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[眠りが深かったのか、怯えて足が鈍ったのか、ブリジットは、まだ姿を見せていない。
途中彼女に行き会うか、部屋の前を通ったなら、「行かない方がいいですよ」と少年は忠告する。]
女性の見るものじゃない、と、思います。
[そうして、彼女が姿を見せぬままになることで、不審を感じる者があるかもしれない、とは、気付かぬ風で**]
─ 前日 ─
[集まり解散の後、青年は一人、団長の部屋を訪れていた]
うん?
ああ、人狼の事かー。
どれだけ知ってるかって、そりゃあ、一般に知られてる事はほとんどしってるよー。
[この事態に関して知っている事はあるか、という問いに青年は胸を張ってこう返し。
その後請われるまま、自身の知る『情報』を団長に示して]
でもさー、団長さん。
これって、ほんとに、その……。
[話すだけ話した後、ほんの少しだけ沈んだ声で問いかける。
返る答えは、是。
見知った人が死んだ──それも、人以外のものの手にかかった、という事実は決して軽いものではない。
見た目ではわかり難いのだが]
ねえ、団長さん……ぼくたち、これから……。
[どうなるの、という問いは結局言葉にならず。
青年はすぐさま、いつもの気軽な様子を装い、団長の部屋を辞した]
[エーリッヒも目の当たりにしているから、言わずとも知れたことだけど。
彩っていた朱も含めて、左側を無くした躯は見るからに惨たらしい。
ひとまず出よう、とエーリッヒから手を取られれば、立ち上がろうとはするもののまだ足に力が入らなかった]
…あぁ、そうだ。
血が付いてしまうから、触らない方が良いわ。
アタシは、何とも無いから。
[移動をと促す彼の衣服に血が移るのは申し訳ないと断りを入れた所で、後の面々も集まり始めたか]
[そんな中、女手を、という声が聞こえれば微か、頭を振って]
ごめんなさい、アタシは大丈夫だから。
早く団長さんを、休ませてあげてちょうだい。
[そう言いはしたが、未だ立ち上がれない状態では説得力も無かっただろう*]
[その足でどこに向かうかとカヤから確認されると、少し瞑目し]
御風呂…が良いんだろうけれど、実は着替えを持ってきてないのよね。
…此処って来客用のクローゼットがあったかしら?
[問いはするものの、恐らくはあるだろうとは認識している。
血塗れの状態でクローゼットを触る訳にはいかないだろうから、申し訳ないがカヤに着替えの用意を頼み浴室へと移動して。
身支度を再度整え終わる頃には、団長の安置の目処もついているだろうか**]
左腕に朱い花、かぁ。
花は人狼を引き寄せる、とかあった気がするけど、わざわざ見せたんだ?
