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──……何でお前なんだよ。
[声色は感情が籠らず平坦だった]
[けれど最後だけは、信じられぬとでも言うような音が混じる]
大丈夫よ。
素直に生きていれば、怖い事はないわ?
[裏を返せば、という台詞は置いておくとして。
弟の食事の合間に洗い物や簡単な掃除を終わらせて、
普段と変わらない、ラフな服装に髪を結った姿で戻って来る]
アンハルトさんのところに行くのよね。
……私がついていってもいざというときには足手まといだろうし。
それに、自衛団にも寄りたいから、別行動がいいのかな。
[首を傾げつつの台詞]
……素直に、ね。
[裏側は、考えないようにしつつ。
行く先を確かめる言葉に、一つ、頷いた]
うん、そうなる。
……足手まといっていうか……何かあったら、直接『呼ばれる』だろうから。
そうすると、屋根上走ってく事になるだろうし……そうなると、きついでしょ?
[屋根上を走れるのは、長年の慣れと、風の制御故の事だから、そう言って。
自衛団、という言葉に、きょとり、と瞬いた]
―教会―
…。
[団長と少女の2人に関しては、彼は後始末をしただけだ。
けれどそれ以前には直接手を下したこともある。
何より『消す』という表現が、確かにそれを見たのだということを裏付けるように思えた。
俯いたままで、拳を握り締める]
…そうかい。
[小さく呟く声は抑揚のないもの。
足元から伸びる影が、ぞわりと蠢いた]
そうですか、見てないですかー
[残念そうにそう呟く
続いて投げかけられた質問には、んー、と考えていたが]
ちょっと聞きたいことがあって
[ひどく端的に答えた]
きついっていうか無理よ。
姉さんの歳、考えなさい。
[何故だか威張りさえして言う。
それはともかくと、きょとりとした顔に手を振って]
あの後、どうしたのか、聞いてないもの。
泣き寝入りは性に合わないし。
それに、これの「お礼」も言っていないわ?
[これ、と指すのは自分の腕のこと。
裏の意味を含むにしても、何処まで本気かわからない口調で言った]
─教会─
[何かがざわめく感覚]
[肌でそれを感じ、左手はポケットへ捻じ込んだままだが]
[自然体のまま臨戦態勢へ]
[紫煙が男の周囲を取り巻く]
……取材を希望する。
俺が危険を冒してまでここに来たのはそのためだ。
何故こんなことを始めた?
誰に頼まれた?
人を消し、何をしている?
──……何故、俺を呼んだ。
[最後だけは取材内容ではなく、ただ己が聞きたいこと]
……歳の話は、禁句だと思って言わなかったのに。
[ぽつり、と呟いて]
「お礼」……って。
あんまり、キツイのは、ナシね?
[どこまで本気かわからない口調に、は、と息を吐く。
自分が言えた義理でない、という自覚があるせいか。
それ以上は突っ込めないらしい]
……何にしても。
気をつけて、ね?
