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……そうか。
[思案を経て、返って来た言葉に短く返し。
空へ、手を翳す。
その手にふわりと舞い降りる、無限の輪]
……さて。
森の記憶は何を語りて、何を見定めさせる?
[手にした輪を見つめる異眸は酷く険しく。
……それは、虚の申し子──時竜としての、彼のもの。
全てをただ、見届ける、感情を排した冷たい目]
ー西の桜ー
[辺りを見回す]
とりあえず、ここにいても埒があきませんねえ。力を辿るのも無理ですし。
私は、教会に帰りますが、あなた方は?
[だが、誰もいなくなったと思っていたのは、彼女が自分の世界に入り込んでいた為本人ただ一人だった。
周りから見れば、彼女はひとりで虚空を見つめて歩き出したように見えるだろう。]
今更、少しくらい、変わらないだろう。
[力が足りねば何が種たちの餌になるというのか。
その答えなど、言うことはない。
ただ、時の竜を見やる。]
[名をあげられた人の顔を一人一人思い浮かべる]
知り合いばかりじゃないか……。全然気づかなかった。
もしかして、君たち魔族だったりするのか?
[普通に暮らしていれば一生お目にかかれない種族の名前を挙げてみる]
[クレメンスに声を掛けられれば、ピクリと肩を揺らし]
私は、もう少し、ここにいます。
[まだこの場の空気も大きく揺れているままで。
ユリアンの反応も気になっていたので、そう答えて道を空けた]
んぁ……。
[言うべきか言わざるべきか逡巡。]
[このような事に、チカラがあるとは言え人の子を巻き込みたくはないけども。]
[それでも、どうせKirschbaumへ行けばわかってしまうから。]
……また、誰か消えちゃったみたい。
[無限の輪がゆらりと周り、森の記憶を像として解放する。
巨木の生命の失われる様。
それは、火炎の若竜と翠樹の魔にも見えるように映し出され]
……なるほど、ね。
[間を置いて、時竜がもらした声からは、感情は失せて]
力あるふたりが、落ちた、のね…?
書の力。
訪れるのは…混乱?混沌?…戦い?
[目もうつろに、内に独り言を残しながらフラフラと町をさまよう。]
誰かが、消えてしまった。
[自分でも一度、小さな声で云い直します。ベアトリーチェなりに、事態をわかろうとするように。ひとつ、肯いて、少し、間を置いて、もう一ぺん口を開きます。]
……誰が?
知っている、ひと?
ううん。知らないひとでも、よくはないけれど。
「……何れも、起こるかもしれません。
けれど、それも一時。
新たな世界の創造のために、」
[一拍の、躊躇い]
「必要な事。」
[しかし、はっきりと]
[できるだけクレメンスから離れようとミハエルに近寄り]
えっ、私たちは違うよ?
[そう返した。クレメンスのことを含めるのは素で忘れた]
…イレーネ……。
[竜の力を秘めながら、竜の律も、竜の掟も知らぬもの。]
掟を知らぬものは、裁かれるべきか?
[迷いの答えを求めて、先達の竜を見る。]
んと……おにーさんもよく知らないんだけども。
Kirschbaumに泊まってた、楽士の男の人、ってわかるかな?
あの人が、消えちゃったっぽいよ?
……うん、誰かが消えちゃうと、嫌だよね………。
[ぎり、と小さく歯噛みし。]
……歪んだ『輪転』……か。
[先ほどの予測は、今は確信となり]
知る知らぬに関わらず。
我らの存在は、それ自体が律である故。
[若竜の問いに、静かに答え]
だが。今回に関しては、鍵の書の介入の気配も見受けられる。
それを、我らが皇がどう捉えるか、が問題だな。
…そうだな。私も魔族では無い。
[未だゆらゆらと、大気が揺れている。
それを止める事だけなら出来るのだろうが、樹の傍で力を使う事は躊躇われて]
[「教会に戻る」というクレメンツに黙って頷く]
おやすみ。クレメンツさん。
夜道は危険だから気をつけて。
[そういうとブリジットやミハエルの方を見て]
それはごめん。「人外=魔」のイメージがあって。
ってなんの種族?[わくわく]
他、にも……?
[その言葉に、真っ先に浮かぶのは二人の対。]
……や、僕らのバランスは保たれている。
ミハエルも、ダーヴィッドも大丈夫っぽいね。
ー西の桜ー
[ユリアンの問いには、敢えて応えず、ブリジットの答えに訂正も入れずに笑う]
さて、それでは、失礼しますよ。おやすみなさい。
主の御恵みを。
[聖書に手を重ねて、そう唱える]
よく判っているね、時の竜。
大丈夫、僕は壊れないし、
あの封印もやぶらないよ。
……とりあえず、先に、何か食べようか。
しっかりとそうしておけば、力を蓄えられように。
…。
[俄然、目を輝かせ始めたユリアンに溜息。
そうでなくとも桜の傍、居心地が悪いのだ。
そうでなくともハインリヒが消えた後、煽りを受けているのだ。]
[眉間に皺を寄せて]
[不機嫌を露わに。]
主の恵みか。人の言う”主”が何であるか、知らない訳では無いだろうに。皮肉のつもりだろうか…な。
[クレメンスの後ろ姿が、闇へ消えてゆく]
[少しずつ少しずつ大気の揺らぎは小さくなる。
一度崩れた均衡は、安堵できる所までは戻らないけれど]
えっ?
[ここまで言ってから答えてしまっていいのか悩み始めた。
どう考えても遅すぎです]
えーと……
[困ったようにミハエルを見た。じーっと。縋るように]
楽士。
[二人の言葉に、円い眼は大きく開かれました。]
……エーリヒが?
[ベアトリーチェによく肖た、金いろの髪に少しいろの違う眼が思い浮かびました。小さな手は、落ちかけていた毛布をきゅっと掴みます。]
演奏を聞かせてもらう約束をしていたんだ。
外のお話も、たくさん聞いたんだ。
居なくなって、しまったんだ。
[そうしてしばらくぼうっとした後、ぴょんと椅子から降りて、よいしょと毛布を折り畳んで上に置きました。他にも、という言葉に、なんとなく胸元の輪に手を触れました。]
……オトフリートは、大丈夫な気がするよ。
なんとなく、だけれども。
君にとって、樹の生命が理不尽に散らされるのは、容認できぬ事だろうからな。
……だが、余り囚われないように。
俺の推測と読みからして、彼女は……ただ、力を受けているだけらしい。
[静かに告げた後。ようやく、その表情には感情が戻る]
……ああ、今の内に力を蓄えておいた方がいいだろうな。
「気をつけなさい、愛し子達。怪しまれようと恐れるには足りないが、動揺すれば結界に囚われるやもしれぬ。全ては、お前達の願いのため、揺らいではいけない」
できるわけなどないよ。
ましてここは、あの子の愛する森だ。
僕には許せるわけもない。
悲しんでいるのだよ、樹が。あの子が。
[そして、頷く。]
わかった。心しよう。
ただ力を受けているだけなのだね。
……したことには変わりはないけれどね。
[小さな微笑]
影の王のところに行こうか。
先に、行くよ
[森の奥を一度見て、暗い緑の瞳を閉じる。それから西の方向へと、*歩き出すだろう*]
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