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……それが、最大の問題とも言う。
[歩みを止めたレナーテの言葉に。
はあ、と深く、息を吐いた]
まあ、向こうは俺に用事があるみたいだから。
……その内、自分から出てくる可能性も高いんじゃないかな。
それなら、それで。
こっちの都合のいいとこで、お待ちするのも一つの手、かな?
[屋内では、どうしても風の力は弱くなる。
なら、外へ、と考えるのは自然な思考ではあるが]
いや、おかしくはないよ。
俺も当然そう思っている。
[口にすれば焦りを思い出すのだとは言えず]
[アーベルに向けて口元だけでも笑って見せ]
俺じゃ頼りなさすぎるかい。
これでも昔よりは色々鍛えられもしてるんだけどね。
[旅の間の厄介事は数知れず]
[それこそヴィリーと顔馴染みになってしまうほどに]
まあ、そこはアーベルも頼ってくれ。
[あまりにまじまじと見られて溜息を零した]
[威勢のいいレナーテに向けかけた疑問は、彼女自身によって為された]
何処へ行けばいいかも問題だけど、
相手が来るか限らない、というほうが問題じゃないかしら。
姿を晦ましたことから考えれば、
「こちらが気づいていることに気づいている」可能性は高いと思うの。
……仲間を捨てて出て行くかどうかわからないけど、
街から逃げないよう、自衛団に協力を要請したほうが良いかしら。
[特殊な力――魔法を使う相手。
手に負えるものかとは思いながら、そう続ける]
[97%の手加減][ふといつぞのライヒアルトが思い出されたり]
[何とも微妙な表情でレナーテを視線で追いかけ]
そうだな。
下手に動きの取れない場所で何かされても困る。
[心当たりはあるかというように]
[アーベルに目を転じた]
ああ、そのくらいは。
……誰かも動いてくれるだろう。
[エルザの言葉に浮かんだのは従兄の顔]
[その位は信用してもいいだろうかと]
少なくとも目撃証言くらいは取れそうだ。
最悪、街の外まで追うことになってもね。
あ。
違うの。頼りないって言うんじゃなくて。
ほんとうよ?
[ハンスに向けて言うが、念を押すさまは返って怪しい]
ただ。
そうね、変わったんだな、って思っただけ。
ん、ああ。
そういう可能性もあるんだ……。
[姉の言葉に、初めてそれに思い至ったように呟いて]
それならそれで、何とかしてもらった方がいいかな。
……街からは、出したくないだろうし、色んな意味で。
[事件を表に出したがらない上の体制。
外に飛び火するのは避けたいんじゃ、と思いつつ]
俺が一番動ける場所は、周りへの被害甚大だし……。
[一番動ける場所=屋根の上である]
街外れの近くの方がいいかもね。
それはそれで、逃げられる可能性も出そうだけど。
少なくとも、余計な茶々ははいんないし。
ああ?
先手必勝ってわけにはいかねえのかよ。
来るにせよ、逃げるにせよ。相手にしっかりと準備の時間を与えるってのは、あんま嬉しくない出来事だな。
[苦い顔で、頭をぼりぼりかいた]
まあ……そうか。やさも分かってねえんだもんな。
受身になっちまうのはしゃーねえか。
[誰か。
不特定でありながら特定を示すような単語に、ハンスを見た。
彼の家庭事情に、然程詳しいわけではないが]
そう。お願いしても、平気そうなのね。
[街から出る、という言葉に少しだけ引っかかりを覚えた]
……ん?
いや、待て。
もしかして、街から逃げることは無いんじゃねえか?
そうでなければ―――この街で長い間事件が起き続けているってのはおかしいだろ。
それを専門にしているなら、ある程度噂が広がった時点で、他の街に拠点を移したほうがいいはずだ。
それが出来ないのは、この街から出ることが出来ないか―――それとも、この街に特別な理由があるのか。
そのどちらかなんじゃねえかな。
そりゃ、ケンカするなら先手必勝に限るけど。
相手が魔法使うのがわかってるなら、尚更。
[頭を掻くレナーテに視線を向けて、一つ、息を吐く。
それと共に零れた言葉は、ちょっと物騒かも知れないが]
それに、時間ができるのは相手だけじゃなくて、こっちもだろ?