[気をつける対象は、複数。
自衛団の方もそうだが、昨夜の状況は、どこにいても危険がある、という事を思い知らせたから]
……さて。
だいぶマシになったし、そろそろ行くか、な。
事実を指摘されて怒る程狭い心はしてないし、
そんな暴力に訴えたりもしないから大丈夫。
誰かさんと違って、か弱いし。
[後の台詞にも危機感を覚える様子も見せず、
行き先も違うのだから先に行くと、家を出て行った]
さて、どうだろうね。
[質問を一言で一蹴して、上げた顔に表情は無かった。
それが不意に、口端を持ち上げ笑顔を作る。
心の無い笑み]
ああ、そうだね。
最後だけは教えてもいい。
――…利用する為だよ。
[すいと指を持ち上げる。
影が一本の細い錘の形を作り、襲い掛かった]
……か弱い……ねぇ。
[先に出て行く背を見送り、ぽつり、と呟く。
それから、小さく息を吐いて]
……洗いざらい、か。
ん……だよな。
ちゃんと、話さなかったら、結局。
……逃げるだけ、だもんな。
[僅かに目を伏せ、小さく独りごちて。
それから、自分も家に出る。
少し進んだ所で地を蹴り、いつものよに屋根の上へ。
待ち構えていたかのように、隼が肩へと舞い降りてきた]
―大通り―
お役に立てず申し訳ない。
聞きたいことですか。
何かやらかしでもしましたか。
[その姉が言いそうなことを言った]
[見逃すか見逃さないかだけで見方は変わらないものだった]
まあ、見かけたら言っておきましょう。
―――噴水傍―――
[いつも通りの大股で街中を色々と歩き回り、露店で色々なものを食い続けた末に、噴水傍まで歩いてきたレナーテがそのへりにどかりと座り込んだ]
ふう……毎日毎日歩き回っても、何も掴めやしねえな……いや。
[自らの言葉を否定するように頭を振った]
―――今回のアタイは外側かね。
何も知らないうちに始まり、何も知らないまま終わる。
物語に加わることの出来る人数は、何故だかいつも決まった人数だ。
あったとしても……少しだけ関わった。それだけかもしれないな。
[通りを進んでいくと、立ち話をしている二人の姿。
あら、と小さく声をあげて近づくと、]
こんにちは。
……昨日は、すみません。
[まず先にと、ゲルダに謝罪を投げかけた]
[小さく息を吐き、視線を上げると、屋根の上をかけていくアーベルの姿が見えた]
おー。青髪の。
また随分と元気だな。
……アイツは、物語の重要人物になっているのかね。
[感想はただそれだけ。
他に思うことは何もなかった]
─教会─
[回答は無い]
[予測の範囲内ではあるが、溜息は出る]
[注視して居た隻眸に映る友人の表情]
[無表情から作られる冷めた笑顔]
……そうかい。
それを得られただけでも収穫、だ!
[戦場での感覚が呼び起こされる]
[頭で考えるより身体が動いた]
[迫る錘型の影]
[ポケットから左手を抜き出し、強引に迫るそれへとぶつける]
[左腕に影が刺さる]
[握られた左の拳には数枚の紙]
[強引ついでに左腕を横に振り払うと、距離を取るべく後方へと飛び退った]
もう一つ聞く。
それは自首する気は無いと言うことか?
[何かやらかしたかというハンスの問いに暫し、んー、と考えていたが]
……まあ、そんなところですかね?
[にっこりと笑う
『やらかした』というよりは『やってくれた』というのが正しいところなのだが、そんなことは口に出さない]
ええ、それじゃ見かけたら宜しくお願いします
[そう言ってぺこりと頭を下げた]
[とそこへ掛けられる声に、ん? と振り向くと]
ああ、エルザさん。こんにちは
……昨日のことは。うん、謝られるようなことじゃないですよ
私も結局のところ何も出来ませんでしたし
[そう言って、はははと寂しげに笑う]
─ヘルガの宿─
[場所は知っているものの、滅多に訪れる事のない宿。
案の定というか、女将は来訪者に意外そうな視線を向ける]
……そんな、露骨に驚かなくてもいいじゃん。
それよりさ、ここに泊まってるヴィリーって人、今、いる?
[困ったような問いかけに、返るのは否定。聞けば、早くに出かけたと]
……そっか……。
あ、それともう一つ、さ。昨夜、なんかおかしな事、なかった?
[唐突と言えば唐突な問い。
女将は目を細め、探るような視線を向けてくるが、それはこてり、と首を傾げる仕種で受け止めて。
ある種奇妙な沈黙の後、返されたのは妙な時間に風の音がしたらしいとか、そんな話。
それは、自分の成した事が現実であったという裏づけで]
そっか……ん、ありがとね、女将さんっ!