団長さんの考えが良く分からないよ。
[人狼が居ると言われている中で見せることがどれだけ危険かも熟知してそうなものだが、それであっても見せたと言うことになる。
そう零して首を傾げた後、エーリッヒは前日と同じように掃除用具を取りに行った。
戻る頃にはウェンデルがタオルやシーツを持って来てくれていて、タオルは数枚をヘルガの元へ、残りを掃除にあて、シーツでギュンターを包むことに。
包まれたギュンターの骸は予定通り、倉庫へ運ぶことになる**]
─ 団長の部屋 ─
[カヤの促し>>66に応じたヘルガがその手を借りて立ち上がる。>>67]
いえ、謝られるような事では。
[紡がれた謝罪に短く返した後、深紫は団長の亡骸へと向く]
……幻燈歌に謡われる役割に殉じよう、とでも。
考えられたのやも知れませんね。
[考えがわからない、と零すエーリッヒ>>70に告げるのは自身の推測]
『双花』は、人々を導く者、と謡われる存在。
牙を寄せると知りつつも、先頭に立とうとなされた……と考えれば、合点も行きます。
[その結果を考えていなかった、とは思えぬが、あながち間違ってはいないだろう]
[道具を取りに行ったエーリッヒや、タオルを取りに行ったウェンデルが戻るまでの間、僅かに目を伏せ思案を巡らせる]
……幻燈歌が現実となり、団長殿がこの在り方を選択された……と言うならば。
[逃れられるものではなさそうだな、と思う。
遠い昔、伝承の一端であったという、己が先祖。
幻燈歌を諳んじる事を家訓と決めたその人と、同じ力が己にある可能性は否めない、が]
(仮に、あったとして……人が死なんとわからん。というのは。
厄介に過ぎるよな)
[選択を間違えれば、取り返しのつかぬ事になるそれに。
感じるのは、現実的な頭痛のみ、だった。**]
[タオルとシーツを抱えて戻ると、カヤとヘルガはすでに部屋から出ていた。
そして、その場に残った男性陣に、持って来た物を渡し、ヘルガにもタオルを渡す]
[そして、シーツでギュンターの骸が包まれてしまうまでは、視線を逸らして、廊下で待っていた]
[昨日の様子を知る者から見れば、少年の態度は不思議ではなかったろう。
それでも少し青ざめながら、部屋の掃除は手伝った]
...あ、これ...
[その途中、部屋の中にあった書簡と人狼伝説に関する本を見つけて声をあげる]
もしかして、ギュンターさんの言ってた、中央協会からの手紙でしょうか?
[中身を読めば、少しは手がかりがあるだろうか?]
どうしますか?
[死者の持ち物を勝手に読んでいいものか?神学校の学徒としては躊躇いがあって、書簡については周りの大人達に判断を仰いだが、結局は中身を確かめることになった]
[書簡の中には、ギュンターが口にした通り、人狼の存在と、幻燈歌に謳われる者達の存在が記されている]
中央教会は、本当に人狼の存在を知っていたんですね。
僕達がここに集められたのは......みんな最初から人狼と疑われていたから、なんでしょうか?
[書簡の中には、神の子として、闇の獣を滅ぼせという指示も書かれてある。
ならばやはり、と、少年は眉を顰め]
でも、ギュンターさんは死んでしまった...これから僕達は、どうすればいいんでしょう?
[ぽつりと呟いた声は、不安に満ちていた]
[人狼伝説を記した本の最初には幻燈歌が載せられている]
『〜何れの地より彼らが来るか。
何れの刻より彼らが在るか。
それ知る者は世にはなく。
ただ、伝わりしは幻燈歌。
朱に染まりし月の映すゆめ...』
[少年はそれを、子守唄のような独特の旋律に乗せて歌う]
― ギュンター(団長)の部屋 ―
あいよ。
[この状況では猫を被っていても仕方ないので、口調を砕けたものに変える。
茶白猫は、ヘルガの後を心配そうについていった。]
……に、しても。
『双花』って朱花だけなんだろうか。
[作業の途中、ポツリと疑問を口にした。**]
─ 団長の部屋 ─
[女性たちと入れ替わるように戻って来たウェンデル>>73からシーツを受け取り、まずは凄惨な亡骸を覆い隠す作業にかかる]
……心臓と内臓を喰らいつくした所は同じ。
左側が失われているのは……朱花故、か?
[改めて見やった亡骸の有様に小さく呟く。
それでも、いつまでも眺めていたいものではないからできる限り手早くシーツで包み込んだ]
伝承によっては、『朱蒼聖花』などと呼ばれる事もあるらしい。
単純に考えれば、蒼い花……蒼花もある、と言えるのでは?
