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玄関の外だよ。
出てすぐ右手、自衛団が見回る所からは完全に影になる場所。
[場所を尋ねられて先導したのは、甘い獣のコエ]
[リートの言葉を受け、辿り着いた玄関先では噎せ返る程の匂いが漂っていた。
オレはごくりと喉を鳴らす]
全然コエがかかんねぇからどうしたかと思ったぜ。
でも良い獲物落としてたんだ、チャラだよチャラ。
おっ、良いのか?
オレは遠慮しねぇぞ。
[譲られて、オレは獣の姿のまま、にぃと笑った。
鼓動を弱くする果実よりも、オレの興味は朱花にあった。
だから喰い千切られた肉には目もくれず、オレは倒れ伏すクレメンスの身体を乱暴にひっくり返し、うつ伏せにさせた。
鼻を近づけ、より薫り立つ箇所を特定する]
……ここか。
[爪で背の服を引き千切り、背に咲く朱の花を露わにし。
遠慮なく、刃を突き立てた。
あまり肉の少ない場所だったから、オレは背の朱花をこそぎ落とすように削って行く。
それもあまり綺麗では無く、削り残した肉に朱花の残滓が残るような、大雑把な削り方だった]
ん、ちょっと。ね。
[意味ありげな言葉は現実と直結しない。
あの後も子供達のように添い寝しただけに等しく。
けれど甘いコエだとまた違うようにも聞こえたか]
いいよ。これもらうし。
[心の臓を供物のように取り出して、くちゅ、と味わう。
朱花が散らされるのを、味わいながら愉しそうに眺めていた]
―玄関外―
[玄関を出て、右手に少し進んだ場所。
そこが自衛団の監視ポイントから死角になるというのは、狙ったわけでなくたまたまそうなっただけのことだった]
なんてあまい。
ぜんぜん、ちがうね。
[酔ったコエは一部空気も震わせ声となった。
白の上にも流れる緋色を舐めながら、黒狼はうっそりと笑う]
これが、極上の。
……ふぅっ。
[優しい腕も温もりも、この時は脳裏の端に追いやられて。
裡から湧き上がる衝動に身を委ねて、酔い痴れて]
ふーん。
おたのしみだったようですね。
[茶化した聲は嗤いを伴う。
しかし反応があろうがなかろうが、今のオレには関係なかった。
意識は朱花へと完全に移り、こそぎ落とした朱花の咲いた肉を貪り喰う]
っ、は。
んっ、く、ぅん。
……っはは、堪んねぇな。
極上って言われるのも、頷けるぜ。
[灯台守の爺さんと比べもんにならねぇ。
同じ筋張ったおっさんのはずなのに、不思議なもんだな。
上げる聲は艶のある中性的なもの。
悦とした空気に包まれながら、オレは残りの肉を食み、滴る雫を喉へと流し込んだ]
っはぁ、止めらんねぇ…。
でも程々にしておかねぇとな。
誰かに見られたら堪ったもんじゃねぇ。
[吐く息は熱く、身体も熱を帯びている。
ぺろりと下で口の周りを舐めると、オレはようやく倒れたクレメンスから離れた]
うん、そうだね。
もどろ。
[リエルが朱花の主から離れるのを見て、黒の獣も最後の一口を飲み込んだ。
酔いが醒め始めると動きが鈍くなるのは悪い癖か。
身を整えるのにはまた少しリエルの手を借りたかもしれない]
これで朱花は散っちゃったね。
まだ蒼花が残っているけど。
[自室に戻ってからぼんやりと囁いて。後は起きてはいるけどコエを発さなかったから、眠ったと思われたかも*しれない*]
―玄関外―
[そうなった後でナータの部屋に戻れはせず。
自室に戻り虚脱の表情で過ごした後、闇が黒から蒼に変わり始める頃。静かに階段を降りて玄関から外へと出て。
やがて朝陽に照らされだす無残な姿を、深緑は見下ろした]
グッ…。
[うつ伏せにされた背中の服は爪で引き千切られ露にされて。
肉の薄い場所をこそぎ落すように削られて。
削り残した肉に残る朱花は、もう甘く香らない。
漂う血臭は頭の心をぼやかせるけれど、衝動の域までは達しない]
[ぷるり身を振り、毛についた赤も飛ばして。
リートに手を貸して部屋へと戻ると、オレは早々にベッドに入った]
良いもんは直ぐ無くなるもんさ。
もう一つ、どこに咲いてんだろうなぁ。
[囁きに聲を返して、オレは余韻に浸りながらまどろみ始める。
リートのコエも聞こえなかったから、寝んたんだろうと思い。
オレはそのまま深い眠りへと*つくのだった*]
―玄関外―
クレム、に。
[兄とはもう呼べなかった。
抱き起こした首筋と胸に残る虚ろを作ったのは己だから。
自衛団長をそうしたのと同じように。
震えながら跪いて腕を伸ばす。
黒衣は緋色に染まってもあまり目立たない。
ただ物言わぬ骸を抱きしめて、誰かが来るまでその場に蹲り続けた。深緑は昏く沈んで。何か指示されれば、まるで被害者のようにも見える動きで従う*だろう*]
/*
[ひょっこりまだ居た]
飯食ってたから大丈夫(
好きでいたんだから気にするな!
