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[静かな言葉に、自衛団員がどんな反応をするかは確かめもせず。
ユーディットの亡骸を預けてそこを離れた。
次に足を向けたのは、共同墓地。
両親の墓の前でしばし祈りを捧げてから、自宅へ。
帰って間もなく訪ねてきたハインリヒの求めに応じて書斎へ案内した後は、自室に戻った。
目に入るのは、完成間際の曲。
しばしの逡巡の後、鍵盤の蓋を開いて、ゆっくりと、ゆっくりと旋律を辿った]
Eine leere Entfernung.
Ich baue einen Regenbogen.
[零れたのは小さな呟き。そのまましばし、現実を忘れるかのように音を紡ぐ事に専念した]
[そんなこんなで、眠りに就いたのは明け方近く。
『力』を用いた疲れもあってか眠りは深く──それ故にか、気づくのは、遅れた]
……っ!?
[窓が破られる音。叫び声。書斎から聞こえる、尋常ならざる気配。それらを感じた感覚が目覚める]
まさか……ち、いい根性してやがるっ!
[苛立たしげにはき捨て、書斎へと走る。
扉を開け、目に入ったのは──紅]
……っ!
ハインリヒさんっ!
[窓の向こうに、駆けて行く気配は感じていたが、今は追うよりもする事がある、と倒れた傍らに屈みこむ。
自身の持つ知識だけでどれだけの事ができるかはわからなかった。
一応、護り手の勤めの一環として、簡単な知識は身に着けてはいたけれど]
……ちっ……。
上等だよ……!
[苛立ちを込めて吐き捨てつつ、ともあれ今は応急処置に専念する。
救えるかはわからない、けれど。*何もせずにはいたくなくて*]
エウリノ…やっぱりおなか、すいてる?
[守護者の屋敷へ走り出した主を、抱えあげられたまま心配そうに見る。]
無理しないで、辛かったら私を…。私はその為に人なんだから。
そうじゃないと、あの人に…。
[一族が人狼に協力しながら、人のままで居る意味。以前ロストにも話したそれを、エウリノへも向け告げた。
人狼の強さは知っている。でも守護者の力も昨日その片鱗を見た。
このままだと負けてしまうかもしれない。それはつまり―死。]
お願いだから、死なないで。
ロスト様みたいに逝かないで…。
[震える声で胸に縋った。]
─回想─
[目の前の光景に圧倒されて。足がすくんだまま何もできなかった。
異形の姿を晒し、逃げていくユリアン。いつの間にか消えたイレーネ。
そして、朱く染まったユーディットと、抱きかかえるエーリッヒの姿。
家にくるか?というエーリッヒの問いには、目を伏せて]
うん。あとでお邪魔するよ。兄ちゃんは先に帰ってて。
[そう伝え、宿屋に残った]
[ちょこんと椅子に座り、ぼおうっと店内の様子を眺めている。視線の片隅には、テーブルでノートを眺めているブリジットの姿が映っている]
…ユリアン兄ちゃんも…狼だったんだ…先生だけじゃなく…
[小さく呟いて、うつむいた。ぼおっと、以前工房で何度か会ったときの事を思い出して。
その幻影を振り払うように、首を横に振る]
でも…ユーディ姉ちゃん…殺したのも…兄ちゃん…
[少し首を起こせば、床に残る血の痕。目をそむければ、カウンターが目に入る。
よく食事を食べに来ていたこの宿屋にも、誰の姿もない]
女将さんも…ノーラ姉ちゃんも…アーベル兄ちゃんも…狼に殺されちゃった…
[再び視線を動かす。目に入ったのは、2階へとあがる階段。
さっきまで2階の部屋で、イレーネと話していた会話を思い出す]
『終わらせないと』
[イレーネと共に語った言葉。
終わらせるということは、狼を──ユリアンを殺すこと。
その考えに思い至れば、目を伏せるが]
でも、終わらせないと。
[小さく呟いて、顔を上げる]
[襲撃をかけた屋敷から工房へ戻る途中。
ゲイトから訊ねられ、息を飲む]
……だ、めだ。
それ、だけは──!