[くすり、と笑う。
覗くのは、いつの間にか身に着いていた下街での笑い方]
……追い詰められれば、突破口を開こうとすると思うの。
そのとき、邪魔になる相手は――消しに来るだろうし。
ほんとうに、彼女がそうだって言うなら、
あの様子だと、自衛団はあまり脅威に見ていないでしょう。
なら、狙うのは、やっぱり。
[歯切れが悪いのは、荒事に対する耐性があまりないことを示す。
今更ながら、「ほんとうに」と言ってしまうことも。
街外れと提案するアーベルに頷いて、]
人のいない場所であれば、相手にとって都合がいいでしょうね。
それは、甘いぜ兄さん。
[アーベルの言葉にピシャリと返した]
こちらに出来た時間は待ち時間だ。準備時間じゃねえ。
いつ来るか分からない相手に、心の準備は出来ないもんだぜ。
それこそ、今、この時にも襲ってくるかも知れねえんだ。
……まあ、周りはそれとなく注意しているがな……アタイはそういうの得意じゃ無いんで、当てになるかどうか微妙だが。
……レナーテさんより強くも見えないだろうことは、自分でも分かってるから。
[言い募るエルザに肩を竦める]
[アーベルにはちらと一瞥を投げただけ]
確かにそういう側面はありそうだ。
けれど事ここまで来て何がどう転ぶかは分からない。
アーベルの言うとおり、こちらも時間を貰えたんだから、出来るだけの対策をしておいて損はないだろう。
[レナーテを見ながら言った]
理由――理由、ねえ。
それが分かれば、何かしらの足しにはなりそうなんだけど。
[唸っても、分かりはしない。
眉間に皺が寄るくらいだ]
……そもそも、いなくなった人達を、どうしていたのかしら。
魔法で捕まえたとしたって、……その後、があるでしょう。
そんなに簡単に、どうこうできるもの?
心の準備は出来ないけど、
だからって、ずっと気を張っていたら倒れてしまうわ。
[そんな暢気な意見が出てくるのは、争いを知らないからだろう。
緩く組んだ手を、身体の前に置く]
人のいるところで複数固まっていれば、
早々、手出しはできないだろうし。
今出来ることをやったら、少しは休みましょう?
出れない、理由……?
[そんなものあるのか、と言いかけて。
は、と思い出す。
事件に関わっているのは、実行犯二人と]
……上の人らが絡んでるんだっけ、この騒動。
それなら、逆に出ない方が安全だった……って言えんのかな。
[小さく呟いて。
姉から一瞬向けられた鋭い視線には、一瞬引きつったりするものの]
甘い、って言われてもなぁ。
心の準備も何も、来るなら来い、としか言えないし、さ。
腹括った以上は、やれる事やっとくしかないって。
失踪。
魔法使い。
イキシア。
花。
祭り。
[一つ一つ言葉を上げて、難しい顔でレナーテが頭をひねらせる]
……なんか、ピースが足りねえな。
全部、見えているはずなのに、見落としているもんがあるような……。
……。
[うなり声を上げながら、考え込んでいたが、やがて、頭をかきむしり]
あー!わかんね!
知らん!捕まえれば分かる!
[投げ出した。
そして、2人の様子を見れば]
あ。そう?ならいいけど。
アタイはそれこそ、メシ食ってるときも、風呂入っているときも、寝てるときも、トイレ行っている時も、いつどんなときに襲い掛かられても対応する余裕はあんだけど、それと同じ境地まで来たのかぁ。すごいな。一足飛びに近寄られたなあ。
[それは皮肉で言っているのではなく、純粋に感心して出てきた言葉である]
そう、上が絡んでいる。
下街とはまた別の、闇深い場所がね。
隠すにしろ匿うにしろ、なんらかの……。
[引かない痛みを無視しすぎたかもしれない]
[言葉を切って目を瞑る]
全てを貴女と同じレベルにしないでくれ。
出来る範囲でやるしかないのは変わりないんだ。
[再び口を開いた時はレナーテへの苦笑と共に]
[そして、レナーテにより並べ立てられる単語と唸り声。
エリザベートも考え込む風でいたが、
不意に頭を掻き毟り出したさまに苦笑した]
……それは無理だし、そうは言ってないけど。
そんな理由があって、街に居るしかないのだとしたら、
向こうもいきなり襲ってくる無茶な真似はしないんじゃない、ってだけよ。
んじゃまあ、いつまでもこんなところに居ないで、とっとと移動しようぜ。
腹減ってきたし。
行く場所はとりあえず、フーゴーの宿でいいのか?それとも、もう街外れで待ってるか?
