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[少し頭を傾けてクインジーをまじまじと見た後]
ああ、そうだ。
キャロルさん…でしたか。あの方亡くなりました。
終焉の死者に襲われたようです。
[思い出したように、話を切り出した。]
無事を喜んでいいのかは、わからないけれど。
[カップを己の手に戻し、足を揺らす。
吐き出す息は、やや物憂げ]
いつまで続くのかな、
終わるまでか。
[眼下に広がる泉を見て、もの思いに耽る。]
スワン・レイクかと思いきや。
出てきたのは優雅な白鳥ではなく、人喰い狼ときたものだ。
せめて黒鳥の姫君であれば、その美を堪能できたのだがな。
……まあ、白鳥の姫君が出てきたところで。
そいつを演じる人間は、悪魔の遣いたる「黒鳥」をも演じるわけだしな……信用ならんさ。
[そう呟いて、ベッドに潜る。
夜歩きをして、ジャック・ザ・リッパーに殺されぬように。]
[淡白な反応の少年を見遣る]
……あまり驚きませんね。
まあもうそろそろ慣れっこになってきてますけどね。
私も、薄情ですが自分じゃなくて良かったという気分ですよ。
[口の端にちらりと皮肉な笑みらしきものが浮かんだ。]
まあ何時終わるかは、皆目見当がつきません。
見分ける人が居ないのだし、この怖い人が殺して回るしか方法が無いと言うのでしょう?
[ちらとクインジーを横目で見て]
当たりを引くまで待つしかないなんて。
その前に自分が死んだらそれでお終いですから。
驚いて嘆いて、それで帰ってくるのなら、
するのかもしれない。
でも、そんなこともないから。
[カップに口はつけぬまま、
ゆらゆら揺れる水面を見る。
眼が映すは己の眼、男の笑みは映さなかった]
死んだら、終わり。
ところで。
お二人は何をしてたんですか。
と言うか。
そのカップは何ですか。
それにこの有様……
[げんなりしたように、焦げた鍋の転がる焜炉付近を見る。]
誰か……
消去法で4人のうちの1人だ。
鼠はさっき玄関で遭った。ピンピンしていた。
帰り道に見咎められたのでなければ、ニーナでもない。
……オレは、何か飲もうと思って。
クーがしてくれたみたいに、
自分で温めようとしたんだけれど。
[案外難しかったと、眉根を寄せた]
クーは。
死んだとは言ったけれど、
殺したとは言わなかった。
……。
自分に終わりは来ても、
他者の終わりは訪れない。
遺された人は何を想うのだろう。
もう捨てましょうそれは。
[とカップを取り上げて、中の液体を流しに捨てる。]
[ついでに鍋二つをシンクに放り込む。]
私が後でやっておきます。
取り敢えずキャロルさんのことを残っている皆さんに知らせないといけませんから。
…死んだ。
では事故か。他の人間が手を下したか。
どちらでも良いことか。
[若い同族の様子に不安なものを感じ]
どうした、フィン。
厭になったのか。
……如何なのかな。
[曖昧な己の心を掴み取るように
流し台の縁に手をかけ力を込める]
ギィは如何なのだろうと思ったのかもしれない。
永くを生きて幾つもの生と死を見て来たのなら、
想う事にも厭いて何も想わなくなったろうか。
それとも、こんなことを考える方が可笑しい?
[聲が返ってきたは、短くも長い間を置いてからだった。]
――フィン。
決しておかしくない。
おまえは。
俺を気遣っているのか?
……ううん、
[水のように流れ落つ言葉]
何でもないんだ、忘れて?
[押し留めようと、]
[何時かの同胞と似た科白を吐いた]
僕、ひとりだったんだ。
一人じゃないけれど、独りだった。
だから、他の誰かの事を想う事もなかった。
でも、 今は違うから。
[霧の中から拾い上げた記憶の欠片]
気遣っているのかな、分からない。
僕は、自分も他人も分からないから。
唯、――手を伸ばしたい。
[男はじっと、溢れて零れ出る少年の言葉に耳を傾けていた。]
[流し台の縁を掴む少年の手、]
[隻眼の男からは見えぬように己の身体で隠し]
[そっと、自分の手を重ねた。]
……ん。
[微かな肯定]
[触れる手の上から己の手も重ねかけ、止まる]
[――左の腕は、熱を、毒を、孕んでいるから]
掴むよ。
[僅かな名残惜しさを残しつつも、手を引く]
[流し台の縁に手をかけ、
最後の一滴が失せるまで視線を注いでいた。
手を引いて、くるりと向きを変える]
……ん、後で――
楽しみにしてるからね。
[やはり緊張感の薄い物言い。
言葉を残して、扉をすり抜け*厨房を出て行く*]
─二階・誰かの私室─
[何度か試してみて、右目もどうにか紅紫に戻すことは出来た。しかし]
…あっ…。
また濃くなった…。
何だか不安定だわ。
誰かと居る時は気が抜けないわね…。
[ふとしたことで右目だけ滅紫になってしまうのだ。意識して居れば紅紫のままで居られるのではあるが]
…気は張るけど無理に隠したりしなくて良いだけ良いのかしら。
危険ははらむけれど。
[まぁ良いわ、とそれ以上の対処をすることなく私室を出た。いつも以上に緊張を帯びて廊下を歩いて行く]
お前は知る必要がない
[ラッセルの言葉>>64に、それだけを返す]
お前はそんなものを知る必要はないんだ
誰の死も、お前が導く必要はない
……お前にとって、良いものではない
[口元に浮かぶのは、困ったような表情]
[男は、それからキャロルの話を聞き、ナサニエルの言葉>>71に肩をすくめた]
残念ながら、己の言葉じゃないぞ
言ったのは番人だ
[情報は増えることなく城に戻る。廊下を進むと変な匂いが微かに漂い、片方の眉を上げ様子を伺う。短い赤の髪が廊下の薄暗がりに消えるのを見、声を上げず追いかけ始める]
…一人ならちょうどいい。
ちっと刃物見せたくらいで騒がれるのも厄介だ。
[人気のないところまで言ってから声をかけ、足を止めさせる。人形のような表情でキャロルの死を話すのを聞きながら、片手でポケットの中の鞘を外す]
死んだら終わり
なら、死なないように、殺せばいい
[ナサニエルにのみ向けた言葉]
[その後、空気は変わり、男はキッチンを出、一度部屋に戻る]
[*窓の外は緋い*]
…何かしら。
[廊下に漂うのは、ここ数日で染み付いた血の臭い、だけではなく。
妙な臭いに眉を寄せながら、また薄暗がりに消えた影に気付くこともなく、辿り着いたのは数日振りの広間でした。]
[流れたのは一筋の緋。ナイフに付いた血を舐め上げた顔に愉悦が浮かぶ。芳醇な酒に酩酊しジビエを口にした時と同じ表情で、城中に響く大声を上げる]
終焉の獣がいたぞーーーっ!!
赤毛のちびだ!!
[逃がさないと*ぎらり目が光る*]
!
[空気を震わすような声に、振り返り廊下に眼を向けます。
声が誰のものかを理解する前に、その内容に意識が向きました。]
…だから、言ったのに。
[直接ではないにしても。
零れ出た言葉は、意外に淡白でした。]
[気を張っていたことで神経も研ぎ澄まされていたのだろう。遠く離れていた場所からの大声にも直ぐに気付くことが出来た]
あの声…飲んだくれのっ!
[何故終焉の使者だと分かったのか、そんな疑問も忘れ声が響いた方へと駆け出す]
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