[途中、聞こえたクレメンスの疑問>>78に、自身の知る伝承から知れる事を短く返して。
包み込む作業の後は、室内の掃除に取りかかった]
恐らくは、そうなのだろうな。
教会がどんな考えを持って、この書状を送ってきたのかはわからんが。
[集められた理由の推測>>75に返すのは同意。
他にも考えられる要素はあるが、その場では口にはせず]
……どうすれば、か。
このまま、座して喰われるを待つのでなければ……団長殿のなそうとした事を続けるしかあるまいよ。
殺される前に殺す──生きるためには、他に術はない。
[不安に満ちた声に対し、そう言い切る声音は常よりも低いものだが。
直後のため息と共に、それは一気に崩れた]
ま、問題は。
取り除くべき脅威に対し、予想も当たりも全くつかん、という事だが。
[そんな態度の切り替えが、周囲にどんな印象を与えるか。
そこまで考える余裕は、ない。
普段の在り様を失って、判断を鈍らせる方が今は怖かった。
そんな思考が、意識を圧迫し得る事には気づく由もなく]
……幻燈歌?
その歌い方は、初めて聴いたな……。
[少年の紡ぐ幻燈歌は、自身の知るそれとは違うもの。
思わずもらした疑問の声に返るのは、泣きそうな微笑み。>>77]
……ここはもういいから、休んでおくといい。
団長殿は、私と神父殿で地下までお連れする。
[それにどんな言葉をかけるかしばし考え、結局向けたのは当たり障りのないもの。
道具の後片付けやらは他に任せ、包まれた亡骸を抱えて向かうは地下。**]
ー 3階客間 ー
あ…ふ。
[あくびと共に体を起こす。椅子に座ったまま意識を飛ばしていたようで、身体中が強ばっていた。
腕の下でシワの寄ってしまったノートには書きかけの物語。
見切りを付ける前に体力の方が尽きていたようだ]
――キュルル。
[お腹に手を当て、頬を掻く。
何か貰ってくるために部屋を出ると、空気がやけに重たく感じられた]
[部屋の中に戻ると再びノートを開いてシワを伸ばし、ペンを手に取った。
旅人に聞いた「狼に育てられた子供の話」から着想を得て書き始めた「人の言葉を話す狼と少女の物語」は、中盤。足を怪我した少女が、罠を外してくれた狼と並んで話している場面だ]
―…狼は、輝く瞳で少女を見つめて…―
[こんな話を書いているからか、狼は怖くない。否、遺体を直視していないため、怖くないと思うことにまだ成功している。
怖いのは、伝承の中にある「狼を探すために殺してゆく」こと。誰かを殺すのも、殺されるのも、今はまだ嫌だった。
嫌だと思えるだけ自由だった]
……あ。
[そのうちに再び手が止まる。
空腹だったのを思い出して、何か食べるものを貰ってこようと1階へ向かった]
ー 1階 ー
[半年前、周囲の人々が相次いで不幸に遭い、居たたまれなくなってこの村に逃げてきた。
やっと落ち着いてきたかと思ったところで、こんな状況に遭遇して。自分で思う以上に混乱し、怯えていた]
昨日はずっと部屋で書き物。
ウェンデル君が、見ない方が良いと言ってくれたから、そのまま部屋に。
お腹がすいたから降りてきた。
[問われそうなことの答えを小さく口にしてみながら、まずは厨房を目指す。
否定されると途端に言葉に詰まってしまうだろう弱い説明。怯えは萎縮となって、最後の抵抗も鈍化させてしまいそうだった**]
まぁ、あんま無理すんなよ?
エーリッヒさんも、ウェンデル少年も。
[そう言って男はヘルムートを手伝いながら地下へと降りて行った*]
─ 地下 ─
……これ以上、ここに並べる者を増やしたくはない、が。
[地下に降り、倉庫に団長の亡骸を安置する。
その際、口をついたのはこんな呟き。
途中、不自然に途切れたようなその続きを口にする事はなく、短い時間、祈りの姿勢を取って]
……さて。
状況が伝承に則っているというなら、為すべきは明確だが。
……何を基準に、何を選ぶか、が、問題か。
[祈りの後、どこか平坦な声で漏らすのは、こんな呟き。*]
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