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─ 展望室 ─
……そう、だ。
みんなに、つたえ、なくては。
[瞳伏せ空に浮かぶ紅い月映さぬことで徐々に抑えられたけれど、震えはまだ微か残っていた。
それでも、一目では気付かれぬ程度には収まったのに気付けばすぐさま展望室を後にする。
最もそれは、無意識の内に空から注ぐ紅い光から逃れたかったからかもしれないけれど]
─ →広間 ─
─ 広間 ─
…あの。
オリガさん、達は?
[広間に入ると、そこに残っていたのはキリルとリディヤだけ。
他の皆を探すように周囲に視線を巡らせる自分は、彼女達にどう映ったろう。
問う声にも動揺が滲むのは抑えきれず、オリガ達が部屋に戻ったという事を推測できぬ程冷静さも欠いていて]
…三階に、展望室があって。
そこから外を、見たのですが─…
この屋敷の上だけ、空が晴れていて。
紅い月が、出ているんです。
[そう告げた声は、震えを抑えながら紡いだものと伝わっただろうか。
主人が告げた『ゲーム』の合図と重なる光景が、脳裏にしっかりと焼き込まれて]
─ 広間 ─
なので、皆さんに伝えようと思って、来たのですが。
此処にいない方は、もう休まれています、よね。
[この場に居ない者にも伝えるべき、とは思うものの。
休んでいる邪魔をするのも、と良識が邪魔をした]
…私も、休んできます。
他の方々には、明日の朝すぐにお伝えしますね。
[事を思えば、今すぐに伝えるべきだと解るはずなのに。
その理解が遠くなる程度には、冷静さを欠いていて。
リディヤ達に軽く頭を下げると、自分は宛がわれた客室へと戻っていった。
この時はまだ、朝が来ないなんて思いもしていなかったから**]
───…はい。
[寝台に入っても、眠りに落ちることはなかった。
唯一緩めていた襟元を正し、聞こえたコエ>>*11に返すと身を起こし。
呼びかけてきた仲間が足を階下に向けようとするのに内心首を傾げながら付いていって]
それは?
[手折られた一輪の紅を指して問いかけながら、脳裏に展望室から見た煌々とした紅が重なる。
それもすぐ青年の返答を聞くことで思考から散らせて]
…解りました。
「今」はあなたにお任せします。
[青年からの申出>>*12は、恐らく反論を受け入れられぬ響きが含んでいたけれど。
それを受け入れる事で心が甘えを覚え揺らぎ戻ってしまいそうに思えたから、今を強調するように返し。
訪れた書斎、自分達を迎え入れた主人と青年のやり取りには、口を挟むことなく]
[どーする、と問う声に返すのは、無言。
見開いたままだった瞳をメーフィエに向け、微か伏せた後ベルナルトに歩み寄って]
…こうします。
[青年の手の中にあるままのそれに口をつけ、噛みちぎり、飲み込む。
紅を引いたようになった唇を拭うことなく、青年に向いて]
例え、慣れているのだとしても。
あなた一人に背負わせるのは、性に合わないんですよ。
[軽く肩を竦め、苦笑を浮かべて告げるは変わらぬ自分の言葉*]
ふぁい……。
なにか、ごよう、で……?
[眠そうな、欠伸を噛み殺した声で僕はメイドの来訪に応じる。
問いに重なるように告げられた言葉は寝起きで理解するには時間が必要で。
頭の中でそれを咀嚼して反応を示すまでにかなりの時間が掛かった]
………………はい?
『鬼』? 『取り決め』? ……『ゲーム』?
ちょ、ちょっと待ってください。
ご主人さんが喰らわれたってどういうことですか。
しかも武器庫って…。
[問うてもメイドからの返答は無く、必要なことは告げたと言わんばかりに一礼して目の前から立ち去って行く。
廊下に出て他の部屋へと向かうのをぽかんとした表情で見詰めた後、僕はぼさぼさになった髪を手で更に掻き混ぜた]
わっけ、わかんね……。
[理解が追いつかないままに僕は皺になった服を払い、三階を目指し階段へと向かう。
上の方で足音がした気がしたからだ。
他にも誰か出てきただろうか。
鉢合わせるようなら挨拶だけはして、三階へと昇って行った]
─ →三階/書斎 ─
[三階へと上がった途端、不快感を呼び起こす匂いが鼻を突いた。
一度瞠目し、直ぐに眉を寄せて匂いの強い方へと歩いて行く。
左足はまた鈍い痛みを湛えていたけれど、気にしている余裕はなかった。
匂いの元、書斎らしき部屋の扉は開かれたままで、中に入らずともその様子を目にすることが出来る]
─────!!
[片目に映った光景に僕は絶句した。
広がる紅の中に赤が頽れて、その傍らには別の紅が一輪、転がっている。
あかに彩られたその光景は、凝視して気持ち良いものではない。
僕は匂いに耐えかねて、思わず左手で口と鼻を覆った]
なん っ だよ、 これ…
どう言うことなんだよ。
これが、『ゲーム』?
冗談じゃない…!
