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─宿屋外─
[ぎこちない動きに僅か怪訝そうにするが、現場のことを考えれば当たり前かとも思い直す]
さて、仲間を失って尚こんなものが書けるっつー自信の現れなのかもな。
[声は低く、文字を見つめる瞳は険しい。誰が、と聞かれると視線をヘルムートへと向けて]
……ゲルダだ。
ヴィリーが、見つけた。
[押し殺したような声で紡いだ]
─回想
[椅子に座らされたまま茹で上がっていたが、突如激しい物音と共にアーベルがライヒアルトに組かかかるのが見え。完全に止めるタイミングを見失いただただ見る事しかできず。やがて、動きが止まり。そして流れ出る赤]
やだ…待ってよ。ねえ。どして?
もしかして…アーベルが狼なの?
[思い出されるのはユリアンが人間なのが濃厚という事実。しかし、その後耳に入るのは]
先生さんが…狼なの?
[そこに見える表情は生きている時のそれと変わりがなく。だからこそ、辺りに溢れる赤色と鉄と生臭さが混じった臭いに吐き気がこみ上げて。口を押さえて自分の部屋へとかけこんだ。誰かに大丈夫か?と声をかけられたかもしれないが「大丈夫だから!」と吐き出しそうになるのを堪えてそれだけ告げた]
─回想─
……伯母さん……みたい、に?
[問いの答え。一つ、瞬いた。
語られる言葉を聞いて、軽く目を伏せる]
っとに、もう。
ウチは、ウチだよ。それ以外の誰でもない。
それに……夢にすがりつくほど、弱くもないつもり。
[やや間を置いて、紡いだのは、こんな言葉]
……あんまり嬉しくない経緯だけど、心配されてた、ってこと……か、な。
ホントに、ウチの周りは過保護しかいないんだから。
[冗談めかした口調で言う、けれど。
声は少し、震えていたかも知れない。
震えの元となる感情は、正方向のものだけれど]
……うん、ホントに、ばか、だよ。
でも……。
[言葉が途切れる。少しの沈黙を経て]
最後まで、諦めない、なら。
ウチも、頑張る。
……信じてる、から。
[紡いだ言葉は小さいけれど、確たる意思の響きを帯びていた]
……休め、って言われても。
だあーめ、見張ってる、って言ったんだから!
[休め、という言葉にはこんな反発をして。
それでも、常よりも落ちた集中力は意識を長く保たせず。
寝たふりを見抜けぬままに、意識を手放し、そして]
─宿屋・翌朝─
……ん。
[目覚めを呼び込んだのは、囁くよな『声』。
笑うような、哂うよな]
……っ……また?
今度は、誰?
[零れ落ちるのは、泣きそうな呟き。
すぐ近く、では、ない。けれど。
言いようもなく、嫌な予感がしていた]
―宿屋外・路地―
おじさまだったら、そう思うのね。
それなら、狼は自信家ってことなのかしら?
[顎に手を当て、考え込む姿勢だけ見れば]
[普段の女らしさからは、酷く遠い]
ゲルダちゃんを。ヴィリーさんが。
[小声で反芻し、眼を瞑る]
二人の様子、聞いてみても良いかしら?
第一発見者だからって、必ずしも疑うのは良く無いと解るけれど……、占いだけに頼らずに狼を探すには必要でしょう?
