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[眉根を寄せながら。][それでもまた、考え続ける。]
…他に、方法はないのかな…システム…って、どうし―――ぁ、っぅ。
………痛ぃ…あたま、痛い…。
[訪れる痛み。][頭を押さえようとして手を見れば。][両手は紅色に染められたままで。]
[そのまま、その紅に唇を寄せて。][掌を齧るように、口を開き。][舌でほんの少しだけ、赤色をすくい取った。]
[以前、口にしたのと同じ味。][鉄の味。][それはとても。]
あま、い。
[呟けば。][痛みは消えた。]
[瞬く。]
…あ、れ…?
[不思議そうに両手を見て。][痛みは今は欠片も無く。]
[ふとクレメンスの言葉が思い出された。
『お薬が合ったのですかね?』
と。]
薬
これ、
[が?と、呟こうとして。][ぐらりと体が軽く傾ぎ。][だがすぐに持ち直し。][何事も無かったように、血塗れた布とと手を綺麗に洗った。]
[台所から出ればミハエルに、ねぎらいの言葉をかけられて。][それには言葉少なげにいいえと返し。][そのまま二階へと上がってゆく。]
[足取りはしっかりとしていて。][儚い印象派どこか薄れていた。]
[銀色の意識の丁度真ん中には、真っ白な卵のような意識が眠っている。]
[それがこちら側でのブリジットの意識で。]
[だがこの世界で起きることは*無く。*]
/*
おはようございます、と。
今日の吊りに関しては、リディ発見描写の内容とそこからの流れ次第になるかな、と思いつつ。
その関係で、こっち来る可能性も否定できないかな、と。
最初から残る・残す想定の視点と、全然それが見えない視点では捉え方違うから。
ぼちぼち、発言数よりも展開重視の段階でもありますしね。
とにかく、ここまで来たら動かないと。
こっちも動きの中で、「死ぬ気はない」意思を出せるようにしていきますので!
あとは、負担かけて申し訳ないけど、狂信さんにも頑張っていただく、という事で……。
*/
[右腕が痛んだ]
……っつ、
[微かに声はあげて、左手を添える。
袖に残った赤が映った]
[夢を見ていた。
昨夜の繰り返しの夢――ではない]
[カァ、][鴉が鳴き声をあげ、羽ばたく]
[顔を顰めながらも、そちらを見た。
赤の残る、不鮮明な視界。そこに浮かび上がる黒。
見えるようにも、視えるようにも、なっていなかった]
そりゃそうだよ、ね。
[目の奥が熱い。
痛みに似た熱を持っているようだった。
添えていた左手を離して、顔に当てる]
いつまで…… かなあ。
[ポツ、と呟きが零れた。
色々なものに、宛てた言葉]
[ベッドから降りて、机へと向かう。
ぼんやりとした頭のままに、袋から作りかけの飾りと石を取り出した。
今更、自己満足かもしれないと、*そう思ったけれど*]
―自室―
[それは、唐突に訪れた。
夢も見ずに薄闇の中に沈んでいた意識を、鋭く斬り裂くように]
――ッァアッ!
[右肩から全身へ。
いい加減慣れてきたかと思っていた痛みを、軽く凌駕するそれ]
ぅ、あ…。
[右肩を抱え込む。
半端ではないそれに、暫し息を整えようと]
――そん、な。
[荒い息の中、呟く。
ベッドから滑り落ちるように降りる。
燃えていた炎は殆ど消えかかっていた]
…ま、さか。
[まだふらつく足で。
それでも壁に縋って扉へと。そして部屋の外へと]
[あの時のように。
不安と恐怖にかられるように歩く。
辿り着いた先の部屋]
…リディ、ちゃん?
[小さな小さな声を掛けて。
そっと目の前の扉をすかした]
[視界に入ったのは、ベッドで休む人影。
一瞬の安堵。
しかし次の瞬間には]
こ、の…匂い……!
[部屋の中に満ちていた、錆付くような臭気が押し寄せた]
[扉を大きく開く。
部屋の中は多少乱れていて。
ガタンという音を立てて何かが倒れた。
けれどそれにも気を払うことなく一直線にベッドへと]
あ、ぁ…
散って、しまった……
[伸ばした指先には、千切られた蒼花。
紅に沈んだそれはもう何も伝えてこない]
緋に沈んで。
それが欲しいと思ってしまったのは。
私、なのに…。
[肌蹴られた衣服。
左の胸に一際大きな傷。人の命の核となる場所が、無い]
なの、に……
[祈りを]
[そう言われ、聖句を口にのぼらせた昨夜]
元神父であって、今は本当は違うのですけれどね。
[苦笑したのは祈りの合間に]
十字架を落としてきてしまっているので、俺は神父じゃないんですよ。
でも、祈りのことばは同じですしね。
[神様には少し我慢してもらいましょうと]
あおいはな、ちらそう。
[ふと口をついて出たのは。
つい先日、視る力を持っていた青年が言っていた]
咲いた花は。
散るがさだめ。
[ベッドの脇に座り込んだまま。
手を伸ばしてリディに触れたまま]
それでも花は、咲く。
…運命なんて、知らない。
知らないままで、いたかった…!
