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[鳴る鈴から聞こえる声は――
ああ、そうか。
歪められていた記憶が正されていく。
己の真実は虚実であったと知る。]
…ック、ハァ。
[廃墟の一角、周囲に気配が無い事を確認してずるりと座り込んだ。
背中の打ち身そのものもだが、それより無理矢理に身体強化をかけたのが響いていた。ジンジンと鈍い痛みが走る。
死に掛けてから成長していない身体。瞬時の能力は引き上げることが出来ても、耐久度は低い]
長引かせるのは拙い、な。
どうせ監視者もいるんだろうし。一度賭けに出ておくしかないか…?
[今はとにかく回復を図る。建物まで戻った方が良さそうなのは分かっていたが、その途次に何かあった時に対応できるところまでは現状でどうにかするしかなかった]
さぁ、如何でしょう?俺は此処から出られますけど
…貴女は、無理なんじゃないですかね。
――尤も、知ってても教えるつもりは有りませんし。
[敗者は敗者らしく、大人しくしていて頂かないと。
くつりと喉を鳴らして、相手と同じようにゆるりと首を傾ぐ。
向けられる視線にも、薄く笑みを浮べたまま。
ふと、耳へと直接響く声に、ゆるりと視線を向ける。
ポケットからねじ込んだままの携帯端末を引っ張り出すと
碧の紐で結ばれた小さな鈴を、軽く指先で弾く。
ちりりと、音が鳴った。]
…ああ、まぁ。良かったですね。
これで眼を覚まさないとなると、色々問題ですし。
[痛手を負った目の前の少女には、
何たる会話かさっぱりと理解出来ないだろうが。]
/*
いや、本当大丈夫です!(ぐっ
坂道登ろうとしたら、思いっきり前のめりにコケただけで。
膝も着かずにコケるとか、小学生以来でうふふ(おまえ)
怪我も無いんで、平気ですよー。
*/
[薄く、空を覆う雲。湿り気を帯びた空気。
それはこの地帯の特性であって、雨の前兆ではない。
天のひかりは覗いている。
けれど、]
……降るかな?
[ぽつりと呟いて、鞄に目を落とした。]
[咽元へと迫る黒い其れへ、ゆるりと視線を落として。
再び、目の前の相手へと翠を向ける。…小さく、溜息を零して]
――大人しくしていろと言ってるじゃないですか。
[冷やかに、ぽつりと言葉を零す。
同時に袖上から、内へと隠された留め具パチリと外して。
滑り落ちた細身のナイフを左掌へと素早く収めると、
相手へ向けて、振り下ろした。
腕から放たれた白銀は、光を残して真直ぐに。
少女の腕へと繋がれた点滴のコードを掠めて壁へと突き刺さる。]
――次は、当てますけど?
[向ける響きは、冷たい壁に反響して冷やかに。]
…「ご主人様」?
[響く声に、一度ゆるりと首を傾いで。
――嗚呼、そういえばモニタに残る記録で
その様な事を言っていたか。と思い当たる。]
……ご主人様に捨てられていないか。だそうですよ。
尤も、それだけ元気なら聞くまでも無く大丈夫そうですけどね。
[咽元へ黒を向けられたまま。
相手へと視線を向けて。聞かれたままの問いを投げる。
響きを聞く限り、本人に然程興味は無い様だけれど]
降るといいな。
[足は中心部へと向けられていく。
人の居るであろう、場所へ。
じゃらり――玉が奏でる、音色。]
ひふみよいむなやここのたり
ふるべ ゆらゆらとふるべ
[響く、凛とした声。
朗々と、遠き国の詞が唄のように紡がれる。]
――闇罔象(クラミツハ)。
[黒が、揺らめいた。]
空を覆いしは雲 雲を作りしは水
落ちる水は寒き冬には六つ花となり
大地を白く包みゆく――
[まるで誰かに対して語るようにやわらかな声。
じゃらりと奏でられる音色と共に遥かの遠くまで。
紡がれる旋律に重なるように。]
<言の葉通りに、空は翳りゆきて、>
貴女に向けて投げたところで、避けられてしまうでしょうね。
…でも、このコードが完全に断ち切られるのは
――早い回復を望む今の貴女には、好ましく無いのではないですか。
[此処を出たいならば、尚更。
何処か挑発的に、ゆるりと首を傾いで見せて。
…引き下がる黒に一度翠を瞬けば、此方も戦意を無くしたかの様に
徐に壁へと刺さるナイフを抜き取った。]
我慢して頂けるようで、それは何よりです。
其の調子で、刻が来るまで大人しくしていらして下さいね。
…今は暇でも、その内『仲間』もいらっしゃいますから。
[何の仲間かとは、口に出しはしないけども。
翠を細めて、浮かべた笑みから。安易に想像は着くだろうか]
――遊戯に負けた者同士、傷でも舐めあっていたら如何ですか。
…と言う意味ですよ?
