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ん、ただいま。
[広間に戻れば出迎える声。
あたたかい空気に、ほっと息を吐きながら]
ああ、紅茶は任された。
ライヒさんたちにも、約束したし。
[紅茶の準備を、というミリィには、元よりそのつもりだった事もあり、引き受ける旨を伝えて。
外から戻ってきた者たちや、望む者に紅茶を振る舞いつつ――その間も、翠にはどこか、何か物思うような翳りが宿り続けていた。**]
……爺様、が?
[コエが伝えてきた、家主の様子。
ふと、感じたのは、嫌な予感]
もしかしたら……爺様、知ってるのかも、知れない。
俺の、事。
[12年前の雪嵐の夜の出来事。
村のまとめ役のような役割を担う彼が知らぬとは思い難く]
…………。
[ふとよぎったのは、言葉にならない不安の翳。**]
─ 外 ─
え…… 、
[思わず、足が止まった。
冷え切った空気の中、血の匂いはそう濃いものではない。
けれど、…だからいっそう、顔色を失った死が無残だった。
ギュンターの胸にぱくりと開いた穴は、
老戦士の命がとうに失われていることを雄弁に告げる]
ギュ ンター…
カルメン、ベアトリーチェ
[それでも歩を再び進めたのは、まさか少女もと思ったからだ。
必死に少女に呼びかけるカルメンの背に、音は届いたか。
どうにか彼女たちの元へ歩み寄り、
ベアトリーチェを抱き起こそうとするカルメンに腕を添える]
カルメン、
[落ち着かせるように、再び女友達の名を呼んだ。
しっかりしなければならないと思えば、少し気分もしゃんとする。
クロエ自身の手も膝も震えている。
けれどまずはカルメンを立ち上がらせて、
ベアトリーチェを中に運ぼうとする方に意識が向いた]
[ギュンターをこのままには出来ない。
剣だって回収したかった。
鞘は見当たらなかったけど、
これはクロエにとっても大事なものなのだ]
……。
[ぎゅ。と、唇をかみ締める。
遠く、昨日響いた狼の咆哮を聞いた*気がした*]
―前日/クロエの部屋―
[仮とはいえ女性の部屋で二人きりとなるのは如何かと思い
開閉は部屋の主であるクロエに任せる事とし扉には触れない。
仕事場であればそのような事は考えずに済むのだが
親しき仲にも礼儀あり、が信条の男は妙な所で拘る。
友人たちを愛称で呼ばぬのにはまた別の理由があるが
その話はまた機会があればする事にしよう]
――…これが、
[クロエの手により広げられた図案を覗き込む。
じ、と食い入るように注がれる眼差しは真剣そのもの]
今度の依頼はスティレットなんだけど
慈悲を意味する野葡萄を何処かにあしらう以外は
細工師に一任したいと言っていたから――…
[十字架のような形状でとどめを刺すに用いられる短剣。
図案の外形をなぞるように指先が紙を滑る]
[提示された図案とイメージが符合する。
口の端を持ち上がり、図案を見詰めていた蒼がクロエの方を向く]
この案で詰めていってもらえるかな。
キミの手で、これが形になるのが楽しみだ。
[満足げな様子で一つ頷く。
この間のモチーフの件を聞けば]
ああ、なるほどね。
それに触発された可能性がなくもないけど
[夢に見るほどの事象だとは思えず答えは出ない]
[少女の意識は今はまだ闇へと墜ちたまま。
少女の足、左の太ももに刻まれたツルバラは、
蕾は膨らみを増し、色は白色から薄い桃色へと変化して。
ツルは少女を侵すように腰まで伸びて、その先でも新たな蕾を付けていった。
*まるで死者の命を、生長の糧とするように。*]
─ 昨夜/広間 ─
[橋が落ちたり、狼ん遠吠え聞こえたっちゅー話以外は、そん日は特になんも無かった。
やから明日以降も屋敷ん缶詰でゆるっと過ごすもんやと思うとった。
ミリィが体調気にしてくれてたさかい、礼ゆぅたり、大丈夫やってアピールしたり、愛でたり愛でられたり。
ベッドに入るまでなんや起きるとかは全くあらへんかった。
強いてゆぅ異変は、ギュンターさんの姿見ぃひんことが多かったことやろか]
─ 個室 ─
[寝るためにベッドん入って、どんくらい経ったかは分からん。
うち、また夢見てん。
見たんは、また溺れた時の夢やった。
そん夢見とる間、ずっと魘されとった]
───、────…ゥ、…───
[朝と同じようにうちは水ん中におって、息出来んくてもがいとった。
もがいても浮かばんで、どんどん息苦しくなってって。
朝みとぉに黒い影は見えへんかったけど、夢ん中で意識飛ばす瞬間、水ん中なんに狼の遠吠えが聞こえた気ぃがした。
まるでなんかを暗示しとるみたいやった]
― 回想 ―
風邪じゃなかった?
