辛うじて答えを返す。
――なれど続いた言葉に、私は目を見開いて下を見る。
脚は長い衣に隠されたままで、私は目の前の少女に畏怖に似た感情を抱き後ずさった]
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