[喉を襲う渇き。
ゲイトの言葉は甘い誘惑となり意識へ滑り込む。
その誘惑に対し、残る理性が止めろと警告する。
喰らってしまえば後悔するのは自分なのだから、と──]
だい、じょうぶだ。
この渇きは、あやつを喰らうことで、癒す…!
[縋るゲイトを抱く腕に力を込める。
中途半端にハインリヒを手にかけたため、その衝動は燻ったままとなり。
ゲイトの手から漂う誘うような香りに、理性が負けそうになるのを堪え。
歯を食いしばってそれに耐えた]
[自分だけは絶対喰らわないと、抗う主が嬉しくもあり、悲しくもあった。
傍に居る、居場所になると、約束はしたがそれだけでは足りず。中途半端に支えになりきれていない事が辛いと思った。
手から流れる血の匂いに誘われるエウリノに、腕を差し出すべきか迷う。無理にでも食べさせろと血が叫ぶ。
が、イレーネがそれを堪えた。
手を服の端で拭い、血を押さえる。
代わりに縋る手に力を込めた。]
/*
お帰り。投票デフォエリさんのままなんだけどいいかなぁとか思ってしまう(ぁ
…うんちゃんと仕事します(投票は PL視点 で)
[騒動が一段落した後、自室に戻り。
テーブルの上の譜面を手に取った。
幾度も書き直されたその束の、一番上には綺麗に清書された一組。
鍵盤の蓋を開き、譜面台にそれを置いて。
音を確かめるように、旋律を紡ぐ。
無限の蒼穹、そこに架かる虹の橋。
それに託す先への想い。
そんなイメージを乗せた、曲]
ん。
これが出来ただけでも、満足するべき……か。
[一通り、弾き終えて。零れるのは小さな呟き。
鍵盤の蓋を元通り閉め。銀の短剣を手に、家を出る。
左の袖口からは、既に包帯は覗いてはいなかった]
/*
流石仲いいな私らwwwwwwwww
んでエウリノは頑張ってー。
一応ついては行くけどどしよっかな。ティルあたりが話し相手になってくれるだろうか(ぇ
─村外れの丘─
[人気のない村を通り抜け、丘へとたどり着く。
何故、ここにやって来たのかは、自分でも定かではないけれど。
ここならば、他者に被害も及ばないのではないか、と。
そんな考えもあったやも知れず]
……やれ、やれ。
なんにもない、はずの俺が。
なんで周りを気遣うんだか……。
[零れ落ちたのは、自嘲の呟き]
[誘惑に耐え、工房へと戻り。
ゲイトを降ろすと風呂場へと向かい水を被る。
今はあの忌まわしき邪魔者を喰らうことだけを考え。
冷静の中に狂気を宿した]
……は……。
[短く息を吐いてから、傷の残る右眼に手をあて。
感じる傷跡に憎悪を燃やす]
…全力を以って、コロシテヤル──!
[残された左眼が赤く染まる。
そして再び水を被った。
己から漂う死の匂いを消そうとするように]
[工房で降ろされ、奥へ一人入るユリアンを見送った。
手を差し出そうと、己を差し出そうとしたが、それは主から拒絶されていた。それだけは、駄目だと。
傍に居てくれる事が嬉しかった。
優しくしてくれるのが嬉しかった。
大好きな人がずっと待ち望んでいた主なのが嬉しかった。
だけれども。
それは幸運すぎたのかもしれない。
近すぎる距離は、本来の立場を危うくしてしまい。
一族の血に無意識に逆らってしまっている事に、気づいてはいたが止める事が出来なかった。]
[工房の風呂場で、喰らい損ね乾き切った紅を洗い流す。
甘いその雫も、乾いてしまえば食指が動かず。
半端に終わった襲撃に衝動が燻ったままとなる]
…喰らってやる…。
俺の邪魔をする、あの忌まわしき守護者め。
貴様の血肉で、この渇きを潤してやる…!
