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─ 教会・聖堂 ─
[最後に向けた言葉に返る一言。>>65
それに対し浮かべた笑みは、背を向けていたから見えなかったろう。
図書室を出た青年の歩みが向くのは、施設の方──ではなく、聖堂]
……ったく、さぁ。
[色とりどりのステンドグラスを見上げつつ、ぼそ、と呟く]
なぁんで、こんな田舎の平和を、わざわざかき乱すのかね、あのひとらは。
……それで得られるものなんて、微々たるもんでしょーに。
[ここに集められた発端は、中央の教会からの書状と聞いた。
それがなければ、こんな事にはならなかった……というのは、察しが付く。
中央が何を意図していたかはわからないが、それなりに穏やかな日々を送っていたこちらとしてはいい迷惑と言うもので]
……ま、どっちに転ぶにしても。
あんたらの思うようには、運ばせねーから。
[聖堂の奥に飾られた像を睨むように見つつ、独りごちる。
遠いとおい昔には、敬虔なる祈りを持って見上げていたものと同じ意匠のもの。
それを見上げる蒼は、今は酷く冷えていた]
……さて、と。
んじゃま、そのために何ができるか、考えてみますかね。
時間、あんまりないだろうしな。
[蒼が氷を宿したのは刹那、一度閉ざされた後、開いたそこには落ち着いた色。
そのままゆっくりと踵を返して宿泊施設へと戻る。
戻ってからやるのは、常の日常──食事の支度やら何やら。
食欲があるとは言い難いが、生きるためには必要な事、と。
そこは、きっちり割り切っていた。*]
[扉を開けて、目に入ったのは、ノーラとシスターのやり取り。
先の声から、何が起きていたかは推察できていたから、動揺はあまりなく]
……まだ、おわらない、って事か……。
[ぽつり、と小さく呟いた後。
零れ落ちたのはため息、ひとつ。*]
―翌朝/宿泊施設・ユリアンの部屋―
[部屋に近付くにつれ、血の臭いがする。
昨日のリディの姿を思い出し、女の顔は蒼褪めた。
昨晩には触れなかった扉を潜れば、毛布が捲れた状態のユリアンの遺体が其処にはあっただろうか。
喉と首筋には引き裂かれた痕。
そして服の肩の部分には大きな損傷がある。
彼が生きていない事は素人目にも明らかだ。]
…ぅ、あ、あぁ、ぁぁぁ
[ふらふらと歩み寄り、ベッドの傍で座り込む。
服に血が付くのも構わないで。
彼に向かって両手を伸ばす。]
[触れた指先に伝わる温度は冷たかった。
――夫の時と同じだ。
思い出して、感情が決壊する。]
ユリアン、ユリアン…っ!
いやだ、いやあぁぁぁ…っ!
[幼馴染に取り縋った女の慟哭が室内に、廊下に届く程に響いたか。*]
― 真夜中 ―
[人の動く気配が途絶えてから、“月のいとしご”の時間は始まる。
そうと自分の部屋を抜け出して、別の部屋の前へ。
ノックもせずに扉を開けて、中へいた青年に飛び掛かった。]
[扉を開くまでは人間のまま、飛び掛かった瞬間には白銀色の獣。
果たしてそのバケモノの正体を、彼が認識する暇はあっただろうか。]
[彼が襲われた理由は2つ。]
[団長と対になる、蒼い花を宿していた事。]
[もう一つは、朝の出来事。
昼間の人狼の力は、人間のそれと大差がない。
あの時疑われていたのが彼女でなく自分だったなら、女の力では抵抗もできず殺されていたかも知れなかった。
もう一人の青年が“こちら側”と知れた今、
今残っている人間の中で、彼が一番の脅威だった。]
[だから、今。
月の加護がある間に、倒してしまおうと考えた。]
[まずは大きな声を上げられないように、口元と鼻を片手で塞いだ。
今ならば暴れられても抑え込むのは容易い。
息が出来ないことで少しずつ抵抗が弱まっていくのを感じながら、
鼻を使って匂いを辿り、蒼い花の場所を探していた、その最中、]
―― ぐッ
[右の手の甲と言うべきか、今は前足と言うべきか。
赤い線が走り、血が零れる。遅れて痛みが来た。
その横で小さな音を立ててナイフが床へ転がる。]
[一瞬の間。
月によく似た色の獣の目が、彼を捉えた。
傷ついていない方の腕を振り上げて、その喉と、首に走る太い脈を、一気に切り裂いた。]
……まいったな。
[蒼花を食べ終え、いつものように毛布を遺体に被せた後。
左手で右手の手首を抑え、手の甲の傷を見る。
思いの他深く、人間よりは早いとは言え、完全な治癒には時間が掛かりそうだった。]
なんとか、誤魔化すしかないか。
[呟いて、その部屋を後にした。]
[ともあれ廊下に出て、現場の方へ向かおうとしたが、]
ん。
[ふと足を止める。]
2人?