表の描写お疲れ様。
*お休みー*
―一階・広間―
[エーファのことを抱きしめて、そのため自分の服も赤に濡れるだろうか。
先にと猫のことを心配する様子>>87に少し戸惑う様子を見せた後]
ああ、そう、だな。
このままじゃ、たしかに、かわいそうだ。
濡らしたタオル用意しようか。
[用意に向かうのは二人でだったか、自分ひとりだったか。
猫を拭いてやりながら、妹はエーリッヒの部屋のことを尋ねていて、答えはエルゼからもらえた。
告げられる言葉は自分にだけに聞こえるようにだったか、自分は困惑の表情を向けて、どうすればいいのかわからずにいた]
いない、ほうが、いい?いた、ほうが、いい…?
[かける言葉は遠慮がちに、普段エーファがするような様子に似ていたかもしれない**]
―前夜/自室―
名乗りでなきゃいけないと思っていたの。
おにいさまとラーイには伝えたから……
私が食べられてしまった時に二人に疑いが向くのが怖かった。
[広間でその力を求められていたからというのもあるけれど
心の何処かで正体を知ってしまったおとうとの心配もしていた。
朱花を抱くクレメンスについてはその心配もないのだと知れたが
それはライヒアルトにのみ疑いが向くのと同義で
だからこそ名乗り出ることを女は選んだ]
見逃さなくていい。ラーイの好きにしていいよ。
[誰かの存在を匂わせる言葉に少しだけ困ったような顔]
ラーイがひとりじゃないなら……
[私が居なくなってもその誰かが隣にいてくれるかな。
そんな事を思いながら意識は徐々に深淵へと沈んでゆく]
―朝/自室―
[疲れていたのか安心していたからかその夜はぐっすりと眠れた。
意識が途切れる前に優しい声とぬくもりを耳朶に感じた気がしたけれど
それが現であったか夢であったか女は知らず。
目が覚めるのはいつもと同じ時間――。
ぼんやりと見上げた天井、ややして隣を見るがおとうとの姿は無かった]
――…ん。
[其処に彼が居ないことを寂しく思う。
生きていることを嬉しく思うと同時に哀しくも感じた。
いつの間にか掛けられていた毛布をぎゅっと抱きしめる]
寂しいなんて言ったら笑われてしまうかしら。
[毛布に顔を埋めると髪に咲く銀の花が揺れた。
はたりと瞬いて銀の髪飾りへと手を宛がう。
其れを髪から外して無事であることを確認すると安堵の息を漏らした。
起き上がりゲルダに貰った其れを大事そうに両の手で包んで、一度鏡台にそれを置いて、身支度を整えようとした]
[ふと気になって長い袖を捲ると左の上腕には手の跡がある。
薄い痣は自衛団員に掴まれた時にできたもの]
痛いと思っていたらやっぱり痣になっていたのね。
ゼルギウスさんに湿布貰っておけば良かった。
[仮令、死を覚悟していても
仮令、他の場所に大きな傷痕があろうとも
気になるものは気になるのだから仕方ない]
おにいさまやラーイが知ったら怒るかしら。
[ヴィリーが詰所での出来事を漏らした時の二人の反応を思い出し
くすりと小さな笑みを零した]
見られない場所で良かったわ。
あまり余計な心配かけたくないし……。
[袖を元通りにしてから髪を梳かししてから、神に祈りを捧げる]
[祈りの時間は静かに過ぎ去り
前にしたのと同じように宿る力を行使する。
思い浮かべた相手は隻眼の男。
視える結果は予想通り――。
探し当てた時の愉悦は無かった]
ヴィリーさんは人狼じゃない……。
じゃあ、おにいさまの言っていたあれは……。
[彼が事件に巻き込まれたことがあると義兄は言っていた。
考えても彼が何者かはわからない。
どのような体験をしたのかもこの力では知れない]
おにいさまに伝えておいた方が良いかしら。
[もう一人のきょうだいは誰がそうであるか知っているだろうから
意識は頼れる義兄――朱花宿すその人へと向かう]
―朝/クレメンスの部屋の前―
[部屋を出て義兄の部屋の扉をノックする。
急いでいたからヴェールも髪飾りも置いてきてしまった]
おにいさま……?
