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っ、
[慌てて閉じて、まずは広間へと向かった──いない。
そのまま厨房へと駆け込む──ここにもいない。
勝手口を開いて外へも出てみる。
彼は確か、ここから一度帰ってきて……いない。
一度中へと入って、大浴場、リネン室と回った──いない。
冷たい予感が、ひたひたと胸を浸していく。
それでも諦めるのは嫌で、必死に辺りを見回した。
思いついて階段を3階まで駆け上がる。
ギュンターの部屋を覗いてみた。───いない]
どこ…… …?
[不安に、じわりと涙が目に浮かんだ。
それを堪えて、今度は階段を駆け下りる。
念のために、もう一度アーベルの部屋を覗いてみた]
[───やはり、いない]
橋を…、…?
[見に行ったのかも知れない。
一縷の儚い望みに自らの誤魔化しを感じながら、
上着を引っ掛けて、玄関から外に飛び出した。
冷たい風が、雪を白く巻き上げている。
ぶるりと震えながら、積もった雪を漕いで橋へと向かう。
既に旅人が結んだ布とてないそこに、人の気配はない]
…アーベル、
[名前を呼ぶと、泣きそうになる。
こんな顔を見られたら、また心配をさせてしまうだろう。
ひょっとしたら、笑いながらすぐ彼が現れるかも知れない。
そうしたら、どんな顔を見せればいいのだろう。
親しい友人だ───…いや。
友人以上の感情を、心に自覚し始めている]
[きゅっと口を引き結んで道を戻る。
屋敷の周りをぐるりと周りはじめてから暫く、
裏手に回って森の近くに差し掛かったところで、
異変に気付いた。
足跡もなく綺麗だった雪の上に、足跡が僅かについている。
風と雪で消えかかっていたけれども足跡だ。
それが続く方へと導かれるように奥へ足を進めて、
木々の少し開けた小広場の中央に、
─── 見たくなかったものを、目に 映した ]
──────…
[漆黒は見開いたまま、
恐れるように仰向けに倒れる人影を見つめている。
確かめたくはなかった。
彼なのだと、知りたくはなかった。
なのに心を裏切るように、足が前へと進んでいく。
───確かめたかった。
彼ではないと、知りたかったのに、]
い……、や…
[目の前にあるのは]
……アーベル… …!!
[肩を掴むと、抵抗なく彼の身体が揺れた。
胸にぽかりと、心臓を抉り出した穴が開いている。
それでも彼の頬に手を寄せた。
頬を手で挟みこむようにして、呼びかける]
目を開けて。お願い…目を開けて。
[ぽたりぽたりと、熱い雫が彼の額に落ちかかる。
頬の冷たさが、とうに命など失われていることを知らせるけれど]
やだ……
… やだよ。
[彼の身体を動かした時、
身体の上に置かれてあったものが滑り落ちた。
失われていた鞘だ。
それを目に映す先、昨日リボンを調えてくれた右の手が、
蒼きアイリスを咲き誇らせていた手が、
無残に失われているのを知った。
他にも傷を負っている様子は、誰の目にも明らかだろう]
守りたいって…言った、じゃない。
なのに…、どう、して……
─────アーベル……!
[彼の名を呼んで、
その肩に顔を埋めるようにして泣き崩れた。
しんしんと心も身体も冷えていく。
静かな雪の森に、暫しクロエの嗚咽の声だけが響き*続けた*]
[準備をする表情は憔悴したものがうかんでいただろうが。
準備している途中、エーリッヒから話しかけられる>>57と、きょと。となった。
感情は僅かかもしれないが、戻りかけている。]
だって、でも。
[プスプスといい募ろうとしたものの、きっぱり言い切られてしまった。
渋々ではあったが、了承して。
頼まれごとを済ませると、広間の隅に纏めていた毛布などをエーリッヒの部屋に持ち込んでから、眠りについた。*]
―エーリッヒの部屋―
う、ぁ…あっ…いっ、たぁ……!
や、ぁ…!