[全身を駆け巡る痛み。
慣れることなんて出来るわけがなかった。
そんなものでは、なかった]
[バサリ、][急に視界に影が下りる]
ザフィーア? どうしたの。
[この賢い鴉が、そうして他者の邪魔をするのは珍しい事で。
顔を上げて、窓の外を見る。
新たに雪が積もったのか、真白に塗りかわっていた。
それと自分の姿とを見比べて、着替えてもいないことに、今更気づく。赤はもはや黒ずんでいる。鼻も、麻痺してしまったのだろうか]
……。風呂でも、入ろうか。
[そう「理由」を付けて、部屋を出る]
[皆が部屋に戻っていく]
[自分もまたそうだった]
本当は湯を浴びようとしていたんですけどねぇ。
…ああ、おかしい
[くすとわらった]
[夜の闇が落ちた]
[静寂]
…いいえ、望んだのは、私。
姉様のように、なりたくて。
[それなら役目を果たせと。
そう朱花は訴える。熱と痛みをもって]
でも、リディちゃん、は…
[開いたままの扉から、僅かに残っていた熱も去ってゆく。
静かに冷えてゆく部屋]
[開け放たれた扉。
誰かの声が聞こえた気がした。
妙に足が重くて、一歩一歩、ゆっくりと進む。
ザフィーアは先に行くことはなかった]
[ゆっくりと振り向く]
いない、よ。
ここには、もう、いないの…。
[扉の前に立つ影に告げる。
座り込んだ体勢のまま]
あおいはな、ちらして。
どこか、いっちゃった…。
ん?
[彼はすぐに入っていった]
[誰の部屋だろうとそちらに向かう]
[部屋の中から声がした]
…
[へぇ、と、小さく口が動いた]
[胡桃色と、灰銀色。
白の上に、鮮やかな色。
鉄に似た臭いが、強く満ちていた]
……何、やってんの。
[少女が何を言っているのか、わからなかった。
だって、こんなに綺麗に咲いているのに。
――違う、これは、彼女の花じゃない]
起きなよ、リュー。
寝ぼすけ。
起きないと、グリンピース御飯に入れるよ。
[脇を擦り抜けてベッドサイドに左手を突いて、リューディアの頬に触れた]
[冷たかった]
[ミハエルが掃除をした広間はしかし、それが簡単に落ちないことを意味していた]
[かすかに黒い]
[しかしそのままキッチンへ向かう]
[食べやすいものを用意しておこうと思ったのか]
[スクランブルエッグを]
[スチームミルクを]
[そしてやわらかいパンとバターを机に置いた]
こんなに、冷えてる。
下で温まろう。
早く行かないと、御飯取られるよ。
[レディ=アマンダに。
……違う、彼女は、もういない]
それに、こんなに汚して。
掃除とか洗濯、誰がすると思ってるの。
[ノーラさん?
……違う、彼女も、もういない]
[ユリアンがリディの傍に寄る。
くたり、と触れていた手が床に落ちた]
もう、食べなくて、いいね。
もう、食べられない、ね。
もう、痛くない、ね。
苦しく、ないね。
[視線はリディへと動いて]
もう、いないんだね…。
……お嬢様どころか、お姫様気取り?
でも、生憎と僕は王子様じゃないんだよ、眠り姫。
[返事は、無かった。
蔦の伸びたような蒼い花は千切れて、赤を帯びている。
それより何よりも、あるべきはずのものが、無かった]
なんで、そんな大切なもの失くすの。
[それは彼女自身の手によるものでないのは、明白だった]
……っきろよ、
馬鹿、
リューディア……!
[涙は出なかった。
泣かなかった。
泣けなかった。
泣くことは、出来なかった]
[――クァ、][鴉がないている]
[イレーネの言葉が聞こえる。
わかっている。
もう、彼女は、 ないのだと。
それでも、わかりたくなかった]
本当にかわいそうに
[くすと笑う]
[食べ終わった食事を片付ける音]
人の心を持つからこそ、人であるのに。
泣けないとまで思われているんですねぇ、人狼は。
ユリアン…!
[運んでもらった時、聞いた言葉が甦る。
ユリアンに聞いてくれ。
咄嗟に手が伸びた]
お願い。
もう、休ませて、あげて…。
[その腕を掴もうと。
大した力ではなかったけれど]
……、
………っ……。
[声すら、出なかった]
[腕を取られて、顔を上げる。
定まらない視界に、灰銀色が映った]
ごめ、ん、イレーネ……
僕の方が年上なのに、ね。
[体勢を直して、彼女に向き直る。
片手でバンダナを解き、前髪を掻きあげた]
美味しかったですかね、人は。
[囁いた声は、――届いただろうか]
[狼だけの言葉は使えずとも、人には聞こえぬだろうほど小さい声]
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