[名を呼んでみるが返る声は無い]
まだ眠っているのかしら。
[厭な考えが頭を過るがそれを必死で否定する。
何度声を掛けてもいくら待っても声は聞こえてこない。
痺れを切らしたかドアノブに手を掛けた]
おにいさま、入りますよ。
[もう一度言葉を重ね扉を開く。
鍵は掛かっておらず何の抵抗もなく部屋の中の景色が見えた]
―朝/クレメンスの部屋―
[人が居る気配が感じられない部屋。
中に入って寝台を見るけれど義兄の姿は無かった。
くるりと部屋の中を見渡して]
――…居ない。
[不安で声が震えそうになる。
厭な予感は募るばかりでそれが消える気配はない]
もう広間に行っているのかしら。
[そうであって欲しいと思いながら紡いだ言葉は
自分でも情けなく思うほどに頼りない響き。
もぬけの殻になっている部屋を出て廊下へと戻る。
誰かと会うことがあれば義兄の居場所を知らないか尋ねるだろう]
―朝/広間―
[階段を一段また一段と下りてゆく。
気が逸り何度か足を踏み外しそうになりながら
辿りついた広間にも義兄であるクレメンスの姿はない]
おにいさま?
[名を呼べば出てきてくれるだろうか。
そんな淡い期待をこめて彼を呼ぶのだけれど声も姿も無い儘。
カウンターに厨房、食料庫にリネン室や浴室――
探せるところは探してみたが義兄の気配は感じられない]
何処に行ってしまったの……?
[不安げに紡ぎへなりと眉尻を下げる。
こんな時はいつもあやすように頭を撫でてくれる義兄の手が恋しい]
あとは……、外……?
―朝/玄関外―
[自衛団にはあまり近付かぬように言われたのを覚えている。
外に出れば自衛団員に咎められるだろうか。
それでも義兄の行方が気になり足は外へと向いた。
玄関から外に出れば冷たい空気が肌を刺す。
微かな風が運ぶのは冷たさだけではなく鉄錆にも似た匂い。
それは右の方から流れてきていた]
――…これ、って。
[何の匂いだっただろう。
考えてはいけない。
其方に行ってはダメ。
頭の片隅で警鐘が鳴り響いているのに
女は匂いのする方向へと歩み探し人を見つけてしまう]
[濃い血の匂いの中心に義兄は居た。
肉を抉り取られ死の香りを纏う義兄とその躯を抱くおとうと。
ヒク、と喉が引き攣るような感覚]
…………ぁ。
[小さく漏れる声]
おにい、さ、ま。
[深い傷痕と血だまりを見れば義兄が既に事切れていることを知れるが
それを受け入れる事が出来ずに名を呼んだ。
覚束ない足取りでふたりの傍へと行けば
ライヒアルトの少し後ろでぺたりと膝を折る]
おにいさま……、おにいさま……っ!!