[ほんの僅かな刹那、蒼に険しさを宿すものの、すぐにそれは打ち消して、宿を出た]
んー……そうなると、いつもの場所かな……。
[小さく呟いて。ゆっくりと、歩き出す]
[話題の見えない会話に首を傾げもしたが、
寂しげに映るゲルダの表情に首を振る]
いえ。
[何も言えず、少しの沈黙]
あの後どうなったか、訊きに行こうと思って。
[自衛団に行くつもりだと、暗に言う]
―大通り―
[この時点で犯人の可能性を浮かべていた相手]
[隻眼の記者が親しく話していたライヒアルトとレナーテ]
[そのどちらでもないから警戒はそこまで高くなかった]
それはまた。
[苦笑を浮かべかけたところでエルザの声]
何かあったのか。
[謝るのを見て問うでもなく問いかけた]
[振り払われた影は一度退いた。
尖った先には血がついていただろうか。
掴み出された紙に彼は眼を細めて、けれど笑みは変わらない]
分かってるくせに。
[影は形を変え、ゆらりと動く。
丁度蛇が鎌首を擡げ、威嚇するかのような]
─広場─
[途中、異変がなかったかを聞き歩きながらたどり着いた広場。
閉めたままの露店も増え、ここ数日での変化がはっきりと感じられた]
……ホント、早く何とかしないと。
祭り前だってのに……。
[呟きながら、周囲を見回し。
ともあれ、尋ね人を良く見かける場所──噴水の方へと歩き出した]
いえ。
昨日の事よ、
[ハンスの問いに、今日はまだ何も、と苦笑した]
……知ってるんじゃないかなって思ったけど。
誰が連行されたか。
私とミューラさんは、その場にいたから。
ん?
[そのまま手持ち無沙汰のように、噴水の傍で道行く人々を見つめていたが、不意に先ほど見かけた青髪の青年の姿を見つけると、大きく手を振った]
おー。どした、兄さん。
屋根の上走ってまでやる用事は終わったのかい?
―大通り―
そういえばアーベルはまだ家かい?
[ゲルダの探し人についてを口にして]
ああ。あの後はゲルダさんと。
……カヤ君のことか。
[噂話で連行時の一幕も聞けてはいた]
[隠そうとはしたけれど]
[自己嫌悪も混じる表情が浮かぶのを完全には抑えられなかった]
─広場・噴水傍─
[やって来た噴水に、尋ね人の姿は見えず。
戸惑っていると、声をかけられた。
振り返った先には、一際目立つ姿]
あ、ねーさん。
ん、まだ終わってないんだけどね。
あと、俺にとっては、屋根の上走るのは特別じゃないんだ。
[軽い口調で問いに答え]
ねーさんこそ、どしたの。
なんか、ぼーっとしてるっぽいけど。
─教会─
[貫かれた腕からはだらりと紅い雫が落ちる]
[けれど痛みなぞ感じていないような素振りで]
[友人に対し半身の構えを取った]
そうだな。
こうやって襲いかかって来た時点で明白だ。
下らんことを聞いて悪かったな。
[口調は友人といつも話すものへとなっていた]
[威嚇するような影を見つめつつ]
[左の拳を持ち上げる]
…この紙、なんだか知ってるか?
「口伝の術符」──声を記憶して離れた相手に伝える魔道具だ。
こいつには今、ここで会話した内容が記憶されてる。
俺がここに来てお前に声をかけた時からの内容がずっと、な。
[変わらぬ笑みを隻眸で見つめ、言葉を続ける]
[術符に記憶させる切欠]
[『アロー』、それがコマンドワードだった]
[ふぅ、と紫煙を吐き出すと呼吸を整え]
アーベル! ハンス! エリザベート! レナーテ!
これを聞けばライヒアルトが事件の実行犯と言うことが分かったはずだ!
俺を利用するためにこの地へ呼び、正体を見破られたために俺を消そうとしている!
