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……つた、戻って。
[くらいみどりの目をした後の、コエは冷静に、静かに。
蔦は苗床の言うことを聞き、先までのようにするっと、その身のうちに入り込む。
少し、苦しげに反応をして、それでもすぐに落ち着いた、あおの瞳が戻ってくる]
ごめんなさい、騒がせた。
[困ったような顔で、そこにいた人たちに、微笑む。]
[彼女の力を用いるには、
ベアトリーチェはまだ幼過ぎる。
拙い、と思った時には遅く。
本来は少女を構成する為の力が、散っていく]
[それから天の子どもを見て]
痛かったでしょう、ごめんね。
[聖なる力を感じながら、そう言って。
幾度か息を吐いて、吸って、身体のうちに沈める。]
[...は洗い物をしていて反応が遅れた]
どうしたの?ティル、ベアトリーチェ?
[二人だけじゃなく、宿全体がただならぬ雰囲気に包まれ...は息をのむ]
って、なんだ……これは?
[辺りに漂う光を見て、戸惑う。]
ベアトリーチェの力、なのか。これ。
[前々から、『神童』と呼ばれている事は知っていたが。
得体の知れない能力を目の当たりにして、対処に困っている。]
[光が溶けてゆくのと共に、ベアトリーチェのからだから、力が抜けました。惚けたかおをして、ぺたんと床に、座り込んでしまいます。痛みはまったくなくて、ただ、力が入らないのです。]
……?
[服の上から、鎖に通した指環を掴みます。心臓の鼓動は、早くなるどころか、やけにゆっくりとしていました。もしかすると、対である時空の竜には、ベアトリーチェの存在がほんの少し、まるで薄くなったように感じられたかもしれません。]
[左手で拳銃に触れ、半ば腰を浮かせたまま、
唖然と目の前の光景に見入る。
きらきらと輝く少女は、この世のものとも思えなくて。]
[弾かれたベアトリーチェの腕、還っていく蔦。
柔らかな暖かな円やかな、天聖の力に茶色の目を見張る。]
…大丈夫? ベア、ティル?
[アマンダは二人に声を掛け、様子を見る。
ティルの方が苦しそうだろうか。
そう思ってよく見ると、困ったような顔のティルの背が破れている事に気づき、自分の上着を脱ごうとして止まる。
腕のヒビは、まだそのまま。
何も出来ずに、席に座って、ただ心配そうに見守る。]
いやそもそも。
何なんだコレは。原因は何だ?
[ベアトリーチェに聞いてもはぐらかされるだろうと思い、
ティルに聞いてみる事にした。]
[ベアトリーチェに力を持たせておくのは、危険だ。
特に、十四の属性が集ったこの場に置いては。
けれども奪ってしまえば、少女は生きてはいられない。
彼女が力の制御の手助けを行う事も、現状では出来ない]
……何なんだ、一体……?
[座り込んだ少女、その存在が僅かに薄れたような……そんな感触に戸惑いつつ]
……いや、とにかくこれを何とかするのが先か!
[空間に未だ漂う力。
天聖の力を見やりつつ、右手首の腕輪を軽く、弾く。
キンっ! という甲高い音が響き、無限を示す形をした鎖の輪が一つ、腕輪から飛び出した]
大丈夫……ね?
[ハインリヒの傍からティルの傍へ。
すぐに力は抑えられたが、残り香のように揺れる気配を少しずつ宥めてゆく。
精霊使いであると名乗る所以。これくらいなら彼女にもできる]
そっちは大丈夫?
[むしろベアトリーチェの方が大変そうだった。
でも彼女ではあれほどの力には簡単に介入できなかった]
僕は大丈夫だよ、それよりこの子を
[ちらりと、時の竜に目をやるか]
どうにかしてあげてほしいよ。
[地の精を見たその顔は、いつもと同じように微笑み。
しかし唐突な、ただただ種にとって居心地の良い苗床を誰にも奪わせまいとしただけの、蔦の動きには流石に疲労を覚えてはいて。]
うん、まあ。
手、かな。
ちょっとね、いつもの、ことなんだけど。
僕が、拒むか拒まないか、そこで悩んでしまったから、種の制御が外れてしまった。
[雷の人には、特に、真剣な目を向けるか。]
多分君が僕に触れたら、すぐに終わりが始まってしまうよ。
だから、こっちの手には、触れないで。
[そして影の精に、微笑を向ける。]
ありがとう。
[アーベルからの問い掛けにちらりとエーリッヒの方を見る]
ええ、ちょっと陽光の気配を持つ人がいるからそれで……って
[その時、ティルの体から蔦が飛び出し、ベアトリーチェの手を弾いたかと思うと店内に溢れる天聖の気配]
……まったく何をやっているのやら
[ぽつりと呟く]
まったく……疲れるから、やりたくねぇんだがなっ……。
[ぶつぶつと言いつつ、漂う力に鎖の輪を翳す。
猫かぶりとかは意識の外、完全素になっている]
……悠久なる領域を司りし力、無限なる我が領域にて、しばし、鎮まれ。
[低く呟いて、漂う力を鎖へと誘導する。
輪の内に力を閉じ込め、それに虚の力を被せることで、封じ込める。
閉じ込めるに止めたのは、消滅させてよいものかどうかの自信がなかったから。
その刹那、紫に変わった右の瞳には、銀に煌めく紋章らしきものが浮かび上がり]
……ああ、触らない。
[ティルの言葉に、頷き。]
無闇やたらに触らないのは大人のマナー。
心得ているさ。
[ティルに向かって、にまっと笑い。]
[今までにも、魔法を使ったときに疲れてしまうことはよくあったのですけれど、今のそれは少し違う感じがしたのです。でも、なにが違うかまではわかりません。
皆の声もどこか遠くに思えて、眼を瞑ると、まるでそのまま世界と一つになってゆくかのような感覚がありました。]
、
[けれどもそれではいけないと思って、ベアトリーチェは重たい瞼を開いて、小さく、くちびるを動かします。]
ごめんなさい。
[ティルに謝っているようで、皆に謝っているようで、どちらでもないようでした。]
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