[ぎり、と握られる拳。
その身体は度重なる転変と喰らうことの出来ぬ消耗により、人型でありながら鋭き爪を宿していた。
薬を飲んだとは言え、身体には銀の毒も未だ残っている。
時間が、無い]
[残された鳶色の左眼が紅く染まる。
それは力の顕現を意味し、身体の各機能は人狼のそれとなる。
研ぎ澄まされた聴覚と嗅覚は、忌むべき相手の気配を捉え。
工房を出ると真っ直ぐとその場所へと向かった]
[そこは、己も好んで通っていた、あの村はずれの丘──]
[入り口の方で下ろされ、奥に行くユリアンをそこで待った。
主が弱ってきているのは分かっていた。
だがこの身を差し出すことは出来なかった。
主がそれを、拒絶していたからだ。
一族の血が、叫ぶ。主のための生贄となれと。
それは自分の悲願でもあった。
だけれども。
もう、出来なかった。
主が真っ直ぐ向かう先に、自分も少し離れて付き従う。
願わくば、せめてあの約束だけは守ろうと。それだけを胸に誓って。
主の気配をたどり、着いた先は見慣れた丘。]
[工房を出る前、ゲイトの傍へと寄り]
…案ずるな。
俺は、死なん。
[それだけを紡ぎ、唇を重ねた。
惜しむように唇を離すと、そのまま工房の扉へと向かう。
告げた言葉は、おそらくは最期の、嘘]
[丘の上の木に寄りかかり、物思いに耽る。
幼い頃、幼馴染たちと遊んだ場所。
しかし、その幼馴染も一人はおらず、一人とは距離を隔て。
今は、一人、そこに佇んでいた。
一人でいるという事、それ自体は自ら望んだ結果ではあるのだけれど]
……ん。
[不意に、左腕に走る、疼き。
伏せられていた緑が開き、やって来た者へと向けられる]
……や、どーも。
[投げた言葉、それ自体は常と変わらぬ物]
─エーリッヒ宅・客間─
おっちゃん…
[ユリアンの襲撃を受け重傷のハインリヒの前で、しばらく呆然としていた。エーリッヒの治療の甲斐もあったか、息はしている。生きている。
ほっと息をついて、首をあげれば、窓の外が見えた。そこには見慣れた人影が]
エーリッヒ兄ちゃん…?
……っ!
[何かに気がついたように、バネのように飛び上がった。そのままこっそりついていく。
程なく歩けば、丘にたどり着いた]
……随分と、暢気に居たものだな。
[返す口調は人狼の時のそれだが、浮かぶ表情はいつもの無表情で。
今までとの違いと言えば、欠けてしまった右眼と、残された左眼に宿る、紅き色]
慌てて騒ぎ立てても、疲れるだけだろ。
……己が成すべき事、それが見えるんだから。
[さらり、と返す。
緑の瞳は静かなまま、紅を見据えて]
にしても、まあ。
村から逃げた先で人狼に出くわして。
その後戻ってきたらまた出くわして。
……とことん、呪われてるもんだ、家の血筋ってヤツは。
…うん。分かってる。
[重ねた唇から感じる主の生命は、始めて会った頃よりはいくらか弱く感じられた。
それでも、今は信じた。
嘘も真と、信じぬいた。]
ずっと、一緒だから。
約束…私が貴方の居場所だから。
…どうか、お気をつけて。
Mein domine.(―私のご主人様)
[丘の上には守護者の姿があった。
真っ直ぐそちらに向かう、主からは少し離れた。
邪魔になるのは分かっていたから。
ある程度離れた所に静かに立ち二人を見ていた。
微か顔色は青かったが、表情は無かった。]
成すべき事、か。
[それだけ繰り返し、一度隻眼を閉じる]
へぇ、俺以外の人狼にも遭遇してたのか。
道理で騒ぎが起きても慌てる様子が無いと思った。
…俺が成すべき事とお前が成すべき事。
その内容は正反対のものだが、どちらも譲れない。
そうだろ?
我らに仇成す忌まわしき守護者!
[閉じた瞼が叫びと共に見開かれる。
そこにあったのは先程よりも紅い光を宿した瞳。
ざわりと、ユリアンの髪が逆立つかのように膨らんだ]
[丘にたどり着けば、エーリッヒと、異形と化したユリアンの姿。
下手に見つかっては、逆にエーリッヒの足手まといになるかもしれない。そう考えて、慎重に姿を隠して様子を見守る。
丘全体を見渡せば、もう一人、人の姿が見える]
…イレーネ姉ちゃん…
[ゆっくりと、イレーネの方に向かい移動する]
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