[眠りについたあと。
突如、感じたことない痛みに襲われて。
それが自分の片割れである蒼花が、失われたものだとは分からず。
布団や毛布をぎゅぅ、と握って痛みをまぎらわせようと。
その痛みが過ぎ去ると、意識は再び眠りへと落ちて。
目覚めはクロエの叫びによって施され。
着替えて外へと向かって。
少女の痣は背の全面に拡がり、色は緋色へと変化していた。]
クロエ、お姉ちゃん?
[そ、とその背に声をかけた。**]
─ 前日/ライヒアルトの部屋 ─
[広間の掃除やら何やらの間は黙々と作業をして、ほとんど口を開くことはなく。
一段落後に盛大に滑ったナターリエ>>59を見た時は、さすがに、あー、という顔をして安否を問うたりもしたが。
ともあれ、終わった後に一人、向かったのは先に訪れるを告げておいたライヒアルトの部屋。
扉をノックして入室の是非を請うた後、了解が返れば中へと踏み込み]
……ライヒさん……あのさ。
なんで?
[最初に向けたのは、唐突な問いかけ。
修道士をじ、と見つめる翠には、仄かに異なる色──紅の影が覗く]
彼女が『違う』のは、知ってたんだろ?
あっちが、『そう』なのも。
なのに、なんで、ああいう言い方した……わけ?
[問いへの答えは如何様なものか。
いずれにせよ、紅帯びた翠は、返答を聞いた後、一度、閉じられる。
逆に問いを投げられるならば、答えられる限りは答えるものの。
その口調も声の響きも、ここ数日の何かが欠落したものではなく、雪嵐以前の青年とさして変わらぬもの。
話が終われば、閉ざされていた目は再び開く。
その時にはもう、翠に紅の影はなく。
お邪魔しました、と一礼して辞す様子はまた、ここ数日の感情の薄れた青年のそれに戻っていた]
[話しかけた少女に、クロエはどんな反応をしただろうか。
少女はされるがままに、抱き締められたりする。
クロエが落ち着いた頃に、何があったのかを問う。
彼女は話してくれただろうか。
他の人が集まってくれば、アーベルの遺体を移動などを頼んだり、クロエと共に広間へと移動したりする心算**]
─ →昨日/大浴場 ─
[着替える前に風呂入った方がええ言われたさかい、素直ん従って大浴場行ってん。
リアが付いて来よる>>54んは特になんも言わんで、脱衣場入って直ぐ服脱ぎ始めた。
流石にリアは外んおったやろか。
出るの間に合わんでうっかり一部見てしもたんなら、背中に打撲痕見えたかもしれん。
さっきカルメンさんに抵抗された時ん痕や]
ぅー あったか い
[浴室に入って髪も身体も全部洗い流して、湯船ん浸かるとようやっと一息ついた心地してん。
平常時の息苦しさは前よりも酷い。
多分、人狼探せてへんからや。
ある程度あったまったら身体拭いて脱衣所に出て、着替えの夜間着は部屋に運ばれたらしいさかい、紅いんがかぴかぴに乾いてもうた前の服着た。
髪は紅いんに触れたらあかんから、緩く団子にして上の方に結うた]
─ →昨日/個室 ─
[部屋ん戻って着替えて、用意してもろた水と木苺を口にした。
髪は長ぁく後ろに垂れさせとく。
そないにしないと、きちんと乾かへん]
ベスもリアも おおきに
[そうゆぅて2人に笑いかける。
そこだけ見れば、いつも通りん反応やったと思う。
ただ、色々あった後んしては、普通すぎる反応やったはずや。
ベスはどん辺りまで部屋におったやろか。
1個1個ゆっくり木苺口んして、しばらくした時にぼんやり口が開いてん]
…… うち 、変やんなぁ
何で 死んだ人が人狼かどうか 判んねやろ
[息苦しさからの声んつっかえはだいぶ無ぅなっとったけど、言葉が発されぇのはゆっくりやった。
