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─自宅─
[ゆっくり歩く事でひっくり返るのはどうにか免れつつ、廊下を進み。
出る前に、水を一杯、と思ったのは良かったのか悪かったのか]
……ありゃ。
[思わず、惚けた声が上がる。
進んだ先にあったのは、家事に勤しむ姉の姿]
[ひら、と女剣士に対して後ろ手に手を振って]
[目的地目指し歩き始める]
…爆発するかどうかは、あいつの返答次第だろうな。
[振った方の手で手巻きタバコを摘み]
[紫煙を吐き出しながら呟いた]
[問い詰めてどんな反応が返って来るのかは分からない]
[穏便に済むならそれに越したことは無いが]
[そうじゃないなら──]
…ま、あいつの話を聞いてから、だな。
[手巻きタバコを戻すと、また口元に不敵な笑みが浮かび上がった]
……ん?
[静寂の中に落ちた音に、掃除の手を止めて振りかえる。
そうしている辺り、腕の痛みは然程ないらしかった]
[弟に向けられる、無言の眼差し。]
―回想-宿舎―
…確証はないが。
不安要素は取り除くべきだろうね。
[言葉が示すのは、彼の唯一知る風遣いのこと]
…とはいえ、同じ手だとまた失敗するかも知れない。
頼めるかい、ゲルダ。
他に何か心当たりがあるなら、そちらでもいいが。
ええ、と。
[向けられる、眼差し。
目覚めの後とは思えぬ様子は、何を思わせるか、と思いつつ]
……おはよ?
[とりあえず、首を傾げて誤魔化そうとしてみた]
[文字通り、引くも進むも叶わない状況。
どうやって切り抜けようか、と思った矢先のため息と、低い声の言葉]
…………。
[僅かな逡巡。
不可解な出来事への気持ちの焦りはある、けれど。
……逆らう余地のない状況に、大人しく食卓について]
……それ、つまり、言わないと止める、ってコト……だよね?
[答えはわかりきっているが、思わず聞いた]
―教会―
[教会の奥に据えられた神の子の像。
祈りの時間は既に終わり、人も疎らなその中で、前方の席に座る彼は未だ動く気配も見せなかった。
傍から見れば熱心な信徒に見えるのかも知れない。
だが、数年前には確かに像を映していたのだろう眼は、今は何も見ていない。
瞬きの他は何もせず、ただそこにいるだけだ]
……だよ、ね。
[零れ落ちたのは、嘆息。
どこまで話していいものか、という迷いはある、けれど]
一応、人には話さない、っていう前提ありなんだけど。
……昨夜。ヴィリーのにーさんが、『誰か』に襲われて。
それ、止めた。
[端的に、昨夜の出来事を説明する]
でも、その場の事はわかんないから……確かめに、行かないと、いけない。
─広場→教会─
[ゆるりとした足取りで辿り着く教会前]
[普段ならば敬遠して訪れぬ場所]
[それでも足を運んだのは、彼に会うため]
[厭うように隻眸を細め、その外観を眺めてから]
[重々しく感じられる教会の扉を開いた]
……アロー。
ライヒアルト、居るか?
[左手をジーンズのポケットへと捻じ込み]
[右手は横に垂らしたまま]
[教会の中に声を投げかけた]
[左のポケットの中で僅か、くしゃりと音がする]
……そう。
終わっては、いないのね。
[それが即ち、カヤの無実に繋がる訳ではない。
胸中は見せず、何故、との疑問も挟まず姉は言う]
止められるわけね、あんたは。
それで。
「止めたい」――ううん、
「止める」んでしょ?
[手早く用意を済ませると、アーベルに背を向ける。
片付けにと行く素振りで]
[掛けられる声に振り向くと、見たことのある顔
えーと、と少し考えていたが]
あーと、ハンスさんでしたっけ
えっと、ですね。ちょっと人探しを
[にこりと微笑を浮かべ、そう答える]
[ぴくり、肩が動いた。
少しの間が空いて、声のした方向を振り返る]
ヴィル?
どうしたんだい、こんなところまで来るなんて。
[小さな驚きは嘘ではない。
今目の前にいる人物が教会を厭う者だとは、昔から知っているのだから。
友人を迎える彼の顔は、果たしてどのように映るのだろう]
……うん。
まだ、終わってない。
[静かな言葉。伏した蒼にも静かな色]
連続で、同じ事ができるかどうかは、わかんないけどね。
でも……決めたから。
[背を向ける姉。構わず、言葉を続ける]
一年前には、逃げるしかできなかった。
でも……なんか、もうやだからさ、それ。
ほっとくのも、逃げるのも。
だから……やんなきゃって。
[そんだけ、と。告げる口調は、いつもと変わらない]
―大通り―
人探しですか。
手伝いはいりますか?