おじさまと、クーちゃんは違う。
リアちゃんは、狼じゃないって、言われてた。
ベルちゃんは、狼のアル先輩を刺した。
[ぽんぽんと、これまでの状況を口にする]
あたくしは、あたくしの可能性を考えない。
[そう前提して]
ヴィリーさんか、カヤちゃんか、神父さま。
ベルちゃんの可能性も、あるけれど…。
[凡そ其の三人の中から、考えているとは言外に]
─宿屋外─
ハッタリかも知れねぇがな。
あっちは自分らが何人居るのかが分かってるが、俺らにはそれすら分かってねぇ。
残りが一匹なのかそれ以上なのか……そこらを分からせねぇものなのかも知れん。
どの道、憶測の域から出ねぇ話だがよ。
[ヘルムートの口調はそのままでありながら仕草はドレスを着て居た時からかけ離れて見え。それに違和を覚えるのは仕方の無いことなのだろうか。続いて訊ねられると、少しだけ沈黙してから「…そうだな」と返し、口を開く]
ヴィリーは、人狼を許さねぇってよ。
ダーヴィッドを連行した自衛団も、ライヒアルトを手に掛けたアーベルも許せないが、言い分は解る、と。
だがゲルダを殺した人狼は……。
[そこまで言って、一度言葉を途切れさせた。ヴィリーの怒りは言葉では表し切れないと言うように]
……ゲルダの状態は詳しくは分からねぇ。
ただ、顔は綺麗なもんだった。
身体は上着で包まれてたが……この状態なら、おそらく酷い傷跡が残ってるんじゃねぇかと思う。
[言葉を途切れさせた後に一息つけてから、ゲルダのこともヘルムートに伝えた]
―回想―
普通に生活ができなくなる程じゃない。
けど…親父のことが年々忘れられなくなっていて。時々酷く取り乱すようになっちまった。
…本人が島に来なくなったのも、そのせいなんだ。
[言えずに隠していた事実を告げる]
ごめんな。
心配はしてたよ、いつでもずっと。
…大切だったからな。
[クロエの頬に手を伸ばす。横になった位置からは、頭より近い]
ありがとう。
…はいはい、分かった分かった。
少し休むよ。
[口を噤み瞼を閉じて、クロエの呼吸音を確かめていた。
そして、朝を迎えて]
おめぇからすればその三人だろうな。
俺からすりゃおめぇも入っちまうが。
[疑っていると言葉に含める。実際はヴィリーは除外され、確かな身の証明が為されていない者達が対象となるのだが]
おめぇが一番に疑ってるのは、誰だ?
[そう言う奴が居るのかと、ヘルムートに訊ねた]
[弔いを終えたという声。
次いだ問いには了承して、体を起こす]
[今宵の獲物か、とは問わずとも。
他に気づかれぬようゲルダに声をかけ、
占いと称して自室へと誘い込んだ]
人が自らが傷付く以上に拒む事…――
[答えを待たない問いに目の前の娘を見る]
……なるほどね。
[その顔に浮かんだ笑みは、
不安げなゲルダにどう映ったであろうか]
[そう待たずして現れたセザーリオに従い、
窓から複数の影が闇に舞う。
唇を染めたあかには、不思議そうに首を傾げたが。
問うよりも先に、
その顔に傷一つなく永遠のものとなった娘が出来上がる]
[壁に文字を躍らせる姿に口許を弛めたのは
セザーリオが愉しいのであろう、と考えていたからで。
その真意を確かめようとはしなかったが]
―宿屋―
起きた……起こされたのか?
[タロットケース片手に、机の近くからクロエに声をかけた。
泣きそうな呟きに、問いを変える]
─宿屋─
[問いかけに、振り返る。
黒の瞳に浮かぶのは、不安の翳り]
うん……また、きこえる……。
[死者が出た、という、端的な事実。
未だ終わらぬ事の示唆]
……確かめ、行かない、と。
[と、ここまで言って。
それから、あ、と短く声を上げる]
起きて、大丈夫、なの?
―宿屋外・路地―
[フーゴーの推測には、口の中でなるほどと呟く]
――……人狼を、許さない、か。
そう、よね。
ヴィリーさんを信じるのなら。
[ヴィリーとゲルダ、其々の様相に頷きを返し]
ええ、あたくしが入るのは、当然だと思っているわ。
[僅かなりの微苦笑にはソツが無い]
あたくしが、選ぶのなら…。
―宿屋―
…そうか。まだ終わってなかったか。
[ケースを腰のポーチへと仕舞う。
クロエの傍まで歩くと、しっかりと肩に手を置いて]
分かった、俺も行く。
ああ。万全とは言えないけど、大丈夫だ。
[まだ怪しいところもあったが、そう頷いた]
狼に味方する人間が居るって話、有るでしょう?