もし俺が消された場合は……解ってるな。
[術符に記憶させるように]
[はきとした通る声を張り上げる]
[その間も隻眸は友人を見つめたまま]
[不意に不敵に笑みを浮かべた]
もう一つ。
今居る面識のある中でまだ調べて居ない者が居る。
その人物以外は俺は犯人では無いと、事件に対する姿勢から判別した。
その調べて居ないと言う人物は…。
[一度言葉を切り、一拍置いて]
───人形師だ。
健闘を祈る。
[言い終えると左手の中で炎が上がる]
[燃え尽きたそれは効果を発動]
[呼び掛けた四人の頭に男の声として再生されることだろう]
[男が友人と為した会話の一部始終も全て]
……そう、ですか
すみません、お供したいところですが私はやめときます
自衛団の顔を見た瞬間どういう行動に出るか、自分でも保障しかねるので
[そう言って苦笑い
そこで、ああそうだ、と呟くと]
……ねえ、エルザさん
アーベルくん、何処にいるか知りませんか?
[先程ハンスに訊ねたのとまったく同じ質問、同じ笑顔]
[特別じゃないと言われると、からりと笑った]
ははっ。
随分とやんちゃな通り道使ってるじゃねえか。
こっちはまあ、思うように仕事のほうが進まないんで、ちぃと一休みってところかな。
[そういうと、空を見上げて]
やっぱ、こういう仕事は向いていないようでなあ。
誰が犯人なのか、さっぱり想像もつかねえ。親父も嫌な仕事回してきたもんだよ。
アーベル?
……、さっき出かけたけど、どうかした?
[僅かな間は、行き先を告げるべきか、迷ってのこと。
抑えきれぬ表情が、翠眼に映りこむ]
ハンス? 貴方が気に病むことじゃないのよ。
…な、
[理解が追いつかない間に、紙は燃え尽きてしまう。
表情から笑みが消えた。
俯き、小さく震えだした]
ふ…っく、はは、ははははっ…
[暫く響いていた笑い声はぴたりと止む。
ゆっくりと首を上げ、眼が開いた]
――まったく。
やってくれるねえ、きみは。
[はっきりと険を含んで。
黒蛇が大きく口を開けて、頭上より襲い掛かった。
けれどその勢いは、先程の錘よりは遅い]
[術符の言葉が全員に聞こえるとは限らない]
[けれど今この状態で他に伝える手段はこれしか無かった]
[己が見たクロが誰なのかのヒントは落とせど]
[はきとしたことは伝えていないために]
[結果がどうなるかは賭けに等しい]
(…少なくともアーベルには届くはず)
(上手くやれよ)
[その間も腕からは赤い雫が零れ落ちる]
[致死量には至らないが、徐々に意識は揺らいでくるか]
─教会─
捻くれてるもんでな。
ただじゃ倒れてやらん。
誰かさんの言うには俺は地雷らしいからな。
お前に消されるなら──お前も道連れだ。
[朦朧とする意識の中]
[険を含んだ友人の顔を見た]
[黒蛇と化した影が大きな口を開き、こちらへと迫って来る]
[身体に避ける程の力は残っていない]
[元々同僚宛てに調整された術符を、己の力を注いで別の人物へ届くように調整したのだ]
[それによる疲労も少なからず溜まっていた]
なぁ、最後に教えてくれ。
──お前の信じる神はどこへ行った?
お前だけは、俺の代わりに神を信じてくれると思っていたのに──。
気がついたら、あそこが道になってたんだよ。
仕事……って。
そか、ねーさんも、失踪事件調べてたんだ。
普通に捜しても見つからない、わからない、だもんね……。
それなりの所からの、圧力もかかってるみたいだし……って。
[不意に、途切れた言葉。
途切れさせたのは、風による『呼びかけ』とは異なる『声』]
……え。
なに、今……の?
[零れ落ちたのは、困惑を帯びた、声]
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