[微笑には微笑を返す]
[噂話からの収穫は当然皆無に等しくて]
[半ば息抜きのように尋ねた]
─教会─
[驚きの表情と声を表に出す友人]
[その様子に一度細めた隻眸を向け]
[ゆっくりと傍へ歩み寄る]
ちょいとな、お前に話があって。
時間良いか?
[友人は普段通りのように見える]
[知らぬなら、普段通りの笑みを浮かべて応対したことだろう]
[けれどこちらが向けるのは、取材対象を見る瞳]
[近付いてくるのに合わせ、席を立った]
ああ。
構わない、けど。
[その目に違和を感じ取ったか、訝しげな顔をして友人を見上げる]
血筋なのかしらねえ。
無鉄砲なところは。
[背は向けたまま、笑う気配]
あんたの口からそうやってちゃんと聞くの、
どれだけ振りかな。
私が避けていたのもあるけど。
[リビングから繋がるキッチンに差し掛かったところで振り返り]
なら、後悔しないようにやんなさい?
胸張って。
[和らいだ翠の眼が、弟を映した]
[通信機が拾う音から状況を把握]
ありゃ、向こうから乗り込んできたって感じ?
……何だったら加勢しに行こうか
[返される言葉はなんとなく想像が付くが、一応提案]
─教会─
[距離は手を伸ばして届くか届かないか]
[立ち上がっても遥かに低い友人を見下ろし]
[承諾に感謝するように口端を持ち上げた]
まどろっこしいのは嫌いなんでな。
単刀直入に聞く。
──お前だろう、失踪事件の犯人は。
[訝しげな顔をするのもお構いなしに]
[探りを入れることなく言い放った]
血筋……なんじゃない?
[笑う気配に、返す言葉は軽口めいたもの]
あは……避けてたのは、お互い様、だけど。
[振り返った翠。
真っ直ぐ見れなくなったのは、いつからだっけ、とふと考えつつ。
決意を秘めた蒼に、姉を映して]
ん。
もう、後悔、積み重ねないって。決めたから。
[返される微笑と提案にんー、と考えていたが]
……そうですね、じゃあお願いしようかな
といっても、ハンスさんも知ってる人物なんですが
……アーベルくん、何処にいるか知りませんか?
[にっこりと満面の笑みを浮かべ、消息を問う]
良い返事ね?
[腰に片手を当てる]
さっきも言ったけど、ちゃんと食べてからね。
お腹がすいて一歩及ばない、なんて馬鹿馬鹿しいにも程があるでしょ。
[それで話は終わりとばかり、片付けを再開する。
が、ふと何かに気づいたように再度視線を向けて]
終わったら色々と洗いざらい聞くから。
[宣告した。]
…。
[単刀直入過ぎる言葉を受け、小さく見開いた眼の中に、僅かに動揺が混じる。
けれど次には目を伏せ、息を吐いた]
…なんだい、それは。
こんな時にそういう冗談は、流石に笑えないよ。
それは、わかってるってば。
[食べてから、という言葉に、素直に食事を始め。
直後の宣告に、ぴしり、と音入りで固まった]
……洗いざらい、って。
[どこからどこまでをさすのか、とか。
ちょっとだけ気になりつつも。
その時までは、考えない事にした。
怖いから]
―大通り―
アーベル?
俺は今日はまだ会っていませんね。
家にいるか練習場……には居られないかな。
普段から閉じこもっていられない方だ。
[言葉の後半は苦笑混じりとなった]
[近くの顔見知りに聞くがまだ見かけていないとの返事]
彼に何か用事でもあるんですか。
[特に深く考えてではなく問いかけた]
─教会─
[隻眸は友人の動きを見つめ続ける]
[動きの全てを見落とさぬために]
[故に瞳に宿った動揺も捉えていた]
こんな時だからこそ。
この俺が冗談を言うと思うか?
…それに俺は『見た』んだ。
お前が人を消す様を。
[正確には記憶を『視た』のではあるが]
[結果的に嘘はついていない]
…何で、お前がんなことしてんだ。
金のためか、それとも何か脅されてるのか。
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