……3人、じゃなくて?
[ナターリエの力の事は未だ知らない。
ふと零した疑問は、当人の耳には届いたか。**]
─ 宿泊施設・廊下 ─
[ここまで聞こえてくる悲鳴>>73に、ほんの僅か、目を伏せる。
あー、これだけは慣れないわー、なんてぼやきは心の内に落として]
……まあ、そういう事、だよねー。
[出てきたゲルダの言葉>>81に頷いて。
その手に巻かれているものに気づいてひとつ瞬いた。
昨日、別れた時にはなかったはずのそれは、何を意味するのか。
先のシスターの叫びからして、彼女はまだ、見つけられてはいないと読めるのだが]
(ちょい、ヤバいかもなー……)
[仮に見出されていなかったとしても、綻びになるかも知れない、と。
そんな考えがふとね過った。**]
─ 宿泊施設・客室 ─
[ノーラが入って行った部屋から慟哭>>74が聞こえて来る。
廊下にまで響くそれ。
ナターリエまで、ぐっと唇を噛み締めた]
リディさんではなかったのだと思います。
襲われた人達は共通して毛布を被せられています。
それに、ユリアンさんの傷の付き方が、団長さんの傷の付き方に似ていました。
『人狼』が2人いたことも考えられますが…恐らくは同一人物によるものかと。
[ゲルダの疑問>>81にはそんな風に答える]
[現場へ向かおうとしたゲルダが何かに気付いたように足を止める>>82]
2人、です。
アーベルさんは『ひと』です。
『人狼』ではありません。
だから、ノーラさんか、ゲルダさんのうちの、どちらかです。
[躊躇いなく発した言葉。
隠している場合ではない、保身を考えている場合でもない。
残った『ひと』を護るために、『見出す者』として出来うる限りをしようと。
ゲルダを見詰める表情は恐慌のいろを孕んでいたけれど、瞳には意志の強さを示すひかりが宿っていた**]
[どうして、とは思わない。
花だと言ったからか、
或いは宣言のなくとも、月のいとし子に分かる‘何か’があるのか。
詩の内容がこの騒動を指しているとすれば
彼が‘そう’であると知られたから殺されたのだろう。]
…っ、けほ、
[激情のままの慟哭。
声の調整をする事は出来ず、声が枯れて初めて叫ぶのを止める。
軽く咳き込みながら、
涙でぐしゃぐしゃになっていた顔を袖で拭って。]
…ユリアンを殺したのは、だれ。
殺さなきゃいけないのは、だれ。
[紡ぐ言葉は呪詛のよう。
リディは無実だった。
月のいとし子に加担する人、という可能性はなくはない――が、己の感じた範囲で判断するなら彼女は只の人だ。
特別な力を持たぬ女からは犯人の手掛かりは己の手で掴むしかない。
――けれど、最悪、此処にいる全員を殺してしまえば仇は討てるだろう。
そんな思考ですらあった。**]
うん?
何でそんなこと分かるの……あ。
[リディの一件が起こる直前。
広間で自分の投げた問いかけと、それに対する反応を思い起こす。
ナターリエがどう反応していたか、言われてみれば記憶になかった。]
シスターが″見出す者″?
……それって、信じていいの?