アタイは何処でも構わないよ。
あ。けど、途中で露店で軽く飯買わせてくれな。腹が減ったら戦は出来ねえし。
[まさしく、いつも通りの調子でレナーテがあっけらかんとそう言った]
[こっちはこっちで、単純に風の報せがある事と、魔法相手に張り詰めていても仕方ない、という考えがあるが故の事なのだが]
……つーか、そこまでは言ってねーって。
[レナーテに他意がないとは気づけず。
声にはさすがに不機嫌な響き]
……下街の連中黙らせるだけのモンだしね。
[ハンスの言葉には小さくため息を]
上?
[ハンスの言葉に、思わず天井を見上げてから、意味が違うのに気付いた。
そして、別に小さくも無い独り言を漏らす]
あ。あー……。
だから、親父が別仕事な訳か。
アーベルに任せる。
[行き先については短く]
[その声も掠れが少し酷くなってきたか]
伝えていなかったか。
まあそういうことなんだ。
[上というのに反応する二人に]
[通じはしたようだったからやはり省略系で言って頷いた]
……人が多いとこ、なら、おっちゃんの宿の方がいいかも。
露店、結構しまり気味だし。
[ぼそ、と呟いて]
……親父さんが、別仕事……って?
[それから、レナーテの独り言に、不思議そうな呟きをもらした]
うん、伝えられてなかった。
……なぁに?
[ハンスに答えてから、
髪を掻く弟に目を向けるも、またすぐ戻して]
今は聞かない、喋りすぎなくらいだもの。
[言葉に含められているのは、裏の意味より、そのままの意味。
その腕を取ろうと、手を伸ばした]
行きましょ?
[レナーテに向けかけた疑問はアーベルに先に出されたから、その答えを待つ]
[三者三様の返し方に]
んー。そっか。
心の準備っつっても、人それぞれ違うもんか。
まあ、そりゃそっか。ははっ。
[悪びれも無く笑った。
体育会系は、自分と他者が同じ考えを持っているということが往々にしてある]
[その後は、3人の意見により、レナーテもまた付き従うように*動いただろう*]
[アーベルから来た質問には、照れたような笑みを浮かべて]
ああ、いやいや。
アタイの予想でしかないし、確定しているわけじゃないから、言うのはやめておくよ。
外れてたら恥ずかしいし。
ただ、あの親父は、アタイには想像もつかない世界で仕事している人間だから。
[と、答えになっているんだかなっていないんだか分からない*答えを返した*]
……ねーさんでも想像もつかない世界って、それ、どんな世界……。
[レナーテから返る言葉。
思わず、呆れたような声を上げていた。
同時、ふと、過ぎるものもあって]
……世界は広い……ってこと、かな。
[ごくごく小さな声の呟きが零れ落ちた]
ん、まあ、とにかく、さ。
[は、と一つ息を吐いて。
がじ、と蒼の髪を掻く]
ハンスのにーさんも調子悪そうだし、真面目に休憩した方が良さそうだよね。
……フーゴーのおっちゃんとこ、いこか?
さすがに、あそこで仕掛けてはこないだろうし、ね。
[いつまでもこの場にいても仕方ないのは確かな事、と割り切りつつ、こう言った]
ああ。
[エルザに感謝の眼差しを向け]
[伸びてきた手に数度瞬いた]
[触れられた手に引き出される懐かしい記憶]
[歌っていると呼びに来た手の持ち主]
[ただ一緒に歌うことが楽しくて][歌うことは楽しくて]
[記憶の中と同じように腕を取られるまま]
[促されるまま歩き出す]
[腕を取ろうとしたハンスの様子にはこちらも瞬いて]
なぁに。いや?
[いなくなって、歌うことを止めてしまって。
伸ばした手は、その指は、奏者のそれになってはいたけれど。
問いかけるさまは、昔とさして変わらない]
[行きましょ?と皆を促し、*歩んでいく*]
広いね。
[途中アーベルの言葉には顔を向けて]
時に心細くなる位には。
[故郷を確認したくなる位には]
[逃げ出したはずのイキシアであっても]
[休憩を言われれば謝罪と感謝に軽く目を伏せて]
[エルザの問いには小さな笑みを浮かべて首を振り]
[共に移動*していった*]
[首を傾げる姉の様子に、軽く肩を竦め。
レナーテにも、行こか、と声をかけて歩き出す。
周囲揺らめく風は、今は穏やかに流れていた]
……心細くなる、か。
[ハンスの呟きを、小さく反芻して]
それでも……。
[続く言葉は、声には乗らず。
聞き取ったのは、肩にとまった翼ある友のみ]
…………。
[ふる、と首を軽く振る。
今、考えるのは、終わらせる事だけ、と。
そんな風に、*意識を切り換えて*]
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