話聞くのも楽しい。
[薪割りに行く前、ロザの主張>>67には首を傾げて。
確認するようにミリの顔を見て、最終的には具合悪くないなら良しという意見に落ち着き、また頷いた。
必要なら手を貸すというアベ>>69に頷き、ロザの声に見送られて外に出た。
客が増えれば薪の消費量も増えるもの。すぐに使えるよう細く割った薪を増やし、森の中にも少し踏み入って嵐で落ちた枝を集めてくると、小屋の外に立てかけておく。
朝食と朝の暖取りに使った分を割ったばかりの薪で補充すると、後は広間で静かに過ごした。動いている方が性には合うが、時にじっと待ち続けるのも狩りのうちだ。
時々は天気を確かめに外へ出たりもしながら。
その晩は眠りが浅く。一番暗い時間を過ぎた頃になって、ようやく深い眠りに入る。
翌朝、悲鳴が聞こえてくるまで目は覚めてくれなかった]
― 翌朝/外 ―
……!
[悲鳴が誰のものかは夢現で分からなかった。
ただ緊急事態に頭より身体が先に反応すると、上着を着こんで弓矢も背負い部屋を飛び出した]
……な。
[血の色は見慣れている。
けれど人間がそれを流している図は見慣れていない。
ビチェを保護しているクロやカルの向こうにギュン爺の無残な姿を確認して、短く唸ると硬直してしまった]
─ 外 ─
[外は相変わらず寒ぅて、出て直ぐ右手で首元掴んで身ぃ縮めた。
うちより先に出た人もおるみたいで、雪ん上に足跡残っとる。
それが多かったんは屋敷の裏手やったから、それに続いて歩いてったん]
………なんかあったん?
[誰にゆぅでもなく疑問が口突いて出てた。
うちん位置からは人だかりでそん先になんがあるんか見えへん。
異様な雰囲気に見たらあかんよぅな気ぃさえしてきとった]
―個室→翌朝―
[結局部屋に戻ったきり広間に戻ることは無く。
後からライヒアルトが心配して見に来たならベッドに疲れて眠っている姿を見ることができただろう]
んーーー…
[比較的早く目覚めるのは普段の仕事の賜物か。
軽く伸びやストレッチをして、身支度を整えると部屋をでる。
今日はライヒアルトと同じか、少し早いくらいだったかもしれない]
悲鳴?