[命がけの『ゲーム』。
その幕が開けたと、刻み込まれたナニカが言う。
『ゲーム』のルールは否が応でも理解していたけれど、感情はそれについていかない]
しかも 何で、
なんで、 笑ってるんだよ…!!
[喰らわれたのに、生きていた頃と同じ美しい笑みを湛えるアナスタシア。
変わらぬ妖艶さが逆に背筋を寒くさせ、僕は扉近くから一歩、拒絶するように後ろへと下がった]
[「今」は、と強調する返し>>*17に浮かべたのは、笑み。
けれど、それに対して何かいう事はなく。
紅舞わせ、紅散らした後の問い、それに対するアレクセイの答え>>*19に一つ、息を吐いて]
……別に、背負い込んでるわけじゃあないんだけどねぇ。
ほら、言うでしょ、適材適所、って。
[苦笑に対して返す笑みは、青年本来の軽いもの。
アレクセイがメーフィエに呼びかけるのにあわせるように、青を彼女へと向ける]
……いちお、俺も無理してるわけじゃあないのよ?
やらにゃ生きられない、そう思うから、突き進んでるだけ。
ずっと、そうやって生きてきたから、ねぇ。
[軽く告げる言葉は。
『ゲーム』の内に身を置きながらも、ただ、それに飲まれているのではない、との意思を滲ませるもの。*]
[独りきりになった部屋、男は今も仰向けのままベッドで横たわっている。
右手を外し、左目を細く開くも、何も見えはせず。
ただあの青だけが焼きついている。]
……うぇ……くそったれが……。
なんだってんだ……獲物、って……。
[ゲームの始まりを告げられた時と同じ、不可解な理解。
苛立たしさに男は、左手を握り締め、振り上げて、ベッドへと振り下ろす。
けどもその口元には僅かな笑みが浮かんでいる。
それは、普段の狩の際に獲物を見つけた時とまったく同じもので。
その矛盾に男は今は気付けないまま。]
─ 客室 ─
[眠りに落ちたのがいつかは、覚えていないが。
久しぶりの上質な寝台が齎したそれは深く、心地よくもあった。
それを破ったのは、扉を叩く無機質な音]
……んぁ……どちらさまー?
[寝ぼけた声を上げて身を起こす。
掛けていた毛布がはら、と落ち、何も身に着けていない上半身が晒される。
鍛えられている、と一目でわかるしなやかな身体には複数の傷痕が見受けられ、文字通りの玉に瑕、と言えそうな様相を織り成していた]
……? えーと。
[なんで着てないし、と自己突っ込みをして。
寝る前に、自分の服に着替えようかと思ったら、まだ乾いていなかったのでそのままで寝たんだった、と思い返して。
とりあえず、着慣れた方の青に身を包み、扉を開ける。
開いた先にあったのは、メイドの無機質な顔]
……あれ、何か御用ー?
[惚けた声で向けるのは、問い。返されたのは、淡々とした状況の説明。>>#1
青が氷の冷たさを帯び、ふ、と口の端が上がる]
……なんつーか。
ご主人さんが殺されたってわりに、キミら冷静よね。
ふつーは、もっと騒ぎ立てたりしない?
[淡々とした態度に毒気を抜かれつつ、こんな言葉を投げるものの、返されたのはそれが務めです、との言葉だけ]
んで、ご主人さんは? ……上、ね。
わかった……お知らせありがとねぇ。
[これ以上は話していても埒は開くまい、と割り切りをつけてこう言うと、メイドは一礼して立ち去る。
その姿が見えなくなると、は、と大きく息を吐いた]
─ 三階/書斎前 ─
っ…!
[一歩、後ろに下げたのは左足。
不自然に掛かった圧力は捻挫を抱えた左足に痛みを走らせ、足から力を抜いた。
かくん、と尻から落ちるように僕は座り込んでしまう]
ってぇ……。
[口許から手が離れ、身体を支えるように両手が床へと。
尻の傍に置いて倒れるのを防いでいると、後方から声>>64が掛かった]
…この状況で、大丈夫な方がおかしいだろっ…!
[敬語も忘れ、整理の付かない思考のまま声の主を片目で睨め上げる。
寝起きの髪は整えぬまま。
前髪も少しだけ、動揺により毛先が乱れていた。
左の頬骨辺りの肌が不自然に捩れているのは見られてしまったかどうか]
─ 三階/書斎前 ─
──…なんで…
なんで、そんなに冷静なんだよ……っ!
[理解が出来ない。
むしろ理解するのを忌避しているのかもしれない。
僕は見上げたベルナルト>>66の冷静さに不自然さと、恐ろしさを感じた]
こんなの見て、冷静でいろなんて、出来るわけ…!
[ベルナルトからも離れようと足を動かした時、左足に痛みが走って言葉が途中で途切れる。
表情を歪めて耐えるように顔を俯けると、前髪がぱさりと揺れた]
くそっ───!
[思うように動かない足に悪態をつく。
揺れた前髪を押さえて整えてから顔を上げると、捩れた肌はすっかり隠れた。
そんな仕草をしていたから、ベルナルトの眉が寄ったのは見ていない]
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