瑞々しい木苺口にしてお腹落ち着いたお陰なんか、支配されとった思考が薄くなったお陰なんか、よぅ分からんねけど。
闇ん底に沈んどった心が少ぉしだけ浮かんで来とった]
[呟いた声になんや返って来たやろか。
そん後は一旦寝るゆぅて、ベッドん中に潜り込んだ。
寝るてなったらリアも出てくゆぅてた。
それ見送って、うちはしばらくの間部屋で寝とった]
[寝始めてしばらくして、自然と目ぇが覚めて起き上がる。
どんくらい寝とったんかは分からん。
起き抜けは喉渇いとったさかい、おいたままやった温ぅなった水で喉潤してん]
んんぅ …… もちっと 欲しいなぁ
[皿にあった木苺はもう無ぅなっとった。
美味しかったさかい、もぅちょい欲しなって、髪下ろした夜間着のまま廊下ん出た]
─ →昨日/温室 ─
[温室が2階んあるのは知っとったから、真っ直ぐそっちに向かってん。
温泉の真上にあるて聞いて驚いたことあったさかい、忘れぇことは無かったんや]
……… 勝手に食うたら あかんよな ホンマは
[それに思い当たったんは温室ん中入ってからやった。
とりあえず食うんは止めて、温室ん中見て回る。
温泉熱利用で作られとるさかい、ホンマ温かくて、冬なんに春とか秋とか、丁度ええ気候に保たれとるんが分かった]
ええなぁ …… ジャムんしてパンに乗せたり
フルーツサラダ作ったり してみたいわ
[生っとる木苺見つけて、指先で弾いてみてん。
反動で揺れる木苺をしばらくじぃーっと見とった]
[どんだけそこんおったか分からへん。
なんや出て行きた無ぅて、ずぅっと温室ん中に閉じ篭っとった。
精神的な疲れも、肉体的な疲れも完全には取れてへんかったさかい、壁に背ぇ預けて座った状態んまま、うちは寝始めてしもてた。
そんうちずり落ちて、蹲るように膝抱えた状態で、地面に寝っ転がってまう。
お陰で夜間着汚してしもたけど、そん時んうちは眠ぅてしゃーなかったんや]
─ 前日 ─
[ライヒアルトの部屋を出た後、一階の使用人部屋に落ち着いて。
ふらり、とそこを出たのは真夜中過ぎ。
最初に足を向けたのは、庭に作られた築山──家主の墓]
…………。
[しばしその築山を。
そして、今は雪の下の花壇を、見て。
ゆるり、踵を返して歩いていくのは、裏手の森。
数日前、家主を喰らった場所は、今は新たな白に覆われている。
そこをしばしぐるりと見回した後、森の奥の方へと踏み込み──落ちていたものを、拾った。
細工の施された、剣の鞘]
あー……こんなとこまで、飛んでたのか。
道理で。
[見つからないわけだ、と。呟きながら更に奥へと向かい、開けた場所で、足を止めた]
……で、何の用?
[振り返る事無く、背後の気配へと問う。
蒼き花を持つもの。
広間で刹那向けた視線が疑問を根ざしていたのか、他に理由があるのか。
仔細は知れぬものの、ここまでついてきた彼に向けたのは、翠ではなく、紅の瞳]
ま、俺の方でも用事はあったから。
……好都合では、あるんだけどね。
[く、とわらう。
愉しげな笑みが思わせるものは、ラファールと言う名の銀の獣には知り得ない。
月灯りの昂揚と、蒼き花の香りと。
それらは、普段は動き潜める銀の獣を酷く酔わせていたから。
何か、問われたとしても──答える事はなく。
金の髪の青年は、本能の赴くままに、銀の獣へとその身を、転じた]
[予め予測していた通り、狩りは容易くは行かなかった。
人を呼ばれぬように、と喉を狙い飛び掛るも、中々届かせることはできず。
振るう爪は腕をかするに止まり、こちらも、幾度か刃を受けて銀の毛を散らした。
立ち回るうち、小広場の雪は溶けてぬかるみ、足場が不確かとなり始める]
(……このままじゃ、埒が開かねぇ、か……!)