[くつりと、喉を鳴らして。白銀に煌く刃を仕舞い直すと
黒い棒を握り締めたままなのは承知しつつも、
躊躇う様子も見せず、ひらりと手を振って相手へ背中を向ける。
真直ぐに向かうのは、地上へと向かうエレベーター]
ご主人様のお望み通り動けるのなら
どうぞ、お好きに動いて下さっても結構です。
[この場所から出れるのなら、ね。
冷やかな響きを残して、鉄の扉の開いた先へと、踏み出して。]
『ん――上手く行った、かな』
[ぱさりと、折り畳み傘を広げる。
白のちらつく廃墟を見つめ、眼を細めた。
虚偽の言葉は、奏でられる音と声により、真実と成る。]
白く、白く、白く――
全てを覆い尽くすように。
[しん、しん、しん、と。]
[ふ、と、感じた違和感めいたもの。
すぐ側の窓の方に視線を向ければ、舞い散る白]
……。
[旋律を紡ぐ手を、一度止めて]
Obwohl ich sage, das ich in Winter kalt bin.
In der Tat bin ich sehr warm.
Die Warme einer wichtigen Person.
Es wird so nah empfunden….
[再び織り成し始めた旋律と共に、小さく、歌めいたものを呟く]
嗚呼、嫌って頂いて結構ですよ。
好かれる心算も、ありませんから。
[振り向き様に、笑みのまま飛んでくる枕を片手で受け止める。
ばふり、と空気が鳴って。僅かに羽根が跳び散った。
指差す相手に、くつりと、喉を鳴らして。]
――元気になったら、お待ちしていますよ。
「エンジェル・リッパー」
[静かに、冷やかに。言葉を投げる。
――鉄の扉が、*閉ざされた*。]
[音を奏でる事に気を取られて、
ユーディットへの問いの答えが返ったかは、知らず。
そして――
鈴により伝えられる音波が影響を及ぼすとは、思わず。]
―???―
[余程注意していなければ判らない程――微かに響く低い駆動音。
其れが止んで、暫しの後。
白い壁に隠された鉄の扉が開かれる。
――モニタールームに誰の気配も無い事を確認して
ゆっくりと室内へ、足を踏み入れた。
モニターから洩れる音声の中に混じって、カツ、と足音が響く。]
……、…
心配する必要も無かったですね。
[むしろ五月蝿い。と、僅かに眉を寄せたままぽつりと呟く。
受け止めたままの、羽根が飛び出て半分になった白い枕を
無造作にモニタールームの端へと放り投げれば、
部屋の隅でばさりと羽根が舞い散った。]
<雪は、平等に降り注ぐ>
[紡がれる音の聞こえし者に、平等に。
其処が何処であれ。
それは――つくられた真実なのだから。
天の降らす六つ花はなく。]
<目に映る白も、手に触れる冷たさも、解けゆく滴も>
[全て、全て。
うたかたの夢。]
/*
そう言えば、音伝わってしまうよなと、補足しておきます。
言霊は、要するに「音の伝わる範囲に幻影を見せる」能力です。
アイテムを使って、範囲の拡大を行っていますが。
ただし幻影とは言え、抗う意志の力が足りなければ、真実と変わりはなく。
五感の全てに訴えてきます。痛覚も無論、感じると。
なお、範囲外の人間が当事者を見ると、間抜けなこと間違いなし。
*/
帰る、か。
[ふと思い出すのは抜けたグループのこと。
いつかは戻ると約束した人のこと]
でも今はそれ以上に。
[負けられない理由はあった。いつかを引き寄せる為にも。
恐らくはもう消えているのだろう彼との約束の為にも。
何よりも、自分の未来を再び掴み取る為に]
―廃墟の過去―
[日碧と騒いでいたら、そこに現れたのは裸足の李雪。
一瞬あっけにとられ、それから重いため息]
…李雪。
[眉間に皺寄せ、小さく息をはくと少女の前に立ち、腰を屈めてその目をじっと覗く]
[流れてくる柔らかな旋律。
やがて空から白が降ってくる。
壊れた天井から舞い降りるその一片を手に受け止めた]
Es schneit.
Das Weiβ, um sich darauf zu wickeln, ist schon.
Es ist nachst Tur zum Tod.
[途切れた旋律が再び流れ出す。
その音を振り払うかのように、小さく紡いで]
―― Kampfformanfang.
[息を吸い、その言葉を口にする。
露草色に戻っていた瞳は緋色…昼間より鮮やかなそれに変化した]
[ふと。響いた音に、ゆるりと瞬く。
鈴の音が紡ぐ韻は、此方への伝言ではなく――]
――、…。
[と、白い羽根と共に、ふわりと舞い降りた白に気付いて。
掌に触れるように舞い降りた冷たい其れに、僅かに眉を寄せた。
本来ならば、室内に降るはずの無い、其れ。]
……、…少しぐらい考えれば良いものを。
[溜息混じりに、ゆるりと視線を上へ向ける。
恐らく、屋外に降り注ぐ程では無いにしろ――
まさかモニタールームに影響は出ないだろうな、とぼんやり考えて]
/*
ある程度、能力について知ってることにしちゃいましたが、オーケイ?
耐性は無い方向で。せっかくなので反映してみたり。
*/
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