い、や……、どうして……、……ッ
[いやいやをするように頭を振るい
やがて女は顔を覆って泣き崩れる]
[堪え切れぬ嗚咽は哀しみの深さを示すよう。
頼りになる優しい兄の死を妹は嘆き悲しむ。
物心ついたときから一緒だったから
養父と同じく家族なのだと思っていた人。
歳が離れていたからか頼るばかりだったけれど
それでも何処か誇らしげな笑みを浮かべ面倒をみてくれた。
嗚咽混じりの声があにを呼ぶ。
如何してこうなってしまったのだろう。
あにの命を奪ったのはきっと私。
あにに相談しなかったから彼はこうなってしまった。
あにとおとうとを天秤に掛けることなど出来なかった。
出来ないと思っていたのにあの夜おとうとを選んでしまった。
罪の意識がまた一つ重なる。
彼の死を嘆く資格さえないのかもしれない。
それでも罪深い女は喪った大事な人を思い泣き濡れる**]
―二階/個室―
[暗い闇。夜]
――っ!!
[痛みに、悲鳴すら出ない。
声の一つも落とせない。
――二度目とはいえ、慣れるわけもない激痛。
発生源を取り除こうと、知らずに指が首の後ろを掻く。
つよくつよく、血が滲んでも止まらない。
痛みが和らぐこともない。
見開かれた目は虚空を捉え、呼吸を求めた口唇はうまく空気を吸い込むことができない。
涙が落ちてゆくけれど、うまく動くこともできずに]
[どれだけの時間が経ったのか。
つい先ほどまでの眠りの中に戻ることはできなかった。
その苦痛が引いた瞬間、ぱた、と動いていた手が落ちる。
体が闇の中に落ちていくような感覚。
そのまま、意識は失われた]
―朝/個室―
[目を覚ますのはいつもよりすこし遅い。
しばらく動く気にはなれず、やがてゆっくりと起き上がって、手を見て溜息を吐いた。
爪の間に血が滲んでいる。
首の後ろを鏡で確かめると、引っかいた痕が無数に残されていた。
その際に顔も見て、涙の痕に苦笑する。
痛みが引いたわけではない。
じんわりと、そこだけが熱を持っているような感覚]
…朱花が死んだ
[そっと呟いた。犠牲者の名はまだ、知らない。
声が震えて、それから、立ち上がった。
身支度を整えて、部屋の外へ。階下へ。
泣く、嘆く、声のほうへ]
―外―
[ライヒアルトとナターリエの様子を見て、死んでいるクレメンスを見て、小さく呼気をもらした]
中、入るよ。
入って。
[声はそっと二人を促す。
動かないようなら、そっと頭を撫でて。
それからもう一度、中に戻って、と告げて]
…彼が朱花だったなんてね。
[その背の模様は見えていないはずなのに、小さく呟いた。
何にせよ、ナターリエとライヒアルトを室内に戻す。ライヒアルトへは浴室も勧めるけれど、動かないならそのままにして。
誰かが来るなら暖炉を任せて、クレメンスの死を告げる。
それは淡々とした態度になっただろうけれど、そのまま、ホットミルクを入れると厨房へと行くのだった**]
― 昨日 ―
[それから厨房に入って、昨日は食事を作った。
食欲の無い物が大半だったが、]
ちゃんと食べなくて、エーリの兄さんみたいになっても知らないヨ?
[そう軽く笑みながら言った。咎められれば謝罪して。
それでも作った分はあまり減らなかったろう。
そして湯をかりて体を洗い、部屋に戻って休んだ。
今日も浅い眠りだった。
ユメは見れない。]
― →翌日 ―
― 翌日・玄関 ―
[早朝目覚め部屋を出ると、人の気配がした。
今日はみんな早いねぇと呟きながら階段を下りると、ゲルダがナターリエとライヒアルトを中まで引っ張ってくる所に遭遇する。
クレメンスの死は、ゲルダから聞いた。>>141]
狼はやる気満々だねぇ…。
[笑みこそ顰められたが、どこか楽しげに、ともすれば皮肉気にも聞こえるように口にして。]
クレの旦那は何処?