[そんな苛立ちを示すように唸った後、低い姿勢から足を目掛けて飛び掛る。
それまでは執拗に喉を狙ってた事もあってか、牙は足を捉え、雪の上に引き倒す事はできた。
そのまま圧し掛かり、鼓動刻むものを求めて爪を振るう──それとほぼ同時、繰り出された突きの一撃。
とっさに身を引く事で貫かれるは免れるものの、前脚に浅くない一撃が刻まれる。
怯むは一瞬──銀の獣は低い唸りとともに、再度、爪を繰り出して。
その一撃は、鼓動刻む場所を、捉えた]
[喉を潰す事はしなかったから。
何かしら──言葉が、向けられたかも知れない。
ただ、酔いしれる銀の獣にそれが届いたかは、怪しいもの。
胸元を裂き、鼓動の源を覆うものを強引に退けて、求めるそれを抉り取り、喰らう。
あまい、と思った。
家主を喰らった時よりも、12年前に、両親を喰らった時よりも。
ずっと、あまく、感じられて。
心臓を喰らい尽くした後、銀の獣が見やるのは、右の手に咲く蒼い花。
それもまた、誘うような芳香を放っていたから。
ためらう事無く、牙を立て、喰らってゆく。
力が満ちる。同時、狂気も満ちる。
同じものがまたほしい、と。
そんな衝動が、疼いていた]
……は。
[事が終われば、熱も一時、下がる。
銀の獣は再び金の髪の青年へとその身を転じ、今、己が喰らったものを見下ろした]
……あと。
なんにん、だっけ?
[小さく落ちる、コエ。
なんにん殺せば、なんにん喰らえば、逃げ延びることが叶うのか。
いっそ、同胞以外はすべて、などという思考も過ぎるが、それが顧みられることはなく]
これ、返しとく。
[既に声は届かぬと知りつつ、そう呼びかけながら手向けるように鞘を亡骸の上に置いて、その場を離れた。*]
― 前日 ―
ビチェ、ありがと。
あと、ごめん。
気遣えなくて。
[部屋を出た後、廊下で伝えてビチェとも別れた。
その後、カルやミリはどうなったのか聞くために人を捜した。1階廊下でエリを見つける]
― 前日/1階廊下 ―
そか。ありがと。
任せてばかりだ。
[教えてもらった後、迷いながら幼馴染に聞いた]
エリ。
死なれるの、怖いよな。
死ぬのとどっちが怖い?
[死そのものに対して麻痺が起きている。これは良くないと思ったので、他者の感覚を求めた]
……うん。変なこと聞いたな。
ごめん。
[明確な答えはなくてもそれが一つの答えと受け取った。
こんな時でも腹は減る。流石に自分でも肉は食べられなくなっていたが、貯蔵されてた木の実の類を少し貰って、部屋に戻った]
― 昨日/自室 ―
ごめん。
[広間で一度落としてしまった山刀をまず確認する。
アベさんの仕事は今度も見事だった。それなのに乱暴に扱ってしまったので、額に当てて呟いた。
布で綺麗に拭いて、机の上に置く]
[それから、新しく作った弓を手に取った。
左手首を添えて赤い弦を張り、矢を番えずに引いた。
一人に対象を絞れないでいたため、何度やっても必要な音を作れない。
前日と同じく、何度も張り替えて試した。
その内に朦朧としてきて、雑念が混ざる。途中でそれらしい音も鳴った気がしたが、納得いかないまま力尽きて。
そのまま、また夜明けを迎えてしまった**]
―回想―
ううん、どういたしまして、ロズお姉ちゃん。
[ローザからの礼に、ふるふる、と左右に首を振る。]
…御伽噺に、ロズお姉ちゃんと同じ力を持った人がいる、って。
[ローザの言葉>>88に、ライヒアルトから受けた簡単な説明を思い出しながら口にする。
それは、ユリアンの説明>>94と同じものだった。
ローザも護らなきゃ、とのユリアンの言葉には、きょとんとしたが。]
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