[聞こえた声は普通ではないことを知らせるもの、外から聞こえた声のほうに向かうと、ギュンターとベアトリーチェ、そのほかにも何名かいただろうか]
ぁ……
[短くもれかけた声を一度口閉じて噛み締め、それからゆっくりとギュンターの方へと近寄ろうとした]
─ 屋敷の裏手 ─
[意識のない人間を抱き起こすのは難しかった。自分は腕力がある方でもないし、恐怖で力もあまり入らなくて。
そんな時だったか、背後からかけられた声にビクッと振り向く。]
あ……クロ、エ。
[自分にとって唯一に近い友人の姿>>107を見留めると、青ざめ強張っていた表情が一転、今にも泣き出しそうな顔になる。]
う、うん。うん……。
[落ち着かせようとするかのような呼びかけに頷き、彼女と一緒にベアトリーチェを抱き起こす。
そして少しだけ落ち着きを取り戻して、ようやく少女の身体が熱いこと>>100に気づく。]
ベアトリーチェ……熱い? こんなに寒いのに……。
[人の気配に振り向くと、ベアトリーチェの悲鳴を聞いてやってきたのだろう人達がいた。
ベアトリーチェの背を支えながら、声を投げる。]
ギュンターさんが…! ギュンターさんが、狼に食べられたん、です…!
早く、屋敷に戻らないと危険、なのに。ベアトリーチェが、意識がなくて。誰か、手を貸してください……!
[誤った認識が混じった言葉で、助けを求めた。]
― 朝・個室 ―
[前夜のように風の音が気になるような事もなく、ぐっすりと眠った。
朝、まだ薄暗い内に目が覚めても。自宅のそれよりずっと柔らかく暖かいベッドから抜け出せずに、二度寝を決め込んでごろごろと心地よい時間を堪能していた]
……え、なに今の?
[けれど。悲鳴が聞こえれば、さすがに飛び起きて。
なにがあったかはわからないが、けが人や急病人でも出たのだろうか…と、服を着るのも面倒で、寝間着代わりの肌着の上に直接コートを羽織って服装をごまかし、薬物詰め合わせのカゴを抱えて部屋を出る]
― →前日/屋敷―
[復路の途中、往路は一度も躓かなかったシスターが三度に渡って転びかければ、男は溜息と共に説教めいた事を口にし。
その間に旅人には先に行かれてしまったかも知れない。もし待たせていれば、謝罪を口にした。
そして屋敷に辿りついて]
そうか。
暫く休んでおくと良い。
[不自然になりかけた呼び方>>74を気にした様子はなく、シスターには頷くのみで同行はせず。
男はその後暫く広間で過ごした後で、階上へ向かった。
己の個室に入るより先に隣室の戸を叩き、返答がなければ短い断りを入れて開く。
ベッドの上に横たわる姿>>123を確認したなら、中に踏み入ることはせずに扉を閉め、その場を去った]
狼に?
[ギュンターへ向かう足が一度止まってから、カルメンのそばによると]
落ち着いてください、カルメンさん!
誰かベアトリーチェちゃんを!
[普段より少し大きな声でカルメンに話しかけ、
ベアトリーチェのことは男の人にそれは任せた方がいいだろうと呼びかける。
自分がいうまでもなく誰かが動いたかもしれないが]
― 外 ―
[玄関を出れば、肌着の上に直接コートという服装は当然寒い。
けれどそんな事を気にしている暇もなく、いくつかの足跡を辿っていけば、すでに何人も集まっていた]
なに、があった…の?
[先客たちに問う言葉が途切れ途切れなのは、雪の中を走ってきて息が切れているからか、寒さゆえか。それとも、雪を汚す血の色に驚いたからか]
狼…?
リーチェちゃん、意識ない…って?
[薬や包帯などが入ったカゴを抱えて、カルメンの言葉>>125にきょとりと瞬く。
すぐに誰かがベアトリーチェを抱えるのでなければ、まずそちらに近づいて様子を見ようかと]
― →ギュンターの私室前―
[翌朝、男が部屋を出たのはシスター>>123よりも少しだけ遅く。
階段の前で一度立ち止まり、下ではなく上へ行く方へと足を掛ける。
家人のスペースである屋敷の三階へは、毎回ではなかったが、主に本の貸し借りの為に何度か訪れていた。
幾つか扉の並ぶ中で、真っ直ぐに家主の私室へと向かい、扉を叩く]
ギュンター殿、いらっしゃいますか。
[中に向かって呼びかけるも、返答はない。
外で叫び声が上がったのはその頃だったか]
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