部屋に運んどくヨ。そのまんまだと障りがあるでショ。
[そう言いながらもゲルダの方は見ない。
手早く暖炉の火を点け、薪を放り込んでから返事を聞き、リネン室に一度言ってからシーツを持って外へと。]
― 翌日・外 ―
おーお……こりゃ。
[死体を見るのは初めてではないが、人狼に殺されたものの死体を見るのは初めてだった。
手を当てて口元を覆う。
その下にある、深い笑みを隠す為。]
ほんとに、いるんだネ。
人狼。
[ぽつりと、呟いた。
それからクレメンスの遺体にシーツをかけ包み、もう一人誰かが来るまで少し待った。
一人でも運べなくはないが、クレメンスは体格が良いうえ遺体が傷んでいるので、無理すると余計に傷口が裂けかねない。
もっとも千切れる事はあまり意に介していないので、誰も来なければ、一人で背に抱えてでも運ぶだろうが**]
─回想/広間─
そりゃどーゆーいみだ。
[しゃあしゃあと答えられて>>137、オレはじと目になった]
オレだって男なんだぞ。
[何でそんなに女々しく思われてんだ。
……すいませんね、ガキで女々しくて。
結局、オレの表情は一旦拗ね顔に近いものになった。
それがダメなんだろうと思いつつも、直ぐに直せるものでもない]
…ん、んー。
お茶、頼む。
[オレは待ってるとの言葉に一瞬迷って悩む素振りを見せたけど、茶を頼み、片付けと風呂に行って来ることにした(>>117へ)]
─昨夜/ →浴室→広間─
[浴室に入るのはゼルギウスが出て来てからになるかな。
仮に一緒でも、と言われてもオレは辞退した。
一人で居る時間必要なんじゃないかな、と思ったから。
一緒に入った方が良いとか言われたなら、入ったかも知れないけど。
ともあれオレは風呂でさっぱりしてから広間に戻ることになる]
[広間で茶を用意していたゲルダと合流し、茶を貰って中からも身体を温める。
…妙に落ち着いた気はする。
でも食欲は出なくて、アーベルの用意した食事>>142には手を付けなかった。
手を付けられなかった]
─昨夜/ →自室─
[ゲルダが部屋に戻る時は、何かあったらダメだからと、オレは一緒に行くことを申し出る。
頼りないとか言われたかもしれないけど、オレは頑として譲らなかった。
ゲルダがさっさと二階に上ったとしても、オレもその後に続き、部屋に入るのを確認してから、オレも隣の自室へと入って行く。
何も起こらなければ良いと思いながら、何かが起こる確信めいたものが胸中にあった。
それを胸に、オレは眠りへと落ちて行く。
夜中に隣でゲルダが苦しんでても、悲しいことにオレは気付くことが出来なかった]
[事を起こすのはオレ自身。
ゲルダの事に気付けなかったのは部屋に居なかったから。
そして、ゲルダが苦しむ原因を作ったのは、オレ自身だった]
[オレは未だ蒼花について何も知らぬまま、まどろみの中で朱花の余韻に浸っていた。
甘美なる果肉の感覚は未だ舌の上にあり、その味は何物にも比べがたい。
──ああ、もう一つも喰いたいなぁ。
隣に在ると知らぬまま、オレの想いは膨らんでいく。
そうして、夜は更けて行ったのだ]
─翌朝/自室─
[染み付いた生活サイクルはどんな時でも崩れる様子は無く。
オレが目を覚ましたのはやっぱり他より少し遅い。
今回は劈くような叫び声も無かったから、特に目覚めは遅かった]
ふ、ぁ。
[欠伸をして目を擦り、鏡無しで髪を櫛で梳く。
仕草だけなら女性に思われるだろうが、残念ながらオレは男だ。
昨日と同じようにキルシュヴァッサーの刺激で目を覚まし、支度を整えて部屋を出た]
─ →広間─
[広間は既に人の気配と暖炉の温かみがあった。
けれど昨日以上に空気が重い気がする]
……まさかと、思うけど……?
[状況は昨日の朝と似ていた。
昨日はエーリッヒだったけど、今回はナターリエとライヒアルト。
対象が誰なのか、容易に想像出来た]
…なぁ、どこ?
[想像した人物と最後に別れたのは多分オレだったろうから、どこで起きたのかが気になった。
問いに答えたのは誰だったか。
運ぶと言う話を聞いたなら、微力ながらも手は貸すことに*なるだろう*]
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