その人間に庇われたようにも見えたから。
[単純な見方をするならだけれど、と、また苦笑を]
ただ、こういう挑発をしそうな子には見えないから…。
[また少し、考え込む姿勢を見せて]
そう思うと、神父さまが似合いそうでもあるのよね。
[もう一つの名前をも口に出した]
─宿屋外─
……ほぅ。
ユリアンが人間と見た奴を疑わしいと取るか。
てこたぁ、ユリアンは偽物と見てるってことか?
[自然に向けらた微苦笑を見やりながら、逡巡の後に紡がれた名前に瞳を細める]
[酒場に足を踏み入れれば、既に何人か顔があって。
かといって挨拶をするわけでもなく、いつも通り水を求めた。]
ああ、飲むほうじゃなくて、まずそっち。
[そう言ってグラスワインで水を受け取り。
3度目のそれをこなす]
[指をならす動作なく彩られたのは青。
真珠の色が白だったのは、誰かに見て取れたのだろうか]
[無言のままそれを確かめれば、真珠を掬って木箱へと。
ため息の後、礼を述べてグラスをカウンターの奥へと差し出した]
なるほど、おめぇはそう考えたのか。
確かに無ぇとは限らねぇ。
[内容は一理あるものではある。けれど他と同じように鵜呑みにはしない。ヘルムートが疑わしいと思っているのがカヤ、それがフーゴーにとっての『情報』]
このメッセージを残しそうなのは、見習いってか。
[話を聞いて腕を組み、ふむ、と唸る]
─宿屋─
そう、みたい。
[呟きと共に、零れたのは、ため息。
肩に手を置かれると、しばし、探るような視線を向け]
……無茶なし。だよ?
[やや、低い声で言い、部屋を出る。
立て続けの接触で多少慣れたのか、他に理由があるのか。『声』から受ける威圧感は、大分和らいでいた]
[『声』に示されるまま、歩んだ先。
たどり着いた先の部屋で見たのは、動かぬ幼馴染と、ヴィリーと。
閃いたしろいろに、感じたのは眩暈]
……なん、で。
約束。
……みんなで、お茶、しよっ、て。
[呆然とした呟きが零れる。
状況の説明は、されたか、否か。
されたとしても、上手く頭には入らずに。
崩れ落ちるのを押し止めるのが、精一杯だった]
―宿屋前―
……こりゃぁ。
[遺された血とメッセージ。
来るなりそれらを目にした男は、暫し立ち尽くし]
……ふん。
やってくれんじゃねぇの。
まだ、居やがるんだな。
[前にいる2人に言うでもなく。
2人の話は聞いたか否か。
口を歪め呟くと、横を擦り抜け宿の中へと入った]
―宿屋外・路地―
せめて、ベルちゃんを本物と見てると言ってくれないかしら?
どっちでも変わらないかもしれないけれど…。
そういう考え方をしたいと思わない?
[実際にそうなのかは、語られないが]
[フーゴーが言葉を吟味する間は沈黙]
[けれど、吐き捨てる様な声が背後から聞こえ振り向く]
聞かれちゃったかしら……?
[タイミングが悪いとは思いつつ、表情に出す事は無い]
[こういう言い回しをしたのなら、伝えるべきだろうと]
[連絡事項の様に淡い口調]
そうだ、ヒースクリフ。
僕は宿屋の彼に、向こうの占い師の方を信じていると。
そんな風に伝えたよ。
[ルーミィとして出会うなら、対立することもあるだろうと]
[其れをどう取るかは彼次第なのだが]
―宿屋ー
[無茶なし、には苦笑しながら頷いて。
向かった先で物言わぬ身体となっていたのは]
……ゲルダ。
[低くその名を呼ぶ。
何度も口を開きかけ、その度に何も言えないまま沈黙した。
クロエを支えながら下を向く]
…こんな。
[寄ると触ると反発していた相手。
けれど一番年が近くて。本当は叔母や従妹以外で最初に話してくれた相手で。悪感情ばかりでもなくて。
喉に何かがつまったように苦しかった]
─宿屋外─
[ヘルムートとの会話の最中、増えた気配は察せど声をかける前に言葉を残し立ち去って行ってしまう]
アーベルを本物と見るってことはユリアンは偽と見てると言うことだろう。
アーベルの方を本物と見た理由は、昨日のことかね。
[真か偽を考えるならどちらも同じと、言い方は変えない。振り向く様子には特に反応はせず]
俺らも戻るか。
ここで二人だけで問答してても始まらん。
[そう言って、宿屋に戻ろうと歩を進めた]
[目の前の青に意識をとられていると、淡々とした声]
…いいんじゃねえの?