[その顔をじっと見詰めて、そして、]
『アーベルさんと話した。
彼は人狼の味方をする人間で、″闇の護り手″という存在らしい』
『最初にちょっと胡散臭いと思ってたのが、なんだか申し訳なく思えてきた。
……いや、人間にとっては敵側になるわけだから、間違ってはないのかも知れない』
『それでちょっと浮かれてしまって、油断した』
『ユリアンさんに襲いかかった時に、ナイフで切られた』
『……めちゃくちゃ痛かった。
致命傷じゃなかったからよかったけど、結構深くいかれた』
『今は血も止まったし、傷も塞がってきてはいる。
痛みもなくなったから、やっとペンが握れるようになった。
でもまだ完全には消えてないから、包帯でも巻いておこう。
カップが割れた時に切ったとか言えばごまかせるかな』
─ 宿泊施設・廊下 ─
[ゲルダが右手を動かす>>89のは見ているような見ていないような。
それよりも意識はもう一つの話題へと向く]
……はい、私が『見出す者』です。
簡単に信じてもらえないことは承知の上です。
ですが、このままでは無実の人を更に殺めかねません。
それは避けたいのです。
[問う声>>90に返すのはそんな言葉。
紡ぐ言葉にはささやかながら決意が乗る]
私を信じて頂けるなら、『人狼』であるのはゲルダさんかノーラさんのどちらか。
お互いにとっては、相手が『人狼』となります。
私が、どちらかを視ることが出来れば良いのですが……。
日に何度も視ることが出来るわでは、ないようで。
[申し訳なさそうに視線を落とし、唇を軽く噛む。
視線を戻せば、ゲルダの視線はユリアンがいた部屋へと向いていて>>91。
つられてナターリエもそちらを見る。
途切れた慟哭が何を齎したかは、まだ気付かぬまま*]
ー 宿泊施設・廊下 ー
そう……だね。
[自衛団長とユリアンは双花。
リディもノーラも、広間での問いへの反応を見る限りは違うようで。
残りで可能性があるとすれば、最初に死んだ管理人の老人くらいなものだが。]
……ん。
信じるよ。
[もしも自分が人狼でなかったとしても、そう結論付けたのかも知れない。]
─ 宿泊施設・廊下 ─
……ありがとうございます。
[信じる、と言ってくれたゲルダ>>94の反応に、ホッとした表情になる。
けれど、問いかけ>>95を向けられると、困ったような表情になり]
…正直なところ、全然分からないのです。
私はアーベルさんを疑って、けれど彼が『ひと』であることを知りました。
今朝視ることが出来たのも、昨日豹変したように見えたユリアンさんで。
けれど彼も、『人狼』に襲われてしまいました。
目に見えるもので判断出来なくなっているのです。
何で判断すれば良いのか、分からないのです。
[落とした視線の先で、白猫がナターリエに寄り添うように座っていた]
……先程のノーラさんの嘆きを聞く限りは、彼女がユリアンさんを襲ったとは思えません。
けれど、その判断を信じて良いのかが分からないのです。
[今まで、考えていたことの逆の結果が現れていたせいで、ナターリエは決断出来なくなってしまっていた*]
ユリアン。
私ね、きっとクルトもだけど。
貴方が誰か大切な人を見つけて、紹介されるのが夢だった。
…それだけが幸せじゃないかもしれないけどさ。
貴方には人一倍幸せになって欲しかったんだ。
[淡い微笑み浮かべ、死者に語るは女達夫婦の夢。
幼い時に父親を亡くし、母親は彼を捨て、師匠夫婦に引き取られた幼馴染。
そんな事があったからこそ、彼の幸せを心より願っていた。]
――だから、貴方を終わらせた人は許せない。
[ナイフを持つ手には力が籠る。]
[今残っているのは女を覗いて3人。
女は素人。
当然、抵抗もされるだろうし、3人を殺そうとすれば‘疲れる’。
それで本命を逃しては元も子もない。
――やはり、きちんと見定めなければ。]
…これ、貸しててくれる?
[女はナイフの持ち主に問う。
――返事がない事は分かり切った上で。
返せるかどうかは分からないが。]
それじゃ、いってくるね。
[成人男性を一人で動かすのは骨が折れるので、そのままの姿勢で毛布をかけ直す。
顔は隠さず、けれど首や喉元の傷は隠れるように。
髪や衣服を昨日リディ達にしたように整えると。]
おやすみ。
……どうか、
[そこまで口にして噤む。
彼は安らかに眠れるだろうか。
仇を取ったなら、月のいとし子を殺せたなら安心出来るだろうか。]
[廊下から話し声がする。
皆、集まっているのだろうか。
ナイフを右手に持ったまま、部屋を出て、ゆっくりと彼女達に近付いてゆく。
それは話のどのタイミングだっただろうか。*]
─ 宿泊施設・廊下 ─
[視線に気づいたか、右手を隠すような仕種をするゲルダの様子>>89に、このまま気づかれませんよーに、なんて思いつつ。
シスターとゲルダのやり取りには口を挟む事はしなかった。
未だ、月のいとし子を見出していないというシスターがどう動くか、どう思考するか。
それによって、この先を考えないとならないから]
……まあ、ふつーに悩ましいよね、この二択は。
[己が判断を信じられぬ、というシスターの言葉。>>97
何も知らぬ立場であれば、自分も悩んだろうなあ、なんて思いながら、こんな呟きを漏らす]
(あちらがどう動くか、によるかな、これは)
[この場を切り抜けさせるには、彼女を犠牲にするしかないわけだが、さてどうしようか、と。
裏で巡らせるのは、そんな思考。*]
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