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[そうと決めたら][立ち上がる]
[幼馴染を食べたからか][体は動きやすい]
[人ならざるものに変化しているせいか]
[ただ]
[残していく幼馴染が][気にかかって]
[せめてなにもないようなかおで]
[いなくなることを言ったほうがいいだろうか]
[森の中を][足跡を幾重にも]
[聴覚が人のものではないと][気づいても]
[それを利用して]
[ハインリヒが窓から出てきたのなら][行くべきは]
[裏に回る]
[そして裏口から中に入る]
―→集会所 裏口―
―集会所 一階―
[静かだった][少しの足音が響く]
[自嘲の笑みが浮かんだ]
[消えた]
[厨房に入る][少し考えて][ココアを作る]
[生クリームで]
[あたたかくて、甘いにおい]
[カップに][すくって]
[残りは誰か飲むだろうか]
[とりとめなく考えて]
―→居間―
[ソファに寝るように倒れた老人を見る]
[彼は][死んでいる]
[喰らえとささやく月はない]
[そっと小さく、祈りの言葉を]
―→二階―
[血のにおい][あまい][ココアよりもあまい]
[たいせつな][ひとの]
[弔ってやろうと、思う]
[この手で][森の中に、埋めようか]
[それでも][声が聞こえる]
[エーリッヒの声が]
[ああ、気づかれたのかなと][思って]
[扉の前で立ち止まった]
─二階・個室─
[ふ、と。気配を感じる。
蒼の花の疼き。
それは警告。
これが警告を放つ者など、今考えられるのは]
……鍵なら、開いてるぜ。
[聞く気があるかどうかはわからないけれど。
投げやりに、声をかけて]
[投げられた声の調子に、迷う]
[そして]
[それでも]
[扉に手をかけて]
こんにちは、大丈夫ですか?
[いつものような][微笑みで]
―→エーリッヒの部屋―
[かけられた言葉と変わらない表情は、いつもと変わらず。
それだけを見れば、何も変わっていないように思えた。
けど。
蒼の花は、それを拒絶しようとする。
いつかのように。
『激痛』という形で]
……ぐっ……。
生憎と……大丈夫じゃ、ねぇ……な。
[コレのおかげで、と言いつつ。蒼の花を弱い光に晒し]
……そう、ですか
[苦しそうな様子を見て、そっと近づいて]
[テーブルにココアを置いて]
[頭をなでようと手を伸ばすも、それは途中で止まった]
[手を引いて]
お別れにきました
……勝手だよ、どいつもこいつも。
生きろとか何とか……俺の意思は、無視か?
……この身体で生きてることが、どれだけきついか、わかってんのかよ。
[目を伏せたまま。
これまで、誰にも言わなかった言葉を。
手の動きは、見えていない]
ああ、勝手だな。
10になるまで持つか持たないかとか、言われてたのに。
……偶然聞いて、諦めてたのに。
ここまで強引に引き伸ばしやがって。
[吐き捨てるように、言って]
わがまま……か。
どこまで、同じにすりゃ気が済むんだよ、お前ら……。
[声が、震えた。
かつて愛した少女。
狼の力を宿した少女も。
同じ事を言っていたと思い出して]
……そうじゃなくて…………ただ…………。
[どう言えば伝わるのかと。言葉を探す]
……応えられないのが、わかってる願いを。
受け止めるのが、辛いんだよ……。
[自分の身体は自分が一番よくわかっているから。
どれだけ延命治療をしたとて。
限界が遠くないとわかっていたから
想いから逃げたかったのだと。
言えなかった言葉たちが解き放たれて]
[幾度となく迷うようにのばされた手が、エーリッヒの頭にそっと触れる]
[なでる]
あなたのそれを聞いてもまだ、生きていてほしいといったら
[そこまで言って止める]
[手を離して]
それは……俺だって、そうだった……。
[そう思えたのは、二人だけで。
だからこそ。
病状が悪化するたび、その姿を見せたくなくて、村を離れた。
心配させたくもされたくもなくて]
…………馬鹿野郎が。
お前だって……消えるつもりだろ……ルーツィアと同じに。
いや……あの時は。
俺が、手を離した。
聖痕に負けて。
……雪の中に、置き去りにしたんだ。
[側に居ると誓ったのに、と。小さく呟いて]
[答えはない。でも、それは答えとして十分で]
……ああ。
だから、俺は、これに従う事を拒んで、抗っている。
これは……大切なものすら、手にかけられる……呪い、だから。
あなたにもイレーネにも…出会わなければ良かった
[小さく口唇からこぼれる]
そうすればあなたを苦しめることも
イレーネを殺してしまうこともなかったのに
[そして]
[ほほえんで]
…[手をのばす]
[その口元のあかを拭う]
殺されていればよかった
[でもとつぶやき]
あなたたちとあえて、しあわせだと思うんですよ
あなたが苦しんでいるのに
[触れられた瞬間、蒼の花が激しい痛みを伝える。
拒めと。殺せと。意識に囁く声。
それに、黙れ、といわんばかりに。
蒼の花に、爪を立てる]
お前……ほんとに、馬鹿野郎だなっ……。
[かすれた、声。振り絞るように]
……俺は……かわりたくないから、逆らってるだけだ……。
別に、誰かの……お前のせいだなんて、これっぽっちも……。
[苦痛なのだろうと思う]
[それでも]
馬鹿ですよ、私は。
ずっと、もう、ずっと前から
[微笑みは絶えず]
[抱きしめる][そっと]
ああ……まったく、どうしようもねぇよな。
[俺もだけどな、と呟いて。
抱きしめられて驚くものの。
逆らう余力もなく。
そのままで]
[ぽふ、ぽふ、と背中をなでて]
[微笑を刻んだまま]
馬鹿ですみません。
[小さく笑って]
あなたは……
[言いかけて]
[口ごもった][目を伏せる]
[一つ、頷く]
……終りにしたい。
誰かに、罪悪感を与えたり、自己嫌悪に陥ったり……もう、繰り返したくない……。
[だから、と。そこで言葉は途切れるものの。
言わずとも、意味は届くだろうから、と]
[片腕をそっとはずして、][頬に触れさせる]
私は、あなたには、生きていてほしい
それでも……
[言葉を、飲んで]
あなたが、死にたいなら。
あなたが、死ぬなら。
ほかの誰にも、あなた自身にも、
あなたを殺させたくない……
[微笑む]
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