お互い好きにやりゃあいい。
[俺には関係ないと言わんばかりの様子で返す]
[ちょうどウェンデルが入ってくる様子を見れば、片手を挙げて応える]
…まだいるんだろ、人狼。
[部屋にいても話し声が窓から聞こえてたと言って、ちらと見やった]
人狼はあんた、だったりするかな。
[カウンターへ腰掛ける相手を牽制するように見た]
―宿屋外・路地―
うつくしいことばだけを、つかわせてはくれないのね。
[せめる口ぶりではあるけれど。
おんならしいその柔いひびきは、あきらめもはらんでいた]
おなじ狼をころして、というよりは……。
狼ならば、じぶんで銀のなにかをもつのをこばむかしら、って。
あたくしが狼のものがたりを書くなら、きっとそういうふうに書くだろうなとおもうのよ。
[宿屋へのうながしには、ひとつうなずき、その背を追った]
─宿屋─
……ヴィリ、兄、さん。
ゲルダ、お願い、ね。
[『声』が聞こえなくなったところで、小さく呟く。
本当は、泣きたいくらいだったけれど。
部屋にいるひとは、もっと辛いだろう、と思ったから、押さえた]
……アーベル。
いか、ないと。
[それから、黙り込むアーベルに、ほんの少し、泣きそうな表情で言う。
このままここにいるのは、色々な意味で、苦しかった]
俺が加担するのは。
あんたが必要かもしれない、と考えるから。
[それは利用しあうだけの関係に等しくても。
そう共犯者へと告げ]
―宿屋―
[胸元で小さく手が動いた]
…ああ。そうだな。
ここは、頼む。
[ヴィリーに掛けられる言葉も出てこなかった。
だからクロエの言葉に重ねるように言って]
酒場行こう。
まだ終わってないのなら、終わらせなきゃいけない。
[ギュッとクロエの肩を抱く。その手は震えてはいなかった。
静かに踵を返してゲルダとヴィリーに背を向けた]
[宿屋に入る前、焦げ茶の瞳が向いたのは別荘の方角]
[昨日の鳥籠は――その中の鳥も――別荘の使用人へと預けてきた]
[名前を付けることの無い様に言いつけて]
[怪我が治ったのなら自然に還す様とも、言いつけて]
[眼差しを戻したのなら、声無きコエが伝わり来て]
――……。
[哂う響きは、無言の肯定を示す]
使いたければ使えば良い。
だがこの血腥い状況でそこらに気を回すほど繊細でも拘りを持ってるわけじゃねぇんでな。
判りやすい言葉で区切った方が考えやすい。
[責めるような口振りにも気にした様子は無い。振り抜かぬまま歩を進めて]
なるほどな、それは一理ある。
それじゃあ、銀を持てぬ者が人狼だっつー話にもなっちまうけどよ。
[そう言いながら、ヴィリーに短剣を差し出したことを思い出す。躊躇しつつも短剣を受け取ったヴィリー。あれはどちらに判断出来るか。
宿屋の出入口はすぐ傍。話が終わらぬうちに扉を開き、中へと入った]
─宿屋外→酒場─
―宿屋―
はん。
……俺があんな幼稚な落書きするように見えたか。
そいつぁ心外だね。
[牽制の言葉に目で表を示し、鼻で笑う。
相手は件のメッセージを見ていないかも知れないが]
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